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2021年8月29日日曜日

新型コロナウイルスについて-38.モデルナ製新型コロナワクチンの副作用について-

 厚生労働省の研究班は2021年7月21日、モデルナ製の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン被接種者を対象に行ったコホート調査の最新結果を公表ました。

※コホート調査とは、ある集団の健康上の変化を把握して、体質や生活習慣などと将来発症する病気との関連を調べる研究です※

その結果は1回目接種後に比べ2回目接種後で副反応の発現率が高く、およそ90%に倦怠感、80%に発熱、70%に頭痛が認められたと報告しています。

発熱に関してはファイザー製ワクチンの発現率40%と比べて2倍高く、接種後に1週間以上経過して腕の接種部位が赤くなり、痒みを伴う遅延性皮膚反応、いわゆるモデルナ・アームがモデルナ製では高率であるなど、同ワクチンの副反応の特徴と注意点が明らかになりつつあります。

※両者のワクチンもメッセンジャーRNAタイプのワクチンで同じ種類に属しますが、モデルナワクチンにはある特有の副反応”モデルナアーム”が出現することで話題になっています※

※モデルナアームは、一時的なアレルギー反応の一種で、痒みやヒリヒリした痛みを感じますが、1週間ほどで自然に消えるので心配はありません※

モデルナアームは、海外では"COVID-arm"とも呼ばれていますが、アメリカでモデルナワクチンの接種が始まった2021年1月にはすでに多数報告されています。

出現頻度は3~4%で、25~30人の接種につき1人ほど生じる計算となります。

起きるのはほとんどが女性(80%以上)で、若い年齢(中央値38歳)に明らかに多いことが分かっています。

人種による発症頻度の違いは未だはっきりしていませんが日本でも欧米と同程度の報告が確認されています。

接種した腕のみに出現し逆側の腕には見られず、おおよそ1週間程度で自然消退します。

またファイザー社製ワクチンでは1例も報告がなく、モデルナ社製ワクチンに特有の現象のようです。

モデルナアームは、遅延型アレルギー(IgG由来のアレルギー反応)の一種ではないかと考えられています。

現時点では、重症の即時型アレルギーであるアナフィラキシーとは関連がないとされていますので、仮に1回目の接種でモデルナアームが生じた人でも、2回目は予定通りのスケジュールで接種して問題ありません。

2回目の接種時も同様の症状が出ることが多く、皮膚症状の出現は1回目より少し早まることが多いですが、皮膚症状が重くなるということはないようです。

対処法としては、冷やしてかゆみを抑える、鎮痛薬のアセトアミノフェンを内服する、ステロイドなどの抗炎症薬の塗り薬を使用する、などの対応をして自然に治まるのを待ちます。

また2回目を逆の腕に接種することが一般的ですが、同じ腕に接種してはいけないということはありません。

ファイザー製とモデルナ製ワクチンとの副反応の比較は以下の通りとなっています。


1.1回目接種後の副反応は両ワクチンでほぼ同様の傾向が見られた。

2.2回目接種後の副反応の発現率は、鼻水を除く、発熱、接種部位反応、発赤、疼痛、腫脹、硬結、熱感、痒み、全身症状、倦怠感、頭痛のいずれもモデルナ製ワクチンで高率に起こっていた。

3.副反応の比較は次の表のとおりです。

発熱・発赤・熱感・頭痛などの副反応がモデルナ製ワクチンでは効率に発生しています。

4.遅延性皮膚反応はモデルナ製は2%、ファイザー製0.1%で顕著な差が見られています。

5.女性で副反応の頻度が高く、多くの症状は若いほど高頻度で発生する傾向が見られています。

2021年8月22日日曜日

新型コロナウイルスについて-37.新型コロナウイルスの変異株 ラムダ株-

 ラムダ型変異ウイルス(C.37)は2020年8月にペルーで最初に見つかり、その後、南米を中心に拡大し、2021年7月31日時点で31カ国で見つかっています。

ペルー、チリ、エクアドル、アルゼンチンなどの南米の多くの国で見つかっており、特にペルーでは新規感染者の90%以上がラムダ型によるものと言われています。

世界的な拡大を受けて、世界保健機関は2021年6月14日にこの変異ウイルスを「ラムダ」と命名し「注目すべき変異ウイルス(VOIs; Variant of Interest)」に指定しました。

