血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2011年12月26日月曜日

腫瘍マーカー6.SCC(扁平上皮癌関連抗原、squamous cell carucinoma-related antigen)-


6.SCC(扁平上皮癌関連抗原)

SCCは、扁平上皮がん細胞から抽出された抗原で、腺癌がん未分化がんで陽性率は低いが扁平上皮癌がん高い陽性率を示す。

血液中のSCCは、子宮頚部、肺、食道、皮膚の扁平上皮がんで高値を示し、扁平上皮がんの診断や治療効果の判定に利用されます。

がん以外にもアトピー性皮膚炎や気管支炎、結核、腎不全などでも高値を示すことがあります。

SCCの基準値

1.5ng/ml以下

SCCの測定値が基準を超えた場合は、子宮がん(頸部扁平上皮がん)、肺がん、食道がん、頭頸部がん、子宮筋腫などが疑われます。

症状と合わせて判断し、食道がんが疑われる場合は、上部消化内視鏡検査、肺がんの場合は、気管支内視鏡検査や痰の中の細胞を診る喀痰検査、子宮頸部がんの場合は膣細胞診などを行って、診断を下します。

※がんがなくても、喫煙者では高くなることがあります。

2011年12月23日金曜日

腫瘍マーカー5.CA19-9(carbohydrate antigen19-9)-


5.CA19-9(carbohydrate antigen19-9)

CA19-9は、ルイス(Lewis)式血液型物質に関連した腫瘍マーカーのひとつです。

血液中のCA19-9は、消化器系の腫瘍のスクリーニングなどに用いられますが、特に膵臓・胆道がんや胃がん、大腸がん、肝臓がんで基準値が高くなりま。

その為に膵臓・胆道がん治療効果の判定や再発の早期発見に効果を発揮する検査です。

さらに肺がん、乳がん、卵巣がんなどでも高値を示します。 CA19-9の数値が高く、CA-125やCA-50なども高値のときは、婦人科系のがんが疑われ、これらの腫瘍マーカーをあわせて検査することは卵巣がんの早期発見に有効です。

そのほか、糖尿病、慢性肝炎、胆石症、胆嚢炎、慢性膵炎、子宮筋腫、良性卵巣腫瘍などでも陽性となります。

CA19-9の基準値

37U/mL以下

1.基準値が2倍を超えた場合

膵臓をはじめとする消化器系の臓器など、腺細胞(消化器や生殖器の一部を作っている細胞)でできているところのがんがあるかどうかを、腹部超音波検査や腹部CTなどで精密検査します。

2.基準値が2倍以内の場合

がんの存在を疑って検査を進めますが、がん以外でもこの程度は上昇することがあり、がんが見つからないときは経過を観察します。

CA19-9が高値を示すと、すい臓がんや胆道がんなど、消化器系のがんが疑われますが、
肝硬変、肝炎、慢性膵炎、胆石症などの、がんより良性の病気でもCA19-9が増加する事がありますが、その場合は37~100U/mlとほとんどが比較的低い数値となります。

数値が100U/ml以上の場合は、がんである確率が高いので、がんが発見できない場合でも経過観察が必要になります。

2011年12月20日火曜日

腫瘍マーカー4.CA15-3(carbohydrate antigen15-3)-



4.CA15-3(carbohydrate antigen15-3)

CA15-3はヒト乳脂球の膜上に存在する抗原(MAM-6)を使って作製した抗体が認識する抗原です。

血液中のCA15-3は、乳がんに対する特異性は高いが、原発乳がんよりむしろ進行性乳がんや再発乳癌がんの陽性率が高いため、再発の予知や治療効果の判定として有用な腫瘍マーカです。

そのために、乳がんのスクリーニング検査として用いられています。

さらに乳がんの再発・転移の追跡に有用とされています。

CA15-3の基準値

30U/ml以下

1.進行がんになると、基準値を超える率は10%以上となり、再発例では40%以上となります。

2.再発部位により基準値を超える率は異なり、リンパ節や骨への転移では約30%であるのに対して、肝臓などの内臓転移では75%と高率に基準値を超えます。

3.卵巣がんや肺がん、前立腺がんでも数値は上昇し、がん以外の病気では、子宮内膜症や骨盤炎症性疾患、肝炎でも高値を示します。

さらに、CA15-3は加齢と共にやや上昇傾向を示しますが、妊娠前期には低値となります。

検査値が基準値を超えた場合には、CEAなど他の腫瘍マーカーの検査をしたり、胸部X線検査、骨シンチグラム、CT検査などを組み合わせてがんの存在を確認する必要があります。

