例年、インフルエンザは冬に流行する感染症として知られています。
しかし、今年は9月に入っても感染者数が増加しており、地域によっては学級閉鎖や集団感染が相次いでいるというニュースに驚いている方も多いのではないでしょうか。
なぜ冬を待たずにインフルエンザが流行しているのか、最新の医学的・疫学的知見から分析し、その理由を解説します。
◎医学的・疫学的分析:なぜ今年の流行は早いのか?
通常、インフルエンザが冬に流行する主な理由は、ウイルスが低温・乾燥した環境でより長く生存し、飛沫が空気中に漂いやすくなるためでまた、冬は免疫力を低下させやすい要因(寒さ、疲労など)が増えることも関係しています。
しかし、今年の流行が異例の早さで始まっている背景には、複数の要因が複合的に絡み合っていると考えられます。
1.コロナ禍による免疫の変化 🦠
過去3年間のコロナ禍において、私たちはマスク着用や手指消毒、ソーシャルディスタンスといった厳格な感染対策を徹底してきた結果、インフルエンザウイルスに接触する機会が減り、多くの人がインフルエンザに対する集団免疫を十分に持たない状態となりました。
医学的には、この「免疫の空白期間」が、現在の流行拡大の大きな要因とされています。
2.ウイルスの変異と感染力の強さ 🧬
インフルエンザウイルスは常に少しずつ形を変えて(抗原変異)います。
これにより、一度感染しても再び感染する可能性があるのです。
今年の流行株は、これまでの株よりも感染力が強い傾向にあるという分析もあり、免疫を持たない人々の中で急速に広まった可能性があります。
3.南半球での流行状況と人の移動 ✈️
日本では夏にあたる時期に、南半球(特にオーストラリアなど)では冬を迎え、インフルエンザが流行します。
国際的な人の移動が活発になった現在、南半球で流行したウイルスが日本に持ち込まれ、それが免疫を持たない人々の間で一気に広まったという疫学的な見解も有力です。
◎今私たちが取るべき対策とは◎
今回のインフルエンザ流行は、冬のピークを待つことなく対策を講じる必要性を示しています。
基本的な感染対策の再徹底として、
・手洗い・うがい:帰宅時や食事の前など、こまめな手洗い。
・マスクの着用:公共交通機関や人が密集する場所では、感染拡大を防ぐためにマスクを着用するのが有効です。
・換気:室内の空気を定期的に入れ替え、乾燥を防ぎましょう。
・インフルエンザワクチンの接種:インフルエンザワクチンは、発症を予防するだけでなく、万が一感染しても重症化を防ぐ効果があります。
例年の流行ピークは1〜2月ですが、今年は早めに接種を検討することが推奨されています。
【まとめ】
今年のインフルエンザの流行は、コロナ禍による集団免疫の低下、ウイルスの特性、そして国際的な人の移動が複雑に絡み合った結果と言えます。
これは単なる季節外れの流行ではなく、新しい感染症の流行パターンを示唆しているのかもしれません。
私たち一人ひとりが危機感を持ち、適切な予防策を講じることが、これ以上の感染拡大を防ぐ鍵となります。