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2023年12月31日日曜日

梅毒速報-4.過去最高の患者数を記録-

2023年12月17日時点で、国内の梅毒患者数は14401人となり、過去最高となりました。

未だに流行は収まる気配がありません。

大都市を中心に、全国で患者が多数発生していますが、すべての都道府県で患者が発生しています。

男性では20〜50代が多く、女性では20代が多くなっています。

特に若い女性の患者数が顕著となっています。

若い女性の患者数が増加することは、先天性梅毒の増加の危険性をはらんでいます。

現実その患者数は増加しています。

梅毒は抗生物質で完治しますので、梅毒トレポネーマに感染するような行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受けて早期発見早期治療に心がけてください。

梅毒はペニシリン系などの抗菌薬が有効で、現在は抗菌薬の内服治療に変わり世界的な標準治療薬であるベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤の治療となっています。

早期梅毒であれば1回の注射で、後期梅毒の場合は、3回の注射で治療が可能ですから、梅毒トレポネーマに感染するような行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受けて早期発見早期治療に心がけてください。

早く治療を開始すればするほど早く完治します。

国立感染症研究所の発表した『梅毒2023年現在』をリンクしておきますから、参考のためにぜひともお読みください。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/syphilis-m-3/syphilis-iasrtpc/12410-526t.html


2023年12月24日日曜日

中国での新たな感染症流行について-2.マイコプラズマ肺炎-

マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ(Mycoplasma属の真性細菌 Mycoplasma pneumoniae )を主な原因とした呼吸器系の感染症で、肺炎球菌による肺炎とは異なる種類の肺炎です。


症状としては、しつこい咳、頑固な発熱が特徴ですが、肺炎という名の割には、聴診器で呼吸音を聞いても異常がなく外見だけではわかりにくい肺炎です。


現在中国でマイコプラズマ肺炎が猛威をふるっています。


治療薬としては、エリスロマイシン・クラリスロマイシン・アジスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質が一般的に用いられるますが、ミノサイクリンなどのテトラサイクリン系抗生物質もよく用いられます。


実はこのマイコプラズマ肺炎は厄介な感染症で、 抗菌薬に耐性を持ったマイコプラズマが出現し増えているといいます。


※一般的に肺炎の治療にはベータラクタム系という抗菌薬がよく使用されますが、マイコプラズマにはこのタイプの抗菌薬はまった効き目はありません※


マイコプラズマ感染症は、無治療であっても自然に症状が改善することが期待できる場合もあることから積極的な治療を行うことなく、対症療法的な対応を継続することで、治癒に向かうこともあります。


病状に応じてより積極的な治療介入が必要とされることもありますから、マイコプラズマは、マクロライド系やテトラサイクリン系などといった抗生物質での効果が期待できるため、こうした抗生物質が使用されることもあります。


また、マイコプラズマ感染症では、免疫学的な異常を基盤として、さまざまな症状が惹起じゃっきされることもあります。こうした免疫系の異常を是正させることを目的として、ステロイドなどの薬剤が使用されることもあります。


マイコプラズマ感染症の経過は、患者さんによって大きく異なります。病状や重症度を正確に把握したうえで、最適な治療方針を決定することがとても重要であるといえます。


潜伏期間も2~3週間と長く、症状は咳が長く続き、重症化の恐れもあるのです。


2023年11月21日、感染症警報システム「ProMED」が、中国の一部地域で「小児における未診断の肺炎の集団発生」が報告されて病院が対応に追われていることを指摘しており、これが新たなパンデミックになるのではないかという懸念が高まった。


※中国においてマイコプラズマ肺炎が大流行して、抗菌薬の効果がなく、症状が悪化したり、流行が収まらないのは、①本当はマイコプラズマ肺炎ではない②抗菌剤の選択に誤りがある③耐性マイコプラズマの流行などが指摘されていますが、何しろ真実を隠す中共ですから何が本当なのかわからないのが現実です※


世界保健機関(WHO)が中国当局に詳細な情報を求めた結果、異常な病原体や新たな病原体は検出されなかったと発表していますが、これは信用できません。


中共は新型コロナウイルス流行当初も隠蔽し、その肩を持ったのも世界保健機関です。


【参考資料】

中国で小児を中心に増加が報じられている呼吸器感染症について


2023年12月17日日曜日

※緊急通知※エムポックス(サル痘)で国内初の死者 !!

厚生労働省は、2023年12月13日ウイルス性の感染症「エムポックス」に2023年9月に感染した埼玉県に住む30代の男性が今年の9月に死亡したと発表しました。


男性は海外渡航歴はなかったほか、HIVによる免疫不全の状態だったということです。


エムポックスによる死者が確認されたのは国内では初めてです。


エムポックスは欧米などを中心に感染が拡大したウイルス性の感染症で、去年から12月3日までに国内で227人の感染者が確認されています。


日本国内では、2022年は月に1~2人くらいでしたが、2023年に入ってから急増しています


2023年に報告されたほとんどが海外渡航歴のない人で、国内での感染拡大が起きていると考えられています。欧米では落ち着きを見せつつあるエムポックスの流行が、日本を含む東アジアで本格的な流行に入る可能性があり、特に男性同士でセックスをするときには充分な注意が必要です。


このワクチンはエムポックスに対しても感染や発症を防ぐ効果がある程度はあると考えられています。 


1976年ごろより前に日本で生まれた人たちの多くが子どものころに天然痘ワクチン(種痘)を受けていますが、接種から時間が経っており、の時点までどの程度の効果が続いているかはわかっていません。


接種の経験があるのにウイルスを防ぐ抗体ができていなかった例や、接種を受けた世代の方の国内での感染も知られていますので子どものころにワクチンを打っていても、感染するリスクはゼロではないと考えることをおすすめします。


【参考資料】

【エムポックス患者死亡例について】

※エムポックス(サル痘)の感染予防に関しては以下を参照してください※

サル痘についての再認識-5.サル痘の感染予防対策-

2023年12月10日日曜日

中国での新たな感染症流行について-2.中国で流行している"謎のウイルスの呼吸器疾患"!!-

現在中国で子供を中心として"謎のウイルスの呼吸器疾患"が大流行していてますが、中共はその詳細を新型コロナウイルス流行の時と同様に隠蔽しています。


現在中国各地の病院は患者で溢れかえっています。


世界保健機関は中共に情報提供するように促していますが、やはり中共は情報を提供してません。


世界保健機関も新型コロナウイルス流行の際にも中共に忖度してきた機関だけに、やはり信用はできません。


※2023年11月27日世界保健機関(WHO)の幹部は、中国での呼吸器疾患の急増は新型コロナウイルス流行前ほどではないと述べ、新しい病原体も検出されていないと繰り返しアナウンスしていますが、皆様方は信用出来ますか??※


2023年12月に入って"謎のウイルスの呼吸器疾患"が世界各地で大流行する兆しが現れています。


一部事例を上げますと、


・デンマークでは541人の小児


・米国オハイオ州ウォーレン郡では412人


・オランダでは5~15歳の小児10万人当たり80人、4歳以下では0万人当たり145人


この状況に鑑み米国の国会議員は既に米国大統領に対して、渡航規制や入国規制を早急に実施するようレターを提出しています。


多くの国はこの中国での状況を鑑み、渡航規制や入国規制を検討するために積極的に情報を収集していますが、日本は未だに中国に問い合わせている状態と眠たいことを言っているだけで具体的な対策をしていません。

中共が本当のことを言わないのは周知の事実でしょう!!


この様な呑気な対応をしていると、再度新型コロナウイルスの大流行の憂き目を見ることになりかねません。


しっかりとした対応を切に望みます。


【参考資料】

『中国で小児を中心に増加が報じられている呼吸器感染症について』


2023年12月3日日曜日

中国での新たな感染症流行について-1.呼吸器合胞体ウイルス-

現在中国で小児を中心に呼吸器系疾患が大流行しています。


その結果医療体制が崩壊して大変な状況となっています。


数回に渡って現在中国で流行している呼吸器系疾患について判明していることを紹介していきます。


最初は呼吸器合胞体ウイルスについてです。


呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)は、正式には「Respiratory syncytial virus(レスピラトリーシンシチアルウイルス)」と呼ばれ接触や飛沫を介して気道に感染し、2~5日の潜伏期の後に症状が現れます。


中国で2023年5月以降、小児を中心に呼吸器感染症の患者が増加しています。


このうち、呼吸器合胞体ウイルス感染症は、患者数の約半数を占めるとされています。


水のような鼻水

鼻づまり

ひどい咳

むせるような咳

呼吸数が多くなる多呼吸

肋骨の下がへこむ陥没呼吸

呼吸をさぼる無呼吸


RSウイルスは年齢を問わず風邪などの症状を引き起こしますが、通常1~2週間で軽快しますが、2歳以下の乳幼児では上気道炎から下気道炎に進展して細気管支炎や肺炎を発症することがあり特に6ヶ月以下の乳児では入院加療を必要とすることが珍しくありません。


RSVは、世界中で最も一般的な呼吸器ウイルス感染症の1つで、5歳以下の子どもの急性下気道感染の原因となる最も重要なウイルス病原体でが、通常は軽度の発熱、咳、鼻水などの症状で済みますが、重症化すると肺炎や気管支炎を引き起こすこともあります。


中国当局は、この流行の原因として、新型コロナウイルス感染症対策の解除や、寒い季節の到来、さらにはインフルエンザ、マイコプラズマ肺炎、新型コロナウイルス感染症などの既知の病原体の流行によるものとしています。


具体的には、新型コロナウイルス感染症対策の解除により、人々の外出や接触が増えたことで、RSVなどのウイルスの感染が拡大したと考えられ 、寒い季節になるとウイルスが活動しやすくなることも、流行の要因となっていると考えられます。


中国当局は、RSV感染症の予防対策として、手洗いやうがいの徹底、マスクの着用、換気の促進などを呼びかけ早期発見・早期治療の重要性も強調しています。


日本でも、RSV感染症の流行は毎年冬になると起こりますので特に、5歳以下の子どもは、重症化しやすいため注意が必要となります。


RSウイルスは日本を含め世界中に分布していて、何度も感染と発病を繰り返しますが、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の児がRSウイルスに少なくとも1度は感染するとされています)。


RSウイルスの重症化を防ぐには、RSウイルス流行期に毎月1回筋肉内投与を行う予防注射(シナジス)があり、妊娠中の母親がワクチンを接種することでおなかの赤ちゃんに免疫をつけることができます。


※2023年9月25日60歳以上を対象としたRSウイルスワクチン「アレックスビー筋注用」の製造販売承認が認められました※ 


【参考資料】

「RSウイルス感染症」

「アレックスビー筋注用」

※現在の世界保健機関(WHO)は信用できかねますので、中国での情報はproMEDを参照して下さい。※

「proMED」


2023年11月26日日曜日

梅毒速報-3.先天性梅毒が増加中-

梅毒トレポネーマに感染した妊婦から胎児に母子感染する「先天梅毒」と診断された子どもの数が、2023年10月4日の時点で32人と、現在の形で統計を取り始めてから最も多くなっていることが国立感染症研究所のまとめで分かりました。


先天梅毒の子ども 32人と過去最多に!!(2023年10月4日時点)


先天性梅毒は、梅毒トレポネーマに感染して治療を受けなかった妊婦から胎児に感染し、皮膚の異常や難聴といった症状が出たり、最悪の場合死産につながったりします。


これは現在の形で統計を取り始めてから最も多かった2019年1年間での23人をすでに上回り、これまでで最も多くなっています。


ここ数年来梅毒患者が著しく増加していることから、当然のことながら若い女性の患者がも増加した結果先天性梅毒も増加したことになります。


先天梅毒の子どもの報告も今後、さらに増える可能性があると危惧されています。


過去に梅毒トレポネーマに感染して気付かないまま治療を受けずに妊娠すると、先天梅毒につながるリスクがより高く、そのような人が年々増えていると推測されていますい。


妊婦健診で気付いて治療しても先天梅毒になる可能性があり、妊娠前に治療することが大切であることから、梅毒を疑う症状や感染リスクのある性行為をしてしまった場合は、必ず男女ともに検査を受ける必要があります。


2023年11月米疾病対策センター(CDC)は、米国で先天梅毒の新生児の数が「深刻な水準」に達しているとする報告書を発表しています。


CDCによると、先天梅毒の新生児はここ数年の間に急増し、2021年には過去27年で最も多い2000件以上が報告された。2017年と比べ、3倍以上の数となっています。


【参考文献】

米国での先天性梅毒

2023年11月19日日曜日

医学豆知識-19.脂質異常症の検査のLH比とは-

【 LH比とは】


血液検査におけるコレステロールのバランスを示す指標で、LDLコレステロール値をHDLコレステロール値で割った数値で、血管の状態を評価するための指標としても用いられます。


【L/H比の基準値】


血液検査におけるL/H比の基準値は、1.5以下です(日本人間ドック学会の数値をもとに計算)。


【L/H比は何を判断するために実施するのか】


LH比は、正反対の働きをするLDLコレステロールとHDLコレステロールの比率を示すため、動脈硬化のリスクを評価する指標として用いられます。


LH比が1.5以下であれば、血管の状態は良好で動脈硬化のリスクが低いと考えられ、一方LH比が2.0を超えると、血管内壁にコレステロールが蓄積して動脈硬化が進んでいる可能性があり注意が必要となります。


LH比は、血液検査で簡単に調べることができますので、定期的に血液検査を受けることで、自分のLH比を把握し、動脈硬化のリスクを早期に発見・予防することが大切です。


具体的には、次の方法でLH比を計算することができます。


LH比 = LDLコレステロール値 ÷ HDLコレステロール値


例えば、LDLコレステロール値が130mg/dL、HDLコレステロール値が50mg/dLの場合、LH比は130÷50=2.6となります。


【善玉コレステロール・悪玉コレステロールとは】


LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」と呼ばれ、血管壁に溜まって動脈硬化を引き起こす原因となり、一方HDLコレステロールは「善玉コレステロール」と呼ばれ、血管壁に溜まったLDLコレステロールを回収して肝臓に運ぶ働きがあります。


