血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2013年12月31日火曜日

痛風の検査-1.痛風とは何?-

痛風は西洋では古くから知られた病気ですが、日本においては明治以前までは存在しなかった病気とされています。

痛風が日本で増加し始めたのは1960年代からです。

この原因として考えられることは、食生活が欧米化し動物性タンパク質や動物性脂質を取りすぎるようになったことが指摘されています。

現在日本では、およそ60万人の痛風患者が存在すると推定されています。

そして患者の90%以上が男性で、年齢層としては40~50歳代に多く存在しています。

女性の場合は、ほとんどが閉経後に痛風となり生理がある間には痛風にはなることはまずありません。

その理由としては、女性ホルモンの一種のエストロゲンが関与しています。

エストロゲンは体内の尿酸をスムーズに体外へと排出させる働きがあることから、エストロゲンの分泌のない男性は尿酸値が高くなります。

一方、女性はエストロゲンのおかげで痛風に罹りにくいわけですが、卵巣からエストロゲンの分泌が止まる時期、つまり閉経後は痛風に注意する必要があります。

痛風は、高尿酸血症を原因とした関節炎を引き起こす疾患で、発作の箇所の痛みが風が吹く様に足・膝・腰・肩・肘・手や胸骨など全身の関節を移動し、そして風の副強さが強まったり穏やかになったりする様に痛みが激しくなったり和らいだりを繰り返すことから命名されたとされています。

また、風にあたっても激しく痛むからとの説もあります

痛風になると関節に激烈な痛みが起こりますが、この痛みは耐え難いものです。

患部の腫れた箇所の側を猫が通った時に起こるかすかな空気の動きでも激痛が走るとも言われています。

2013年12月4日水曜日

マイコプラズマ肺炎の抗原検査

マイコプラズマ肺炎は、ほとんどの人の咽喉に生息しているマイコプラズマニューモニアという病原体によって引き起こされる肺炎です。

マイコプラズマは、感染力が弱く、発病率も低いため健康な人の場合はまず発病しません。

しかし、体力が低下している時や、咳をしている人の近くにいてマイコプラズマを一度にたくさん吸い込むと発病します。

日本人の場合、5歳までに65%の人が感染し、成人になるまでに97%の人が感染しています。

マイコプラズマの潜伏期間は1~3週間程度で、一般的な症状はせき、発熱、頭痛、倦怠感で、普通の風邪と見分けがつかず診断や治療・入院が遅れる場合がが多くみられます。

普通の風邪と異なるのは、咳に痰がからまず長く続き、胸や背中の筋肉が痛くなることがあるという点と、38度以上の高熱を伴うということです。

秋から冬にかけて流行することが多く、一度流行すると広範囲に広がり、6~7ヶ月間程度蔓延し、一昔前まではオリンピックの開催時期に流行したため"オリンピック病"とも呼ばれていましたが、最近は毎年のように流行しています。

マイコプラズマに感染すると、免疫を獲得しますがこの免疫は生涯続く免疫ではなく、再感染する場合が多いです。

殆どの場合、抗生物質の投与で完治しますが、最近では抗生物質の効きにくいマイコプラズマ肺炎もかなり増加してきています。

【マイコプラズマ肺炎の検査】

血清抗体検査がありますが、この検査では血液中にマイコプラズマ抗体ができていないと感染していても陰性となってしまいます。

しかし、マイコプラズマの抗原を見つける検査では、マイコプラズマに感染すれば直ぐに検出可能となります。

【リボテスト マイコプラズマ】

イムノクロマト法による検査で、マイコプラズマの“L7/L12”に固有な領域を識別するモノクローナル抗体を用いることにより、咽頭うがい液を使用して、15分で判定できます。

【判定方法】

陽性:コントロールラインとテストラインの両方に赤紫色のラインが出現。

陰性:コントロールラインのみに赤紫色のラインが出現。

判定不能:コントロールラインに赤紫色のラインが認められない(再検査)。

※テストラインに赤紫色のラインが出現してもコントロールラインに赤紫色のラインが認められない場合も判定不能とし、再検査を実施します※

2013年11月27日水曜日

HIVのリアルタイムPCR検査


この検査は、HIV-1の遺伝子の一部である核酸を化学的に増幅させて調べる検査法です。

HIV-1の遺伝子の一部である核酸を化学的に増幅させて調べる検査ですから、感染してから11日以降に受ければ信頼できる結果が得られます。

HIV-1の遺伝子の一部である核酸を調べる検査法ですから、当然のことながらHIV-2を検出することは出来ません。

2013年11月現在、HIVのリアルタイムPCRではHIV-2を検出することは出来ません。

※一部研究室レベルでは、特殊なPCR検査法でHIV-2を検出出来る検査法が行われていますが、一般の医療機関やクリニック、保健所ではこの検査を受けることは出来ません※

※血液センターで実施されているNAT検査は、HIV-2を検出することは可能ですが、NAT検査は血液センター専用の検査ですから医療機関やクリニック、保健所ではこの検査を受けることは出来ません※

※※NAT検査でHIV-2が検出されるから、検査目的の献血は絶対にしてはなりません※※

2013年11月26日の厚生労働省と日赤発表のような献血血液からのHIV感染を引き起こすことになりますから(詳細は新医学と切手の極意の『医事通信』に掲載しております)。
                            ↓
                    http://tetsujin.hiho.jp/iji/iji.html

2013年11月20日水曜日

風疹抗体検査

風疹は、風疹ウイルスによって引き起こされる急性熱性発疹性疾患で、日本では"三日はしか"と呼ばれています。

子供が感染しても症状は軽くてすぐに治ってしまいますが、妊娠初期に妊婦が感染した場合は先天性風疹症候群が大きな問題となっています。

効果的な治療法は無く、ワクチンによる予防が最も効果的な方法です。

また、昔から風疹に一度感染した人は免疫ができて二度とかからないと言われていますが、歳を重ねるとともに風疹の中和抗体が低下して再度感染することが近年明らかになっています。

【感染経路と症状】

風疹ウイルスは感染者の鼻汁に含まれ、飛沫感染または直接接触によって感染します。

潜伏期間はおよそ2~3週で、初期症状としては微熱、頭痛、倦怠感、鼻水、せき、痛みのないバラ色の口蓋斑点が出現します。

顔、耳後部から、赤く癒合性のない点状の紅斑(発疹)が全身に広がり、多くは3~5日程度で消えますが、20~25%は発疹が出現しない人もあります。

大人が感染した場合は発熱や発疹の期間が小児に比べて長く、関節痛がひどいことがあり、一週間以上仕事を休まなければならない場合もあります。

【検査法】

血清を用いてのCF法(Comlement Fixation Test:補体結合試験)、HI法(Hemagglutination Inhibition Test:赤血球凝集抑制試験)、EIA法EIA法(Enzyme Immunoassay:酵素免疫測定法)などがあります。

※検査法によって判定基準が異なります※

【EIA法による判定】

・抗体価8倍未満:陰性

地域で風疹が流行していたり、風疹患者と接触すると感染するリスクが高くなるので、人ごみや子どもの多い場所をできるだけ避け、風疹ワクチンを接種するなどして、感染を防ぐ必要があります。

・抗体価8~45倍:適度の抗体がある

適度の感染予防抗体があるので、普通は心配ありませんが、風疹患者と濃厚な接触をした場合は追加検査を受ける必要があります。

・抗体価45倍以上:高抗体価(HI法及び、風疹IgM抗体を測定、またはIgG-EIA及び風疹IgMを測定して、最近の感染かどうかを調べる)

【IgM抗体とIgG抗体について】

IgM抗体は、感染直後からすぐに上昇し、その後徐々に減少して行きますが数ヶ月間は陽性となっています。

IgM抗体が陽性の場合は、風疹ウイルスに感染していると判断できます。

IgG抗体は、感染したあと約1ヶ月後より陽性となり、数ヶ月間から数年から10年間抗体価の高い状態が続きます。

【IgM抗体とIgG抗体検査による感染の判断について】

・IgG抗体が陽性でIgM抗体が陰性の場合は、過去に風疹に感染したか、風疹ワクチンを接種が原因と判断されます。

・IgM抗体が陽性でIgG抗体が陰性の場合は、最近感染したと判断されます。

・IgM抗体とIgG抗体が共に陰性の場合は、過去から現時点まで感染はなかったと判断されます。

2013年11月13日水曜日

ロタウイルス検査-ラピッドエスピー《ロタ》検査-

【ロタウイルスとは】

ロタウイルスはレオウイルス科に属するウイルスで、1973年に下痢を起こした患児から初めて発見され、電子顕微鏡で車輪のような形に見えることから、このウイルスはラテン語の「車輪」を意味する"ロタ(rota)"と命名されました。

【感染について】

ロタウイルスは、非常に感染力が強く特に免疫力の弱い小児(6ヶ月~2歳)期に必ずと言っていいほど感染する病気です。

症状としては、水のような多量の下痢便で、便の色も白っぽくなることから"白色便性下痢とも呼ばれています。

更に激しい嘔吐を伴うことも多いことから、"嘔吐下痢症"、"小児仮性コレラ"などとも呼ばれています。

秋から冬にかけて流行することから"冬季下痢症"とも呼ばれます。

ロタウイルスに汚染された唾液や便や食べ物が口から入ることにより、1~3日の潜伏期間をへて下痢が始まります。

ロタウイルスは、およそ1週間便中に排泄され感染源となります。

ロタウイルスは増殖力が強く、10個前後の少ない数が体内に入っても発症することがあります。

ロタウイルスは、嘔吐物や大便には多く含まれていますが、一部は飛まつとなって空気中を飛び回り、感染を繰り返しますから、家族でひとりの感染者が出ると家族全員が感染することがよくあります。

ロタウイルス感染は、乳幼児だけでなく、大人にも感染します。

免疫が低下した大人(とくに高齢者)は感染しやすくなりますので注意が必要となります。

【治療法】

ウイルスが原因なので、特効薬は無く対処療法のみとなります。

激しい下痢が起こりますが、下痢止めを使用すると逆にロタウイルスが排泄されず症状が長引くことがあるので使用しないで、下痢で失われた水分や電解質を補うことが重要となります。

嘔吐や下痢によってロタウイルスが体内から排出されれば、症状は速やかに改善しますので、普段健康な人は全く心配はありません。

乳幼児や小児の場合嘔吐を伴い飲み物が飲めない場合は、点滴治療が必要となります。

【ラピッドエスピー《ロタ》検査キットについて】

金コロイド粒子を用いたイムノクロマトグラフィーの原理に基づく簡易キットです。

採取した糞便を希釈用緩衝液中に十分に混ぜあわせた後に、サンプリングループを抜き取り、そのままの状態で、1~2分放置後、チューブ内に、テストストリップを矢印の向きが下向きになるように挿入し、ストリップの先を検体溶液に浸漬させた状態で15~30℃で、10分間静置反応させます。

