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2026年9月22日火曜日

【インフルエンザ流行速報5:2026年9月22日号】:流行ステージ別・抗インフルエンザ薬の正しい選択と治療戦略

 


いざインフルエンザを発症した際、医師はどのような基準で抗インフルエンザ薬を選択すべきでしょうか?


医学的ガイドラインに基づき、状況に応じた2つのステージで整理します。


1. パンデミック時:「全員治療・早期治療」の鉄則

2009年のA/H1N1pdm09流行時に日本感染症学会が提唱したように、社会全体に免疫がないパンデミック時は、若年者や重症化リスクの低い層も含めた「全員治療」が原則です。

◎妊婦への早期投与の重要性:世界の死亡例に妊婦が多く含まれる中、日本は早期治療とワクチン徹底により死亡率を世界最低水準に抑えました。

パンデミック時は「若年者だから無治療で様子を見る」という選択肢はあり得ません。


2. 平常時:「リスク群重点」と臨床の現実

現在は季節性インフルエンザの流行期(平常時)にあたり基本的には高齢者、基礎疾患保有者、乳幼児、妊婦などの「リスク群」が治療の中心となります。

◎リスクなき若年者への対応:日本感染症学会の提言では、インフルエンザは本来自然軽快(self-limited)する疾患としつつも、「リスクがない人でも病初期に重症化を予測することは困難である」としています。

原則として早期診断・早期治療が推奨されており、症状や経過に応じて適切な投与が行われます。

◎治療薬の選択肢拡大:近年では、体重10kg未満の小児にも投与できるバロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)の顆粒製剤が承認されるなど、選択肢が広がっています。

学会のガイドラインでも推奨度が引き上げられており、患者の年齢や状態に応じたきめ細かな処方が可能です。


※まとめ

早まった今シーズンの流行に対し、一般の皆様は手洗い・咳エチケットといった基本の徹底を。そして医療現場においては、流行ステージを見極めた柔軟かつ迅速な抗インフルエンザ薬の活用が、重症化を防ぐ最大のカギとなります。


【参考資料】

『2025/26 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針 日本小児科学会』

『日本感染症学会提言「抗インフルエンザ薬の使用適応について(改訂版)」日本感染症学会』

2026年9月21日月曜日

大腸がんは「防げる」!番外編:女性の部位別がん死亡数『第1位』の現実と、見逃してはいけないサイン

 


「まさか自分が……」

健康に気を遣っているつもりでも、日本の女性にとって身近で、そして最も警戒しなければならないのが「大腸がん」です。


実は厚生労働省や国立がん研究センターの統計によると、女性の部位別がん死亡数において、大腸がんは第1位となっています。


男性の方が罹患率や死亡率の数値自体は高いものの、女性における死因のトップが他ならぬ大腸がんであるという事実は、あまり知られていません。


今回は、なぜ女性に大腸がんが増えているのか、そしてどうすれば命を守れるのかを医学・疫学的視点から紐解きます。


1. なぜ女性の大腸がんは発見が遅れやすいのか?

大腸がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどないめ、気づいた時には進行していたというケースが少なくないのですが、特に女性特有の社会的背景や身体の傾向が、発見を遅らせる要因になっています。  

◎多忙なライフステージと受診控え

発症リスクが顕著に高まるのは50代以降。この世代の女性は、仕事での責任、家事、育児、さらには親の介護などが重なり、自分の健康診断や医療機関への受診が後回しになりがちです。


◎「便秘・痔だから」という自己判断

女性に多い慢性的な便秘や、痔による出血。「いつものことだから」「恥ずかしいから」と、血便や便通異常を放置してしまい、がんの発見が大きく遅れてしまうケースが後を絶ちません。

◎閉経後のホルモンバランスの変化疫学的な背景として、女性ホルモン(エストロゲン)の急減が関係して閉経後はインスリンの働きや内臓脂肪の蓄積に影響が出やすくなり、これが生活習慣病だけでなく大腸がんのリスクを押し上げる一因になると考えられています。


2. 便潜血検査だけでは不十分?知っておきたい検査の真実

「会社の健康診断で便潜血検査が陰性だったから大丈夫」――そう安心していませんか?