【基準値】


HDL(善玉)コレステロールは男性40~80、女性40~90が正常範囲、LDL(悪玉)コレステロールは70~139が基準値(正常範囲)です


【 L/H比を改善する方法】


悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やすことの両方が大切です。


【LH比を改善するには】


1.食生活の改善:コレステロールの多い食品を控える、野菜や海藻類を積極的に摂る


2.運動:適度な運動を継続する


3.禁煙・節酒:喫煙や過度の飲酒は動脈硬化を進行させる


【追加事項】


高血圧や糖尿病などの生活習慣病がある場合は、これらの病気の治療をしっかりと行うことによりLH比の改善が可能となります。




2023年11月12日日曜日

医学豆知識-18.脂質異常症とは-

脂質異常症の総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は、220万5,000人で、性別では男性63万9,000人、女性156万5,000人で、女性は男性の2.4倍も多い結果となっています。

【脂質異常症とは】

脂質異常症の一種で、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が基準値より高い状態を指します。

脂質異常症は以前、高脂血症と呼ばれていましたが、コレステロールの中でも善玉のHDLコレステロール値については高いほうがいいことが判明し、現在は多くの病院で脂質異常症という名称になっています。

【脂質異常症になるとどうなるのか】

LDLコレステロールが過剰になると、血管壁に沈着してプラークと呼ばれる塊を形成し、動脈硬化を引き起こす可能性があります。

【脂質異常症の症状は】

脂質異常症の症状は、ほとんどないことから、健康診断などで指摘されるまで自覚症状がないまま進行してしまうこともあります。

【脂質異常症の治療は】

脂質異常症の治療は、食事療法と運動療法が基本となります。

【脂質異常症を放置すると】

脂質異常症を放置すると、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な心血管疾患を発症するリスクが高まることから早期発見と早期治療が重要となります。

【脂質異常症の予防】

以下のことに気をつけましょう。

1.バランスの良い食事と適度な運動を心がける

2.肥満の予防

3.喫煙の禁煙

4.定期的に健康診断を受ける

【コレステロールの基準値】

HDL(善玉)コレステロールは男性40~80mg/dL、女性40~90mg/dLが正常範囲、LDL(悪玉)コレステロールは70~139mg/dLが正常範囲です。

2023年11月5日日曜日

単純ヘルペスウイルス抗原検査キットについて

単純ヘルペスは、主にヘルペスウイルス(Herpes Simplex Virus:HSV)によって引き起こされる感染症で、HSVにはHSV-1とHSV-2の2つのタイプがあり、それぞれ異なる症状を引き起こすことがあります。


HSV-1は通常、口唇ヘルペスとして知られる感染症を引き起こし、唇や口の周りに発症することが一般的でこれは一般的に軽度で、発症後に症状が消失することがあります。


HSV-1は主に接触によって広がり、感染拡大を防ぐために注意が必要です。


一方HSV-2は通常、性器ヘルペスとして知られ、性器やその周りに発症することが一般的で、性的接触を通じて広がることがよくあります。


性器ヘルペスは再発することがあり、症状が治まることがありますが、完全に治療することは難しいことがあります。


※※最近ではHSV-1は口唇ヘルペス、HSV-2は性器ヘルペスとの区別が出来なくなってきています※※


単純ヘルペスの症状には、発疹、水疱、かゆみ、痛みなどが含まれることがあります。


治療法としては、抗ウイルス薬が一般的に使用され、感染症の症状を緩和するのに役立ちます。


感染拡大を防ぐためには、適切な衛生対策と性的行動の注意が重要となります。



【単純ヘルペスウイルス抗原検査の種類】


1.ツァンク試験(Tzanck test)


水疱性の病変から塗抹標本を作ってギムザ染色で細胞診を行う検査で、ツァンク細胞(多核巨細胞)を探すために、小水疱を擦過して採取して顕微鏡で検鏡します。


この検査は、単純ヘルペス感染症と水痘・帯状疱疹ウイルスの区別ができません。


2.蛍光抗体法


単純ヘルペスウイルス(HSV-1/-2)に対するFITC((Fluorescein isothiocyanate))標識モノクローナル抗体を使って染色し、蛍光顕微鏡で蛍光を調べる検査ですが、感度は70%とあまり高くない。


3.血清学的検査


血液中のHSVに対する抗体を調べる検査ですが、陽性となっても過去の感染によるものか、現在感染しているのかの区別が付きません。


4.補体結合検査


補体がHSVの抗原抗体複合体に結合して、溶血素と共同して溶血反応('赤血球が壊れる)を調べる検査ですが、過去の感染と現在の感染の区別が付きません。


5.エライザ検査


HSVエライザ検査は、ヘルペスウイルスの感染を検出するための検査方法の一つで、この検査は、血清中の抗体(IgGやIgM)を測定し、感染の有無や感染の状態を評価するのに使用されます


HSVに感染したかどうか、感染が初感染か再感染か、またウイルスのタイプ(HSV-1またはHSV-2)を特定するのに役立ちます。


6.PCR検査


HSVをPCR(核酸増幅検査)で調べる方法です。


7.単純ヘルペスウイルス抗原検査キット


イムノクロマト法を利用してHSVの抗原調べる検査キットで『デルマクイックHSV』です。


『デルマクイックHSV』は、HSV感染症患者の検体採取部位を問わない皮膚擦過物[皮疹(水疱・膿疱)の内容物又はびらん・潰瘍のぬぐい液]を検体とするHSV抗原の迅速検出キットを開発しましたです


HSVキット「デルマクイックHSV」は、皮疹(水疱・膿疱)の内容物又はびらん・潰瘍のぬぐい液を検体とし、1試薬1ステップの検体抽出操作で、HSV抗原を検出することができます。


検査時間は5~10分で終わります。


検査の感度(PCRと比較)


・陽性一致率 78.8%


・陰性一致率 99.2%


・全体一致率 88.4%


※PCR検査と比べて陽性一致率はやや低いですが遜色のない検査キットで、今後臨床現場でその威力を発揮するものと期待されています※


2023年10月29日日曜日

性行為感染症検査-1.腟トリコモナス核酸およびマイコプラズマ・ジェニタリウム核酸を同時に検出する「コバス TV/MG」-

腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis:TV)は、男性では尿道炎、女性では腟内のかゆみやただれを引き起こす原虫で、世界的に最も感染者数の多い性感染症の原因です。


症状が強いものから無症状まで多様な臨床像を呈し、無症状のパートナーからの性行為やオーラルセックスで感染によるものが少なくありません。


従来診断に用いられてきた培養法では、結果を得るまでに1週間以上を要することから、腟トリコモナスの感染に対する高感度かつ迅速な確定診断法の確立が強く望まれていました。


またマイコプラズマ・ジェニタリウム(Mycoplasma genitalium:MG)は、淋菌やクラミジアと並んで、女性では尿道炎、子宮頸管炎や骨盤内炎症性疾患を引き起こし、男性では主に尿道炎を引き起こす細菌で、マイコプラズマ・ジェニタリウムの検査については、これまで確立した診断法がなく、信頼性の高い体外診断用医薬品による診断方法の確立が求められていました。


この度TVおよびMG感染症の診断補助を目的として新規保険収載された同時核酸検出検査が承認されましたので紹介します。


【キット名】


コバス TV/MG(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)


【承認】


1922年6月


【測定方法】


リアルタイムPCR法


【使用機器】


全自動遺伝子検査装置 コバス 6800 システム および コバス 8800 システム


【検査の精度】


1.膣トリコモナス


・女性尿 感度 100% 特異度 96.9%


・女性膣擦過検体 感度 100% 特異度 97.5%


・男性尿 感度 100% 特異度 99.5%


2.マイコプラズマ・ジェニタリウム


・女性尿 感度 88.2% 特異度 98.7%


・女性膣擦過検体 感度 81.8% 特異度 99.7%


・男性尿 感度 89.3% 特異度 100%


マイコプラズマ・ジェニタリウムに関しては感度が低いように感じられますが、臨床検査剣士役として十分使用できるとの評価を受けています※

2023年10月22日日曜日

医学豆知識17.-インフルエンザと新型コロナウイルスとコロナウイルスの大流行に備えて下さい-

2023年インフルエンザの累積患者数(2023年10月上旬時点)は、49212人で定点あたり9.99となっています。


一方新型コロナウイルス感染症患者数は、25630人で定点あたり5.20となっていて流行は落ち着いているようです。


定点当たり報告数とは、感染症について、すべての定点医療機関からの報告数を定点数で割った値のことで、言いかえると1医療機関当たりの平均報告数のことです。


この定点あたりは、定点の指定医療機関が保健所に報告をした、1週間ごとのすべての全患者数から計算されます。


例えば、計算式でいうと「(1医療機関の報告患者数)÷(定点指定された医療機関数)=(定点当たり)」となります。定点あたりの数値が、


1以上だと「流行開始レベル」


10以上で「注意報レベル」


30以上で「警報レベル」となります。


定点あたり9.99とは、もはや注意報レベルとなります。


特に沖縄県は、30.85で警報レベルとなっています。


その他大分県18.00、愛媛県16.69,山口県19.22神奈川県18.84、東京都16.44.千葉県21.08など注意報レベルを超えています。


2023年は、昨年からの季節性インフルエンザの流行が収まらないうちに例年より早く季節性インフルエンザの流行が始まり、その上にシーズン本番の冬季に向け新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との同時流行を心配する声が高まっています。


インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの同時感染がは危惧されています。


冬は換気が難しく、狭い空間に人が集まりやすくなるという環境要因も加味されて新型コロナウイルスの流行が加速するおそれは十分あります。


これからのシーズンは特に感染に注意てする必要があります。


感染予防対策としては、インフルエンザも新型コロナウイルス感染症も同じことで、


1.室内の湿度管理と適度な換気を行ない、十分な睡眠と栄養を取る予防する。


2.外出後の手洗いやうがいを十分にする。


3.人が密集する場所ではマスクを正しくする。


4.インフルエンザワクチンを接種する。


※100パーセントの予防効果がある訳ではありませんが、予防効果があることと、感染しても症状が軽くてすむ※


インフルエンザに感染したと思われる症状が出たときには、24~48時間以内にインフルエンザ検査を受ける。


24時間以内に検査を受けると感染していてもニセの陰性反応が出ます。


インフルエンザの治療薬は発熱後48時間以内に内服することにより、より良い効果が得られます。

2023年10月15日日曜日

梅毒速報2.無症候性梅毒に注意!!-

日本国内の梅毒患者の現状(2023年9月下旬時点)


依然として梅毒が大流行しています。


2023年9月下旬までに届出のあった梅毒患者は、10957人となりましたが、これは届出のあった患者数だけですから実際はこれ以上の潜在患者がいると推測されています。


この増加傾向は大都市だけにとどまらず地方でも増加しています。


梅毒トレボネーマに感染して梅毒特有の症状が出れば感染に気づき受診して検査を受けますが、全く症状がない場合は感染に気づくことはありません。


無症候性梅毒は梅毒特有の症状がないことから、当人は感染に気づくことなく次々と第三者へ感染を広げていくことになります。


無症候性梅毒はどれくらい存在しているのか


無症候性梅毒は、梅毒検査を受けて初めて梅毒と判明しますから、梅毒検査を受けないとわかりません従ってはっきりした数は把握されていないのが現実です。


専門家の調査結果では、梅毒トレポネーマに感染して何の症状も出ない無症候性梅毒は20~30%前後存在するとの報告がなされています。


直近の無症候性梅毒患者の実態


2023年の患者163人について分析しました。


早期顕性Ⅰ期梅毒75(46.0%)


早期顕性Ⅱ期梅毒54人(33.1%)


無症候梅毒32人(19.6%)


晩期梅毒2人(1.2%)


2021年1年間の無症候梅毒患者は、1346人で21.8%でした。


いずれにしても梅毒トレポネーマに感染しても、梅毒特有の症状を呈さない無症候梅毒が20%以上も存在することは感染を一層広める原因となっています。


梅毒トレポネーマに感染するような行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受けることです。


※解析データのもとは国立感染症研究所の発表データを参照しています※

 

2023年10月8日日曜日

梅毒速報1.2023年9月24日時点での梅毒患者-

 2023年も梅毒は依然として大流行しています。

これに鑑み『梅毒速報』を今後掲載していきますので、よろしくお願いいたします。

第一回目として2023年9月24日時点での梅毒患者患者の現状についてお知らせいたします。

【2023年9月24日時点での梅毒患者】

累計で10957人となっています。

以前大流行が続き、このまま行けば2022年の患者数を上回ります。

【追跡可能な患者163人の梅毒の病期】

早期顕症I期75人

早期顕症II期54人

晩期顕症2人

無症候32人

梅毒トレポネーマに感染しても典型的な症状の出ない無症候梅毒が、32人/163人(19.6%)存在していることは、梅毒トレポネーマに感染したことに気づかずに次々と感染者を広げる大きな要因となっています。

【梅毒患者の多い都道府県10位】

1.東京都 2684人

2.大阪府 1489人

3.愛知県 628人

4.福岡県 652人

5.北海道 519人

6.神奈川県 496人

7.兵庫県 351人

8.千葉県 334人

9.埼玉県 332人

10.広島県 314人

いずれも大都市に多く見られますが、地方都市においても患者数は増加しています。

【まとめ】

梅毒トレポネーマに感染しても、典型的な症状を表さない無症候梅毒が多いことから、危険な行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受けてください。



2023年10月1日日曜日

医学豆知識-16.季節性インフルエンザにご注意-

 毎年12月前後に流行が始まりますが、2023年は8月中旬頃より流行が始まっています。


季節性インフルエンザの全国5000の定点医療機関の2023年9月末時点での低点数は、7.03となり流行しています。


※定点数 1 流行入り・10 注意報・30 警報※


これは2022年末からの流行が収まらずに2023年はすでに流行期に突入したことになります。


※特に九州を中心とした西日本に流行は顕著※


9月末時点で全国1500以上の学校がすでに休校・学年および学級閉鎖となっています。


毎年10月頃から行われる予防接種のワクチンも間に合わない事態となってきています。


※ワクチン接種をしてもすぐに感染予防抗体はできず、接種後2週間前後経過しないと効果が期待できないのです。


このままの状態が続くと2023年から2024年にかけて大流行することが懸念されています。


今後我々が取れるた対策としては、新型コロナ感染対策と同じことです。


1.予防ワクチン接種が開始されれば、可能な限り早く受ける。


2.マスク着用・手洗い・うがいを行う。


3.可能な限り人混みは避ける。


4.室内にいるときは十分な換気を行う

2023年9月24日日曜日

医学豆知識-15.咽頭淋菌検査にPCR検査は不向き-

咽頭淋菌検査に淋菌のPCR検査はニセの陽性反応を引き起こします!!