【判定方法】

結果を目視判定します。

1. 陽性:テストストリップのコントロールラインと判定ライン両方に、赤~紫色のバンドが確認出来る。

2.陰性:テストストリップのコントロールラインのみに赤~紫色のバンドが確認され、判定ラインにバンドが確認出来ない。

3.判定保留:テストストリップのコントロールライン上に赤~紫色のバンドが現れない場合は、たとえ判定ラインに何らかのバンドが形成されたとしても、その試験結果は無効となり再度検査をし直す必要があります。

【注意点】

ロタウイルスに感染していても糞便中のロタウイルス抗原の濃度がキットの検出感度以下の場合や、糞便の採取が不十分であった場合にも陰性となる可能性があります。

2013年11月6日水曜日

ヘリコバクター・ビロリ抗原検査

ヘリコバクター・ピロリ(以下H.Pと略します)は、1983年、ロビン・ウォレンとバリー・マーシャルによって胃炎患者の胃粘膜から分離され、現在では胃・十二指腸潰瘍、胃炎、胃癌等の疾患にH.Pの感染が深く関与している事が知られています。

H.Pはグラム陰性のらせん菌で数本の鞭毛を持ち、大きさは2~5ミクロン程度の大きさで、強いウレアーゼを産生して、アンモニアで自らの周辺の胃酸を中和(pH6~8)し、胃に感染し強い胃酸の中でも生き続けることが出来ます。

H.Pに感染すると、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を引き起こすだけではなく、胃癌や、MALTリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫などの発生に繋がることが報告されている他、特発性血小板減少性紫斑病、小児の鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹などの胃外性疾患の原因となることが明らかにされています。

細菌の中でヒト悪性腫瘍の原因と成りうることが明らかになっている唯一の病原体です。

【テストメイト ラピッド ピロリ抗原】

わかもと製薬が開発し、日本ベクトン・ディッキンソンが発売している糞便中のヘリコバクター・ピロリ抗原に特異的に反応するモノクローナル抗体を用いた、イムノクロマトグラフィー法を原理とする糞便中ヘリコバクター・ピロリ抗原検出用試薬です。

本品は固相化抗体、標識抗体ともモノクローナル抗体を使用し、特異性が優れています。

【検査の原理】

イムノクロマトグラフィー法により便中のH.P抗原を検出します。

希釈した便検体を反応シートの試料滴下部位に滴下し、検体中にH.P抗原が存在すると、反応シート中の赤色標識抗体と結合し、免疫複合体を形成し、この免疫複合体は毛細管現象により移動し、反応シート上の固相化された捕捉抗体に捕捉され、赤色判定ラインを形成します。

一方、免疫複合体を形成しなかった赤色標識抗体は、固相化されたコントロール抗体に捕捉されて赤色コントロールラインを形成することにより、検査の正確性の指標となります。

これらの赤色ラインを目視で確認し、検体中のH.P抗原の有無を判定します。

【検査の注意点】

専用容器に採便して、可能な限り早く提出します。

提出が遅れる場合は、2~10℃(冷蔵庫)に保存して直ぐに提出する必要があります。

【判定法】

1.判定窓にコントロールラインと判定ラインを認めた場合:H.P抗原陽性

2.判定窓にコントロールラインを認め、判定ラインが認められなかった場合:H.P抗原陰性

3.判定窓に判定ラインのみを認めた場合:再検査(検査ミス、試薬の劣化)

4.判定窓にラインが認められなかった場合:(検査ミス、試薬の劣化)

【H.Pの治療】

H.Pが胃の中に存在することが確認されれば、H.Pの除菌を実施します。

2013年10月30日水曜日

便潜血反応検査

【検査目的】

大腸ガンを診断する検査のひとつです。

大腸ガンは大腸の下部から出血を伴うので、便に血液が混入することが多いので、便中の血液(人のヘモグロビン)を調べることにより、大腸での出血の有無を確認することが出来ます。


【便の採取方法】

1. 便の量は少なすぎても多すぎてもよくないので、説明書に記載された量を採便する必要があります。

2.採便容器の説明書の通り採便すると、適量(平均6.0mg前後)が採取できます。

3.便が適量でないと陽性が陰性となったり、陰性が陽性となる場合があります。 

4.便中のヘモグロビンの安定性は、室温(25℃)前後で約1週間ですから、採便後直ぐに提出する必要があります。

5.採便は基本的に二本法で行います。

大腸からは毎日出血しているとは限りません。

その為に日にちを変えて採便を2回する必要があります。

即ち二本法とは二回(異なる日)に採便し検査する方法です。

出血は必ずしも継続的ではないため、一本法では陰性になる確率が高いために、多くの医療機関では二本法を採用しています。

二本法を行うことで一本法よりも大腸出血の発見率が高くなります。 


【問題点】

上部消化管(食道・胃・十二指腸など)からの出血の影響を受けず、大腸ガンなどによる大腸出血の診断に有用ですが、痔などの肛門出血や大腸ガン以外の病気(大腸ポリープ・大腸炎など)でも陽性となる場合があります。

女性では月経血が混ざっても陽性となります。

早期の大腸ガンでは陰性となることが多い。

【判定】

陽性(+): 検査上、大腸からの出血が認められる。

※必ずしも大腸ガンがあるとは言えませんので、大腸内視鏡などの精密検査を行い、出血の原因を確認する必要があります。    

陰性(-): 検査上、大腸からの出血は認められない。

※出血が認められないだけで、大腸ガンがないとはいえません。

【おまけ】
 
便潜血検査の偽陰性率(見逃してしまう可能性)

進行ガン 約10%

早期ガン 約50%

便潜血検査のガン的中率(陽性の人が癌である確率) 約3%

2013年10月22日火曜日

臨床検査のパニック値について

【パニックの定義】

パニック値とは、"生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示唆する異常値"で直ちに治療を開始すれば救命することが出来ますが、その診断は臨床的な診察だけでは困難で検査によってのみ可能です。

【パニック値の設定と運用】

パニック値の設定項目と設定値は、各施設によって臨床医との協議によって設定されています。

検査を実施してパニック値が認められると、迅速・確実に臨床医に伝達され、臨床医は迅速に対応することになります。

パニック値として臨床医に迅速・確実報告すべき項目は限定されています。

【パニック値設定の事例】

クレアチニン  3.0以上

ナトリウム   120以下及び160以上

カリウム    2.5以下及び6.0以上

カルシウム   6.0以下及び12.0以上

AST       1000以上

ALT              1000以上

血糖値     50以下及び350以上

白血球数    1500以下及び20000以上

血小板数    30000以下及び1000000以上

※紹介したパニック値は、ほんの一例で各医療機関によって異なりますので、このパニック値がすべではありませんので、目安として参考に留める程度としておいて下さい。

2013年10月15日火曜日

臨床検査の極端値とは

【極端値の定義】

稀にしか見られない検査値で、統計学的には0.5~1.0パーセントタイル値以下、および99.0~99.5パーセントタイル値以以上とされています。

【極端値が起きる原因】

1.検体採取条件などのに起因する場合

2.分析前誤差などのに起因する場合

3.検査過誤などのに起因する場合


【極端値に対する対応】

再度の検査や、再度採血をし直し検査を行うなど、検査データの統計的処理で解決可能となります。

【極端値の解釈】

極端値の中には、患者の生命が危ぶまれるパニック値も含まれていますが、極端値を呈する患者が,必ずしも生命が危ぶまれるほど危険な状態にあるとは限りません。

また、検査項目によってもこれは言えることです。

※パニック値について、次回解説いたします※

2013年10月9日水曜日

臨床検査の基準値とは

臨床検査で参考にする基準値は,統計学的に算出した数値範囲を用いています。

臨床的検査学的に異常を示さず病気がなく健康な人の集団を健常者とし、その健常者の測定結果を集計すると左右対称の山型になります。

このうちの極端に高い数値2.5%と低い2.5%を除き,この平均値をはさんだ健常者の95%が含まれる範囲を基準値とします。

要するに検査を受けた人が病気であるのか、病気でないのかを、大まかに解釈する時に参考にする数値が基準値です。

健常者の95%が基準値の範囲内に収まりますが、疾患の徴候がない健康な人でも基準値から外れることがあり、反対に、検査値が基準範囲に収まっている人でも臨床的な症状を示す場合もあります。

その為、かつては『正常値』と呼ばれていましたが、統計的な平均値は現在では『基準値』と呼ばれています。

疫学的な統計データに基づく基準値は、正常範囲に収まる個人の多様性や個別差を十分にカバーすることが出来ませんので、正確な診断には基準値との比較だけではなく、医師による個別的な診察が必要となります。

また、定期的に健康診断を受けていると、疫学的な統計データに基づく基準値とは異なる"自分固有の基準値"が算出されるので、これを記録しておくことにより、自分自身の日頃の基準値を知ることが出来ますから、自分の体調の変化や病気の有無は"自分固有の基準値"との比較で判断する事ができます。

例えば今回検査を受けて得られ検査値と、前回の検査値に大きな変化が見られる場合などには、何らかの体調の変化や病気の徴候を疑う必要性があるということになります。

【注意事項】

基準値は検査方法、機器の種類、試薬の種類などによって、微妙にことなりますから、病院や医学書より多少に異なりますから、基準値の数値は絶対的なものではありません。

基準値内で数値が動くことは、心配ないことですから、気にする必要はありません。

2013年10月3日木曜日

アレルギー検査について-8.アレルギー血液検査の問題点-

アレルギー検査を受けて、異常な数値が出ることがあります。

これは何を意味しているのでしょうか?