ここに大きな落とし穴があります。

便潜血検査は、自覚症状のない人を対象としたスクリーニング(ふるい分け)としては非常に有効ですが、「出血していない初期の大腸がん」や「小さめのポリープ」の多くは、便潜血検査では陰性になってしまいます。

大腸がんは、大部分が「良性のポリープ」が何年かかけて大きくなり、その一部ががん化して発生します。つまり、ポリープの段階で発見して切除できれば、大腸がんは「予防できるがん」そのものなのです。


※一度も大腸カメラを受けたことがない方へ

特に「今まで一度も大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けたことがない50代以上の方」は、症状がなくても一度検査を受けることが強く推奨されています。


3. 放置厳禁!見逃してはいけない「体のサイン」

次のような症状がある場合は、「いつものこと」と片付けず、早めに消化器内科や胃腸内科を受診してください。

1)血便・便に血が付く(痔と決めつけない)

2)便が急に細くなった、形が変わった

3)便秘や下痢を繰り返す、ひどい便秘になった

4)おなかが張る、残便感がある

5)原因不明の貧血症状がある

「血便がある」「便潜血で陽性だった」「家族に大腸がんの人がいる」といった場合はもちろん、少しでも不安な点があれば、日本消化器内視鏡学会認定の「消化器内視鏡専門医」がいる医療機関に相談しましょう。


まとめ:自分の体を後回しにしない選択を

大腸がんは、早期発見でき極めて高い確率で治すことができるがんです。

忙しい日々のなかで、自分の体の小さな変化を無視していませんか? 「これくらい大丈夫」という油断を捨て、定期的な検診と、必要に応じた大腸内視鏡検査を受けることこそが、未来の自分と大切な日常を守る一番の近道です。

今日をきっかけに、ご自身の体の声に耳を傾けてみませんか?


【参考資料】

『女性に増え続ける大腸がんにご用心』

『女性の健康推進室 ヘルスケアラボ 大腸がん』


2026年9月20日日曜日

【新型コロナ最新情報】第1回:猛威を振るう夏のコロナ、話題の「セミ型」・「ニンバス株」を徹底解説


 現在インフルエンザの流行もなることながら、新型コロナウイルスの流行が始まっています。


インフルエンザと新型コロナに対する最新情報を交互に発信していきますのでお付き合い下さい。


「またのどが痛い。ただの夏かぜだと思っていたら、コロナだった」――この夏、外来でそうしたお声を伺う機会が確実に増えています。


厚生労働省が2026年9月4日に公表した第35週(8月24日〜30日)の集計では、全国の定点当たり報告数は1.47(全国報告数5,459人、前週から1,106人増)となっており、7月から続いた増加傾向が、8月に入ってからも高い水準で続いているのが実情です。


厚生労働省の公表によると、夏から続いた新型コロナの増加傾向は8月以降も高い水準で推移しており、9月に入っても油断できない状況が続いています。  


この夏から秋にかけて特に話題となっているのが、「セミ型」と「ニンバス株」という2つの変異株です。名前のインパクトに不安を感じる方も多いと思いますが、正しい情報を整理していきましょう。


1. 話題の変異株:その正体と性質

◎「セミ型」の正体(BA.3.2系統)  

・初期オミクロン株の直系「BA.3」の子孫で2021年末頃に姿を消したあと、長期間どこかで静かに変異を蓄積し、数年ぶりに表舞台に現れたことから、「長く潜って一斉に出てくる」としてセミにたとえられています。

・特徴は、全ゲノムで100か所以上、スパイクタンパク質だけでも70か所以上という圧倒的な変異の多さです。


 ◎ニンバス株」の特徴(NB.1.8.1系統)  

・JN.1系統から派生した変異株で、強いのどの痛みを引き起こすことで知られています。


2. 最大の注意点:「再感染しやすさ」と「重症度」

スパイクタンパク質の変異が多いということは、過去の感染や従来のワクチンで獲得した中和抗体が効きにくくなる「免疫逃避」が起きやすいことを意味します。

「去年かかったから大丈夫」「ワクチンを打ったから大丈夫」とは油断できません。

一方で、世界保健機関(WHO)などの評価によると、「これまでの変異株より重症化率や死亡率が高いというデータはない」とされています。

感染しやすさと、感染したときの重さは別問題です。過度に恐れず、しかし油断せずに備えることが大切です。


💡 第1回のまとめ

2026年秋現在も新型コロナは身近で流行しています。

「セミ型」「ニンバス株」は再感染しやすい性質を持ちますが、重症化リスクが格段に上がったわけではありません。

焦らず正しい予防と対策を心がけましょう。

【参考資料】

『新たな変異コロナウイルス「セミ」について私たちが知っておくべきこと』

『新型コロナ(ニンバス)の特徴はのどの激痛?』

『【ニンバス】新型コロナいつまでうつる? 潜伏期間は?微熱や発熱時の対処法』

2026年9月19日土曜日

【インフルエンザ流行速報4:2026年9月19日号】H3N2からH1N1pdm09へ?ウイルス交代劇と日本のリアルなリスク

 