 淋菌に特徴的なDNAをコピーしたつもりでも、実は仲間の非病原性ナイセリア属のDNAだったということがよく起こります。


ナイセリア属は主に口や喉に寄生していることから、喉の淋菌検査の場合はPCR法を使うことができません。


喉ので淋菌をPCR法で調べると70%以上で、ニセの陽性反応(偽陽性反応)が出てしまいます。


このニセの陽性反応を引き起こすのは、無毒のナイセリア属だったことが判明し約2年前にPCR法の検査基準を見直さなければならなくなりました。


最近ではPCRの欠点をおぎなうように、ナイセリア属の偽陽性が出にくいSDA法が開発されましたので、咽頭の淋菌検査にはSDA法が使用されています。


SDA法は淋菌とクラミジアも同時に測定できるので便利ですが,男性では健康保険の適応が通っていませんし、咽頭の性感染症はまだ一般的に認識が広まっていませんから,健康保険で査定されてしまうことがありますので原則的に自費扱いになります。


SDA法は、淋菌とクラミジアを同時に測定できる検査方法ですが、女性には保険適応ですが、男性には保険が使えません※

淋菌を確実に見つけ出すには嫌気性培養法が昔から採用されていますが、この検査は検査物適切な処理をしないと淋菌が死んでしまうために、通常の医療機関では実施が難しい検査方法です。


淋菌を見つける最も手っ取り早い検査は、顕微鏡てぜ検査物を見ることにより淋菌は意外と簡単に見つけることができます。


患者の分泌物をスライドガラスに塗りつけて、メチレンブルーという染色液で染色をして顕微鏡で観察するのです。


咽頭淋病は、咽頭クラミジアと同じで症状があまりなく、のどの痛みや腫れといった風邪に似た症状が出ることもあります。 


潜伏期間は2~7日で、殆どの場合風邪や単なる咽頭炎と勘違いしてそのままにしてしまったり、風邪薬を飲んでいたりと咽頭淋菌感染に気づかず放置してしまうことになります。


気づかずに放置すると悪化し、淋菌性の咽頭炎・扁桃腺炎といった病気を引き起こします。


※最近では、TMA法によるPCR検査で検査を行うことによりニセの陽性反応は起きなくなってきています※



2023年9月17日日曜日

医学豆知識-14.眼梅毒にご注意-

2023年9月3日までの梅毒患者数が10113人となり、2022年同時期の8155人を上回りました。

10000人を超えたのは2022年より2ケ月速いペースとなっています。

このままのペースで増え続けると年間累計は1万6300件超となると危惧されています。

梅毒トレポネーマが性器に感染して症状を引き起こすことを多くの人数知っていてますが目に障害(梅毒性眼疾患)を引き起こすことを知っている人は少ないと思われます。

そこで今回は梅毒トレポネーマが引き起こす眼の症状について解説いたします。

梅毒トレポネーマが目に感染して引き起こされる梅毒性眼疾患は、梅毒患者の2.5~5%と報告されていますが、臨床症状が多彩で特徴的な所見に乏しいため、実際にはもっと多いと懸念されています。

巷で"眼梅毒"と言われるぶどう膜炎は、視神経炎、硝子体炎といった後眼部病変が目立つ症状で、両目に現れることが多く、充血、視力低下や視野欠損、かすみ目、飛蚊症、羞明が起きることが知られています。

成人では梅毒トレポネーマの感染から1カ月前後の早期梅毒第1期には眼瞼や結膜にも感染の仕方によっては潰瘍を生じる場合がありますが、梅毒による目の潰瘍は見逃されるケースも少なくないとされています。

梅毒トレポネーマの感染から1~3カ月ごろの早期梅毒第2期には梅毒性ぶどう膜炎が多くなります。

更に後部ぶどう膜炎では、眼底に出血を伴い、網膜血管炎を生じる場合もみられる視力を出すのに重要な視神経乳頭部に散在性の網脈絡膜炎を発症し、その後、網膜色素変性症様変化を生じることもあり硝子体混濁や強膜炎などもこの時期にみられる病態の一つでもあります。

第3期になると、眼瞼ゴム腫や二次性網膜色素変性症などがみられるが、治療は極めて困難となります。

梅毒トレポネーマの感染は眼科の診察だけではまず鑑別不可能です。

梅毒性眼疾患の重大性から、早期発見・早期治療は不可欠でが、その多様な病態を考えれば、眼科医の診察だけで梅毒性眼疾患のリスクを知ることは難しく、皮膚科などの協力も不可欠となります。

梅毒と診断された人が眼科を受診するの当然のことですが、梅毒の疑いがある人は眼科医にその可能性を告知することも"眼梅毒"を見逃さないためにも非常に大切です。

2023年9月10日日曜日

医学豆知識-13.新型コロナウイルス"エリス"-

XBB株についで非常に短いスパンで新しい変異株である「EG.5株」が台頭してきています。


EG.5は2023年8月8日時点では50カ国以上で確認されています。


EG.5株・EG.5.1株とはオミクロン株の派生株「XBB株」からさらに枝分かれした株の1つで、EG.5株は2023年2月17日に初めてインドネシアで報告され、2023年7月19日にVariant under monitoring (VUM)に指定され、2023年8月9日に瞬く間に注目すべき変異株(VOI)に指定されました。


BJ.1株とBM1.1.1株が組み合わさったのが「XBB株」。その後非常にバリエーションにとんださまざまな「XBB株」が生み出されます。その中の「XBB.1.9.1株」から派生した株が「EG.5株」「EG.5.1株」です。


この変異株は、ギリシア神話の不和と争いの女神にちなんで「エリス」と呼称されています。


EG.5株は他のウイルスに比べて後述するように、これまでのウイルス以上に成長優位性が高いのが特徴の1つ。8月7日時点で中国(30.7%)をはじめ、アメリカ、韓国、日本、カナダ、オーストラリアを中心に広がっており、WHOでも8月7日時点で「世界的に患者発生率が上昇し、優勢になる可能性がある」と発表しています。


EG.5株・EG.5.1株の症状としては、


・39℃以上の発熱と悪寒、倦怠感


・頭痛と関節痛


・喉の痛み


・咳、鼻詰まり、鼻水、呼吸困難


・下痢などの消化器症状


・味覚嗅覚の喪失


EG.5株・EG.5.1株は重症化しやすいのか?


少なくとも現時点では「重症化しやすい傾向はない」ように見えます。


世界保健機関の報告書でも、EG.5 は有病率の増加、成長優位性、免疫逃避性を示しているが、重症度の変化は報告されていないと報告されています。


【参考資料】

CDC「Monitoring Variant Proportions」)


2023年9月3日日曜日

医学豆知識-12.世界の新型コロナウイルス変異株BA.2.86株-

新型コロナウイルスの新しい変異株について、現時点(2023年8月29日)で判明していることを紹介します。


BA.2.86株は、オミクロン株の亜種のひとつで、2023年7月に初めて確認され現在、アメリカ、イギリス、南アフリカ、イスラエル、デンマークなど、世界各国で感染が確認されています。


BA.2.86株は、BA.2株からさらに進化した変異株で、以下の特徴があります。


スパイクタンパク質に30以上の変異があり、ワクチンや過去の感染による免疫を回避する可能性が高まっています。


更に感染力が高い可能性があります。


米国疾病対策センター(CDC)は、BA.2.86株について、以下の警戒点を発表しています。


2023年8月29日現在GISAIDには13株が登録されており検出地域は、アフリカ2株、デンマーク4株、イスラエル1株、英国1株、米国3株となっています。


※GISAID(Global Initiative on Sharing Avian Influenza Data)は、2008年に設立された世界的な科学イニシアチブで、インフルエンザウイルスおよび新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) パンデミックの原因となる新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)のゲノムデータへのオープンアクセスを提供している※


しかし、遠く離れた地域から短期間に検出されていることや変異部位の多さによる免疫回避能力の点において今後の動向に注意が必要です。


日本からの登録はありません。


検出株数が少ない事と、発見されてから間もない事から感染力の強さや重症度等については今後の報告が待たれるところです。


米国疾病対策センターの(CDC)は新型コロナウイルスの新たな変異株「BA.2.86」について免疫回避の確率が高い恐れがあると指摘しています。  


新たに発見された「BA.2.86」はアメリカ、イギリス、南アフリカ、イスラエル、デンマークの5か国で感染が確認されています。 


また、米国疾病対策センターはアメリカで新型コロナの入院者数が前の週から20%以上増えて12613人に達したと報告しました。


「BA.2.86」が発見される前から増加傾向にあるものの、注意深く監視するとして警戒を強めています。


2023年8月27日日曜日

医学豆知識-11.2023年8月時点での梅毒患者の現状-

2021年1年間の梅毒患者数 7873人。


2022年1年間の梅毒患者数 12966人で2021年の1.65倍。


2023年8月13日まで 9213人で2021年1年間の患者数を超え、このまま流行すが続くと2022年の患者数を遥かに超えてしまいます。


感染者の男女の比率は、およそ7対3、年代別では20~50代の男性、20代の女性の感染者数が多く、30代以降は男性が多いものの、10代20代では女性が上回っています。


このように女性の感染者が多いことから先天性梅毒が危惧されています。


【感染対策の重要性】


予防にはコンドームの使用をと呼びかけられていますが、梅毒トレポネーマはHIVのようにコンドームによる予防効果は高くないので過信は禁物です。


梅毒トレポネーマは、性交渉やオーラルセックスで簡単に感染します。


感染部位と粘膜や皮膚が直接接触することで感染しますから、いくらコンドームを正しく気使用しても、コンドームに覆われていない箇所に傷やタダレがあれば感染してしまいます。


予防のためにはコンドームの使用が進められますが、100%予防が出来ないことを念頭に置いておいて下さい。


梅毒は抗生物質で完治しますから、不安な行為をしてしまったときには適切な時期に梅毒検査を受けて早く治療することが大切です。


早期に発見し早期に治療を開始すればするほど早く完治します。



2023年8月20日日曜日

医学豆知識-10.世界の新型コロナウイルス変異株流行状況(2023年8月15日)-

 新たな変異株が報告されていますのでその概要を簡単に解説しとておきます。


その変異株とは「EG.5」です。


世界保健機関は、「EG.5」を「注目すべき変異株(VOI)」に指定し、各国にモニタリングを呼びかけています。


「EG.5」は「エリス」の通称で呼ばれています。


EG.5は、オミクロン株から派生した変異株のひとつで、世界保健機関によると2023年2月に発見され、徐々に増加しています。


エリスというあだ名はギリシャ神話の女神にちなんだもので、ソーシャルメディア上で名付けられたものです。


世界保健機関は、現在手に入れられる証拠からはエリスが他のVOIと比べて重症化するという示唆はなく、リスクも同程度だと正式に述べています。


世界保健機関によると、これまでに中国、アメリカ、韓国、日本、カナダ、オーストラリア、シンガポール、イギリス、フランス、ポルトガル、スペインなど51カ国でエリスの感染が報告されています。


専門家らは、今のところこの変異株で新しい症状が出たという証拠はないとしています。


※ギリシャ神話に登場するエリスとは、ギリシア神話の不和と争いの女神です※


現在新型コロナウイルの遺伝子情報は主にGISAID Initiativeに登録され、そのデータは迅速に公開され誰でも自由に利用することが可能となっています。

               ↓ 

           https://gisaid.org/


2023年8月13日日曜日

医学豆知識-9.全治と完治の違いとは-

全治・寛解・転移・再発など一般的に理解しにくい医学用語について解説させていただきます。 


【全治】


病気やけがが治療がもう必要がないまでに直ること。


【完治】


文字の通り、病気やケガが完全に治ること


【治癒】


治療によって「治癒した」というのは、治療がうまくいき、肉眼で確認できたり、組織の断面図などを確認した限り病気を治すことができた、うまく癌を取りきれたなどという時に「治癒」と言います。


