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2019年5月21日火曜日

性行為感染症アラカルト-1.膣トリコモナス症-

性行為感染症についての正しい知識としての症状・検査法・予防法・注意点などを習得して感染予防に役立つように解説していきます。

初回は膣トリコモナス症について解説していきます。

単細胞生物であるトリコモナス原虫は,腟トリコモナス,口腔トリコモナス,腸トリコモナスが知られており,それぞれの形態学的な区別は難しく感染部位に特異的な性質をもっています。

性行為によって生殖器に感染し,また明らかな病原性をもっているものは腟トリコモナスだけで、膣トリコモナスが引き起こす人の性行為感染症のひとつです。

【感染経路】

殆どがコンドームなしの性行為で感染しますが、下着やタオル、便座や、出産時に母から感染する可能性もあります。

【感染場所】

男性の場合は尿道、女性の場合は膣と尿道。

【潜伏期間】

感染して10日前後で症状が現れる。

【症状】

膣炎・子宮頸管炎・尿道炎を引き起こし、悪臭を伴う、黄白色の泡沫状の帯下、性交・排尿時の不快感、掻痒感、灼熱感、下腹部の痛みなどが発現する。

男性の場合殆どが無症状ですが、稀に尿道にかゆみを感じたり、排尿・射精時に軽い痛みを感じたりする場合もあります。

男性の場合治療せずに放置していると、前立腺癌のリスクを高めると言われています。

またトリコモナスに感染している男性は前立腺炎を有しているケースが多いという報告があります

女性の場合は、最悪、不妊症や早産等の原因となり、妊娠中に女性が感染すると、早期破水や早産を引き起こすことがあります。

膣炎ではトリコモナスだけが原因ではなく,臭いの原因となる嫌気性菌や大腸菌、球菌の増殖による混合感染の形態をとることが一般的で,膣炎の病態,臨床症状はこの混合感染によって起きています。

【検査】

男性の場合は、尿沈渣や前立腺分泌物中に運動する虫体の存在を顕微鏡で調べる。

※男子の尿からは培養法による検査を行う必要がある※

女性の場合は、膣から綿棒で粘膜を採り、スライドグラス上に塗布しギムザ染色を行って顕微鏡で調べる。

核酸増幅法TMA(Transcription Mediated Amplification)法を用いた,「Aptima トリコモナス ヴァギナリス Assay」が最近利用されつつあります。

【治療】

メトロニダゾールやチニダゾールなどの抗原虫薬を用いる。

男性は1回の投与による治療が効果的かどうかは不明ですが、通常は抗菌薬を5~7日間投与すれば治癒します。

女性の95%は、抗菌薬のメトロニダゾールかチニダゾールを1回、経口で投与することで治癒します。

【日本人の感染実態】

女性の5~10%、男性の1~3%が感染しているといわれていますが、実際はもっと多くの感染者が存在していると言われています。

【感染予防】

コンドームを使用することで感染予防が可能と言われています。

【HIV感染との関連性】

膣トリコモナスに感染して性器粘膜や尿道の粘膜がただれていることから、HIVの感染リスクが極めて高くなることが報告されています。