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2026年2月3日火曜日

致死率脅威の40%超!新しい感染症「ニパウイルス」とは-2.致死率75%の悪夢、日本上陸は秒読みか。エボラを超える『沈黙の殺人者』ニパウイルスの正体-

「エボラ出血熱に匹敵する凶悪なウイルス」と言えば、皆さんは何を思い浮かべますか?

今、アジア各国が固唾を呑んで見守っているのが、**ニパウイルス(Nipah virus:NiV)**です。

2026年1月、インドの西ベンガル州で再び発生が確認され、世界保健機関(WHO)も警戒を強めています。

※ニパウイルス(NiV)の「NiV」は、Nipah virus(ニパウイルス)の略称で、その由来はマレーシアの地名「スンガイ・ニパ(Sungai Nipah)」で、 1998年から1999年にかけて、マレーシアのニパ川(Nipah)流域にある養豚村でこのウイルスによる集団感染が初めて確認されたため、この地名にちなんで名付けられました※

 ※Nipah (Ni): スンガイ・ニパ(Sungai Nipah)村。マレー語で「Sungai」は川、「Nipah」はニッパヤシという植物を意味します※

ワクチンも特効薬もないこの「見えない脅威」に対し、私たちはどう向き合うべきなのでしょうか。


1. なぜ「死のウイルス」と呼ばれるのか?

ニパウイルスの恐ろしさは、その圧倒的な致死率にあります。

致死率は40%〜75%: 感染者の半分以上が命を落とす計算です。

深刻な後遺症: 生還しても、回復者の約20%に人格変化やけいれんなどの神経学的後遺症が残ると報告されています。

潜伏期間の長さ: 最大45日という長い潜伏期間(通常は5〜14日)があるため、自覚症状のないまま国境を越えるリスクが常に付きまといます。


2. 2026年最新情報:人から人への感染はどう進化した?

これまでの定説では「動物からヒト」への感染が主とされてきましたが、直近の疫学的分析により、「ヒトからヒト」への強力な連鎖がより鮮明になっています。

家族・医療従事者の感染: 2026年1月のインドの事例では、看護師2名の感染が確認されましたこれは、感染者の体液(唾液や尿)を通じた濃厚接触によるものです。

※血液や体液との接触などの「濃厚接触」でヒトからヒトへ感染する場合もあるといいます※

空気感染の可能性は?: 現時点では「飛沫感染」が主とされていますが、重症患者の咳などは強い感染源となり得ます。

※ヒトからヒトへの感染の事例はまれですが予防策としては、手洗いの徹底・マスクの着用などの標準感染予防策を徹底する必要があります※


3. 日本への流入リスク:水際対策の限界

かつては「日本にはフルーツコウモリがいないから大丈夫」と楽観視されていましたが、現代のグローバル社会ではその論理は通用しません。

「日本国内に持ち帰ってから発症するケースは、十分想定されます」 と専門家は指摘しています。

検査の「空白期間」: 感染直後はウイルス量が少なく、検査をしても陰性と出る「ウィンドウピリオド」が存在します。

物流のリスク: ウイルスに汚染された果物(ナツメヤシの樹液など)が輸入され、それを介して感染が広がる可能性もゼロではありません。


4. 私たちにできる「防衛策」

現在、世界中でワクチンの治験が進められていますが、一般に普及するまでにはまだ時間がかかります。

今、私たちが知っておくべきは以下の3点です。

1.流行地域への渡航注意: インドやバングラデシュ、東南アジアの一部で発生が報告された際は、現地の最新情報を必ずチェックすること。

2.果実の洗浄と加熱: 野生動物の食べ跡がある果物は避け、流行地では果物をよく洗って皮を剥く、あるいは加熱することが推奨されます。

3.正しい情報の取捨選択: パニックにならず、厚生労働省や検疫所(FORTH)が発信する公的な医学的根拠に基づいた情報を確認してください。


まとめ:

ニパウイルスは、これまで日本国内での自然発生・海外からの輸入症例は報告されていませんが日本にとって「遠い国の話」ではありません。

パンデミックを未然に防ぐ鍵は、医療機関の早期発見能力と、私たち一人ひとりの正しい知識にあります。

 