1.数値は高くなっていても問題となる症状が出ていないことがあります。
 この場合は、問題にならない場合もあります。

2.逆に、数値は低くてもなんらかの症状が出ていることがあります。

これは注意が必要となります。

特に、MAST33のような即時型のアレルギー検査は要注意です。

 【事例】

例えば、牛乳を飲んだ場合で考えてみますと、

即時型検査では、数値が低く問題ないように見えても遅延型検査を受けると高い数値になっていることがあります。

これは、即時型の検査だけではアレルギーの存在を見逃すことがあるということです。

このような状態の人は多く存在します。

この原因としては日本で遅延型のアレルギー検査が始まったのはつい最近で分からなかったからにほかなりません。

従ってアレルギー検査は即日型検査だけでなく、遅延型検査も受けておく必要があるということになります。

【まとめ】

1.アレルギー検査を受けておくことによりアレルギーの原因となる物質を特定しておきそれを避ける事が可能となる。
特にピーナッツやソバ、エビ、カニなどによる即日型アレルギーの防止に役立つ。

2.いま出ている症状の原因を特定して、その治療を行う。

3.異常値が出ても、何の症状も問題もない場合がある時は、あまり気にする必要はない。

4.アレルギー検査の結果は、絶対的な検査ではなく、気に留めておくだけの場合もあることを認識して受けることです。

2013年9月23日月曜日

アレルギー検査について-7.アレルゲン刺激性遊離ヒスタミン検査-

アレルゲン刺激性遊離ヒスタミン検査(HRT :Histamine Release Test)は、 (好塩基球) ヒスタミン遊離試験とも呼ばれています。

血液中から分離した好塩基球という白血球の一種にアレルゲンを添加し、 そのとき放出されたヒスタミンの量を測定し、アレルゲンに対する反応性を調べます。

この検査は、特異的IgE抗体と結合した好塩基球が原因アレルゲンと反応して、 アレルギー症状を引き起こす原因物質であるヒスタミンを遊離したかどうかを検査するので、 同じin vitro(イン・ビトロ:試験管内での検査)の検査でありながら、特異的IgE検査よりも生体内の反応をより的確に反映するという特徴があります。

血液を調べるため、アナフィラキシーショックなどの危険性がある負荷試験よりも安全に実施ができます。

【どのような場合に検査をするのか】

食物を負荷することで強い症状(アナフィラキシーショック)を誘発するリスクが高いと思われる患者の場合は、 負荷試験を行わずに抗原診断の補助検査として使用できます。

特に汗アレルギーの患者に、アトピー性皮膚炎の原因特定に利用できます。

アトピー性皮膚炎の患者では、"ヒト汗抗原"に対して陽性を示す患者さんがおよそ80%存在すると言われています。

従ってアトピー性皮膚炎では、自分の汗に過敏に反応し、皮膚症状が悪化すると言われていましたが、 最近の研究によって"ヒト汗"のアレルゲンの正体は、健常人にも常在するカビの一種が産生する蛋白である事分かりました。

【検査の種類】

1.HRT乳幼児期用食物:卵白、オボムコイド、オバルブミン、牛乳、小麦

2.HRT学童・成人期用食物:ソバ、ピーナッツ、エビ、カニ、ゴマ

3.HRTアトピー性皮膚炎:ヒト汗、ヤケヒョウヒダニ、ネコ上皮、イヌ皮屑、カンジダ

2013年9月16日月曜日

アレルギー検査について-6.遅延型アレルギー検査-

遅延型(Ⅳ型)アレルギーは、細胞の中のTリンパ球が引き起こすアレルギーで、即時型(Ⅰ型)アレルギーに対し、発現が遅く抗原(アレルゲン)を体内に取り込んでから半日から数日たって反応がおこります。

これは、IgGやIgAといわれる抗体が関与していることがわかっています。

遅延型アレルギーの代表格は、"接触性皮膚炎"で、俗に言う「化粧品かぶれ」、「うるしかぶれ」などといわれているものです。

【遅延型アレルギーの特徴】

アレルゲンとの接触後、数時間から数日経って初めて反応が出ることから、原因の特定が困難なアレルギーですです。

一般的に遅延型反応は、食物アレルゲンに対する過敏性からきていることが多いです。

このタイプのアレルギーは、よく"隠れアレルギー"とも呼ばれます。

【遅延型アレルギー検査】

遅延型フードアレルギー検査を実施します。

日本人の食生活にお馴染みのある乳製品、野菜、果物、肉、魚、ナッツ、穀類、緑茶、烏龍茶、コーヒー、スパイス、昆布などをバランスよく揃えた、96種類の日本標準パネルで検査を行います。

※遅延型アレルギー検査は、現時点ではに関して、日本での検査は不可能なことから医院によっては、血液をアメリカへ送って検査を依頼していますので、結果を得るまでには時間がかかる上、高額な費用がかかります※

※USバイオテック研究所 日本正規代理店で検査キットを購入して、血液採取セットで血液を取り、USバイオテック研究所に郵送して検査を依頼することが可能です※

およその価格は、50000~70000円前後します。


【判定基準】

CLASS 0~6までの7段階に分類されます。

CLASS 4~6:強陽性⇒ 6ヶ月間の摂取制限。

CLASS 3 :中等度陽性⇒ 3ヶ月間の摂取制限。

CLASS 0~2:低反応⇒ 現状のままでOK


【おまけ】

アトピー性皮膚炎は、即時型アレルギーの代表格と思われがちですが、最近の研究によって遅延型アレルギーによっておこる側面もあることが明らかにされつつあります。

2013年9月9日月曜日

アレルギー検査について-5.アトピーの検査-


今回は、アトピーの検査を紹介します。

1. CAP16 アトピー乳幼児

乳幼児においてアトピー性皮膚炎単独だけでなく、気管支喘息単独やアトピー性皮膚と気管支喘息合併症に対する検査で、食餌系アレルゲンに乳幼児で重要な室内アレルゲンとスギの吸入系アレルゲンを組み合わせた検査です。


【食物系】 

牛乳 
卵白 
オボムコイド 
ソバ 
コムギ(実) 
大豆 
ピーナッツ 
エビ 
サケ 
マグロ、
イクラ

【吸入系】
 
ダニ1 
スギ 
ネコ皮屑 
イヌ皮屑 
ゴキブリ

2.CAP16 アトピー学童

学童期のアレルギー疾患に対応できるよう食餌系アレルゲンと吸入系アレルゲンをバランスよく組み合わせた検査です。

【食物系】 

牛乳 
卵白 
ソバ 
コムギ(実) 
大豆 
ピーナッツ 
キウイ 
エビ 
カニ 
マグロ

【吸入系】 

ダニ1 
スギ 
カンジダ 
ネコ皮屑 
イヌ皮屑 
ゴキブリ

3.CAP16 アトピー成人

成人のアトピー性皮膚炎単独だけでなく、気管支喘息やアレルギー性鼻炎との合併症にも対応したアレルゲンの検査で、皮膚常在菌のカンジダ、マラセチアをも組み合わせてあります。

【食物系】 

ソバ 
コムギ(実) 
大豆 
ピーナッツ 
キウイ 
エビ 
カニ 
サバ

【吸入系】 

ダニ1 
スギ 
カンジダ 
マラセチア 
ネコ皮屑 
イヌ皮屑 
ゴキブリ 


【検査目的】

アレルギー性鼻炎などで患者さん自身が気づかなかった感作を発見することができます。
【検査費用】
実施料1430点(健康保険利用で3割負担:約5000円)

【検査方法】

FEIA法(酵素免疫測定法)

【検査検体】

1.0mlの血清で検査可能です。

【判定基準】


2013年9月2日月曜日

アレルギー検査について-4.MAST33(同時多項目アレルゲン特異的IgE測定)-

33項目のアレルゲンを1回で測定できる保険適応の検査です。

【検査アレルゲンの内容】

・食餌アレルゲン14項目

1.ソバ
2.小麦 
3.ピーナッツ 
4.大豆 
5.コメ 
6.マグロ 
7.サケ 
8.エビ 
9.カニ 
10.チェダーチーズ 
11.ミルク 
12.牛肉 
13.鶏肉 
14.卵白


・花粉アレルゲン9項目

1.オオアワガエリ 
2.ハルガヤ 
3.カモガヤ 
4.ブタクサ混合物Ⅰ
5.ヨモギ 
6.スギ 
7.ヒノキ 
8.ハンノキ 
9.シラカンバ

・環境アレルゲン4項目(通年性)

1.コナヒョウヒダニ 
2.ハウスダストⅠ 
3.ネコ皮屑 
4.イヌ皮屑

・その他アレルゲン6項目

1.ペニシリウム 
2.クラドスポリウム 
3.カンジダ 
4.アルテルナリア
5.アスペルギルス 
6.ラテックス

【検査目的】

アレルギー性鼻炎などで患者さん自身が気づかなかった感作を発見することができます。

【検査費用】

実施料1430点(健康保険利用で3割負担:約5000円)

【検査方法】

CLEIA法

【検査検体】

0.5mlの血液で検査可能です。

【判定基準】


2013年8月26日月曜日

アレルギー検査について-3.特異的IgE検査-

Ⅰ型アレルギーはIgE依存型と呼ばれ、IgEが大きく関与しています。

体内に呼吸や飲食物の摂取、薬剤、注射、接触などによって異物(抗原)が入ってくると、それを防ぐために血清中にIgG、IgA、IgM、IgD、IgEなどの抗体ができますが、アレルギーに密接に関係する抗体はIgE抗体です。

体の中に出来たIgE抗体に、再び抗体のできるきっかけとなった抗原が入ってくると、急激に反応し、発疹、発熱、鼻汁、涙、かゆみ、ショックなどのアレルギー性疾患を引き起こします。

特異的IgEはアレルギーを引き起こす原因物質(アレルゲン)を特定するための検査です。

【検査方法】

血液を使い酵素免疫測定法の一種であるFEIA法(Fluorescence-Enzyme Immunoassay)で検査します。

【基準値】

特異的IgE抗体の正常値は健常者で0.34 UA/ml以下です。

抗体のある場合、0.35~100までの数値で示します。

これをRAST値と云います。

そして0.35~100までの間を1~6までの6段階に分類します。

これをRASTスコアと言います。

RASTスコアの数値が高いほど抗体が多いことを意味します。

【判定】



クラス1は疑陽性つまりアレルゲンである疑い、クラス2以上は陽性つまりアレルゲンの可能性が高い、クラス4以上は強陽性で大部分の患者さんがアレルギー反応を示すといわれています。

※IgE抗体が証明されてもアレルギー症状が認められない人もいます※

また、クラスの上昇はアレルギーの悪化を意味し、減少は改善を意味します。

次回は特異IgE抗体検査の検査項目について解説いたします。

2013年8月19日月曜日

アレルギー検査について-2.好酸球検査-

好酸球は本来、寄生虫による感染症で増加する白血の一種ですが、肥満細胞や好塩基球のヒスタミン遊離を抑制する作用をもち、アレルギー疾患で血中に増加することが知られています。

従って体にアレルギー反応が出ると増加します。

ただし好酸球が増加してもアレルギー性疾患とも必ずしも言えませんが、アレルギー性疾患に増える場合が多いのでアレルギー性疾患の指標にはなります。

特にアトピー性アレルギーの場合に好酸球は著明に増加します。

好酸球増多はアレルギー反応が起きた後30分ぐらいからはじまり、数時間でピークとなり以後減少していきますので、発作直後に出る水性鼻汁には好酸球は少なく、その後水粘性になった鼻汁中に多くなります。

特にアレルギー性鼻炎では、血液中より鼻粘膜での増加が顕著となります。

【検査方法】

顕微鏡を用いて鼻汁中の好酸球の数を調べます。

【判定】

全視野で1個でもあれば陽性とし、割合によって(1+)~(3+)で表します。

アレルギーの約90%は陽性となります。

非アレルギーでの陽性は1~2%と少ないことから、アレルギー性か否かの判断の指標となります。

好酸球は正常の人では鼻汁の中には認められません。

※好酸球検査は鼻アレルギーの検査としては大変重要な検査です※

2013年8月12日月曜日

アレルギー検査について-1.はじめに-

今回は、アレルギーの検査に関して簡単明瞭に解説してみます。

血液の中には"IgE"と呼ばれる免疫グロブリンが含まれています。

この"IgE"がアレルギーを引き起こす源であると知られていることから、アレルギー検査といえば一番に血液中の"IgE"の量を測定することになります。

この"IgE"はいろいろの外界の物質に対して反応する"IgE"が存在します。

そのためにどの物質に対する"IgE"かということを調べるために、IgE-RAST検査があります。

このIgE-RAST検査は、どの物質に反応する"IgE"が血液中に存在するかを調べることが可能となっています。

医者が皆さんに、「アレルギーの検査をやってみましょうか?」と言うときは大体はこの血液中の"IgE"量の測定と個別の物質に対するIgE-RAST検査の2種類を指します。

ここで注意しなければいけないことは、

もしも皆さんが、アレルギー性の疾患と言われている病気になったとしてこの検査を受けて、例えば卵に陽性の反応が出たとしても、あなたの病気の原因が卵だと言うことにはなりません。

その理由としては、『あなたの血液の中には卵に強く反応する"IgE"という免疫グロブリンがありますよ』、ということを言っているだけなのです。

病気と卵が関係しているということを意味しているのではないのです!!