2026/27シーズンは、流行の「主役」交代が起きようとしています。


25/26シーズンに猛威を振るった型から、新たな脅威へのシフトが懸念されています。


1.A/H1N1pdm09(新型由来)へのシフト予測

◎前シーズンの名残:昨シーズン(2025/26)はA/H3N2(subclade K系統など)が主流でした。このため、日本国内にはH3N2に対する一定の集団免疫が残存しています。

◎今後の主役交代:日本感染症予報協会(JIPA)の予測等によると、免疫の壁が厚いH3N2に代わり、今シーズンはA/H1N1pdm09が優位に立って拡大する可能性が高いと見られています。

これは台湾の流行(約7割がH1N1pdm09)とも合致しています。


2.若年層・健康成人油断大敵のデータ

「若いからインフルエンザにかかってもただの風邪で済む」というのは大きな誤解です。

厚生労働省の昨季の最終データによると、インフルエンザによる入院患者2万3,991人のうち、基礎疾患の少ない15〜49歳の働き盛り世代が全体の約1割(2,264人)を占めていました。

重症化リスクは高齢者や基礎疾患のある人に限った話ではありません。

◎ポイント:ワクチン接種が始まる10月上旬よりも前に流行がピークに向かう可能性があるため、早期の感染対策と流行状況のキャッチアップが不可欠です。

私事になりますが、血液の鉄人と家族は昨日インフルエンザワクチンを接種しました。

今季は早期の接種を心がける必要があります。

【参考資料】

『流行中のインフルエンザ「A(H1N1)pdm09」が現代社会に突きつける意味』


2026年9月18日金曜日

【インフルエンザ流行速報3:2026年9月18日号】なぜ今、インフルエンザが夏に?

 


※2026/27シーズン前倒しの背景を解剖する


「えっ、もうインフルエンザ?」――2026年の夏から秋にかけて、日本国内でインフルエンザの報告数が急増し、医療現場に衝撃が走っています。


例年であれば10月以降に立ち上がるシーズンが、今年は8月下旬という異例のタイミングで前倒しとなりました。


この背景には、国際的なウイルスのダイナミクスと「免疫の盲点」が隠されています。


1.南半球の「流行長期化」が日本を直撃


日本での流行予測において最大の羅針盤となるのが、半年ほど季節が先行する南半球(オーストラリアやニュージーランド)の動向です。


◎オーストラリアの誤算:当初、今年の南半球は流行が遅れていましたが、8月に入ってから急激に感染者数が爆発しました。


◎長期化の代償:前年(2025年)のオーストラリアではシーズン終盤まで流行が長引いたため、市民の多くが免疫を維持し、今年6〜7月の冬本番はむしろ患者数が抑えられましたが、その免疫の切れ目とウイルスの流入が8月に重なり、一気にキャッチアップするように大流行を引き起こしたのです。


2.季節や国境の壁はもう存在しない


ニュージーランドでは8月に10年ぶりの医療逼迫レベルに達し、台湾でも過去10年同期比で最多の患者数を記録しました。

世界中を飛行機が飛び交う現代において、インフルエンザに「好発季節」という概念はもはや通用しません。


免疫の保有状況とウイルスの持ち込みさえあれば、真夏であってもいつでもどこでも大流行が起きる時代になったのです。


※読者へのメッセージ:「冬の病気」という固定観念を捨て、夏場であっても発熱や咽頭痛があればインフルエンザを疑う意識が、ご自身と周囲の健康を守ります。


【参考資料】



2026年9月17日木曜日

【インフルエンザ緊急告 知2026年9月17日号】:あまりに早いインフルの流行 ~その原因と対策~

 


2026年8月末から、異例の早さでインフルエンザの流行期に突入しています。


なぜ今シーズンはこれほど早く拡大しているのでしょうか。


医学的・疫学的視点から、その原因とこれからの対策を分かりやすくまとめました。


1. 異例の早期流行:現状とウイルス交代


・厚生労働省は2026年8月28日にインフルエンザの流行入りを発表しましたが、これは現行調査(1999年以降)において、2009年の新型インフルエンザに次ぎ、季節性としては過去2番目に早い記録です。