2011年12月16日金曜日

腫瘍マーカー3.CEA(癌胎児性抗原)-


3. CEA(癌胎児性抗原)

CEAは大腸癌組織の抽出物で、胎児の消化管にも存在する癌胎児性抗原です。

血液中のCEAは、食道、胃、直腸等の消化器系の腫瘍マーカーとして広く用いられていますが、進行性胃がんの30~40%にしか検出されません。

乳癌や卵巣癌などの多くの腫瘍で高値となるため臓器特異性が低いことから、CEAの検査のみでがんの診断はできません。

また、CEAが高くなる場合は、進行がんが多く、早期がんの診断には適さないので注意が必要です。

CEAの基準値

5.0ng/ml以下

CEAの値が高値である場合、体のどこかにがんがある可能性が高いので、症状にあわせてほかの血液検査やX線造影、超音波、CTなど消化器系を中心に精密検査も必要になります。

また、CEAが高値を示した時のがんは進行性であり、CEAの高値ががんによる場合は上昇傾向を示すため、1~2ヵ月後に再検査を行い、これで変動がなければ、高値でも問題のないときもあります。

しかし、基準値の倍以上ではがんの疑いが濃厚、4倍以上では転移がんが疑われます。

健康な人でも約3%の人は基準値を超える場合があるのと高齢でもやや上昇する傾向があります。

がんを切除したり、抗がん剤治療でがんが縮小したりするとCEAの値は低下します。

※CEAは、ヘビースモカーでも疑陽性となることがあります。

2011年12月14日水曜日

腫瘍マーカー2.PSA(前立腺特異抗原)-


2.PSA(前立腺特異抗原)

PSAは、前立腺に特異的にみられる腫瘍マーカーで、前立腺がんが疑われるとき、まず行われる検査です。

また、前立腺がんの進行具合を鋭敏に反映するため、前立腺がんの早期発見とともに病気の推定、治療効果判定や予後予測にも使用されます。

PSAは前立腺がんだけでなく、前立腺肥大症でも血中濃度が上昇します。

PSAの基準値

4.0ng/ml以下

1.4.0ng/ml以下:定期的にPSA検査をして経過を見守ります。

2.4.1ng/ml~10ng/ml :正常値より若干高めの値で、がんの人と前立腺肥大症など、前立腺の他の病気の人が含まれている可能性があります。

3.10.1ng/ml以上:前立腺がんがあることが強く疑われます。
高い場合は数百ng/mlという数値が出ることもあります

※加齢とともに数値が上昇するため、年齢別設定が行われ、一般的には4.0~10.0ng/mlがグレイゾーンとされています。

年齢 基準値

50~64歳:3.0ng/mL以下
65~69歳:3.0ng/mL以下
70歳~:4.0ng/mL以下

PSAの基準値を超える結果が得られると、肛門から指を入れる直腸診で前立腺の状態を調べ、経直腸的超音波検査などを行い、がんが疑われたら、組織片を調べる前立腺生検で確定診断をつける必要があります。

一般的には、40歳前後から積極的にPSA検査などの定期健診を受けたほうが良いでしょう。

PSAの値は前立腺に刺激を与えた後は、健常な男性でも高くなることがあります。

2011年12月12日月曜日

腫瘍マーカー1.AFP(α-フェトプロテイン)-


腫瘍マーカーとは、がんの目印となる特定の物質を言います。

身体の中に腫瘍ができると、健康なときにはほとんど見られない特殊な物質が、その腫瘍により大量につくられ、血液中に出現してきます、この物質を「腫瘍マーカー」といいます。

今囘から数回に分けて各種腫瘍マーカーについて解説していきます。

1.AFP(α-フェトプロテイン)

AFPは、もともと妊娠早期の胎児にみられる血清蛋白の一種で、健康な成人の血液中には含まれず、原発性肝癌の患者の95%の血液に含まれるため、肝臓がんの腫瘍マーカーとして用いられています。