中には卵を食べて調子が悪くなる、というのならそれは卵が関係あるのかも知れませんが。

アレルギー検査を受けるのは、自分で今の自分の事は知っておいたほうがいいと思う時です。

次回からアレルギー検査それぞれについて解説していきます。

2013年8月5日月曜日

糖尿病検査-各種糖尿病検査の違いとは-

今まで解説してきた、HbA1c、1,5-AG及びグリコアルブミンの大きな違いは何でしょう。

一言に言って血糖のコントロール状態を把握できる期間が異なるということに尽きます。

1.HbA1c:採血前の約1~2カ月間の血糖のコントロール状態を把握。

2.1,5-AG:採血前の直近数日間の血糖のコントロール状態を把握。

3.グリコアルブミン:採血前の直近約2週間の血糖のコントロール状態を把握。

今までに紹介した3項目の検査の持つ特徴を知った上で使い分けることにより血糖のコントロール状態をより適切に把握することができることになります。

前回までの解説を再度お読みいただければ幸いです。

2013年7月29日月曜日

糖尿病検査-グリコアルブミン検査-

【グリコアルブミンとは】

血清中のタンパクの一種のアルブミンとブドウ糖が結合したものをグリコアルブミンといいます

グリコアルブミンの半減期がHbA1cの半減期の約半分であることから、血糖のコントロール状態をより早く敏感にとらえることが出来ます。

即ちグリコアルブミンの場合、HbA1cではわからない直近約2週間の血糖コントロール状態を把握できることから、経口血糖降下薬の投与やインスリン治療を開始して間もない患者の治療効果を知ることができます。

【グリコアルブミンを調べると何がわかるのか】

血液の中を流れている間に徐々に糖と結合してできるため、グリコアルブミンを測定することによって、直近約2週間の血糖値のコントロール状態を知ることができます。

グリコアルブミンは、血糖値がより高く、血糖値の高い状態がより長く続くほど増えていくことから、糖尿病で血糖値の高い状態が続くほどグリコアルブミンの検査値は高くなります。

一般的にグリコアルブミンは、HbA1cを約3倍した値となるといわれています。

【事例】

HbA1cが5.0%なら、グリコアルブミンは約15%。

【基準値】

11~16%

※測定法の違いから医療機関によって基準値が異なる場合もあります※

【検査結果の解釈】

高 値 糖尿病、甲状腺機能低下症

低 値 ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症、肝硬変

2013年7月22日月曜日

糖尿病検査-1,5-AG(1.5アンヒドログルシトール)検査-

【1,5-AG(1.5アンヒドログルシトール)とは】

1,5-AG(1.5アンヒドログルシトール)とは、血液中にブドウ糖に次いで多く含まれる糖で、多くの食物中に含まれていますが、栄養素としての役割はなく、尿糖と一緒に排泄されます。

血液中の1,5-AGは、尿糖が出るほど減少していくことから、数値が低いほど血糖コントロールが悪いと言えます。

【血糖コントロールの指標となる1,5-AG】

1,5AGは、腎臓の糸球体で濾過されますが、そのほとんどが尿細管で再吸収され、1日の尿中排泄と経口摂取量がほぼ均衡するため、血液中の濃度はほぼ一定しています。

糖尿病などで尿糖が増加すると、尿中への排泄が増加し血中濃度は低下し、このため、軽症糖尿病の過去数日間の血糖コントロールの指標として利用されています。

【1,5-AGを調べると何がわかるのか】

血糖が高くなれば、血液中の1,5-AGは低くなり、血糖が下がれば1,5A-Gは血中で増加するなど、軽微な血糖改善や、軽度の悪化を確実に捉えることが可能となります。

1,5-AGの値を調べれば、その時点での血糖のコントロール状態が明らかになりますので、糖尿病の治療効果、薬の増減、その経過観察に欠かせない検査となっています。

フルクトサミンやグリコヘモグロビン検査では、月や週単位での血糖コントロール状態がわかりますが、この1,5-AGは前日の状態までリアルタイムに把握可能となります。

尚且つ食事が検査に影響を与えることももありません。

【基準値】

男性:15~45μg/ml

女性:12~29μg/ml

【検査結果の解釈】

男女とも13μg/ml以下になると、血糖のコントロール状態が不十分と判断されます。

※1,5‐AGは血糖変動の把握に優れている反面、血糖コントロールが非常に悪い場合には検査結果の差が少なくなるため、病状の評価がしにくくなります※

【注意】

漢方薬の人参養栄湯や加味帰脾湯、葛根湯、小紫胡湯、大紫胡湯などには多量の1,5‐AGが含まれているため、これらを服用していると糖尿病のコントロールとは無関係に影響を受けて高値となる場合があるので注意が必要です。

2013年7月15日月曜日

糖尿病検査-ヘモグロビンA1c検査-

【ヘモグロビンA1cとは】

ヘモグロビン(Hb)とは、赤血球に含まれているタンパク質の一種で、酸素と結合して酸素を全身に送る役目を果たしています。

更にヘモグロビン(Hb)は、血液中のブドウ糖と結合するという性質をも有しています。
ブドウ糖と結合した物の一部分が、ヘモグロビンA1c(HbA1c)と呼ばれます。

血液中に余分のブドウ糖があって、高血糖状態が長く続くとヘモグロビンとブドウ糖は、どんどん結合していきます。

即ちこのヘモグロビンA1cの値が高ければ高いほど多くのブドウ糖が余分に血液中にあって、ヘモグロビンと結合していることになりま。

ヘモグロビンA1cは一度作られると、赤血球が死滅するまでは血液中から消滅しません。

赤血球の寿命は120日ほどであり、この半分くらいにあたる時期の血糖値の平均を反映します。

従ってヘモグロビンA1cの値は、過去1ヶ月~2ヶ月の、血糖状態を表すので、血糖値よりも正確な血糖状態を知ることができます。

【ヘモグロビンA1cを調べる理由】

血糖値は検査前の食事や飲酒、それに検査をする時間によって変動するのに対し、ヘモグロビンA1cはそれらにほとんど影響を受けないという特徴があるからです。

【ヘモグロビンA1cの検査方法】

血液をHPLC法(高速液体クロマトグラフィ法)や免疫学的法で検査を行います。

※検査当日の食事制限必要ありません※

【ヘモグロビンA1cの単位】

2012年4月1日より、日本糖尿病学会では一般的な診療におけるヘモグロビンA1cの数値を、国際標準値(NGSP値)と併せて表記します。

これまで使用していたJDS値よりおよそ0.4%高くなります。

【JDS】=Japan Diabetes Society(日本糖尿病学会値)

【NGSP】=National Glycohemoglobin Standardization Program(国際標準値)

【ヘモグロビンA1cのコントロールの評価とその範囲】


※国際標準値の(NGSP)が6.5%以上の場合糖尿病が強く疑われます※

2013年7月8日月曜日

抗トリコスポロン・アサヒ抗体検査

抗トリコスポロン・アサヒ抗体検査は、夏型過敏性肺炎の代表的起因菌である "トリコスポロン・クタネウム"に特異的な抗体価測定により他疾患との鑑別に用いられます。

感度・特異度も高く、夏型過敏性肺炎の鑑別有用な検査です。

それでは、夏型過敏性肺炎とは、どのような疾患なのでしょうか?

夏型過敏性肺炎は日本で発見された過敏性肺炎で、西日本を中心に、夏季、湿った家屋内に繁殖した真菌属の胞子を反復吸入することによって起こります。

夏型過敏性肺炎は、過敏性肺炎の70%以上を占める代表的疾患で、III、IV型アレルギー肺疾患です。

原因となる真菌を吸入してから数時間後に咳や痰、悪寒、頭痛、発熱、呼吸困難などの症状が現れます。

夏型過敏性肺炎は、月をピークに6~10月にかけて発症することが多く、長引く夏風邪、繰り返す風邪と放置され、症状が重篤化してから受診する場合が多いです。

夏型過敏性肺炎は、家屋が原因となることが多いことから、家族発症がみられ、専業主婦に多いことも明らかになっています。

【夏型過敏性肺炎の特徴】

・夏の間だけ咳が出て、夏風邪と診断れたことがある。

・夏風邪の症状が頑固でなかなかすっきりしない。

・旅行などで自宅を離れると体調がよくなる。

・何年にもわたって、夏場になると同じ症状を繰り返す。

・家に長く居ると咳がひどくなる。

【抗トリコスポロン・アサヒ抗体検査の判定基準】



★CAI (Corrected Absorbance Index) 補正吸光度

【治療法】

自宅から離れ、原因となっている"トリコスポロン・クタネウム"を吸入する環境から隔離することが必要となります。

それだけでかなり改善しますが、症状が重い場合はステロイド薬を服用する必要があります。

【予防法】

住宅内の "トリコスポロン・クタネウム"の発生を抑えることにつきます。

カビは室温20度、湿度60%以上で発生しやすくなり、80%以上で爆発的に増殖することから、室内の換気を頻回に行いカビの繁殖しやすい条件を作らないようにすることです。

特に、エアコンはカビの発生の主たる原因となりやすいので気をつける必要があります。
エアコンを冷房状態から急に切ると中に水滴が溜まりやすく、その水滴のかでカビが繁殖しますから、カビの繁殖を防ぐためにはエアコンを切る1時間前に送風状態にすると水滴がなくなり、カビの繁殖をおさることが可能です。