・9月11日時点の定点患者数は3.29人と約3倍に急増しており、沖縄県や東日本(東北・関東など)を中心に拡大しています。


・今シーズンの主流はA(H1N1)亜型へとシフトしていて、昨シーズン大流行したH3N2亜型とは異なり、久しぶりの本格的な流行となります。


2. なぜ夏に流行?3つの主な原因


異例の早期流行を引き起こした背景には、複数の要因が絡み合っています。


◎コロナ禍の影響による免疫の減衰


コロナパンデミック以降の感染対策によってインフルエンザの流行が抑えられていた期間があり、私たちの中にあるウイルスへの免疫が全体的に低下していました。



◎東南アジアからのウイルス流入と人流


南半球ではなく、7月頃からH1N1亜型が流行していた東南アジア(香港や台湾など)からの人流を通じてウイルスが持ち込まれたと考えられています。


◎気象要因(多雨による室内滞留)


熱帯地域では雨期にインフルエンザが流行しやすい傾向があります。今年は日本でも夏の降雨日数が多く(東京で15日、仙台で17日など)、雨の多さから屋内で過ごす時間が増え、飛沫感染しやすい環境が整ってしまいました。


3. 今後の推移と私たちが取るべき対策


◎今後の見通し


9〜10月は現在のペースで患者数が増加すると予想され、特に9月下旬の連休などでの人流拡大が懸念され、11月以降は本格的な流行期に入ってピークを迎え、年明け以降はB型の流行や2度目のピークにも注意が必要です。


◎早めのワクチン接種


すでに9月から接種を開始している医療機関もありますので、ワクチンにはA(H1N1)型・A(H3N2)型・B型が含まれており、効果は少なくとも半年持続するため、早期の接種が今シーズン全体をカバーします。


◎日常の感染対策と受診の目安


手洗い、適切なマスク着用、雨の日でも可能な換気を心掛け、発熱やのどの痛みなどの症状がある場合は周囲への拡大を防ぐためマスクを着用し、子どもや高齢者などは早めに医療機関を受診して抗インフルエンザ薬の服用を検討してください。


大腸がんは「防げる」!第8回:身体的・心理的ハードルを劇的に下げる「新しい大腸がん検査」の全貌


 大腸がんは「防げる」!第8回:身体的・心理的ハードルを劇的に下げる「新しい大腸がん検査」の全貌


「便潜血検査で陽性が出たけれど、下剤や内視鏡の苦痛が怖くて精密検査を先延ばしにしている……」


そんな声を、医療現場では今も非常に多く耳にします。


日本国内において、大腸がんは男女全体で最も多くの人が新たに診断されるがんの一つであり、年間5万人以上の方が命を落としている極めて重大な健康課題です。


しかしその一方で、「早期発見できれば極めて高い確率で克服できる(ステージIの5年生存率は9割以上)」という事実をご存知でしょうか。


それにもかかわらず、なぜ命を落とす方が後を絶たないのか?その最大の理由は、検査や精密検査に対する「心理的・身体的ハードル」にあります。


今回は、従来のイメージを覆し受診の選択肢を大きく広げる「大腸CT検査(CTコロノグラフィ)」の全貌と、最新の医学的知見を分かりやすく解説します。


1. なぜ大腸がん検査が重要なのか?


国立がん研究センターの最新統計等によると、大腸がんは日本人にとって決して他人事ではない身近な病気です。


◎罹患数(新たに診断される数): 男女総合で年間約15万4千例に及び、全がん種の中でトップクラスの多さを誇ります。


◎死亡数: 年間約5.4万人にのぼり、女性ではがん死亡数の第1位、男性でも上位に位置する深刻な脅威となっています。


※早期発見が「命」と「人生」を分ける


大腸がんは、粘膜の表面にできる良性の「ポリープ」が何年もかけてゆっくりと大きくなり、その一部ががん化していくケースが大半ですので、ポリープやごく初期の段階(ステージIなど)で発見・切除できれば、大腸がんは“防ぐことができる(あるいはほぼ100に近い確率で治せる)”病気なのです。


しかし、自治体の検診などで実施される「便潜血検査(検便)」で陽性(=出血のサイン)が出たにもかかわらず、その後の精密検査(内視鏡など)を受けない人が約4割にも上るというデータがありこの「受診控え」こそが、手遅れを招く最大の障壁となっています。


2. なぜ、精密検査(内視鏡)を放置してしまうのか?


