血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2019年9月20日金曜日

各種性行為感染症の検査を受ける際の注意点-4.イムノクロマト法を利用したHIV検査は偽陽性反応が出現しやすい-

イムノクロマト法を利用したHIV検査は、迅速抗体検査と迅速抗原抗体検査があります。

迅速抗体検査としては、ダイナスクリーンがあります。

迅速抗原抗体検査としては、エスプラインHIV Ag/Abとダイナスクリーン・HIV Comboのふたつがあります。

【イムノクロマト法の欠点】

判定ラインの色調(ラインの濃度)を肉眼で判定することから、どうしても判定者の主観に左右されてしまいます、その結果神経質的に判定すればどうしても薄くラインが有ると判定し偽陽性反応が出現しやすくなる検査法と言えます。

逆に大雑把な人が判定すれば、薄い判定ラインを見逃すこともあります。

しかし、判定を厳格に見すぎての偽陽性反応が圧倒的に多いのが現実です。

【イムノクロマト法の偽陽性反応の出現率】

100人検査をすればおよそ3~5人の偽陽性反応が出現します。

※抗体検査より抗原抗体検査の方が偽陽性率が高い傾向にあります。

現実かなりの人が偽陽性反応に泣かされています。

【なぜイムノクロマト法の偽陽性反応の出現率が高いのか】

1.陽性を見逃さないように検出感度を高くしている。

2.肉眼で判定することから検査者の主観が入りやすい。

3.反応時間を過ぎてからの判定ラインに出現したラインを陽性と判定する。

※決められた反応時間を経過してから出現したラインは、陽性と判定しない※

4.全血を使用しての検査は、血液の赤い色が判定を誤らす可能性が高くなる。

2019年9月10日火曜日

各種性行為感染症の検査を受ける際の注意点-3.HIV-PCR検査でHIV-2は見つけられない!!-

ここで言うHIV-PCR検査とは、リアルタイムPCR検査のことです。

NATは血液センター専用の検査で献血された血液の検査を行う検査法で、医療機関でHIV検査として受けることはできません。

※NATは、HBV・HCV・HIV-1・HIV-2を同時に検出ことが可能です※

【HIV-PCR検査はHIV-2を見つけることはできない!!】

2019年9月現在、日本国内で販売されているHIV-PCR検査は、3種類ありますがいずれもHIV-2を検出することはできません。

【HIV-2をHIV-PCR検査で検査できないのか】

HIV-PCR検査でHIV-2の検査を実施しているのは、限られた施設で研究目的で検査を行っていますので、一般の医療機関では受けることはできません。

【現在我が国で利用されているHIV-1のPCR検査】

1.TaqMan HIV-1「オート」

2.アキュジーン m-HIV-1

3.アプティマR HIV-1

これら3製品のHIV-1のPCR検査の感度・特異性はほとんど同じですが、いずれの製品もHIV-2を見つけることはできません。

TaqMan HIV-1「オート」が我が国で最初に発売されたことから、採用数はTaqMan HIV-1「オート」が一番多いです。

【各メーカはHIV-1のPCR検査でHIV-2を検査できる製品を開発販売する予定はないのか】

一時期TaqMan HIV-1「オート」でHIV-2の検査ができるキットの販売が一部で報じられましたが、現在は立ち消えとなっています。

【一部の医療機関でHIV-PCR検査でHIV-2の検査を引き受けているということが巷で噂されていますがその真偽は】

血液の鉄人が知る限りでは、一般の医療機関でHIV-PCR検査でHIV-2の検査を引き受けている施設はないと認識しています。

仮に引き受けている施設があれば、どのような検査法で、どのような施設に検査を依頼しているかを確かめる必要があります。

2019年9月1日日曜日

各種性行為感染症の検査を受ける際の注意点-2.クラミジア抗体検査-

血液によるクラミジア・トラコマティス抗体検査を受けるときには注意が必要です!!