2021年7月20日にペルーから羽田空港に到着した30代女性から検出されています。

このラムダ株の特徴としては、スパイク蛋白の特徴的な変異として、G75V、T76I、del247/253、L452Q, F490S, D614G, T859Nという7つの遺伝子変異があります。

しかし、現時点だはこれらの変異がウイルスにどのような変化をもたらすのかの情報が限られています。

このラムダ株の感染力は、従来の新型コロナウイルスと比べると、感染力が増強しているのではないかという実験室レベルの研究が報告されてきていますが、まだデータは限られていてはっきりとは分かっていません。

このラムダ株は、アルファ株やデルタ株では、従来のウイルスと比較して感染した場合に重症度が高くなるとされていました。

ラムダ株に感染した場合にも従来よりも重症度が高くなるのかについてはまだよく分かっていません。

ベータ株、ガンマ株、デルタ株のそれぞれは、ワクチンの効果が低下することが分かってきています。

ラムダ株についても、中和抗体に対する抵抗力が強くなっているとする実験室での研究があり、またベータ株よりもさらにワクチン効果が落ちるのではないかとする研究報告もあり、多少なりともワクチンの効果が落ちる可能性があることが指摘されています。

しかし現時点ではワクチン効果がどの程度落ちるのかははっきりと分かっていません。

ラムダ株についてはまだまだ不明な事が多く、2021年7月31日時点ではどれくらいの脅威であるのか判断することは難しい状況です。

今後日本国にも侵入する危険性があると懸念されています。


2021年8月15日日曜日

人獣共通感染症-8.細菌性人獣共通感染症としての炭疽症-

 炭疽症は、炭疽菌による感染症で、ヒツジやヤギなどの家畜や野生動物の感染症であるが、ヒトに感染することもあることから人獣共通感染症の分類されています。

炭疽菌は1876年ドイツの医師で細菌学者でもあったロベルト・コッホ(1943~1910)によって発見されています。

また、1881年フランスの生化学者で細菌学者でもあったルイ・パスツール(1822~1895)は弱毒生菌ワクチンと開発しましたが、このワクチンで得られる免疫はごく弱いことから今日では利用されなくなっています。

【感染経路】

ヒトへの感染経路としては、炭疽症になった動物との接触やその毛皮や肉から感染します

基本的にはヒトからヒトへは感染しません。

炭疽菌は皮膚からの感染が最も多いが、芽胞を吸いこんだり、汚染した肉を不十分な加熱で食べた場合にも感染してしまいます。

自然発生は極めてまれです。

【炭疽という意味】

炭疽とは「炭のかさぶた」の意味であり、英語名のAnthraxはギリシャ語で「炭」の意味で、この名称は皮膚炭疽の症状で黒いかさぶた(瘡蓋)ができることに由来しています。

【炭疽症の分類】

炭疽症には、炭疽菌が顔、首、手などの皮膚の小さな傷から侵入し、1~7日後ニキビ様の小さな掻痒性または無痛性の丘疹が現れ、周囲には発疹と浮腫が現われる"皮膚炭疽症"、肺に感染して起きる"肺炭疽症"、炭疽菌が食物つ共に口から入り感染する"腸炭疽症"に分類されます。

【致死率】

治療しない場合の致死率は、皮膚炭疽症は10~20%、肺炭疽症は90%と極めて高い、腸炭疽症は25~50%です。

【検査】

確定診断は炭疽菌の分離同定によって調べます。

最近ではPCR検査が利用されています。

【治療法】

ペニシリン・テトラサイクリンなどの抗生物質により治療可能。

ヒトからヒトへの感染はないので、隔離の必要はありません。

早期に治療すれば治癒する。

【予防ワクチン】

炭疽病のワクチンは日本には無く、アメリカで1社が製造するのみで、。しかも副作用の可能性が高いことから、この予防接種はあまり推奨されないのが現実です。

【発生状態】

日本国内では1965年8月、岩手県西根町で乳牛が炭疽病で死亡したため死亡牛は一度は埋められましたが、掘り起こされて売買された結果、1965年88月26日までに牛肉を食べた33人が下痢、腹痛を訴えて疑似患者として手当てを受けた事例がありますが、それ以降2021年8月まで発生はありません。

2021年8月中国国内での発生が報告されています。


2021年8月8日日曜日

新型コロナウイルスについて-36.なぜこんなに新型コロナウイルスの変異株が増加するのか??-

 ウイルスは生き残るために変異するのが基本なんです!!