【寛解】


症状の一時的な緩和、もしくは消えている状態のことを指します。


「病気の症状が一時的に軽くなったり,消えたりした状態です。このまま再発しないで,完全に治る可能性もあります。


寛解したあと、抑えられていた症状が悪化することを『再燃』といいます。


【臨床的寛解】


関節の痛みや腫れがなく、炎症がない状態。

※DAS28、SDAI、CDAIなどによる疾患活動性の評価を行って判断※


【構造的寛解】 

新たな骨破壊が見当たらず、関節破壊の進行が抑えられている状態。

※X線撮影などの画像診断て゛判断※


 【機能的寛解】

生活機能が改善している状態(衣服の着脱、食事、歩行、などの日常生活に不自由がない状態)。


【完全寛解】


治療の結果、がんによる症状や検査での異常が見られなくなり、正常な機能が回復した状態のこと。


【再発】


完治したあとに同じ病気に罹ってしまうことを『再発』といいます。


【増悪】


"ぞうお"とは読まずに"ぞうあく"と読みます。


病状がますます悪くなることです。


一時的に良くなった状態からまた悪くなることを『再発』『再燃』と言いますが,『増悪』はもともと悪かった状態がもっと悪くなることです」


【転移】


骨や肺など,はじめにがんができた乳房から離れた別の場所にがんが出てくることを「転移」あるいは「遠隔転移」といいます。




2023年8月6日日曜日

医学豆知識-8.無症候性梅毒に気をつけよう!!-

 依然として梅毒が大流行しています。


2021年1年間で届出のあった梅毒患者は、7978人(男5261人・女2717人)に上ります、これは届出のあった患者数だけですから実際はこれ以上の潜在患者がいると推測されています。


※2023年は7月下旬時点で既に8349人の患者が報告されています※


梅毒トレボネーマに感染して、症状が出れば以上に気づき受診して検査を受けますが、全く症状がない場合は感染に気づくことはありません。


梅毒トレポネーマに感染して、3週間以降に梅毒特有の症状を示す場合を顕症梅毒(第1期梅毒、第2期梅毒)と呼びます。


梅毒トレポネーマに感染して、梅毒特有の症状を示さないものを無症候性梅毒と呼びます。


要するに無症候性梅毒は、梅毒検査を受けて初めて梅毒と判明します。


梅毒トレポネーマに感染して何の症状も出ない無症候性梅毒は38%存在するとの報告がなされています。


無症候性梅毒は梅毒特有の症状がないことから、当人は感染に気づくことなく次々と第三者へ感染を広げていくことになります。


2021年の統計の無症候梅毒患者は、


無症候梅毒 2035人で、、その内訳は男1029人・女1006人となっています



この結果からして、無症候梅毒が2035人25.6%も存在しています。


以上のことからして梅毒トレポネーマに感染する可能性のある行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受けないと感染の判断はできないということになります。







2023年7月30日日曜日

医学豆知識-7.梅毒トレポネーマ感染を早く知ろう!!!-

2023年7月16日時点での梅毒患者数は、8040人となりました。


依然として大流行は収まっていません。


現在の大流行からしておよそ200~100人に1人が梅毒患者ということになります。


このように大流行していることから、不安な行為をしてしまったときには、必ず梅毒検査を受けてください。


梅毒トレポネーマは、性行為だけでなくオーラルセックスでも簡単にに感染しますし、コンドームでも完全には予防できません。


不安な行為をしてからSTS検査では4週以降、TP検査では6週以降に受けないと信頼できる結果が得られません。


その事から間待つのが大変という声を良く聞き、相談も受けます。


梅毒トレポネーマの感染を4週前に知る検査はあります。


梅毒トレポネーマ感染をいち早く知る検査法は、IgM-FTA-absです。


梅毒トレポネーマに感染した初期には、IgM抗体が先に出来て、その後IgG抗体が出来ます。


このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ 信頼出来る結果が得られます。


従って梅毒トレポネーマに感染後1ケ月を経過して、IgM-FTA-abs検査を受けると血液中のIgM抗体が減少していることから 偽陰性反応を起こすことがあります。


このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ 信頼出来る結果が得られます。


そのことからして、いち早く感染の診断を下したい時に利用される検査法です。


よくIgM-FTA-absを受けるところがわからない、医師に検査を受けたいと言って医師がIgM-FTA-absの事を知らない、 この医療機関では検査をしていないなどと言われて受けることが出来ないという相談を受けますが、IgM-FTA-absは全国どこでも検査は受けられます。


自施設で検査をしていなくても全国どこでも検査専門の会社に検査を依頼して受けることは出来ます。


梅毒は皮膚科が専門診療科となりますから、皮膚科を受診することです。


皮膚科専門医は、IgM-FTA-absのことを正しく理解していますから問題なく受けることが出来ます。

【ご注意】

普通のFTA-absは、IgG-FTA-absで、IgM-FTA-abs検査ではありませんので、早く感染を知りたいときには必ずIgM-FTA-abs検査を受けたいと医師にはっきりといって受けてください。


2023年7月23日日曜日

医学豆知識-6.サル痘と梅毒の皮膚症状の違い-

日本国内におけるサル痘患者数は、2022年7月25日に国内1例目の患者が報告されてから、増加傾向にあり2023年7月21日時点で193人となっています。


サル痘は海外では減少傾向にあるにも関わらず、日本では逆に増加傾向にあります。


今まで知られていた古典的なサル痘では、発熱、頭痛、リンパ節の腫れなど先行する症状が数日持続してから皮疹が出現するとされています。


皮疹は顔面から出現して、全身へと拡大し、全身の皮疹がある一時点においてすべて同一段階の状態で、赤い発疹から水ぶくれ、そしてかさぶたになっていくというのが一般的でしたが、現在流行しているサル痘では発熱、頭痛、リンパ節の腫れなど先行する症状がない症例も半数ほどあり、また皮疹の状態もそれぞれの部位で進み具合が異なる事例が報告されており、皮疹も特定の部位のみでみられることがあり、中でも肛門や生殖器の頻度が最も多く、体幹・四肢、顔、手のひら・足の裏などでもみられることがあります。


更に口の中や直腸にも病変が見られるようになってきています


サル痘の皮疹は水疱という水ぶくれが見られることが特徴です。


通常赤い発疹から水疱になり、さらに水疱から、中に膿がたまる膿疱になり、それが破れてかさぶたになります。


これまでは水ぶくれの時期、かさぶたになった時期など様々な時期の皮疹が混在するのが水痘の特徴であり、サル痘や天然痘では全身の皮疹が均一に進行していくのが特徴とされていましたが、今回の流行ではサル痘でも様々な時期の皮疹が混在することがあるようです。


ただし、皮疹の部位が生殖器に多い、というのは今回の流行におけるサル痘の大きな特徴でもあります。


梅毒の場合は梅毒トレポネーマの侵入した箇所に感染後訳1ケ月後に傷みのない硬い出来物(初期硬結)がやがて潰瘍となります。


最近ではオーラルセックスによる感染で、唇や喉の粘膜にも病変が多く見られるようになってきています。


感染後2~3ケ月を経過すると、痒みも痛みもないバラ色の湿疹(バラ疹)が全身に出てきます。


サル痘と梅毒の湿疹の根本的な違いは、


◎サル痘では生殖器に水ぶくれなどの皮疹が出やすいが、梅毒では痛みのない硬い出来物ができやがてこれが崩れて潰瘍になります。


◎サル痘の皮疹は「赤い発疹→水疱→膿疱→かさぶた」と変化していきますが、梅毒では赤い発疹のままのことが多い。


※世界保健機関は、2022年11月28日サル痘(monkey pox)について、新たな名称として「M痘(mpox)」を使うと発表しています※


当面の間は、世界的な流行の最中に名称を変更することで引き起こされる混乱を軽減するため、名称変更は段階的に行われるとし、今後1年間は、サル痘とM痘(mpox)の両方が使われます。


【参考資料】

【第17回 サル痘に関する関係省庁対策会議幹事会 2023年2月28日】



2023年7月16日日曜日

医学豆知識-5.検診と健診の違い-

同じ読み方の"けんしん"には、検診と健診がありますがどう違うのでしょうか


検診は、特定の病気にかかっているかどうかを調べるために診察・検査などを行うことで、早期に病気を発見し治療することを目的とした検査です。


代表的なものには、胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんの5大がんの早期発見を目的としたがん検診があります。


検診は特定の疾患をターゲットとして検査診断を行うことです。


特定の病気を早期に発見して早期に治療するための「二次予防」を目的としています。


一方健診は、健康診断のことで、特定の病気を検査するものではなく、健康状態を確認することを目的とした検査です。


健康診断あるいは健康診査を略して健診といいます。


健診には、職場の健診、学校健診、特定健康診査など、様々な種類があります。


職場の健診とは、企業に実施が義務付けられている健診で、業種にかかわらず実施義務のある「一般健康診断」と法律で有害と定められている業務に従事する労働者を対象として実施される「特殊健康診断」があります。


学校健診は、学校保健安全法に基づく健康診断です。


特定健康診査は、問診、身体測定、血圧測定、血液検査、尿検査などを行いメタボリックシンドロームや高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を早期発見し、早期対策に結びつけることが目的です。


健康かどうか?病気の危険因子があるか?などを確かめることが目的です。


健康かどうか調べ、病気の危険因子を早く見つけることができる「一次予防」を目的としています。

2023年7月9日日曜日

医学豆知識-4.感染と伝染の違いとは-

 感染とはウイルスや寄生虫、細菌などの病原体が体内に侵入することを言います。


そしてそれら病原体が引き金となり病気を発症してしまうことが、感染症の概念だといわれています。


伝染とは、感染症を発症した動物や人が、自身の体内に保有している病原体を第三者の生き物に移した後、病原体を移された第三者が発症することを言います。


感染と伝染は、英語圏では的確に区別されています。


感染はinfection(インフェクション)、伝染はtransmission(トランスミッション)と明確に区別されています。


日本の場合は、感染も伝染も同じ様に使用されています。


例えば『インフルエンザに感染した(感染)』、『〇〇さんからインフルエンザを感染させられた(伝染)』と感染も伝染も同じ使い方がされています。


これを正しく言うと『インフルエンザに感染した』はそのとおりですが、『〇〇さんからインフルエンザを感染させられた』は『〇〇さんからインフルエンザが伝染した』


要するに日本語では、自分が病原体に感染すると人に病原体を移す(感染)は同じ様に使われ間違いではありません。


しかし英語圏では、自分が感染することはinfection(インフェクション)、第三者に感染させることはtransmission(トランスミッション)と明確に区別されています。

2023年7月2日日曜日

医学豆知識-3.マスクの素材での肌荒れについて-

 新型コロナの流行に伴い連日マスクを長時間つけていることで「肌荒れ」する人が増加しています。


特にマスクの素材によっては、マスクが当たる顔の皮膚から肌荒れする・マスクの素材を変えたら肌荒れしなくなった・不織布のマスクを使用すると湿疹が出るなどなどマスクの素材によって肌への影響が変わることが多くの人が指摘しています。


【マスクの素材によって肌荒れは起こるのでしょうか?】


一般的に"不織布マスク"を使用している人ほど肌荒れを多く経験しているようです。


マスクを付けてマスクの当たる顔の部分が、きれいにマスクの形に一致して肌が赤くなる人が増加しています。


症状としては、頬のマスクがよく当たる部分が赤くなったり、カサカサして少し腫れたり、かゆみが出たりしている人が多いです。


唇がマスクと触れやすい人は、『マスクをしていなかったときは何ともなかったのに、唇が荒れやすくなった』とおっしゃいます。


摩擦による荒れ以外に、マスクの下に隠れた部分の皮膚にいる『常在菌』のバランスの崩れが原因となるケースもあります。


その結果、普段はさほど悪さをしない、カンジダやマラセチアなどの真菌が繁殖して常在菌を上回りその結果ブツブツとした発疹ができることがあります。


マスクの着用によって肌が荒れやすい人の特徴としては、乾燥肌の人・反対に脂性肌の人が荒れやす傾向があります。


年齢や性別に特段差は見られないようですが、マスクをつける時間が長い人・汗をかきやすい人・マスクをつけたまま話をする機会が特に多い人などは注意が必要となります。


【マスクの素材による、肌への負担や影響の違いについて】


マスクの素材は、マスク内の『蒸れ』に関わることから蒸れることによって角質がふやけてふくらみ、肌のバリアー機能が弱まってしまうと、肌の内側からの水分蒸発が多くなり、乾燥しやすくなり、そこへ摩擦が加わると、蒸れによって弱った皮膚のバリアーが壊れていき、角質の層が薄くなるという悪循環に陥り皮膚が荒れるのです。


要するにマスクをすることによって皮膚が蒸れることで、肌がどんどん摩擦に弱くなり、ふやけ摩擦で皮膚が荒れてきます。


不織布のマスクを使用している人に肌荒れが多く見られています。


不織布マスクは、息苦しさ・蒸れを起こしやすいので肌荒れしやすいのです。


ウイルス防御効果が高いマスクほど通気性が悪く蒸れやすく、その結果肌荒れしやすくなります。


不織布マスクにも、通気性のいいものもあれば、悪いものもありますので、肌荒れを防ぐ対策として通気性の良い不織布マスクを使用するのも一つの選択肢となります


どうしても不快なほどの蒸れを感じる場合は、マスクの素材や形状を替えることも必要となります。


どうしても肌荒れしやすい人の場合、不織布マスクと顔の間に、綿や絹といった布製のマスクを挟むことで改善する場合もあります。


【マスクを使っていて肌に違和感が出た場合の対策】


1.マスクを使わない時間をできるだけ長くする。


2.違う素材のものに替える。


3.肌に違和感があるときは、特に必要がなければなるべく肌を触らないようにして、洗顔の時間なども短く軽く済ませる。


4.何をしても肌荒れが改善されないときは皮膚科を受診する。


【マスクの着用で肌トラブルが起こりにくいようにするために、日頃からできることは】


ぬれた状態で擦れることは肌にとって最もよくないので避けるべきです。


従って洗顔の時間は短く、軽く済ませ、保湿をする際も短時間で、手のひらで優しく押さえるだけにしましょう。


気をつけなければいけないのは脂性肌の人には、油分の強い保湿剤は控えて、セラミドなど、肌バリアーを修復する成分の入った保湿剤を選ぶことが良いとされています。

2023年6月25日日曜日

医学豆知識-2.家庭内でペットを飼育することにより子どもの食物アレルギーのリスクを低下させる?