さらに、加湿器や空気清浄機、全自動洗濯機などもカビの温床になることがあるのので注意が必要です。

2013年7月1日月曜日

臨床検査における感度と特異度について-3.感度と特異度の相関関係について-

検査とは、"感度の高い検査でスクリーニングを行い、"特異度の高い検査で診断を確定する"ことにつきます。

理想としては、感度、特異度の両者が共に100%が望ましい訳ですが,現実的にはそのよう検査は存在しません。

感度を上げれば特異度は低下し、特異度を上げれば感度は低下します。

そのために、スクリーニングに使用するHIV抗体検査では、感染している人をひとりも見逃すことのない感度100%が要求されます。

しかし、感度100%を要求すると、HIVに感染していない人も陽性と判定してしまいます、すなわち特異度が低下するわけです。


先に解説しましたように、

1.感染している人はすべて正しく検出で来るのが感度

2.HIVに感染していない人は全て陰性するのが特異度

と呼びます。

HIV感染の判断をするHIV抗体検査の感度と特異度の関係は、

※スクリーニング検査としては、HIV感染者を一人も見逃さないために感度100%の検査を使用します。

※確認検査としては、ニセのHIV感染者を排除する意味から、特異度100%の検査を使用します。

【事 例】

HIV検査で感度高いリアルタイムPCR検査で、不安な行為から11日で陽性となった場合、
特異度の高いウエスタンブロット法でこの時期に検査をしますと、この検査は感度が低いことから陰性となってしまいます。

【お知らせ】

臨床検査についてどのようなことでも、疑問点や質問等がありましたら、右サイドバーの
「質問・お問い合わせはこちら

を利用してどしどしお寄せください。

お待ちしております。

72時間位内に当ブログで解説させて頂きますので、どしどし質問をお寄せください。

2013年6月24日月曜日

臨床検査における感度と特異度について-2.特異度について-

臨床検査における特異度とは、"本来陰性であるべきのものを正しく陰性と判定する確率"として定義されます。

いわゆる特異度が高いということは、"本来陰性であるべきものを正しく陰性と判定する可能性が高い"、あるいは"本来陰性であるべきのものを間違って陽性と判定する可能性が低い"という意味にほかなりません。

これを具体的に解説しますと、

あるHIV検査キットを用いて100人のHIV陰性者の検査を行った場合、

このHIV検査キットで100人をすべて陰性と判定出来た場合、このHIV検査キットは特異度100%と言うこととなります。

90人を陽性として10人を陽性とすれば、本来陰性となるべきものを陽性とした訳ですから、特異度90%となります。

この場合どちらの検査キットを使用するかと言うと、当然特異度100%の検査キットを使用することになります。

しかし、特異度を100%にしますと、今度は感度が低下してしまい感度100%を保つことができなくなります。

そのためにHIVなどの感染症の感染判断をするスクリーニング検査キットは、特異度100%のキットは使用出来ません。

特異度100%のキットを使用しますと、感度が低下することから感染者を見逃すことになります。

そのためにスクリーニング検査では、特異度100%の検査キットを採用することはできず、確認検査に利用されることになります

要するに確認検査に使用するキットは、真の陰性者をひとりでも間違って陽性とする(偽陽性)とすことのない検査キットが必要とされます。

特異度99%の確認検査キットは使用することはできません。

※感度100%のスクリーニング検査キットでも、その検査を受ける最適な時期に受けないと感度100%とはなりません※

【例】

HIV確認検査は、HIVスクリーニング検査で陽性となった人が真に陽性か否かを確認する検査ですが、スクリーニング検査に比べ感度が非常に低いことから、不安な行為から12週以降に受ければ、実際感染しているにもかかわらず陰性となることがあります。

どのような検査キットでも、検査を受ける最適な時期が決められていますから、その時期に検査を受けてこそ特異度100%が望めるわけです。

受ける時期を間違えて、この検査キットの特異度は100%ではなく80%で低いから使用できないというのは間違いです。

次回は、感度と特異度の関連性について解説いたします。

2013年6月17日月曜日

臨床検査における感度と特異度について-1.感度について-

臨床検査でよく使用される「感度」と「特異度」について解説します。

臨床検査における感度とは、"陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率"として定義されています。

いわゆる感度が高いという事は、"陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する可能性が高い"、または"陽性と判定されるべきものを間違って陰性と判定する可能性が低い"という意味にほかなりません。

これを具体的に解説しますと、

あるHIV検査キットを用いて100人のHIV陽性者の検査を行った場合、

このHIV検査キットで100人をすべて陽性と判定出来た場合、このHIV検査キットは感度100%と言うことになります。

90人を陽性として10人を陰性とすれば、本来陽性と出ないといけないものを陰性とした訳ですから、感度90%となります。

この場合どちらの検査キットを使用するかと言うと、当然感度100%の検査キットを使用することになります。

特にHIVなどの感染症の感染判断をする検査キットは、感染者を一人でも見逃すことができませんので、感度100%の検査キットしか採用することはできません。

要するにどのようなスクリーニング検査キットにおいても、使用するキットは真の感染者(陽性)をひとりも見逃すことのない検査キットが必要とされます。

感度99%のスクリーニング検査キットは使用することはできません、実際感度99%のスクリーニング検査キットは、日本においては認可されることはありません。

※感度100%のスクリーニング検査キットでも、その検査を受ける最適な時期に受けないと感度100%とはなりません※

【例】

HIV迅速抗体検査は、不安な行為から12週以降に検査を受ければ、感度100%の結果が得られますが、これを不安な行為から6週に受けてその時陰性となり、以後12週で陽性が確認されても、この検査キットは感度100%ではないとは言えません。

どのような検査キットでも、検査を受ける最適な時期が決められていますから、その時期に検査を受けてこそ感度100%が望めるわけです。

受ける時期を間違えて、この検査キットの感度は100%ではなく80%で低いから使用できないというのは間違いです。

特異度に関しては次回解説いたします。

2013年6月10日月曜日

インフルエンザ迅速検査について

インフルエンザは、日本おいては毎年11月~4月に流行が見られますが、夏場でも流行していることが近年明らかになってきています。

これは、インフルエンザ迅速検査の普及によって明らかになりました。

特に 沖縄県ではここ近年、夏のインフルエンザ流行がほぼ毎年続いています。

咽頭拭い液や鼻腔拭い液などの検体を使って迅速にインフルエンザを診断するキットが2001年の秋に承認され、普及してきています。


この検査キットでは、A型インフルエンザもB型インフルエンザも15分で結果が出るようになっています。

重要なことは、インフルエンザ検査が陰性の場合はインフルエンザではないと断定することはできません。

陽性の場合は、まずインフルエンザと断定して間違いはありませんが、陰性の場合にはインフルエンザであることもインフルエンザ でないこともあり得るのです

特に発病後1日以内は感度が低いためインフルエンザであるのに検査では陰性となる可能性があります

検査が陰性であっても主治医の総合的判断によって、検査は陰性であるが臨床症状や流行状況から考えてどう考えてもこれはインフルエンザと、考えれば発症後48時間以内なら効果のある抗インフルエンザ薬を処方します。

※皮肉なことに抗インフルエンザ薬が効果のないと言われる発病後48時間以降にインフルエンザ迅速検査の陽性率は高いのです※

発熱後24~48時間以内が検査の陽性率も高く抗インフルエンザ薬の効果も期待できる貴重な時間帯と言えます。

発熱したら直ぐに受診してインフルエンザの検査を受けることが最適ではありません。

インフルエンザウイルスの増殖は、発病後2~3日で最高に達し、その後急速に減少し、5~7日で消失することからして、迅速診断キットで陽性になるには、インフルエンザウイルスの量がある程度必要で、ウイルスの量が少ない発病の初期は陰性になりやすくなります。

また、一部ではインフルエンザではないのに陽性にでる場合ことが報告されています。

【インフルエンザ迅速検査の信頼性】

陽性の場合はほぼ100%インフルエンザと診断できるが、陰性の場合は注意を要する。

特に大人は小児よりも陰性に出やすく、また発症初日は陰性になりやすい。

その理由としては、インフルエンザウイルス量が検出できる以下の量であるのであって、インフルエンザではないと断言はできない。

※発症後12時間以内は、ウイルス検出率はかなり悪く、24時間以降の信頼性は高くなります※

2013年6月3日月曜日

尿検査-No.11 尿検査の正しい受け方-

尿検査の正しい受け方について解説しておきます。


1.病院が準備した採尿用紙コップを使用して、必ず名前を確認して下さい。


2.陰部を清潔にしてから採尿します、おりものや雑菌が混入すると間違った結果が出てしまいます。

特に女性の場合は気をつける必要があります。

3.検査前日のセックスは厳禁です、なぜなら精子や雑菌の混入などが尿に混入して誤判定の原因になります。

4.なるべく生理中の検査は避けるべきです、なぜなら尿に生理の血液が混入して誤判定の原因になります。

やむを得ない場合は、担当者に、「生理中」であることを伝えてください。
  
5.出始めの尿は採取しないで排尿して、排尿途中の"中間尿"を採取してください。

最初の尿で尿道のx雑菌を洗い流します。

6.検査に必要な尿の量は、コップの1/3から半分もあれば十分で、最低10cc程度あれば検査は可能です。

7.採尿中にコップの中に陰毛などが入っても手で取らないでください。

手に着いている雑菌が混入しますから。

8.異常値を恐れて水などは絶対に入れないことです。

異常があれば水で薄めても、正常値にはなりませんし、むしろ異常値が出てたいへんなことになります。

9.尿検査を受ける前日から果実や清涼飲料水、ドリンク剤など、ビタミンCを含む物の摂取を控えてください。

尿の定性検査は化学反応を利用したものですから、これらに含まれるビタミンC(アスコルビン酸)が影響して潜血反応や尿糖などを偽陰性(-)にしてしまうことがあります。

2013年5月27日月曜日

尿検査-No.10 尿沈渣-

採尿した尿を5分間低速で遠心分離しますと、尿の液状成分と固形成分とが分離します。

下に沈んだ固形成分を顕微鏡で観察し、赤血球、白血球、尿酸結晶、細胞、細菌などが顕微鏡の一視野の中に幾らあるかを調べる検査が尿沈渣です。

【尿沈渣の目的】

尿沈渣の数の増加や有無を調べて、腎臓などの異常の診断や病状の経過観察を行います。
尿沈渣は、尿タンパク、尿糖、尿潜血などの定性検査で陽性となった場合に実施します。

【尿沈渣で何が分かる】

尿が腎臓でつくられ膀胱や尿路を通って排出される間には、それぞれの上皮細胞など剥がれ落ちて尿中に混入するものを調べることで、腎臓や尿路系の病気の種類や異常部位を推測することができます。