また、AFPは肝炎や肝硬変でも測定値が上昇することから、肝臓がんをはじめ、肝臓病の早期発見、診断、病状の経過観察などに役立ちます。

しかし、肝臓がんでもAFPが基準値以上にならないものもありますし、逆に基準値以上となっても肝臓がんでない場合もあります。

AFPの基準値

20ng/ml以下

基準値が高い時の解釈

1.慢性の肝障害があり、AFPの値が200~400ng/mlなら肝臓がんの可能性が高い。

2.400~1000ng/ml以上であれば非常に疑わしい。

3.3000ng/ml以上なら95%、200~3000ng/mlなら4分の3が原発性肝がんで、残りは肝炎、肝硬変、転移性肝がんとされています。

胃がんや膵臓がん、胆道がん、大腸がんなど、肝臓がん以外のがんでも、ときに基準値以上となる場合がありますが、肝臓がんほど高値にはなりません。

AFPが基準値以上を示したら、第一に肝臓がんを疑い、肝臓がんで高知を示すほかの腫瘍マーカー(PIVKA-Ⅱ)を測定したり、腹部超音波検査や腹部CT検査を行って腫瘍の存在を確認します。

【附 則】

妊婦の場合は、胎児から移行したAFPのために妊娠八ヶ月をピークに高値となりますが、それが異常に増加した場合には、異常妊娠が疑われるため、そのスクリーニングとしても利用されます。

2011年12月10日土曜日

感染症検査-2.HIV検査⑤-リアルタイムPCR検査-


⑤リアルタイムPCR検査

リアルタイムPCR検査は、コバス TaqMan HIV-1 「オート」と呼ばれる検査法です。

全自動の機械を使用して検査を行います。

リアルタイムPCR検査(コバス TaqMan HIV-1 「オート」)は、一人一人の血清を個別に検査して、血清をプールしては検査をしていません。

HIV-1の遺伝子の核酸を化学的に増幅して検査を行いますので、検査感度は極めて高く優れた検査法です。

そして、全自動で検査を行うことから、他のウイルスなどの遺伝子が混入する事が無いので、ニセの陽性反応の出現も殆どありません。

不安な行為から11日以降の何時受けても、信頼できる結果が得られます。

しかし、HIV-2は検出することはできません。

この検査は、ほとんどの医療機関が検査専門の会社に検査を依頼することから、全国どこの病院やクリニックでも受けることができます。

近いうちリアルタイムPCR検査(コバス TaqMan HIV-1 「オート」)もHIV-2の検出が出来るよう改良されるとの情報も得ていますが、発売時期は不明です。

2011年12月8日木曜日

感染症検査-2.HIV検査④第四世代の迅速(即日)抗原抗体検査法-


④第四世代の迅速(即日)抗原抗体検査法

『エスプライン HIV Ag/Ab』と呼ばれる検査キットで、サンドイッチイムノアッセイ法を用いたイムノクロマト法(IC法)です。

このキットは、HIV-1の抗原の一部であるp24を早期に検出できることと、HIV-1とHIV-2の抗体をも検出可能です。

検査を受ける時期としては、

1.不安な行為から30日でHIV-1のp24の検出が可能ですから、この時期陰性であれば、HIV-1の感染は否定できます。

※この時期検査が陰性であってもHIV-2の感染は否定できません。

2.不安な行為から12週でHIV-1とHIV-2の抗体の検出が可能ですから、この時期陰性であれば、HIV-1とHIV-2の感染は否定できます。

【参考資料】


以下を参照してください。

http://tetsujin.hiho.jp/newtisiki/newtisiki01.html 

http://tetsujin.hiho.jp/newtisiki/newtisiki02.html



2011年12月6日火曜日

感染症検査-2.HIV検査③迅速(即日)抗体検査法-


③迅速(即日)抗体検査法

ダイナスクリーン・HIV-1/HIV-2と呼ばれる検査キットで、サンドイッチイムノアッセイ法を用いたイムノクロマト法(IC法)です。

血液を滴下後、15分で判定しますが、この時必ずコントロールラインに赤色の線が出ていることを確認する必要があります。

コントロールラインに赤色の線が出ていないときは、必ず再度検査を行います。

また、判定は必ず15分で行い、この時点で判定ラインに赤色の線が認められなければ陰性と判定します。

15分経過後に判定ラインに幾ら赤色の線が見られても、これはニセの判定とします。

この検査は、不安な行為から12週で受けることにより、第三世代の抗体検査と同じ信頼性が得られます。

次に偽陽性反応の件ですが、検査の感度を高くして感染者を見逃さないように造られていることから、偽陽性反応が出やすくなっています、また判定を肉眼で行うことから判定者の主観に大きく左右され、どうしても偽陽性反応の出現率が高くなる傾向にあります。