便潜血で陽性が出ても内視鏡検査をためらってしまう背景には、主に以下のような「つらいイメージ」があります。


1)大量の下剤への抵抗感:お腹を空っぽにするため、1.5L〜2Lもの下剤を数時間かけて飲み干す必要があること。


2)身体的苦痛と恥ずかしさ:お尻からスコープを挿入されることへの恐怖や、特有のプライバシーへの不安。


優れた検査であると分かっていても、「怖い・つらい」という理由で足が遠のいてしまう――。このジレンマを解消するために生まれたのが、「大腸CT検査」という新たな選択肢です。


3. 負担を激減させる「大腸CT検査」の画期的な仕組み


1990年代にアメリカで開発され、日本でも近年導入が進む大腸CT検査(CTコロノグラフィ)は、内視鏡のハードルを感じる人にとって強力な味方となります。


◎下剤の量が約10分の1に!「タギング」という技術


検査前日に専用の食事をとり、毎食後に「硫酸バリウム製剤」という液体を少しずつ服用しこれにより、便がバリウムをまとって白く染まります。


コンピュータがこの「白い部分」を自動で綺麗に消去してくれる(タギング)ため、腸内を完全に空っぽにする必要がなくなり下剤の量が大幅に減るため、身体的負担が劇的に軽減されます。


◎わずか15分程度で完了するスムーズな検査


お尻から5cmほど細い管を入れ、炭酸ガスで腸を膨らませて撮影します。カメラを奥まで挿入しないため強い痛みがなく、仰向けとうつ伏せで各約15秒撮影するだけで、トータルでも15分程度で終了し、終わればすぐにガスが抜けるため非常に楽です。


4. 大腸CT検査の「メリット」と「知っておくべき限界」


多くのメリットを持つ一方で、CT検査ならではの特性や限界についても正しく理解しておく必要があります。


【メリット】


◎死角のない立体(3D)解析


腸の急な曲がり角やひだの裏側など、内視鏡では見落としリスクのある死角も、CTなら立体データや平面展開画像によって高精度に捉えることができ6mm以上の病変に対しては、内視鏡に近い優れた検出率を誇ります。


◎他の臓器の病気が偶然見つかることも


お腹全体を撮影するため、大腸だけでなく肝臓、胆嚢、膵臓などの周辺臓器の大きな異常が偶然発見されることもあり実際に大腸CTをきっかけに早期の膵臓がんを発見できたケースも報告されています。


◎女性や高齢者にも選ばれています


内視鏡検査は男性の比率が高い一方、大腸CT検査は男女比がほぼ半々で「苦痛や恥ずかしさが少ない」という理由から、これまで検査を避けていた女性や、スコープのリスクを考慮したい高齢層(80歳以上など)に非常に適した選択肢となっています。


【限界・注意点】


◎5mm以下の小さな病変や平らな病変は苦手


カラー画像ではないため、2〜3mmの極小ポリープや、赤みだけの平らな病変の検出は内視鏡に劣ります。


◎その場で「切除」はできない


検査中に怪しいポリープが見つかっても、その場で組織を取ったり切除したりすることはできませんので、病変があった場合は、後日内視鏡による精密治療が必要になります。


◎放射線被ばく・妊娠中の制限


X線を使用するため、妊娠中の方は受けることができません。


5. 検査後の「納得感」が治療への決定打に


大腸CT検査の大きな強みのひとつに、「次の適切な治療への高い橋渡し効果」があります。


種々の実績では、大腸CT検査で切除が必要なポリープが見つかった際、医師が3D画像を見せながら「ここにこれだけのものがあります」と丁寧に説明すると、なんと93.5%もの患者さんが納得してその後の内視鏡切除治療へ進むといいます。


「いきなりカメラを入れるのは怖いけれど、事前のCTで自分の状態を視覚的に把握できることで、心の準備ができて安心して治療に臨める」というわけです。


結びに代えて:まずは「自分に合った方法」で一歩を踏み出そう


大腸がんは、適切な検査と早期発見によって「防ぎ、完治させることができる」病気です。


◎便潜血検査で陽性が出たけれど、内視鏡の恐怖で放置している方


◎初めての精密検査で、できるだけ体への負担を減らしたい方


こうした方々にとって、大腸CT検査は医療への恐怖心を和らげ、命を守るための素晴らしい扉を開いてくれます。もちろん、医師と相談の上で最初から内視鏡を選ぶことも大切です。


大切なのは、「怖いからと放置しないこと」、そして「少なくとも5年に1回は大腸の状態を確認する習慣を持つこと」です。


ご自身の健康と、愛する家族の未来のために、まずは身近な医療機関で「大腸CT検査」という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。


【参考資料】

『大腸CT検査について教えてください 日本大腸肛門学会』

『大腸CT検査』