 いくつかの研究によると、家庭内でペットを飼育することが子供の食物アレルギーのリスクを低下させる可能性があるとされています。


一部の研究では、犬や猫を飼育している家庭の子供たちは、アレルギーの発症リスクが低いことが示されています。


これは、動物と接することで免疫系が刺激され、アレルギー反応を引き起こすための抵抗力が高まる可能性があるためです。


ただし、すべての子供にとってペットを飼うことがアレルギーを予防する保証はありません。


また、すでにアレルギーを持っている子供にとっては、ペットを飼うことがアレルギーの症状を悪化させる可能性があるため、注意が必要です。


総じて言えることは、ペットを飼うことが子供の健康に良い影響を与える可能性があるが、必ずしもアレルギーを予防するという証拠は十分ではないということです。


日本での研究では、犬を飼っている家の子どもでは、卵・牛乳・ナッツ類に対して、猫を飼っている家の子どもでは、卵・小麦・大豆に対してアレルギーを発症しにくいことが明らかにされています。


この研究結果の解析の結果、胎児期または幼児期初期に室内飼いの犬または猫に曝露することで3歳までに食物アレルギーを発症するリスクが低下することが明らかにされています。


この研究では、なぜペットを飼っている子どもで食物アレルギーの発症リスクが低下するのかは明らかにされていません。


この研究から分かることは、ペットを飼うことで食物アレルギーを防げるわけではなく、ペットを飼うことが食物アレルギーの発症リスク低下につながる可能性を示唆したに過ぎません。


この研究結果から家庭内でペットを買うことによりこのペットが原因で子どものアレルギーリスクが高まるのではないかと心配する親たちに、食物アレルギーの発症抑制という点では、胎児期と幼児期のペットへの曝露が有効に働くケースがあるかもしれないというメッセージと、ペットを飼うことから生じる弊害の懸念を軽減するのに役立つこと思われます。


【参考文献】


【ペットは子供の食物アレルギーの予防に役立つ】


【胎児期または乳児期のペット曝露と食物アレルギーとの関連性:日本環境と子どもの研究】



2023年6月18日日曜日

医学豆知識-1.おねしょと夜尿症の違いとは-

 今回は少し話の観点を変えて子供さんのおねしょと夜尿症について解説してみます。


子供さんのおねしょと夜尿症に悩まれているご両親のお役に立てれば幸いです。


おねしょとは、5歳未満で夜寝ているあいだに尿漏れを起こすことを言い通常病気とはみなしません。


ヒトは排尿習慣が身につくようになる2~3歳ごろまでは、睡眠中でも無意識のうちに排尿しますが、これは排尿習慣が未熟なために生じるおねしょを夜尿症とは呼びません。


夜尿症とは5歳以上で、月1回以上夜寝ているあいだに尿漏れがありかつそれが3ケ月以上続くことを言います。


要するに「おねしょ」と「夜尿症」は、夜寝ている間に無意識に排尿してしまうということでは同じですが、その違いのポイントは年齢なのです。


0~2歳では反射的に排尿してしまうが、2~4歳では徐々に抑制できるようになり、親がうまく導けば昼間のお漏らしはなくなる。4歳を過ぎると、夜間におねしょをしないようになります。


「5歳以降で月1回以上のおねしょが3ケ月以上続く場合は夜尿症と診断され、治療が必要な場合がある」とされています。


5歳で15%、7歳では10%、15歳以上でも1~2%が夜尿症だとされる調査結果があります。


小学校1年生のクラスだと、1クラスに約3.5人の夜尿症の子どもがいる計算になります。


【参考資料】

日本夜尿症学会の診療ガイドライン


夜間の尿漏れは男児に多く、親のどちらかが夜尿症だと、発症率は6倍ほど高くなり、両親とも夜尿症だった場合は、11倍ほどの頻度となります。


遺伝についても指摘があり、両親に夜尿症の既往がある場合には、約75%の確率で、子どもも夜尿症になると言われています。


夜尿症は治療ができますので、悩まず相談してください。

2023年6月11日日曜日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)定点数について

 新型コロナウイルス感染症は、これまで、「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる

2類相当)」に分類されていましたが、2023年5月8日から「5類感染症」になりまし

た。


それに伴い医療機関と自治体がすべての患者数を毎日公表していたのを全国5000の医療

機関が患者数を報告する定点把握に変更されました。


ではその定点数はどの様になっているのかを解説させていただきます。


【新型コロナウイルス感染症(COVID-19)定点当たり報告数推移(2023年)】


4/17~4/23 1.70


4/24~4/30 1.78


5/1~5/7 1.80


5/8~5/14 2.63


5/15~5/21 3.55


5/22~5/28 3.63


5/29~6/4 4.55


【定点当たり報告数とは】


このうち1つの医療機関が1週間で何名の人が新型コロナウイルス感染症患者を診療したかを表す数字で、この数字が1以上ならその地域は流行域に入ったことになり、10以上なら注意報、30以上なら警報となります。


5類に分類されている季節性インフルエンザでは、流行入りの目安として1医療機関あたり「1.0人」との基準が定められていますが、新型コロナ感染症ではまだ目安となる基準は設けられていません。


※季節性インフルの基準は、長年の流行状況の分析に基づき、経験則的に設定されて

経緯がありますが、コロナは夏も含め季節を問わず流行を繰り返している上、データの

蓄積が乏しいことから、現状では導入できないわけです※


【定点当たり報告数から何が分かるのか】


日本国内や訪米では流行が収まりつつありますが、本当にこれで収まるのかは誰もわからない状況と言えます。


多くの専門家は第9波の流行が起こることを危惧しています。


ここはやはり3密を避ける・マスクの適切な使用・手洗い・効果的な換気などに十分注意して感染対策を怠らない様にすべきと思います。




2023年6月4日日曜日

梅毒アラカルト-3.梅毒患者の増加収まらず-

 2023年5月21日までの患者数は、5453人となり昨年の同期の3630人を軽く上回りました。


流行は依然として収まってていません。


当然のことながら患者は都市部で目立ち、東京が最多の1388人、大阪750人、北海道310人と続き、愛知305人、福岡265人、神奈川252人と報告されていますが、地方でも患者数は確実に増加しています。


それでは梅毒トレポネーマの感染を防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?


1.性行為の際には必ずコンドームを最初から使用する。


最初から使用せずに射精直前に使用しても感染予防効果はありません。


コンドームで保護できない箇所に傷やただれがあれば、感染予防効果はありません。


※コンドームは完全には梅毒トレポネーマの感染を防止できませんが、感染のリスクを低くしますので、使用は必要です※


2.キスやオーラルセックスでも感染することに注意。


口の中に感染がある人とのキスやオーラルセックスでも簡単に感染します。


※性行為をしなければ梅毒トレポネーマに感染しないというのは大きな間違いです※


3.複数のヒトとの性的接触は感染リスクを高くします。


4.不安な行為をしてしまったときには、必ず梅毒検査を受ける。


受診先


梅毒の専門領域は皮膚科ですので、皮膚科専門医を受診ることをおすすめします。


男女ともに性病科・泌尿器科でも受診可能で、女性は産婦人科でも受診可能です。


口腔内や咽頭感染を疑われる場合は、耳鼻咽喉科となりますが、対応していない耳鼻咽喉科が多いので、事前に問い合わせることをおすすめします。


2023年5月28日日曜日

梅毒アラカルト-2.梅毒トレポネーマはコンドームで予防できるのか??-

 2023年5月14日までの患者数は、5164人に上る。昨年の同期の3630人を軽く上回りました。


未だ大流行は収まる気配はありません。


感染対策を怠らず感染にはくれぐれも気をつけてください。


【梅毒トレポネーマはコンドームで本当に感染予防できるのか?】


厚生労働省はリーフレットなどで「コンドームの適切な使用によりリスクを減らすことができる」と啓発を進めていますが、これに専門の医師から疑問の声が寄せられています。


特に女性感染者の増加が顕著だったため、厚労省は「女子の梅毒増加中!」とアピールしたリーフレットを作成し、そこで「コンドームの適切な使用によりリスク を減らすことができます」と強調していますが、梅毒トレポネーマはコンドームでは完全に予防できません!!


【何故梅毒トレポネーマはコンドームで完全に予防できないのか?】


ペニスに梅毒トレポネーマが感染してそこに病変があれば確かに感染予防可能ですが、 コンドームで覆われない箇所に病変があればコンドームは感染予防には何の役にも立ちません。


確かに性器クラミジア感染症・淋菌感染症・HIV/AIDSは、適切な使用で病原体と侵入経路の間に確実にコンドームが防御壁となるため感染リスクは極めて低くなります。


しかしながら梅毒・性器ヘルペス・ヒトパピローマウイルス感染症は、病原体が潜む箇所がコンドームを装着できるところにあるとは限りませんし、 これらの感染症はコンドームを装着しないところに病変ができることも多いことからコンドームが感染防御に役立つ確立は低くなります。


※※梅毒トレポネーマはコンドームで完全に感染予防はできないことをよく認識しておく必要があります※※


※※しかしコンドームが感染予防に全く役に立たないわけではなく、ある程度感染リスクを低くすることは間違いありませんので、使用しないより使用するほうが良いということになります※※


※※最も大切なことはコンドームの使用によって梅毒トレポネーマの感染予防が100%出来ると勘違いしないことです※※


梅毒トレポネーマはオーラルセックスでも簡単に感染することをお忘れなく!!!


※※特に梅毒トレポネーマはオーラルセックスでもいとも簡単に感染してしまいます※※


※※よく性行為をしなければ梅毒トレポネーマに感染しないと勘違いされている人を見かけますが、これは大きな間違いです※※


※※キスやオーラルセックスで、喉・唇・性器・肛門に感染した事例は多く報告されています※※


2023年5月21日日曜日

梅毒アラカルト-1.梅毒の由来-

 現在世界的に梅毒が流行していて、特に我が国においてはここ数年来大流行していて、未だに収まる気配はありません。


そこで今回から数回に分けて梅毒について、分かりやすく尚且つ興味ある話をさせていただきますのでお付き合い下さい。


梅毒はクリストファー・コロンブス(1451~1506)が新大陸から持ち帰ったとされています。


京都の医師武田秀慶(?~1528)が1512年(永正9年)に著した『月海雑録』に外国から来た皮膚病という意味で「唐瘡(とうそう)」と書かれたのが最初とされています。


海外から新しく伝来したため、「瘡(かさ)」「楊梅瘡(ようばいそう)」、「黴瘡(ばいそう)」「ひえ」、「しつ」などと


結城秀康(1574~1607)・黒田官兵衛(1546~1604)・加藤清正(1562~1611)・間宮林蔵(1775~1844)なども梅毒とされています。


特に結城秀康は、梅毒で鼻がそげ、木製の鼻をつけていたそうです。


江戸時代の名医杉田玄白(1733~1817)も、1000人の患者を診るとその7~8割が梅毒患者と記しています。


昔の梅毒は鼻部の軟骨炎のために鞍鼻(あんび)や鼻の欠損になることがあり、夜鷹などには「鼻欠け」が多かったので、「鷹の名にお花お千代はきついこと」などと川柳に詠われています


“お花お千代”は“お鼻落ちよ”にかかっている。


江戸時代の梅毒の治療薬としては、山帰来(サンキライ)[別名:土茯苓(ドブクリョウ)]が広く用いられていましたが当然のことながら効き目はありませんでした。


江戸時代の医書に『梅毒の重症患者は山に捨てられる風習があったが、土茯苓を服用すると治癒し、山から帰って来たので"山帰来"とも名付ける』と記載されています。


当時山帰来は日本には自生しておらず、中国や朝鮮から輸入していました。


山帰来は貴重なものでしたから、山帰来に似たケナシサルトリイバラと呼ばれるユリ科の植物を代用していました。







2023年5月14日日曜日

サル痘についての再認識-6.サル痘の現状と今後-

 2023年5月11日世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、「サル痘(エムポックス)」について、感染者の減少が続いているとして、2022年に宣言した「緊急事態」の終了を発表しました。


テドロス事務局長は記者会見で"エムポックスは引き続き公衆衛生上の大きな課題で、忍耐強い対策が必要だ」"と述べ、警戒を怠らないよう訴えています。


アフリカの一部地域で発生していたサル痘は、2022年5月ごろから欧米などに感染が拡大し、日本では2022年7月に感染者が初確認されています。


世界保健機関によると、2022年8月には1週間当たりの世界の新規感染者が7500人を超えましたが、ここ数カ月は100人前後で推移しています。


日本においても世界保健機関の「緊急事態」の終了を受けて2023年5月12日外務省は、全世界を対象に出していた渡航や滞在に十分な注意を促す「感染症危険情報」(レベル1)を同日付で全て解除すると発表しました。


※レベル1の危険度は、4段階のうち最も低いレベル※


世界的にみると感染者数は減っていますが、日本では2023年に入ってから患者の報告が増えています。


2023年5月2日時点で129人の感染が確認されています。


国立感染症研究所は、これまで報告された感染者のうち、100人は発症前21日間に性的接触があったことが確認されていることから「国内でも男性同士の性的接触による感染伝播が起こっている可能性が示唆される」としています。


日本ではことし2023年以降に感染者が増え3月にピークを迎えた後、少し感染者は減り、いまは横ばいの状況が続いています。


海外と比べてなぜ、遅れて感染が広がったのかは明確になっていませんが、人と人との接触が何らかの理由で増えたのではないかと推察されますので、日本では今後も感染者が増えていく可能性もあり、海外の専門家やメディアなども日本の感染状況を注視しています。