PA法では0.5%前後ですが、迅速(即日)抗体検査では約3%の偽陽性反応が認められます。

迅速(即日)抗体検査は、短い時間で信頼性の高い結果が得られることから、クリニックや保健所では多く採用されています。

ちなみに、ダイナスクリーン・HIV-1/HIV-2は、発売当初アボットジャパン社から販売されていましたが、2007年12月1日から、アリーアメディカル株式会社から販売されています。

現在日本で医療機関及び保健所で採用されている迅速(即日)抗体検査法は、ダイナスクリーン・HIV-1/HIV-2しか存在しません(抗原抗体迅速抗体検査を除く)。

2011年12月4日日曜日

感染症検査-2.HIV検査②第四世代抗原抗体検査法-


②第四世代抗原抗体検査法

HIV-1のコア蛋白質であるP24抗原を検出するのが第四世代検査薬で、HIV抗原抗体検査と呼ばれます。

HIVが生体に侵入すると、HIV-1のコア抗原p24の量はHIVのRNAレベルの上昇にともなって増加し、かつ急性感染期にはすぐに血液中に出現することから、血液中のp24抗原の検査はウインドウ期を短縮することができ、HIV-1の早期診断に役立ち、臨床面におけるすぐれた検査法です。

p24が血液中から消失してしまうと、p24を検出できなくなりますが、その後出来てくるHIV抗体を検出可能となります。

第四世代抗原抗体検査法は、日本国内ではそりぞれ特徴のある製品が数社から販売されて使用されていますが、いずれのメーカ製も、感度と特異性には大差はありません。
 
検査を受ける時期

1.不安な行為から30日:HIV-1の感染の判断ができる。

※この時期検査を受けてもHIV-2の感染の判断はできません。

2.不安な行為から12週:HIV-1とHIV-2の感染の判断ができる。

2011年12月現在では、大手病院のおよそ80%が第四世代抗原抗体検査法を採用していますし、検査専門の検査会社では全て第四世代抗原抗体検査法に変更されています。

ただし、保健所ではまだまだ採用されているところは少ないのが現状です。

2011年12月2日金曜日

感染症検査-2.HIV検査①PA法-


①PA法

ゼラチン粒子凝集法(Particle Agglutination)と呼ばれ、HIV-1とHIV-2のIgMとIgG型のHIV抗体を見つけるHIV抗体検査法です。

第三世代に分類されるHIV抗体のスクリーニング検査法で、日本で開発されました。

検査の原理は、ゼラチン粒子に精製したHIVを界面活性剤で処理して作ったHIV蛋白質をタンニン酸処理したゼラチン粒子に吸着させて、これに検査する人の血清を加えて、トレイの中で2時間静置しておきます。

HIV抗体が陽性の時は、トレイの中でゼラチン粒子が大きな円に広がります。

HIV抗体が陰性の時は、トレイの中でゼラチン粒子が一点に集まります。

この状態を見て、陰性・陽性の判断をします。

この検査は、不安な行為から12週で信頼できる結果が得られます。

また、HIV-1/HIV-2を同時に見つけることが出来ます。

この検査法は、HIV-1とHIV-2のIgM型のHIV抗体を検出可能ですから、1~2ケ月で検査を受けた場合、信頼できる結果が得られるとも言われますが、HIV早期感染者でHIV-1とHIV-2のIgM型がこの検査で見つかる量が血液中にあれば検出できますが、量が少なければ偽陰性反応となってしまいます。

そのことからして、不安な行為から12週で受ける必要があります。

非常に簡単な検査でどこでも実施できることから、日本でも多くの施設で採用されていますし、発展途上国でも広く採用されています。

更に、偽陽性反応の出る割合がエライサ法に比べて低いという利点もあります。