要するにすべての生物は、子孫を残すために変異していき、生き残れるものだけが生き残っていくのです。

このことは、進化生物学的に考えると、ウイルスに変異体が現れるのは当たり前なのです。

ウイルスは常に変異し続けて、半日から1日で世代交代をし続けます。

要するに変異株が出現するスピードは極めて早いわけです。

ウイルスは変異することにより、人の免疫カから逃れたり、ワクチンから逃れるわけです。

変異の過程で免疫力から逃れる、あるいはワクチンから逃れる仕組みを見に付けたウイルスは、その変異株が大勢を占めて流行してきます。

ワクチンの防御システムを破る変異株が出てくれば、感染源のある地域では、その変異株が一気に蔓延する可能性があります。

ワクチンは、その地域にある感染源に一気にできる限り多くの人に接種して、変異株が出現する前に感染源をなくすことが、進化生物学的に考えると大切なのです。

感染力のより強い変異株は、より生き残りに長けていたので、あっと言う間に従来のものと置き換わってしまうわけです。

無数の変異のなかに1個でも免疫をかいくぐる仕組みを持った変異株は、ワクチンの抵抗性を獲得したウイルスとして、あっと言う間に地域にそして全国に拡散してしまいます。最も大事なことは、ウイルスにそのような変異を起こす時間的なゆとりを与え無いことなんです。

変異してて流行をの時間を与えることは限りなく危険な行為だということになります。

進化はその突然変異を決して見逃しません!!、

そして瞬またたく間に抵抗性を持った変異株が蔓延してしまいます。

ウイルスは絶えず変異していて進化生物学的に考えると、ワクチン抵抗性を持ったウイルスはいつ出現しても不思議ではありません。

いったん変異株が現れると、ワクチン接種というウイルスに対しての選択圧から逃れたその変異株は、一気に蔓延してしまいます。

それはワクチンの開発そのワクチンに対する抵抗性ウイルスとの「鼬ごっこ」を繰り返し続けなくてはならなくなってしまいます。


2021年8月1日日曜日

新型コロナウイルスについて-35.モデルナアームとは何-

 ファイザー社製とモデルナ製新型コロナワクチンの両者もメッセンジャーRNAタイプのワクチンで同じ種類に属しますが、モデルナワクチンにはある特有の副反応”モデルナアーム”が出現することで話題になっています。

モデルナアームは、一時的なアレルギー反応の一種で、痒みやヒリヒリした痛みを感じますが、1週間ほどで自然に消えるので心配はありません。

モデルナアームは、接種後7日前後に起こります、海外では"COVID-arm(コビッドアーム)"とも呼ばれていますが、アメリカでモデルナワクチンの接種が始まった2021年1月にはすでに多数報告されています。

出現頻度は3~4%で、25~30人の接種につき1人ほど起こる計算となります。

起きるのはほとんどが女性(80%以上)で、若い年齢(中央値38歳)に明らかに多いことが分かっています。

人種による発症頻度の違いは未だはっきりしていませんが日本でも欧米と同程度の報告が確認されています。

接種した腕のみに出現し逆側の腕には見られず、おおよそ1週間程度で自然消退します。

またファイザー社製ワクチンでは1例も報告がなく、モデルナ社製ワクチンに特有の現象のようです。

モデルナアームは、遅延型アレルギー(IgG由来のアレルギー反応)の一種ではないかと考えられています。

現時点では、重症の即時型アレルギーであるアナフィラキシーとは関連がないとされていますので、仮に1回目の接種でモデルナアームが起きた人でも、2回目は予定通りのスケジュールで接種して問題ありません。

2回目の接種時も同様の症状が出ることが多く、皮膚症状の出現は1回目より少し早まることが多いですが、皮膚症状が重くなるということはないようです。

対処法としては、冷やしてかゆみを抑える、もし、痛みが酷く我慢できない時は、アセトアミノフェンやロキソニン、イブプロフェン等の非ステロイド性抗炎症薬の内服で軽くなることもあります。

ステロイドなどの抗炎症薬の塗り薬を使用する、などの対応をして自然に治まるのを待ちます。

症状が特に酷い、または数日経過しても症状が治まらない時は、皮膚科医に相談することをお勧めします。

またワクチン接種の2回目は逆の腕に接種することが一般的ですが、同じ腕に接種してはいけないということはありません。

2回目のワクチン接種時の問診時に、腕にどのような症状が出たかを医師に伝えて下さい、その意志の判断で1回目接種した反対側の腕に接種するように言われた場合はその指示に従って下さい。

【モデルナアーム】