各人がサル痘に対する正しい知識を持ち、正しく感染予防を行う必要が当分はあるようです。

2023年5月7日日曜日

サル痘についての再認識-5.サル痘の感染予防対策-

サル痘とは、病原菌である痘瘡ウイルスによって引き起こされる感染症です。


ここでは、サル痘の感染対策について詳しく解説します。


1. ワクチン接種


サル痘の感染を防ぐためには、ワクチン接種が最も効果的な対策です。


現在、サル痘のワクチンは、病原体を弱体化させたものや蛋白質の一部を人工的に合成したものが用いられています。


ワクチン接種は、感染予防だけでなく、発病した場合の症状緩和にも効果があります。


サル痘のワクチン接種には、一般的に2回の接種が必要で、初回接種後、通常は2週間から4週間程度の期間をおいて、2回目の接種が行われます。


初回接種で免疫が十分に発現していないため、2回目の接種によって免疫力を高めることが目的となりますが、接種間隔はワクチンの種類や対象となる人の免疫状態によって異なる場合がありますので、医師の指示に従うことが重要です。


また、サル痘ワクチンは、一般的には感染予防だけでなく、発病した場合の症状緩和にも効果がありますが、接種後に即座に効果が現れるわけではありません。


当然のことですがワクチン接種後、免疫力が高まるまでには時間がかかります。


一般的には、2回目の接種後1週間から2週間程度を経過すると、免疫力が十分に高まり、感染に対する防御力が向上するとされています。


なお、サル痘ワクチンの接種については、各国の保健衛生局や医療機関の指示に従うことが重要です。


2022年8月2日の薬事承認内容の改定にて、天然痘の予防に加えて、サル痘の予防に使用することなどが承認されました。


【参考資料】


乾燥細胞培養痘そうワクチンの効能追加承認について


2. 衛生管理


感染症の予防には、衛生管理が欠かせません。


特に、サル痘は接触感染が主な感染経路となるため、手洗いやアルコール消毒などの適切な衛生管理が必要です。


また、感染が疑われる場合は、早めに医療機関を受診し、感染源を特定して適切な治療を行うことが大切です。


3. 感染源の管理


サル痘の感染源となる動物(主にサル)との接触を避けることも、感染対策の一つです。


特に、野生動物との接触は感染症リスクが高いため、野生動物に近づかないことが必要です。


また、動物園や展示施設などでの動物との接触も、感染症リスクを考慮して行われることが多くあります。


4. 感染者の隔離


感染者の隔離も、感染対策の一つで、感染者がいる場合は、その人を隔離して感染が広がらないようにすることが必要です。


更に感染者と接触した人には、適切な検査や処置を行うことが必要です。


以上のように、サル痘の感染対策には、ワクチン接種や衛生管理、感染源の管理、感染者の隔離などが必要です。感染リスクが高い場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。


2023年4月30日日曜日

サル痘についての再認識-4.流行国と非流行国でのサル痘患者の実態-

 従来から流行している地域と今回新たに流行が始まった非流行国でのサル痘患者の症状と感染経路は異なっています。


1.非流行国のサル痘患者は、発熱や悪寒の前駆症状がなく突然皮疹が現れ、皮疹が現れたあとから発熱・悪寒・リンパ腺の腫れなどが現れる場合と、皮疹が1~数カ所に出るのみで他の症状が現れない患者も存在します。


2.流行地でのサル痘の皮疹は、顔め手のひら・足の裏が好発部位ですが、非流行地の患者では性器・肛門周囲に皮疹が現れ、顔や手足にはあまり現れません。

更に流行地でのサル痘は、直腸炎を伴う直腸痛を訴える患者が多くいます。


3.この様に昔からアフリカで流行していたサル痘と症状が異なるのは、患者の多くがゲイや両性愛者で男性と性交交渉のある男性であり、感染経路がアフリカでの感染経路と異なる事によることによると考えられています。


4.また、非流行国の初期症状によっては梅毒やその他の性感染症と誤診される可能性が高いことも指摘されています。


上記のごとく従来のサル痘と新たに流行が始まったサル痘とは異なった所見が見られます。

2023年4月23日日曜日

サル痘についての再認識-3.サル痘は性感染症に分類されるのか-

 世界16カ国528例の報告では、症例のうち98%が男性とセックスをする男性(MSM)であり、年齢の中央値は38歳でした。


この528例のうち95%が性交渉に関連した接触による感染が原因と考えられており、これらの感染者は性交渉のパートナーが多いという特徴があります。


サル痘は性感染症には分類されていませんが、米国で報告された症例のほとんどに、何らかの性行為がかかわっていたとされています。


WHOは男性同士の性的接触による感染が拡大していることを受け、パートナーの数を減らして新しいパートナーとの性的関係を再考するよう呼びかけています。


WHOの報告によると、感染者のほぼ全員が男性で、かつ男性同士の性的接触が原因となっていたとされています。


しかしながら女性の患者も報告されています。


WHOによると、現在報告されている患者の大部分は男性ですが、小児や女性の感染も報告されています。


報道を見ると確かにMSMの人が多いようですが、それは発見当初のエイズがそうであったように、たまたま目立っているだけで、男女間のセックスでも感染すると考えるべきでしょう。


【参考資料】

『16カ国におけるヒトのサル痘ウイルス感染 — 2022年4月~6月』

2023年4月16日日曜日

サル痘についての再認識-2.サル痘ウイルスの種類-

サル痘ウイルスは、ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属のウイルスで、遺伝子的に異なる2種類が存在していてましたが最近では更にもう1種類存在していることが判明し3種類に分類することが提唱されています。


【1.コンゴ盆地型】


ザイールで流行しているもので、致死率は最大で15%前後です。


クレードⅠ(clade Ⅰ)と分類されています。


【2.西アフリカ型】


小児・妊婦・免疫不全者が感染すると重症化するリスクはありますが、感染者の殆どが軽症で回復して致死率は1%以下です。


クレードⅡa(clade Ⅱa)と分類されています。


【3.西アフリカ型と遺伝子的に少し異なるウイルス】


2017年からナイジェリアで流行していて致死率は、0~3.3%です。


クレードⅡb(clade Ⅱb)と分類されています。


※現在非流行国でヒトからヒトへの感染によって流行しているサル痘は、ナイジェリアで流行しているclade Ⅱbのサル痘ウイルスで、比較的軽症例が多いですが免疫不全者は重症化します※


※サル痘ウイルスは、アフリカのげっ歯類が宿主と考えられね人獣共通感染症であることからして、多くの動物に顕性感染することから根絶は困難と考えられています※


【げっ歯類とは】


物をかじるのに適した歯と顎を持ち、上顎・下顎の両方に伸び続ける2つの門歯と、犬歯を持たないことを特徴とする哺乳類で、ネズミ・ハムスター・ヤマアラシ・シマリス・モルモットなどですが、ウサギはげっ歯類ではありません※


2023年4月9日日曜日

サル痘についての再認識-1.日本国内でのサル痘増加!!-

サル痘についての正しい知識を得ていただくために再度サル痘について解説させていただきますのでお付き合いください。


2023年に入ってサル痘(エムポックス)の日本国内の感染者が急増し、2022年夏以降の累計で100人に迫っています。


サル痘は2022年、欧米を中心に拡大し世界保健機関によると、2023年4月4日までに86000人以上が感染、112人が死亡しています。


2022年夏のピーク時には1週間当たり7000人超の感染が確認されていましたが、最近では100人前後で推移しています。


現在報告されている患者の大部分は男性ですが、小児や女性の感染も報告されています。


日本国内では2022年7月25日に初めて感染者を確認ご、昨年は計8人でしたが、2023年1月以降、海外渡航歴がない人の感染が増加し、4月4日時点で昨年からの累計は95人と増加しています。


感染経路は、飛沫感染と接触感染です。


サル痘患者の発疹や水疱、かさぶたに触れる、それらの病変部と接触した物や衣類、寝具に触れる、感染者の唾液や体液に触れる等の行為で感染する可能性があります。 


サル痘の潜伏期間は6~13日(最大5~21日)とされており、潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などの症状が0~5日続き、発熱1~3日後に発疹が出現、発症から2~4週間で治癒するとされています。


発熱、発疹等、体調に異常がある場合には身近な医療機関に相談するとともに、手指消毒等の基本的な感染対策を行ってください。

2023年4月2日日曜日

2022年1年間のHIV感染者といきなりエイズの現状

 全国の保健所や医療機関などでHIVへの感染が確認された人は速報値で870人でした。


前の年より187人、率にして18%減少していて、過去20年で最も少なくなりました。


この減少は本当に減少しているのか、それとも新型コロナウイルス流行に伴う検査を受ける人の減少による減少なのかは分かっていません。


現在梅毒の大流行が続いていることからしても、HIV感染者数は本当に減少しているとは言い切れません。


また、2022年1年間に"いきなりエイズ"の数がおよそ30%も存在していました。


このことはHIVに感染するような危険な行為をして、検査を受けずに放置して体調が悪くなった時までHIV検査を受けない人が多いということになります。


当然のことながらHIV感染が判明したときにはすでにエイズを発症してしまっていたということになります。


HIVに感染するような行為をしてしまったときには、必ず適切な時期に検査を受けて"いきなりエイズ"だけは防ぐことです。


早期に発見して早期に治療することによりエイズの発症は抑えることが可能となっています。


一度エイズを発症してしまうと治療の効果が悪くなってしまいます。


2023年3月26日日曜日

現在の梅毒流行の現状-17.梅毒の治療の際に起きる発熱について-

 梅毒の治療に抗生物質を投与されると、1~4時間以内に発熱、筋肉痛、悪寒、頭痛といった症状が出るケースがあります。


そしてこの症状は、24時間前後で収まります。


これをヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応(Jarisch-Herxheimer reaction:JHR)と言います。


ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応とは、梅毒トレポネーマに対する免疫反応によるものと考えられていて、 発熱は24時間以内に解熱しますが、アセトアミノフェンなどの解熱剤が使用される場合もあります。


この反応は抗生物質の投与から24時間以内に、10%~35%の人で発熱・頭痛・悪寒・全身の倦怠感・皮疹が生じることがありますが、自然に改善していきます。 


これが起きる原因は抗生物質を投与することで、抗生物質によって梅毒トレポネーマが大量に破壊されたときに生じる物質が原因と言われています。


この反応を知っておかないと治療を受ける上でかなり不安になるので、よく理解しておく必要があります


ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応は、持続性ペニシリン注射剤に依ってだけ起こるのではなく、その他のペニシリン系抗菌剤でもおこります。


ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応は、起きてもすぐに収まりますし、これが起きたから梅毒が悪化するわけでもありませんので心配はありません。

2023年3月19日日曜日

現在の梅毒流行の現状-16.梅毒トレポネーマ感染予防はどうすればよいのか-

 2023年3月19日時点でも梅毒の流行は収まることはなく、患者数は全国的に増加しています。


今回は梅毒トレポネーマの感染防止について解説させていただきますので、再度確認されて感染予防に努めてください。


梅毒は梅毒トレポネーマによって引き起こされる性感染症の1つで、感染者との性的接触によって感染します。


梅毒は放置すると、神経系や心臓に深刻な障害を引き起こす可能性があるため、予防は非常に重要です。


そして感染するような行為をしてしまったときには、必ず適切な時期に梅毒検査を受けて早期に治療することが必要です。


梅毒は抗生物質の投与で完治します。


以下は、梅毒感染を予防するためのいくつかの方法です。


1.セックスの安全を確保する


梅毒は、感染者との性的接触によって感染しますから、感染者がいる場合、セックスの際にはコンドームを使用することが重要です。


しかしコンドームでは完全に感染予防ができないということもお忘れなく。


2.定期的な検査を受ける


性的活動をする人は、梅毒の検査を受けることが推奨されます。


検査は、感染がなくても定期的に受けることが望ましいです。


感染が疑われる場合は、早期に治療を受けることが重要です。


3.感染が疑われる場合は早期に治療を受ける


梅毒は、早期に発見して治療を受けることで完治しますので、感染が疑われる場合は、速やかに皮膚科を受診してください。


4.他の性感染症の予防も重要


梅毒と同様に、他の性感染症も性行為によって感染しますので予防のためには、セックスの際には常にコンドームを使用することが重要です。


以上のような方法で、梅毒感染を予防することができますし、仮に感染していたとしても早期に発見され早期に治療することによって早期に完治します。


性的な健康を維持するためにも、定期的な検査と感染予防の意識を持つことが大切です。

2023年3月12日日曜日

現在の梅毒流行の現状-15.2023年2月下旬の梅毒患者の現状-

 2023年2月26日時点での梅毒患者数は、1937人と依然として高水準となっています。


直近の梅毒患者173人の病期を分析しますと、下記の通りです。


1.早期顕症Ⅰ期梅毒  75人


2.早期顕症Ⅱ期梅毒  54人


3.晩期顕症梅毒  3人


4.無症候梅毒  40人


5.先天性梅毒  1人


以上の病期を分析してみますと、


※1.梅毒トレポネーマに感染しても症状のない無症候梅毒が40人23%(40/173)も存在していることです。


このことは取りも直さず梅毒トレポネーマに感染しているにも関わらずそのことを知らずに放置している人が多いことを著しています。


従いまして、梅毒トレポネーマに感染するような行為をしてしまった場合は必ず適切な時期に梅毒検査を受けることです。


※2.先天性梅毒が1人存在していますが、これは梅毒が家庭内に深く浸透して、妊婦検診で梅毒検査を受けていないことが推測されます。


※3.梅毒トレポネーマに感染後3週間程度で症状の現れる早期顕症Ⅰ期梅毒患者は75人43.4%(75/173)と患者全体の半数以下しかないことは、早期に症状の出ない患者が多いことを物語っています。


※4.梅毒トレポネーマに感染後6~8週間程度で症状の現れる早期顕症Ⅱ期梅毒患者は54人31.2%(54/173)と患者全体の30%前後しかないことは、やはり早期に症状の出ない患者が多いことを物語っています。