2026年2月2日月曜日

感染症速報 42.最強の感染症「はしか」襲来:あなたの免疫が“初期化”される恐怖-

 2026年現在、日本国内で報告されている「はしか(麻しん)」の流行は、単なる一過性の感染症以上の脅威として医学界で警鐘を鳴らされています。

※2025年は累計261例の報告があり、2024年の45例を大きく上回るペースで推移し、2026年1月21日時点では4例の報告がなされています※

「免疫の初期化(免疫健忘)」という概念を中心に、最新の医学的知見と2026年現在の国内状況を7つの項目で分析・解説します。


1. 驚異の感染率:R0(アールゼロ:R-zero) 12〜18が意味する「回避不能」

疫学において1人の患者から広がる人数を示す「基本再生産数(R0)」は、はしかでは12〜18に達しこれはインフルエンザ(約1.5~2.5)や新型コロナウイルス(オミクロン株でも約10前後)を遥かに凌駕します。

空気中に漂う微細な粒子(飛沫核)を吸い込むだけで感染するため、同じ空間に短時間滞在するだけで、未免疫者の90%以上が発症します。


2. 「免疫健忘(Immune Amnesia:イミューン・アムニーシア)」:防御システムの物理的破壊

「免疫のリセット」は比喩ではなく、医学的に実証された現象ではしかウイルスは、過去に戦った病原体の情報を記憶している**「メモリーB細胞」および「メモリーT細胞」**にある受容体(CD150など)に直接結合して感染、これらを破壊します。

これにより、身体が長年蓄積してきた「感染症に対する学習データ」が物理的に消去されます。


3. 抗体の70%以上が消失:研究が示す「白紙化」の恐怖


近年の研究では、はしかに感染した子供の血液中から、過去に獲得した他病原体への抗体が11~73%も消失していたことが判明しています。

医学的示唆: はしか自体が治癒した後も、数ヶ月から2~3年にわたり、インフルエンザや肺炎球菌など、本来防げるはずの病気に対して「生まれたての赤ちゃん」のように無防備な状態が続きます。


4. 2026年日本国内の現状:輸入症例と「空白の世代」

2026年現在、インドネシア等からの輸入症例を端緒とした国内感染が関東(東京・栃木など)や大阪で相次いでいることからして特に注意が必要なのは以下の層です:

30代後半~50代以上: ワクチン定期接種が1回のみだった世代で、抗体価が低下(減衰)している可能性があります。


ワクチン未接種層: 新型コロナ流行により受診控えで接種を逃した幼児。


5. 続発症(二次感染)による高い死亡リスク


はしかそのものによる肺炎や脳炎も深刻ですが、真の恐怖は「免疫健忘」による二次感染です。


免疫が初期化されたことで、通常なら軽症で済む細菌やウイルスに感染し、重篤な合併症を引き起こすリスクが劇的に高まります。


はしか流行後の数年間は、他の感染症による全死亡率が上昇するという統計データ(疫学的パラドックス)が存在します。


6. 空気感染に太刀打ちできない「既存対策」の限界


手洗いや一般的なマスク(サージカルマスク)では、空気感染するはしかを完全には防げません。


医療機関レベルのN95マスクと、ウイルスを外に漏らさない**「陰圧室」**での管理が必要となるため、一般生活においては「物理的な防御」よりも「体内での抗体による防御(ワクチン)」が唯一の現実的な防壁となります。


7. 社会的責務としての「2回接種」の徹底


現在、日本で推奨されているのは**「MR(麻しん風しん混合)ワクチンの2回接種」**で、1回だけの接種では数%の確率で免疫がつかない(一次性ワクチン失敗)、または時間の経過とともに抗体が低下(二次性ワクチン失敗)する可能性があるためです。


※2026年の行動指針: 海外渡航前や流行地域への出入り前に、母子手帳での履歴確認と、必要に応じた「追っかけ接種」が個人の健康のみならず、社会全体の集団免疫を維持する鍵となります。