【基準値】

赤血球…1視野に1個以内

白血球…1視野に3個以内

上皮細胞…1視野に少数

円柱細胞…1視野に陰性

結晶成分…1視野に少量

【判 定】

健康人でも、赤血球やその他の固形物がごくわずかは見られますが、数が多い場合はどこにどのような異常があるを判断することができます。

赤血球や白血球が存在すれば出血があると考えられ、白血球が多い場合には炎症が起こっていると考えられます。

また、炎症があると上皮細胞は粘膜などをつくっている細胞剥がれ落ちて尿中に排泄されます。

尿細管に異常があると、腎臓の尿細管を鋳型にして出来た円柱細胞が尿中に排泄されます。

結晶は尿酸などの成分が多い場合に固まって尿中にできます。

【異常が見られた場合】


赤血球の増加:急性糸球体腎炎、腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎、腎腫瘍、腎結石など

白血球の増加:腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎など

円柱細胞の増加:慢性腎炎、糸球体腎炎、腎盂腎炎、ネフローゼ症候群など

上皮細胞の増加:膀胱炎、尿道炎など

結晶成分の増加:腎結石、急性肝炎、閉塞性黄疸、痛風など

細菌:腎・尿路系の細菌感染症など

赤血球や白血球は体調の変化などにより一時的に多くなることもありますから、正確な診断のためには必ず再検査を行ない、再び異常値が見られれば感染症を疑い、細菌培養検査で原因となっている菌を調べます。

その他の異常値では、おもに腎臓内科や泌尿器科で尿中成分の定量検査、尿素窒素、クレアチニン、電解質などの血液検査、超音波検査、X線CT検査、腎盂造影、腎生検などの詳しい検査を実施します。

また、結晶成分が多く肝炎や黄疸が疑われる場合は、肝機能検査やエコー検査を実施します。

2013年5月20日月曜日

尿検査-No.9亜硝酸塩検査-


亜硝酸塩検査とは、尿中に亜硝酸塩が存在するかを調べる検査です。

日常生活において私たちは、主に野菜から硝酸塩と呼ばれる物質を摂取しています。

口から取り込まれた硝酸塩は、主に消化管の上部から体内に吸収され、一部は唾液中に分泌されますが、大部分が腎臓から尿中へ排泄されます。

膀胱炎などの尿路感染症に感染して、尿中に細菌が繁殖していると、硝酸塩は細菌によって還元されて亜硝酸塩へと変化します。

従って、通常時の細菌の存在しない尿中には亜硝酸塩は検出されません。

テステープで尿中の亜硝酸塩の有無を調べることにより、尿路感染症がの有無を判断します。

しかし、すべての細菌が硝酸塩を亜硝酸に還元するわけではありませんので、尿中の白血球の数や尿沈渣の結果を踏まえて総合的に細菌感染の有無の判断を下します。

【参考基準値】

陰性

【陽性の場合】

膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症が疑われます。

【検査時の注意点】

細菌が硝酸塩を亜硝酸塩に還元するには4時間以上必要なことからして、膀胱炎で頻回に排尿を繰り返している場合は、膀胱内に尿が滞留している時間が短く、細菌が亜硝酸塩を作るための時間が不十分のため、尿の中に細菌が繁殖していても陰性となることがあります。

頻回な嘔吐や過度のダイエットによる食物からの硝酸塩の摂取不足があると、尿の中に細菌が存在しても亜硝酸塩が作られる量が少ないため、陰性となることがあります。

細菌感染のない尿を採取してしばらく放置した場合にも、陽性となることがあります。

2013年5月13日月曜日

尿検査-No.8尿潜血反応-


尿潜血反応とは、尿の中に血液が混じっているか否かを調べる検査です。

健康人でも、1日におよそ20000個の赤血球が尿中に排泄されていますが、腎臓や膀胱、尿道などに異常があると尿中の赤血球の量が増加します。

尿中に多くの血液が混ざれば肉眼でひと目で分かります(血尿)が、ごく微量の血液が尿中に混ざっても肉眼では判定できません。

その為にテステープで尿中の血液を調べます。

テステープ検査によって尿中の微量の血液即ち尿潜血反応を調べることができます。

【基準値】


陰性(-)

※健康な人でもわずかに赤血球が尿中に出ることがありますが、テステープ検査では検出されません※

【尿潜血反応が陽性となる原因】

腎臓系の疾患や膀胱における疾患が考えられますが、その原因は多数あり、結石であったり炎症や、時によっては腫瘍がある可能性もあります。

腎臓や尿管、膀胱といった尿の尿路・尿道になんらかの異常が起きている場合ことが考えられます。

腎臓…急性・慢性腎炎、腎結石、腎膿瘍、遊走腎など

尿管…尿管結石、尿管腫瘍、尿管異物など

膀胱…膀胱炎、膀胱結石、膀胱腫瘍など

尿道…前立腺炎、前立腺腫瘍、尿道炎など

その他…白血病などの出血傾向のある病気や溶血性疾患など

※生理中の場合は、尿潜血反応が陽性となりますし、激しい運動後や発熱・過労などにより起こる生理的な血尿や、一部の鎮痛解熱剤や抗生物質、利尿剤を服用している場合でも偽陽性または陽性反応がでる場合がありますが、この場合は問題ありません※

※、女性では生理中のために尿に血液が混じってしまうために起こる血尿などがあり、病的でないものが多くあります※

※乳幼児の血尿は、一般的に7歳くらいになると半数近くの方が尿潜血が陰性となります※

※良性家族性血尿※

遺伝性のもので、腎臓にある糸球体基底膜と呼ばれる膜が生まれつき薄い病気で、
一般的に予後の良い病気です。

【検査時の注意事項】

女性の場合、生理中や生理後数日は経血により尿潜血が陽性となることがありますので、可能であればこの期間は尿潜血の検査は避けるべきです。

テステープ検査では、大量のビタミンC(アスコルビン酸)が尿中に存在すると、偽陰性(実際は陽性でも陰性になってしまう)になることがありますので、尿検査を受ける前日からはビタミンCを多く含む飲料(清涼飲料水やジュースなど)や食物は摂取しないように注意する必要があります。

2013年5月6日月曜日

尿検査-No.7 ウロビリノーゲン-


尿中のスクリーニング検査は、テステープ(試験紙法)による定性法で実施されます。

尿に専用のテステープを浸し、色の変化で判定します。

尿中ウロビリノーゲンは、肝臓や胆のうの機能の異常を診断する尿検査の一種です。

ウロビリノーゲンは、古くなった赤血球が肝臓で分解されてできるビルビリンという成分が胆汁となり腸に排出され、そこで腸内細菌により分解されたものです。

ウロビリノーゲンは、腸から少量吸収され、肝臓でビリルビンとなりますが、すべてがビリルビンとはならず、一部は腎臓から尿中へ排泄されます。

従って健康な人でも微量のウロビリノーゲンが尿中に検出されるのが普通で、多く検出される或いは検出されない場合は異常と判断します。

【便秘・下痢とウロビリノーゲンの関係】

頑固な便秘の場合、便が長時間腸内に停滞しているため、ウロビリノーゲンが吸収される量がふえるために、陽性を示すことがあります。

下痢の場合、腸内の内容物が留まっている時間が短くなり、腸内細菌によってウロビリノーゲンに変換されにくくなるため、陰性を示すことがあります。

【ウロビリノーゲンの生理的変動】

1.年齢による変動

新生児の場合、腸内細菌叢が未発達なためにビリルビンをウロビリノーゲンに変換できないために陰性となります。

2.日内変動

一般的にすべての人は、ウロビリノーゲンが尿中へ排泄される量には日内変動があり、夜間や午前中には排泄が少なく、午後に増加して午後2時~4時頃に排泄量がピークとなります。

【検査の目的】

1.尿のスクリーニング検査として

2.肝障害や胆道系疾患を疑う時

【基準値】

プラスマイナス (±)

※基準値は施設ごとで異なる場合があります※

【ウロビリノーゲンが異常値を示す病態】

1.陽性の場合

胆道が閉塞され、ビリルビンを含む胆汁が腸に排泄されないため陰性となります。

肝疾患(肝炎、肝硬変など)・溶血性貧血・心不全・腸閉塞・過度の便秘など

2.陰性の場合 

※テステープでは判定不能※

重度の肝障害によりウロビリノーゲンの前段階であるビリルビンが作られないため陰性となります。

胆石・胆管閉塞・腎機能障害(高度)・下痢・抗生剤の長期使用など

【検査時の注意事項】

ウロビリノーゲンは、放置しておくと酸化されてウロビリンに変化してしまうので、新鮮な尿で検査する必要があります。

陽性または陰性反応が出た場合は再検査・精密検査受ける必要があります。

2013年4月29日月曜日

尿検査-No.6尿糖検査-


尿糖とは、血液中の糖(ブドウ糖)が尿中に漏れ出てきたものです。

健康な人の場合、尿中にブドウ糖が漏れ出すのはほんのわずかです。

腎臓は、血液中のブドウ糖がかなり高値になっても、尿中に漏出させない仕組みになっています。

血糖値が160~180mg/dlを超えないと、糖は尿中には出てきませんが、糖尿病などで血糖値がこれ以上に高くなると、腎臓での糖の処理能力が限度を超えて尿中に糖が排泄されるようになります。

尿糖検査は糖尿病を見つけ出すスクリーニング検査として実施されますが、尿糖が陽性となっても必ずしも糖尿病とは言えません。

【尿糖の検査方法】

尿試験紙を尿で濡らしたときの変色の変化で判断する定性検査と、1日分の尿にどれくらいの糖が出ているかを測定する定量検査があります。

尿試験紙での定性検査で尿糖が出ていると認められた場合に定量検査が行なわれます。

【検査結果の判定】

尿中に糖が排泄されていなければ、尿試験紙による定性検査では陰性(-)となります。

定量検査でも、尿中の糖の量が1日1g以下なら基準範囲です。

副腎皮質ホルモンなどの服用や妊娠中などに陽性になることがあります。

【検査の注意】

検査当日の食事はいつもの通りで構いませんが飲酒は控えるべきです。

【基準値】

定性検査…陰性(-)

定量検査…1日1g以下

【尿糖検査が陽性の場合】

尿中に糖が排泄されていた場合、空腹時の血糖値や血中インスリン濃度の検査を行い、ブドウ糖負荷試験などを調べて総合的に診断します。

尿糖が陽性の場合約10%が糖尿病に移行する可能性がありますので、年に一度は検査を受けておくべきです。

また、腎性糖尿、甲状腺機能亢進症などのホルモン異常、クッシング症候群などが考えられますが、これも各種検査を実施して総合的に診断します。

2013年4月22日月曜日

尿検査-No.5尿蛋白検査.その2.正常蛋白③その他の原因蛋白-


異常がなくても一次的に尿中に蛋白が排泄されることは、前回と前々回に紹介した以外にもに多くありますから紹介しておきます。

①食餌性蛋白尿

大量の蛋白質を摂取した時に一時的に尿中に蛋白が排泄されます。

②運動性蛋白尿     

激しい運動後に一時的に尿中に蛋白が排泄されます。

③冷水浴後蛋白尿    

冷たい風呂などに入った後一時的に尿中に蛋白が排泄されます。

※①~③の場合再検査では陰性となる場合がほとんどで、問題はありません※


④妊娠、生理前、精液や膣分泌物の混入などによっても尿蛋白が陽性を示すことがあります。

【妊娠と尿蛋白】

妊娠すると尿の中に蛋白が排泄されやすくなります。

これは、妊娠すると腎臓の糸球体でろ過される血液量が増えるためで、腎血漿流量は妊娠前に比べ約30%、糸球体濾過量は約50%増加します、そのために糸球体に負担がかかることから尿へ蛋白が排泄されやすくなります。