3と4からも梅毒トレポネーマに感染しても明らかな症状の出ないことが多いので、梅毒トレポネーマに感染するような行為をしてしまった場合は必ず適切な時期に梅毒検査を受ける必要が有ることを証明しています。

2023年3月5日日曜日

現在の梅毒流行の現状-14.2023年2月中旬の梅毒患者の現状-

 国立感染症研究所は、2023年2月28日の感染症発生動向調査週報2023年第7週(2月13日~2月19日)で2023年の新規梅毒患者は、1687人と発表しています。


この患者数は、2022年年同期の累計報告件数1182件を40%以上も上回る数となっています。


このままの状態で患者数が増加すれば、2023年1年間の新規感染者報告件数は18000人を超える可能性となってきています。


要するに日本全国で梅毒流行が依然として続いていることになります。


この流行に危惧して多くの保健所では無料の検査を拡充しています。


梅毒トレポネーマに感染するような行為をしてしまったときには、必ず適切な時期に梅毒検査を受けてください。


受けるときの注意としては、保健所で実施している検査法をよく調べてどの様な検査を実施ているかを確かめて、適切な時期に検査を受けるようにしてください。


参考資料として以下に【東京都性感染症ナビ】を紹介しておきますので参考にしてください。


【東京都性感染症ナビ】

2023年2月26日日曜日

現在の梅毒流行の現状-13.TP法による梅毒即日検査を受ける際の注意点-

 イムノクロマト法によるTP梅毒即日検査は、梅毒トレポネーマに対する抗体(TP抗体)を検出する簡易検査法です。


血液で検査をして、およそ15分程度で結果が分かる簡易検査のため、一般的に広く利用されています。


この検査は梅毒トレポネーマに対する抗体を検出することから、カルジオリピンによるSTS検査(RPR検査)より偽陽性反応の出現率が低いのが特徴です。


STS検査(RPR検査)は、梅毒トレポネーマに感染しておよそ4週で陽性となりますが、TP法による梅毒即日検査は8週間が経過しないと陽性とはなりません。


即ち梅毒トレポネーマに感染する機会があってから、8週間が経過して受けないと信頼できる結果が得られません。


それ以前に受けるとTP抗体の量が少なく、梅毒トレポネーマに感染していても陰性(偽陰性)となってしまいます。


そのためTP法による梅毒即日検査を受ける時期は、感染する機会があってから8週間経過して受ける必要があります。


ここで注意しなければならないことは、保健所で実施している無料の梅毒即日抗体検査の殆どがTP法による梅毒即日検査です。


そのために早く感染を知りたいと考えて不安に行為から8週間前に検査を受けてしまいますと、仮に感染していたとしても陰性となってしまいます。


従いまして、保健所で実施している梅毒検査はどの様な検査であるかを事前に確かめて受ける必要があります。


かなりの人が保健所で誤った検査の受け方をしている人がいることが確認されています。


2023年2月19日日曜日

現在の梅毒流行の現状-12.梅毒トレポネーマ感染をいち早く知るには-

 2023年2月5日時点での梅毒患者数は、1113人と依然として日本国内で梅毒が大流行しています。


梅毒トレポネーマは性行為やキスなどのオーラルセックスでも感染します。


最近では梅毒トレボネーマに感染しても典型的な症状の出ない無症候性梅毒が増加しているしていることから、感染するリスクのある行為をしてしまったら、必ず適切な時期に梅毒検査を受ける必要があります。


早期発見して早期治療することにより服用する抗生物質の期間は短くなり、注射による治療も1回で済みます。


梅毒トレポネーマ感染をいち早く知る検査法として"IgM-FTA-abs検査"があります。


★※梅毒トレポネーマ感染を早く知ることが出来る検査法は、IgM-FTA-abs検査です※


IgM-FTA-abs検査はIgM型のTP抗体を検出するための検査法です。


梅毒に感染した初期には、IgM抗体が先に出来て、その後IgG抗体が出来ます。


このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ信頼出来る結果が得られます。


★IgM-FTA-abs検査は、特殊な検査法ですが、どこの医院でも検査会社に依頼て受けることができますが、受けたいと医師に行っても、"当院では検査していない"・"そんな検査は知らない"・"そんな検査はない"と、言われるとの相談をよく受けますが、IgM-FTA-abs検査はどこの医院で受けることは可能ですが、現実としてIgM-FTA-abs検査を知らない医師も多くいます★


本来梅毒の専門診療科は皮膚科です、従って皮膚科専門医はIgM-FTA-abs検査のことを熟知していますのでIgM-FTA-abs検査を受けるのであれば皮膚科だけの看板を上げている皮膚科専門医を受診されることです。


ここで注意しなければならないことは、IgM-FTA-abs検査と勘違いしてしまう検査法としてFAT-abs検査があります。


FAT-abs検査は、IgG型のTP抗体を見つけますから、IgM-FTA-abs検査より遅く陽性となります。


FAT-abs検査は、感染後3~4週後にTPHA検査より早く陽性となりことから、STS陽性、TPHA陰性の場合の梅毒鑑別に利用されます。


梅毒トレポネーマ感染後早く陽性となる順番は、以下のとおりとなります。


1.IgM-FTA-abs検査


感染後1週間


2.FTA-abs検査


感染後3週間


3.STS検査(ガラス板法、RPR検査)


感染後4週間


4.TPHA検査


感染後5~6週間


5.迅速TP抗体検査


保健所等で使用されている検査


感染後5~6週間

2023年2月12日日曜日

現在の梅毒流行の現状-11.梅毒の曝露後予防(Post Exposure Prophylaxis*PEP)について-

 性行為後に抗生物質を内服する曝露後予防(PEP)により梅毒だけでなく、クラミジアや淋菌といった性感染症を予防するという最新研究の結果が報告されましたのでその概要を紹介します。


2022年年8月にカナダ・モントリオールで開かれた『第24回国際AIDS会議』で発表されたドキシサイクリン曝露後予防(DoxyPEP)の効果についての研究です。


『ドキシサイクリン曝露後予防(DoxyPEP)とは』


テトラサイクリン系の抗生物質ドキシサイクリン(Doxycycline)を性行為後に服用することにより、性感染症のリスクが66%低下することが明らかにされました。


ドキシサイクリンは、安価で半減期が比較的長いことから諸外国では曝露後予防に使用する薬剤として用いられています。


日本では、クラミジアに対してはアジスロマイシン、梅毒にはペニシリンが使用されていて、一般的にドキシサイクリンは性感染症治療には使用されていません。


2021年、米疾病対策センター(CDC)はクラミジア治療にアジスロマイシンではなくドキシサイクリンを用いるよう提唱しており、海外では性感染症に対して瀕用される薬剤となっています。


これまでは、曝露後予防としてドキシサイクリンがとして機能するかどうかは明らかにされておらず、過去に被爆前予防としてドキシサイクリンを服用する研究が2015年に米国で、2017年にはフランスで行われています。


この結果はどちらも梅毒発生率の低下が示されたが、米国の研究ではクラミジアに対するPrEPの効果が確認されず、両研究とも淋菌への効果は認められなかった。


その理由として、淋菌はテトラサイクリン系に対する耐性菌が多いことが考えられる。


しかし、今回の研究では、HIV陰性・陽性の両者において、3種の性感染症発生率の低下が示された。


クラミジアに対する有効性は、HIV陽性者で88%、非陽性者で74%と高いものであった。


梅毒に対しても、HIV陽性者で87%、非陽性者で77%と高い有効性を示したが、患者数が少なかったために統計学的には有意差を認めなかった。


淋菌では、HIV陽性者で55%、非陽性者で57%とクラミジアと比較すると軽度な差であるが、有意な有効性を認めた。


他の研究でも、DoxyPEPにより梅毒への感染を予防できるという結果が報告されている。


【参考資料】


梅毒の増加に対抗する:ドキシサイクリン曝露後予防の役割?


DoxyPEPを有効に用いることができれば、「性感染症予防薬」としてドキシサイクリンが広く用いられるようになるかもしれない。


DoxyPrEPに比べDoxyPEPは服用回数が少ないため費用の節約になり、抗菌薬の過剰使用による薬剤耐性や副作用への懸念も軽減されると考えられる。


ただし、抗生物質の開発と細菌の抗生物質耐性化が「いたちごっこ」であるのはご存じの通りである。例えば、淋菌は多剤耐性化が進んでおり、現時点で有効な薬剤はセフトリアキソンまたはスペクチノマイシンの注射剤しかない。


DoxyPEPが淋菌の抗菌薬耐性化を促進しうるかどうかは、さらに大規模な研究が必要である。


 また、フランスのDoxyPEP研究では、淋菌に対して適度な有効性(33~40%)を持つ髄膜炎ワクチンが検討されている。将来的には「性感染症ワクチン」も登場するかもしれない。


本研究は、性交渉後にドキシサイクリンを内服するという、極めてシンプルな介入で、性感染症リスクを抱える人たちの健康に大きな変化をもたらす可能性があるインパクトのある研究であった。続報に期待したい。


一般名:ドキシサイクリン塩酸塩水和物は、テトラサイクリン系の抗生物質でビブラマイシンと呼ばれています。


ビブラマイシンの内服を始める初日に200mgを1回又は2回に分けて経口投与します。2日目以降は初日の半分である100mgを1日1回内服します。なお、感染症の種類及び症状によって投与量は適宜増減します。


食事の影響を受けにくいと言われているため食後の内服にこだわる必要はありません。


性感染症として代表的な梅毒、クラミジアや淋病など、多くの細菌感染症に対して治療効果を持ちます。


主な副作用として、吐き気・嘔吐、食欲不振、発疹、発熱、じんましん、光線過敏症(光にあたった部分が赤くなる)、多形紅斑(皮膚の赤み)などが報告されています。


2023年2月5日日曜日

現在の梅毒流行の現状-10.2022年の梅毒ー

 2022年1年間の梅毒の新規感染者の累計は1万2966人でした。


2023年1月22日時点での患者数は、501人となっています。


2022年は10月5日までに届け出のあった梅毒の病期は、下記のとおりとなっています。


早期顕症梅毒Ⅰ期 3289人  


早期顕症梅毒Ⅱ期 2237人


潜伏梅毒 1317人


晩期顕症梅毒 59人


現在若い男女は梅毒に対するの識・情報不足が顕著であることから、梅毒トレポネーマに感染して初期症状があっても気づかないのが大半です。


初期症状が比較的わかりやすい性感染症ですが、正しい知識不足からそれすら知らないというのが現実です。


されにそれに拍車をかけて無症候梅毒が多いのも事実です。


また医師側にも性感染症を診ることが少ないという問題があるため、あまり深刻に考えていないこととから見逃しも多いようです。


これらが相まって発見の遅れと感染拡大につながっているのです。


特に問題なのは晩期顕症梅毒の段階で見つかった新規感染者が59人もいることです。


晩期梅毒とはゴム腫や進行性の大動脈拡張を主体とする心血管梅毒、進行麻痺といった神経梅毒に発展する段階です。


梅毒は抗生物質で完治することから晩期梅毒は、これほど発生することはありえないことです。


これは見逃さない限りここまで進行することはありえないはずです。


大切なことは危険な行為をしてしまったときには、適切な時期に必ず梅毒検査を受けることです。

2023年1月29日日曜日

現在の梅毒流行の現状-9.TP抗体が一度陽性となると梅毒が治癒しても一生TP検査が陽性となったままになる!!??-

 梅毒トレポネーマに感染するとおよそ4週間でカルジオリピンに対する抗体が陽性となり、6週間以降にはTP抗体が陽性となります。


梅毒トレポネーマに感染してTP抗体が体内に出来る前に治療を開始しないと、一旦TP抗体が体内に出来としまいますと、体内の梅毒トレポネーマが無くなってもTP抗体が消えることなく残るので、いつまでもTP検査が陽性なり続けます。


そのために梅毒治療の判定にはTP検査は使用できません。


従って治療の判定にはSTS検査を行います。


完治後のTP抗体陽性は感染の名残みたいなもので、人には感染させませんし、自身の臓器にも悪影響を与えることはありません。


昔梅毒に感染したという名残にほかなりません!!