【クラミジア抗体の種類と体内にできる時期】

クラミジア・トラコマティスに感染した場合は、感染後ほぼ1週間後にクラミジアIgM抗体ができますが、治療・無治療にかかわらずこのIgM抗体は速やかに消失します(およそ2ケ月以内)。

クラミジアIgM抗体検査は新生児感染の判断の時に実施しますが、成人の場合はIgM抗体の値の上昇が不十分であることと、健康保険が適応されていないので検査として利用されていないのが現実です。

このことから医療機関においては成人ではクラミジア・トラコマティス抗体検査は、IgA抗体とIgG抗体検査しか実施されていません。

クラミジア・トラコマティスに感染すると、抗クラミジアIgG抗体がおよそ1ケ月後には陽性となり数年間は陽性の状態が続き平均4年後に陰性となります。

一方IgA抗体は、IgG抗体に遅れて5~6週間で陽性となり、数年間持続しおよぞ3年で陰性となります。

【クラミジア抗体とクラミジア抗原検査もしくは核酸増幅検査との結果の食い違い】

感染直後に検査した場合にはクラミジア抗原もしくは核酸増幅検査が陽性であっても,IgG抗体及びIgA抗体が陰性のこともあり、IgG抗体陽性、IgA抗体陰性と事がよく経験されます。

要するに抗原検査もしくは核酸増幅検査と抗体検査の結果が一致しない症例が多く存在するわけです。

抗体検査と抗原検査の一致率は30%と低い事に加えて、IgG抗体およびIgA抗体陽性例には現在の感染と過去の感染が含まれており、治療が必要な場合か、治療が不要な場合かの鑑別ができません。

かつては抗IgA抗体が陽性の場合は、クラミジアの“活動性感染”を示すと誤って表現されたため、新しい感染があるときだけに抗IgA抗体が陽性となりあたかも感染が存在する場合にだけ陽性になるかのように誤解されたことがありました。

要するにクラミジア・トラコマティス抗体は“感染があるとき”と,感染が終息した場合の“感染の既往”があることを示すにすぎない場合があることをよく理解することが必要です。

したがって血液によるクラミジア抗体を調べることによって正確な感染の判断はできないことと、治癒判定もできないことを認識しておく必要があります。

【クラミジア初感染による抗体の変動】

クラミジアの初感染では、感染後まずIgM抗体がおよそ3週以降に上昇し、続いてIgG抗体、IgA抗体がさらに2~3週遅れて上昇します。

一般的にはIgM抗体は通常約数ヵ月で消失しますがIgG抗体やIgA抗体はいったん上昇しピークをむかえた後数ヵ月から年余にわたって漸減していきます。

IgA抗体はIgG抗体に比べて早期に低下します。

【クラミジア再感染による抗体の変動】

再感染ではIgG抗体、IgA抗体が2~3週で比較的急激に上昇しますが通常IgM抗体は上昇しません、まれに上昇した場合でも低値であることかほとんどです。

もともと一般成人においても,IgG抗体は感染既往として約60%の人が保有していることから抗体保有を急性感染症と誤解しない必要があります、

またIgM、IgA、IgG抗体を持っていてもこれは感染抗体で、感染予防抗体(中和抗体)でないことから感染防御にはならず何度でも感染します。

【クラミジア抗体の種類と判定】

・IgA抗体とIgGの抗体両方の抗体が陰性の場合・・・感染は無し
※但し抗原検査や核酸増幅検査が陽性の場合は感染あり※

・IgA抗体陽性でIgG抗体が陰性の場合・・・最近の感染が疑われる

・IgA抗体が陰性でIgG抗体が陽性の場合・・・過去の感染で治療の必要なし。
※但し抗原検査が陽性の場合は感染あり※
※過去に十分な治療を受けていなければ感染を100%否定することはできない※

・IgA抗体とIgG抗体の両方の抗体が陽性の場合・・・感染していることから治療の必要あり

【クラミジア抗体検査は信頼性が低い】

1.治療によってクラミジアが完全に体内からいなくなった治癒後にも、IgG抗体だけでなくIgA抗体も陽性となることから、現在感染しているのか、治癒後なのかが正確に判断できません。

2.クラミジア抗体検査が陽性で、尿や粘膜からの検査を受け直した結果、現在クラミジアの感染はなく、過去に感染して治っていて治療の必要のない事例が多く見られます。
※偽の陽性反応が多く見られる※ 

3.血液でクラミジア抗体検査を受けても結局、通常の尿検査や粘膜検査を再度受け直す必要があることからして、クラミジアの血液検査を受けることはお勧めできません。

4.正確に感染判断をするには最初から抗原検査や核酸増幅検査検査を受けることをお勧めします。