【注 意】

妊娠中に尿蛋白が陽性となった場合は、妊娠中毒症や腎疾患の可能性もありますので注意が必要ですし、妊娠により腎盂や尿管が拡張することから、膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症に罹りやすくなり、その影響で尿の中に蛋白がでることがありますので、注意が必要です。

【お願い】

今後の記事作成の参考にさせて頂きますので、当ブログをお読みになりましたら、右サイド上部の『ブログ評価』を宜しくお願いいたします。




2013年4月15日月曜日

血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋: 尿検査-No.5尿蛋白検査.その2.正常蛋白②熱性蛋白尿-

血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋: 尿検査-No.5尿蛋白検査.その2.正常蛋白②熱性蛋白尿-: 発熱時に一時的に尿中に蛋白が排泄されますが、熱が下がると尿中への排泄が無くなり、尿中の尿蛋白は陰性となります。 発熱による蛋白尿ですから、熱が下がると蛋白尿も消える一過性のものですから心配はありません。


解熱後に再度尿検査を行い尿蛋白が陰性であれば、熱性蛋白尿と判断されます。

【注 意】

解熱後も尿蛋白が陽性の場合は、熱性蛋白尿ではなくほかの原因による尿中への蛋白の排泄によるものですから、精密検査の必要があります。

尿検査-No.5尿蛋白検査.その2.正常蛋白②熱性蛋白尿-


発熱時に一時的に尿中に蛋白が排泄されますが、熱が下がると尿中への排泄が無くなり、尿中の尿蛋白は陰性となります。

発熱による蛋白尿ですから、熱が下がると蛋白尿も消える一過性のものですから心配はありません。

解熱後に再度尿検査を行い尿蛋白が陰性であれば、熱性蛋白尿と判断されます。

【注 意】

解熱後も尿蛋白が陽性の場合は、熱性蛋白尿ではなくほかの原因による尿中への蛋白の排泄によるものですから、精密検査の必要があります。

2013年4月8日月曜日

尿検査-No.5尿蛋白検査.その2.正常蛋白①起立性蛋白尿-


腎臓やその他の器官が悪くなくても尿中に蛋白が排泄されることがあります。

これを、『生理蛋白』、『正常蛋白』、『良性蛋白』と呼びます。

今回は、『生理蛋白』のひとつの『起立性蛋白尿(別名 体位性蛋白尿)』について解説致します。


起立性蛋白尿とは、寝ていたり、横になっていたりして、直立していないときには尿中に蛋白は排泄されませんが、立っている時や、腰を曲げたりしている時に尿中に蛋白が排泄されます。

起立性蛋白尿は、10歳代の若年者に多くみられ、長期間持続する場合もありますが、予後は良好です。

【起立性蛋白尿の原因】


起立性蛋白尿は、腎臓の血管の尿をつくる部分である糸球体での腎臓の静脈が圧迫されて、うっ血を起こしそのために、尿中に蛋白が排泄されると考えられています。


【起立性蛋白尿の検査】

起立性体位によって尿中に蛋白が認められるが、横になることにより採取した尿中から蛋白が認められなければ、『起立性蛋白尿』と判断されます。

起床時尿で3日連続で蛋白が認められなければ、起立性蛋白尿と判断されます。

【起立性蛋白尿の対応】

起立していることにより、腎静脈が圧迫されて起こるものですから病的なものではありません。

小児などに多く背骨が曲がっていることから腎臓の血管が圧迫され、尿中に蛋白が排泄されますが、成長するに従い尿中への蛋白の排泄はなくなりますから心配はありません。

蛋白が大量に出ることはなく,顔や体がむくむ,尿の量が減ることもありません。

【注 意】

※起立性蛋白尿が成人以降に出現する可能性は低いので、病的な蛋白尿であるとの前提で臨む必要があります※

2013年4月1日月曜日

尿検査-No.5尿蛋白検査.その1.異常蛋白-


尿中に蛋白が存在するかを調べる検査です。

健常な人でも蛋白が尿に排泄されていることがありますが、テステープでの定性法で検査する場合では、陰性になるくらいの微量(150mg以下/日)です。

一般的には、アルブミンのような大きい蛋白は、腎臓の糸球体と呼ばれる濾過器を通過できないので、尿の中にはほとんど排出されません。

小さな蛋白の場合、糸球体を通過することができますが、糸球体より下部にある尿細管と呼ばれる器官で吸収されることから、これも尿の中にはほとんど排泄されません。

腎臓に障害が発生して、糸球体や尿細管に障害が起きると、蛋白を濾過・吸収する能力が低下するため、尿中に蛋白が排泄され尿蛋白が陽性となります。

【テステープによる尿蛋白陽性と定量との関係】

1+ : 尿蛋白が30~99mg/dl相当
2+ : 尿蛋白が100~299mg/dl相当
3+ : 尿蛋白が300~999mg/dl相当
4+ : 尿蛋白が1000~  mg/dl相当

※テステープの種類によって若干の違いが起こることがあります※


【基準値】

定性法 陰性(-)

定量法 20~120mg/日

※基準値は施設ごとで異なる場合があります※

【尿蛋白検査が陽性(高値)を示す】

腎臓より前の段階で異常があり、尿蛋白が陽性になるものを"腎前性"、腎臓に異常があるために陽性となるものを"腎性"、腎臓より後の臓器(例えば膀胱など)が影響して陽性となるものを"腎後性"と区別します。

1.腎前性蛋白尿

腎臓自体には異常がなく、腎臓以外の臓器の障害や感染症・悪性腫瘍などにより、血液中に低分子蛋白の増加がおこり、その結果、尿細管での蛋白の再吸収が追いつかなくなる病態で起こります。

【疑われる疾患】 多発性骨髄腫・溶血性貧血・膠原病・心不全など

2.腎性蛋白尿

腎臓の障害部位によって以下のふたつに分類されます。

1)糸球体性蛋白尿

糸球体は、血液をろ過する働きがあり、アルブミンのような大きな蛋白は通常、糸球体を通過することはできません。

しかし、糸球体に障害が起こると、アルブミンが糸球体を通過できるようになるため、蛋白が尿の中に通常時よりも多く出現します。

2)尿細管性蛋白尿

尿細管では通常、糸球体でのろ過作業によって通過してきた低分子の蛋白を体内に再吸収する働きがありますが、尿細管が障害を受けると、蛋白の再吸収ができなくなるため、蛋白が尿の中に通常時よりも多く出現します。

【疑われる疾患】 急性又は慢性腎炎・ネフローゼ症候群・アミロイド腎・カドミウム中毒・ビタミンD中毒など

3.腎後性蛋白尿

前立腺炎や膀胱炎、腎臓より下部の腫瘍などの影響により、血液や粘液などが尿に混入し、これらの影響で蛋白が尿の中に通常時よりも多く出現します。

【疑われる疾患】 膀胱炎・前立腺炎・腫瘍(膀胱、前立腺など)・膀胱や尿管結石など

2013年3月25日月曜日

尿検査-No.4尿のpH-


尿のpH検査では、尿の酸性・アルカリ性を調べます。

中性がpH7、それより数値が小さと酸性、大きいとアルカリ性をあらわします。

健康なヒトの尿は、弱酸性であり、中性に向かうよう体の調節機能が自然に働いています。

しかし偏食気味の人や、身体の一部に不調が起こり、調節機能が働きにくい状態だとこのpHに変化が起こることがあります。

動物性食品を多く摂取すると尿は酸性となり、植物性食品を多く摂取するとアルカリ性となります。


【検査目的】

尿のpHは、酸塩基平衡(体内の水素イオン濃度を適切に保つ調節機構)の異常を反映しています。


【基準値】

pH5~7.5

健常なヒトの場合は、pH6.0~6.5前後と弱酸性です。



【主な疾患】

1)尿のpHが酸性の場合

疑われる病気は、腎炎、糖尿病、痛風などがあります。

発熱や下痢の症状がある場合も、尿は酸性となります。

2)尿のpHがアルカリ性の場合

尿がアルカリ性を示した場合は、まず疑われるのは尿路感染症です。

腎盂炎や膀胱炎、尿道炎などがあります。

細菌や膿汁が尿に混じりアルカリ性となります。

※尿のpHは刻々と変化し、1日の中でも酸性から中性と時間ごとに変化することもありますから、尿のpHだけでは判断はできません。


2013年3月18日月曜日

尿検査-No.3 尿の比重-


尿比重とは、尿の中の水分と水分以外の物質の割合を算出したものです。

尿には水分以外に、体内活動の結果として含まれる老廃物(尿素や窒素、ナトリウム、クロールなど)が含まれています。

その結果、尿の比重は水よりもやや高く、健康時には1.010~1.030の範囲で変動しています。

尿比重値の変化によって、腎臓の病気を推定することができます。

尿の比重値は、健康な人でも水分摂取量により変化します。

大きく変動する場合は、腎臓での尿の濃縮力などの障害が考えられます。

【基準値】

1.020~1.025

【異常な場合疑われる病気】

低比重・・・・・慢性腎炎、尿崩症

高比重・・・・・ネフローゼ症候群、糖尿病、心不全

2013年3月11日月曜日

尿検査-No.2 尿の色について-その5.黄褐色~褐色-


尿が褐色になるのは、肝臓の代謝でできる色素が尿の中に出てきているためで、肝臓機能の異常が考えられます。

急性肝炎や胆道系の病気などの可能性も考えられます、更に肝臓に炎症がある場合は発熱、黄疸、全身倦怠感などの症状も現れます。

※健康な人でも多量に発汗したときも黄褐色になる場合がありますが、これは一次的なもので心配はありません。

※朝起きたときや、運動をした後、多量の汗をかいた後、風邪で熱のある時などは、尿が濃縮されて濃い黄褐色の尿になることがありますが、これも一時的なものなので心配はありません。

しかし、褐色の尿が長く続いたり、発熱、黄疸、全身倦怠感などの症状が続くときには、直ぐに受診することです。

2013年3月4日月曜日

尿検査-No.2 尿の色について-その4.白く濁る-


健康な人の尿の色は透明ですが、尿が白く濁っていたら、尿路に炎症などが起きている可能性があります。

また、食べ物や飲み物、または体調よって白く濁ることがあります。

殆どの場合は心配ありませんが、場合によっては尿中の塩類が結晶化して白く見えることもあり、この場合は尿路結石が原因の時もあります。


腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎、前立腺炎などの尿路感染症の場合には細菌などが侵入して、尿の中に白血球が混じり、それによって尿が白色に濁ってきます。