しかしこのことを知らない医師も結構います、そのために必要のない治療を続けていることをよく見かけます。


また、老人が老人ホームなどに入所の際に梅毒検査を受けてTP検査のみが陽性(既に治癒した梅毒で自分自身も問題なくヒトにも感染させません)となり入所を断られている事例を多く見かけるのも事実です。


これも検査を解釈する医師の無知による弊害の一つです。


TP抗体を残さないためには、TP抗体ができる前か、TP抗体が出来て抗体価が低いうちに早期に治療を開始することです。


TP検査の意義がわからずTP検査が陰性になるまで治療を続ける誤った治療を実施する医師がいることは、残念なことです。


2022年1年間の梅毒の新規感染者の累計は1万2966人でした。


今後も流行は収まらなてと考えられています。


梅毒治療にはペニシリン系抗菌薬が有効で、日本国内ではアモキシシリンの経口投与や神経梅毒と診断された場合にはベンジルペニシリンカリウム点滴静注による治療が日本性感染症学会により推奨されています。


2021年9月には、梅毒の世界的な標準治療薬であるベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤の国内での製造販売が承認されました。


2023年1月22日日曜日

現在の梅毒流行の現状-8.梅毒は百面相??!!-

梅毒の症状は、見かけ上は健康な時期をはさんで、3段階の変化をします。


梅毒の病原体である梅毒トレポネーマが感染して9週までを第1期梅毒、9週より3年までを第2期梅毒、感染後3年以上を第3期梅毒と言います。


治療をしないで感染後10~15年放置しますと脳と脊髄に変化をきたし、変性梅毒または第4期梅毒になります。


梅毒の症状は、俗に言う3週・3ケ月・3年と呼ばれ、第1期・第2期・第3期の病期ごとに、異なる病態を示しながら進行する特徴を持つていることから3.3.3の変化と呼ばれています。


梅毒トレポネーマは性器粘膜や皮膚の小さな傷口から侵入して感染します。


第1期梅毒の特徴:痛みのない小豆ほどの大きさのしこりができる


梅毒トレポネーマに感染して平均3週間(1~14週)の潜伏期を経て、梅毒トレポネーマが侵入箇所には小豆ほどの大きさのしこりが現れます。


これは初期硬結または硬性下疳(こうせいげかん)と呼ばれ第1期梅毒に特徴的な病変です。


触ると硬く、押してもまず痛みはありません。


最初は少し盛り上がった赤い発疹ですが、すぐに中央がつぶれて潰瘍となり、透明な液体(滲出液)が滲み出します。


この滲出液には無数の梅毒トレポネーマが存在し、これに触れることによって他人に感染させます。


初期硬結が出た後、足の付け根の鼠径リンパ節が腫れますが、圧迫しても痛みは感じません。


この足の付け根の鼠径リンパ節が腫れを無痛性横痃(むつうせいおうげん)と呼びます。

その後、3~12週間で硬結は完全に消失することから、一見すると完全な健康状態に戻ることから患者本人は感染に気づきません。


第2期梅毒の特徴:バラ色の赤い発疹


感染から3ケ月(12週)頃には、梅毒トレポネーマは血流に乗って全身に運ばれます。


そしてこの時期バラ疹と呼ばれるバラ色の赤い発疹が、手のひら、足の裏、体幹部などに、ほぼ左右対称に出現します。


これが第2期梅毒です。


微熱や倦怠感も現れますがそれ以外の症状に乏しく、体の不調を感じても、まさか自分が梅毒だとは思わない人も多くいます。


また、アレルギーや麻疹による発疹などと紛らわしくて診断を誤ることもあり、「梅毒は百面相」とも呼ばれています。


その後数日~数週間すると、発疹が消失して潜伏期に入ります。


その後2~3年にわたって数ケ月毎に皮疹が出たり、消失したりを繰り返します。


皮疹は早期では全身に対称性に生じますが、次第に限局して非対称性となります。


その後は出なくなり、治療しなくてもいつのまにか治ったようにほとんどの人は錯覚に陥ります。


第3期梅毒の特徴:やわらかい腫瘤「ゴム腫」、軟部が崩れることもある


第2期後の潜伏期間も梅毒トレポネーマは体内で徐々に増殖しています。


感染から3年ほど経つと皮膚、筋肉、骨、肝臓などのあちこちに、ゴムのように柔らかい腫瘤(ゴム腫)が出来ます。


これが第3期梅毒です。


治療しないと、ゴム腫は周りの組織を破壊しながら成長し、破れて潰瘍になり、治った後も瘢痕(跡形)が残ります。


以上梅毒は変化に富んだ症状を繰り返しますから、感染に気づかない・自然に治ったと勘違いしやすい感染症です。


このことが次々と感染者を広げる結果となっています。


梅毒トレポネーマの感染は、症状ではまずわかりませんので感染するような行為をしてしまったときには、必ず適切な時期に梅毒検査を受ける必要があります。


また現在の梅毒は、梅毒トレポネーマに感染しても梅毒特有の症状を起こさない無症候梅毒が多くなっていますので、なおさらのこと症状からの感染の判断はできません。



2023年1月15日日曜日

現在の梅毒流行の現状-7.梅毒の怖さについての再認識-

梅毒の恐ろしさは梅毒トレポネーマに感染すると、3週間後、3ケ月後、3年後等各期ごとに、治療を受けないと自然に治ったと勘違いするところにあります。


潜伏期を3回挟みながら、更に悪化した病状が発現していき、最終的に死に至るという恐ろしさがあります。


症状が無くなってても体内に潜む梅毒トレポネーマは感染力を持ち、自身の体を蝕んています。


症状しては、


第1期は、梅毒トレポネーマに感染後3週間~3ケ月の状態を言います。


梅毒トレポネーマが侵入した部位に大豆くらいの大きさの痛みや痒みのない硬結が出来ます、これを初期硬結といいます。


時間経過とともにこの硬結は膿を出すようになります。


この膿の中には無数の梅毒トレポネーマが存在し、触れると感染します。


初期硬結の数は1個が普通ですが、2個以上できることもあり、この頃の初期硬結では、表面の皮膚が破れて潰瘍となる硬性下疳に変わりやすいといわれています


硬性下疳は、梅毒トレポネーマの侵入箇所で、よく出来る部位は、男性では陰部冠状溝・包皮・亀頭部、女性では大小陰唇・子宮頸部、キスやオーラルセックスによって口腔咽頭粘膜や肛門部も侵入門戸となります。


初期硬結はすぐ消えますが稀に潰瘍となることもあります。


またこの時期、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れてきますが、痛みもないまま大きく腫れてきます、これを無痛性横痃(むつうせいおうげん)といいます。


梅毒トレポネーマに感染して4週間を超えるとカルジオリピン使用したSTS検査で陽性反応となりますが、TPを使用したTP検査はこの時期は陰性のままです。


第2期は、梅毒トレポネーマに感染後3ケ月~3年の状態を言います。


この時期は梅毒トレポネーマは増殖しながら、血管やリンパ管を通過して全身に広がり、

皮膚や粘膜にいろいろの症状が出るようになってきます。


この時期の症状しては全身のリンパ節が腫れる、発熱、倦怠感、関節痛などの症状が現れ梅毒性バラ疹と呼ばれる特徴的な全身性発疹が現れることが多いです。


バラ疹は赤い目立つ発疹が手足の裏から全身に広がり、顔面にも現れ特に手掌、足底に小さい紅斑が多く出現し、皮がめくれた場合は特徴的な症状と言えます。


バラ疹はかゆみも痛みもなく、しばらくたつと自然に消えていきます。


この時期治療しなくても1ケ月でバラ疹が消えることから治ったと誤解しやすく、抗生物質で治療しない限りトレポネーマは体内に残っていて人に感染させたり、各臓器に影響を与え続けています。


バラ疹の次に出てくる皮疹は丘疹性梅毒疹で感染してから、4~6カ月ごろに出現します。


丘疹性梅毒疹の大きさは大豆から爪くらいで、皮膚面より盛り上がったかたい皮疹で、最初は赤い色をしていますが、時間の経過とともに茶色をおびた赤い隆起となります。


この丘疹性梅毒疹は、上半身の皮膚にたくさんできますが顔面にも出現します。


手のひらや足の裏にこの丘疹性梅毒疹ができると、丘疹の表面の角質が厚く、乾癬という皮膚疾患の症状によく似ていることから梅毒性乾癬と呼ばれています。


外陰部や肛門付近のように、皮膚や粘膜が向き合っている場所に丘疹性梅毒疹ができると、丘疹は牛乳のような白い色となり、表面がただれて分泌物が出てくるので、扁平コンジロームと呼ばれます。


扁平コンジロームの表面がただれて出てくる分泌物が中には、大量の梅毒トレポネーマが含まれていて性的接触によって梅毒トレボネーマが感染する重要な原因のひとつとなります。


この時期には、口腔粘膜に乳白色の斑点が生じる粘膜斑(乳白斑)や扁桃が赤く腫れる梅毒性扁桃炎も出現します。


潜伏期は、第2期の症状が消えるとともに始まり、潜伏期が始まってからの2~3年間は、第2期の症状を再発し、この時期を前期潜伏期と呼びます。


不顕性感染の期間で数年から数十年経過する場合を後期潜伏期といい、この期間は人には感染させませんが感染者の体内には梅毒トレポネーマが以前と存在し、各臓器に影響を与え続けています。


いずれにしても梅毒トレポネーマに感染すると抗生物質の治療を受けない限り治ることはなく、自然治癒はありえません。


一時期不治の病と呼ばれた歴史があることから難病のように思われがちですが、ペニシリン系の抗菌薬を用いた処置さえ行われれば比較的簡単に治療できる病気です。


第1期梅毒の場合は2~4週間程、第2期梅毒の場合には4~8週間程の治療期間で完治します。


第3期梅毒まで進行していても12週前後で治療できると言われています。


治療自体も1日3回の抗生物質の服薬を期間内続けるだけで完治しますが、自己判断で服用を中止したりすると完治する期間が長くなってしまいます。


2023年1月8日日曜日

現在の梅毒流行の現状-6.梅毒初期硬結や硬性下疳のできる場所-

 梅毒の大流行を踏まえて梅毒トレボネーマに感染したときの初期症状について再度解説させて頂きますのでお付き合いください


性的接触等で梅毒トレポネーマの侵入門戸となった部位にできる病変で、大豆くらいの大きさのかたいしこりが発生します。


オーラルセックスや性的接触のなかった箇所には出来ません。


梅毒トレポネーマに感染している人との性的接触の機会があってから約3週前後に、梅毒トレポネーマの侵入した部位に、大豆くらいの大きさのかたいしこりが発生します。


これが初期硬結という梅毒の最初の症状ですが、痛みもかゆみもありません。


男性では、陰茎の先や包皮の内側に、女性では、大小陰唇や腟の入り口にできます。


初期硬結の数は1個が普通ですが、2個以上できることもあります。


大きさは1cm前後の軟骨様のしこりで赤みを帯びた色をして、痛みも痒みもありません。

やがてしこりは硬く盛り上がり、硬く盛り上がり中心に潰瘍ができます、これを硬性下疳と呼びます。


このころの初期硬結では、表面の皮膚が破れて潰瘍となる硬性下疳に変わりやすいといわれていますし、感染機会から1~2週後というように最近では普通より早く発症するものが増加しています。


やがて鼠径部リンパ節が痛みもないまま大きく腫れてきます、これを無痛性横痃といいます。


病変部には菌が大量に存在するため、これに接触することからパートナーに感染させてしまうことが多いです。


放置していても2~3週間ほどで症状は消えて無症状になることから、治ったと錯覚してしまいますが、さにあらず身体の中には梅毒トレポネーマは常に存在して病気は静かに重症化していきます。


【初期硬結のできる箇所】


初期硬結は梅毒トレポネーマが侵入した箇所にしか出ません。


コンドームなしの膣性交をすれば、男性は陰茎、女性は大小陰唇や腟の入り口にできます。


キスやオーラルセックスで感染すると、唇や舌や喉の粘膜に出来ます。


【できる場所の実例】


キス・・唇や喉の粘膜や舌にできます。


性行為・・男性は陰茎の亀頭部分や包皮の内側、女性は大小陰唇や腟の入り口にできます。


肛門性交・・肛門付近や肛門の内部に出来ます。


オーラルセックス


1.クンニリングス:男性が女性器(クリトリス、尿道口、膣、小陰唇、大陰唇)を直接舌や唇や歯などで舐めて性的刺激を与える行為


男性の場合唇、咽頭、舌などに出来ます。


女性の場合・・尿道口、膣、小陰唇、大陰唇にできます。


2.フェラチオ:女性が男性性器を口または舌を使って刺激する行為・


男性の場合陰茎の亀頭部分や包皮の内側に出来ます。


女性の場合・・唇、咽頭、舌などに出来ます。


3.アニリングス:肛門に口をつけ舌や唇、歯などで肛門から性的刺激を与える行為


する側・・唇、咽頭、舌などに出来ます。


される側・・肛門付近や肛門の内部に出来ます。



2023年1月2日月曜日

現在の梅毒流行の現状-5.梅毒トレポネーマはオーラルセックスで簡単に感染する-

 梅毒トレポネーマは性行為で感染することを知っている人は多くいますが、オーラルセックスで簡単に感染することを知っている人は少ないと思います。


梅毒トレポネーマに感染した人の症状が出ているところ(病変部)や、精液、血液、腟分泌液に、喉に感染があれば唾液にも梅毒トレポネーマは存在します。


これらに触れることで梅毒トレポネーマは皮膚や粘膜の小さな傷から侵入することによって感染します。


※汗や涙の中には梅毒トレポネーマは存在しません※


1.キスでの感染


相手の口の中に梅毒トレポネーマ感染があれば、当然のことながらキスによって口の粘膜・喉・舌・唇に感染します。


2.フェラチオでの感染


・性器に梅毒トレポネーマ感染があれば、フェラチオをした人の口の粘膜・喉・舌・唇に感染します。


・喉に梅毒トレポネーマ感染があれば、フェラチオをされた人の性器に感染します。


3.クンニリングスによる感染


・性器に梅毒トレポネーマ感染があれば、クンニリングスをした人の口の粘膜・喉・舌・唇に感染します。


・喉に梅毒トレポネーマ感染があれば、クンニリングスをされた人の性器に感染します。


4.性器と性器をこすり合わせる


この場合も相手の性器に梅毒トレポネーマ感染があれば当然感染します。



特にオーラルセックスで、性器から口腔に感染した場合は無症状のことが多いので、自分が感染していることに気付かないままに、更に別の性交渉相手にオーラルセックスを介して性器に感染させてしまうことがよくあります。


オーラルセックスでの感染を防ぐには


男性用コンドームを陰茎に装着することや、女性の性器にラップ等を使用することで感染のリスクを低くすることができますが、皮膚と皮膚の接触でも感染するものについては、コンドームやラップ等で防ぎきれない場合もあります。


性器や口腔周囲に異変を感じる時は、オーラルセックスを含めた性行為を差し控え、早期に医療機関を受診する必要があります。


最近ではオーラルセックスによる梅毒トレポネーマの感染が増加しているので注意が必要です。


2023年1月1日日曜日

謹賀新年 2023年

 新年のご挨拶を申し上げます。


旧年中は、当サイトに格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございました。


本年もより一層努力し皆様のお役に立てる情報を発信してまいりますので、昨年同様、変わらぬご愛顧のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。