また、炎症性または化膿性疾患が原因の時は、膿によって白く濁る(膿尿)ことがありますが、この場合は排尿痛・発熱・腹部痛などを伴います。

膿尿ではなく尿が濁ってくる病気に乳び尿症と言う病気がありますが、これは腎臓でリンパ液が尿中に逆流してしまう病気です。

滅多にない病気ですが南九州や南方に多くフィラリアの感染と関係がある病気です。

何れにしても尿が白くにごり排尿時の痛みや尿の回数が増えたり、発熱・腹部痛が伴えば放置しないで必ず受診することです。

2013年2月26日火曜日

尿検査-No.2 尿の色について-その3.オレンジ色や黄緑色-


ビタミン剤を服用すると尿がオレンジ色や黄緑色になります。

特にビタミンB2の場合は、尿の色が蛍光の黄緑色になることがあります。

この場合は、ビタミン剤が原因ですから何の心配もありません。

ビタミン剤の服用が原因の時は、ビタミン剤の服用を中止すれば、もとの黄色~琥珀のような淡黄色で透明な尿に戻ります。

しかし、服用を中止ても尿の色が黄緑色で毎日続くようであれば、肝臓や胆嚢の病気が考えられますので、直ぐに受診することです。

2013年2月19日火曜日

尿検査-No.2 尿の色について-その2.色が薄くほとんど無色透明-


尿の色はもともと健康(正常)なときは黄色~琥珀のような淡黄色で透明です。

尿の色が薄く、ほとんど無色透明な場合は、糖尿病の人に多く見られます。

糖尿病の人は、尿として多量の水分が排泄されることから、喉が渇くことが多くそのために多量の水を飲むようになってしまいます。

多量の水分を取ることにより、尿量が異常に多くなり尿の色が薄くなって無色透明のようになってしまいます。

糖尿病の人は、排泄される尿量が多いために、尿の色素成分であるウロクロムが希釈されてほとんど無色になってしまいます。

※健康な人が多くの水を飲み一次的に尿の色が薄くなっても、直ぐに元に戻りますから心配は無用で※

【おまけ】

糖尿病の人の尿は甘い又は甘酸っぱい臭いがすることが多くあります。

普通ブドウ糖の血漿濃度が 200mg/dlを超えると尿に糖がでてきます。

尿中にブドウ糖が排泄されることから、尿が甘い又は甘酸っぱい臭いがする訳です。

2013年2月12日火曜日

尿検査-No.2 尿の色について-その1.赤色~赤褐色-


尿の色が赤色~赤褐色になっているのは、もっとも注意が必要です。

尿が赤く見えるのは、尿に赤血球が混じっているのからです。

これを血尿と呼びます。

血尿が出ることは、腎臓・尿管・膀胱・尿道の尿路の何処かに病変がある可能性があります。

病変の箇所から出血して尿に血液が混ざっているということです。

尿路結石が原因の場合は、尿に血液が混ざると同時に、腹部や背中の激痛が起こります。

女性の場合は、生理中は尿に血液が混ざることがあるので、尿に血液が混ざった場合は生理中であるか否かを考慮する必要があります。

また、尿の色が紅茶色・赤ワイン色・赤褐色になる場合は、肝炎により腎臓が侵されている場合に起こることもあります。

血尿が出ても痛みがなく自覚症状がない場合は、ガンも疑われます。

一度でも血尿が出れば直ぐに受診することをおすすめします。

それほど血尿は危険性が伴う尿です。

2013年2月3日日曜日

尿検査-No.2 尿の色について-


尿の色の変化によって、身体の健康状態を知ることができます。

健康な人の尿の色は、黄色~琥珀のような淡黄色で透明です。

尿の色が淡黄色なのは、胆汁に含まれるビリルビンという尿中色素のためです。

尿の色は健康な人でも時間的に変化します。

水分を多く摂った時は無色透明になります。

また、健康な人でも朝に起きた時の最初の尿や、運動・発汗・風邪などの発熱時などには尿の色が濃い黄褐色になります。

このようなことは、一時的なことで病気の心配はありません。

これは、身体の水分が一次的に奪われているために、尿が濃縮されたために尿が濃くなるのです。

また、食べ物の色素や着色料そのもの色が尿に出て、赤褐色や赤色・濃い緑色などさまざまな色になります。

更に尿の色は体調や季節などでも変化します。

このように尿の色は多彩ですが、よく観察することで体の健康状態を知ることができます。

次回からは尿の具体的な色について解説していきます。

2013年1月27日日曜日

尿検査-No.1 尿検査とは-


尿検査は、排泄された尿で検査を行います。

一般的には「検尿」と呼ばれ、体調が悪く受診した時の検査や健康診断の際にも実施されます。

尿は、血液中の人体に有害な物や新陳代謝の老廃物などを体外へ捨てるために腎臓で濾過されて作り出されます。

普段、何気なく排泄している尿は一種の生理現象としての認識しかありませんが、尿を調べることはその人の健康状態を確かめる大切な検査のひとつです。

健康な人では、1日に約1500ml前後の尿を排泄しますが、身体の調子が悪ければ、尿にもその異常が表れます。

例を上げれば、尿に血が混じったり、ニオイがいつもと違ったり、排尿時に痛みを伴うなど、さまざまな症状が現れます。

尿検査では、以下の項目を調べます。

1.尿の色調と比重

2.pH

3.タンパク質

4.糖

5.ウロビリノーゲン

6.結石の有無

7.尿路感染の病原体

8.妊娠テスト

9.赤血球・白血球の有無

10.薬物

次回からそれぞれの検査項目について詳細に紹介していきます。

2013年1月19日土曜日

インフルエンザ迅速検査について


013年1月現在、全国的にインフルエンザが流行期に入りました。

手洗い・マスクの着用・ウガイを励行して各自が感染予防に心がけて下さい。

今回は、インフルエンザについて解説します。

インフルエンザウイルスは、A型・B型・C型の3型に分類されています。

毎年定期的に流行するのは、A型のインフルエンザウイルスです。

A型インフルエンザウイルスはヒト、鳥類、ウマ、ブタなどに感染します。

B型ウイルスの場合は、毎年の季節性A型インフルエンザの流行が終わった直後の2月~3月にかけて流行する事が多いようです。

そして、ヒトからヒトへの感染経路をもつウイルスとして確認されています。

C型インフルエンザは、症状が通常のかぜと同程度であり流行性が低いウイルスであるためにあまり馴染みがありません。

近年では、インフルエンザの感染を簡単に検査できる迅速検査キットの普及により、インフルエンザは冬だけでなく一年中を通じて発生していることが明らかになっています。

咽頭拭い液や鼻腔拭い液などの検体を使って迅速にインフルエンザを診断するキットが普及して、利用されていますが、検査を受けるタイミングによっては、インフルエンザに感染していても陰性となることがあります。

検査で陽性と出た場合は、まずインフルエンザと断定して間違いはありませんが、陰性と出た場合にはインフルエンザであることもインフルエンザでないこともあり得るので注意が必要です。

【インフルエンザ検査を受けるタイミング】

インフルエンザに感染して発病後24時間以内で受けると、まず陰性(偽陰性)となってしまいます。

その為に診察した医師は、"検査は陰性だあるが、臨床症状や流行状況から考えてどう考えてもこれはインフルエンザ"と考えれば発症後48時間以内なら効果のある抗インフルエンザ薬を処方します。

医師が抗インフルエンザ薬を処方した場合には検査の結果が陰性であっても指示通りに服薬を続けることは必要です。

インフルエンザ検査を受けるタイミングは、発熱した24時間~48時間以内が検査の陽性率も高く抗インフルエンザ薬の効果も期待できるタイミングと言えます。

重要なことは、発熱したら直ぐにでも受診してインフルエンザの検査を受けることが良いとは言えません。

2013年1月9日水曜日

ノロウイルスについて-2.ノロウイルス検査-


ノロウイルスは増殖培養する方法がまだ見つかっていないため、検査法としては便中のノロウイルス粒子を電子顕微鏡で直接検査する必要があります。

また、ELISA法やノーウォークウイルスの遺伝子配列を元にしたRT-PCR法も開発され、診断に用いられていますが、日常的な診療での利用には無理がありました。

2012年4月1日、大塚製薬が、ノロウイルス抗原キット「クイックナビ-ノロ」の簡易検査を発売しました。

この検査は簡易で検査過度の高い検査ですが、以下の制約があります。

【検査の制約】

1.3歳未満の患者

2.65 歳以上の患者

3.悪性腫瘍の診断が確定している患者

4.臓器移植後の患者

5.抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、又は免疫抑制効果のある薬剤を投与中の患者

1~5以外の患者には保険適用での検査は出来ません。

【測定原理】

糞便をテストデバイスの滴加穴よりテストストリップのサンプルパッドに滴加すると,試料は毛細管現象によりコンジュゲートパッドへ移動します。

そこで抗NV-GI及び抗NV-GII抗体結合ラテックスが溶解し,試料中のNV抗原と免疫複合体を形成します。

この免疫複合体はテストストリップのメンブレン内を毛細管現象により移動し,テストライン上に固定化された抗NV-GI又は抗NV-GIIもしくは抗NV抗体に特異的に捕捉され,青色のラインを呈します。

このラインの有無を目視で確認し,試料中のNV抗原の有無を判定します。

また,反応に関与しなかった余剰の抗NV-GI及び抗NV-GII抗体結合ラテックスはコントロールラインに固定化された抗マウス免疫グロブリン(Igs)抗体(ウサギ)に捕捉され,青色のラインを呈します。

これはテストストリップ上で反応が正常に行われたことを示します。


【検査上の注意】

検体としては自然に排泄された糞便を使用する必要があります。

以下の検体は、正しい検査結果が得られ ないことがあることから使用できません。

1.嘔吐物(非糞便)

2.直腸から採取した糞便(直腸便)

3.浣腸液成分を含む糞便(浣腸便)

4.嚥下補助食品,経管栄養食等ゲル化剤等を含む食事を摂取した糞便

5.新生児の糞便

【操作方法】

1.便懸濁液の入っている検体浮遊液チューブに試料ろ過フィルター(糞便用)を確実に装着し,ゆっくりと逆さまにしてから,チューブをつまんでテストデバイスの試料滴加穴に3滴滴加します。

2.15~30℃で15分間静置します。

3.テストデバイスの判定部に出現するラインの有無を確認します。

【判定】

青色のコントロールラインと青色のテストラインを目視判定します。

※判定は15分間の反応時間経過後,速やかに行います※

(1) 陽 性

青色のコントロールラインと青色のテストラインが出現した場合,陽性と判定します。

(2) 陰 性

コントロールラインのみが出現した場合,陰性と判定します。

(3) 検 査無 効

テストラインの出現の有無によらず,コントロールラインが出現しない場合,検査は無効と判定し,再検査を行います。



【判定上の注意】

1.判定は所定の反応時間15分で行い、15分以降の結果は信頼性がありません。

2.コントロールライン又はテストラインの一部が欠けたり,色のにじみがある場合やライン以外に斑点状の発色がある場合でも,"ライン"が認識されれば検査結果は有効となります。

2013年1月1日火曜日

謹賀新年

明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願い致します。