2026年2月1日日曜日

季節性インフルエンザ特集-15.⚠️ 第2の波:B型急増の正体と「A型」の残響-

 2025年秋に始まった今季のインフルエンザは、年明けから**「第2の波」**を迎え、非常に変則的な動きを見せています。

今季の最大の特徴は、A型とB型が入れ替わるのではなく、重なるように流行している点にあります。

◎異例のスピード流行: 通常、B型は春先(2月〜3月)に流行のピークを迎えますが、今季は年明けから急増しています。

◎A型の「変異株」も継続: 前半に猛威を振るったA型(H3N2)は、免疫をすり抜ける性質を持つ「サブクレードK」という新たな系統が主流となっており、これが流行の長期化と高い感染力を引き起こしています。

◎学級閉鎖の急増: 2026年1月25日時点で学級閉鎖数は2,215校に達しており、特に若年層でのB型感染が顕著です。


🤒 「お腹の風邪」と勘違いしていませんか? B型の特有症状

B型はA型に比べて高熱が出にくいケースもありますが、消化器症状が強く出やすいという厄介な特徴があります。


症状の比較    A型(主に香港型)       B型(ビクトリア系統など)

発熱     38℃以上の急激な高熱    高熱も出るが、微熱から始まることも  

全身症状  強い倦怠感、激しい関節痛  筋肉痛に加え、筋炎(足の痛み)に注意

消化器系  比較的少ない         腹痛、下痢、嘔吐が目立つ

小児の特徴   急激な発症         嘔吐や下痢による脱水リスクが高い

※医学的アドバイス: 「熱があまり高くないから」「お腹を壊しているだけだから」と自己判断して外出を続けると、B型を周囲に広めてしまう恐れがありますのでご注意ください※


🛡️ 今からでも遅くない!「再感染」を防ぐ最新対策

今季は、「A型にかかったからもう安心」という常識が通用しません。

 異なる型に2回罹患するリスクが例年以上に高まっています。

1. 受験生・子どもを守る「家庭内パトロール」

消化器症状への警戒: 子どもが「お腹が痛い」と言い出したら、熱がなくてもインフルエンザの可能性を視野に入れ、早めに受診を検討してください。

嘔吐物の処理: B型は便や嘔吐物からも感染リスクがあるため、処理の際は使い捨て手袋やマスクを着用しましょう。


2. 「空気」を意識した感染防御

最新の研究では、大声での会話や歌唱によって放出されるエアロゾルが感染拡大の大きな要因であることが指摘されています。

換気の徹底: 5〜10分程度のこまめな換気が、室内のウイルス濃度を下げるのに非常に有効です。

高性能マスクの活用: 人混みでは、隙間のない不織布マスクを正しく着用することが、微小な粒子を防ぐ鍵となります。


3. ワクチンの「ブースト」効果

今季のワクチンはA型2種・B型1種の3価(またはB型2種を含む4価)で構成されており、たとえ感染を100%防げなくても、肺炎や脳症などの重症化を防ぐ効果は医学的に証明されています。

流行のピークはまだ続くと予測されていますので、基本的な手洗い・換気に加え、「B型はお腹に来ることもある」という知識を持って、この冬の第2波を乗り切りましょう。


2026年1月31日土曜日

致死率脅威の40%超!新しい感染症「ニパウイルス」とは-1.ニパウイルスとはそして 流行の現状-

 2026年、静かに忍び寄る『死のウイルス』致死率75%のニパウイルスが、再び世界を試そうとしています。

数回に分けてこの危険なニパウイルスについて解説させていただきますのでお付き合いください。


◎インドで現在懸念されているニパウイルス(Nipah virus: NiV)について

1. 最新の流行状況(2026年1月時点)

2026年1月、インドの西ベンガル州コルカタにおいて、新たなクラスターが発生しています。

現在の発生規模: 西ベンガル州で少なくとも2名〜5名の感染が確認されています(情報源により数に幅がありますが、当局は慎重に確認中)。

特徴: 今回の流行では**院内感染(Nosocomial transmission)**が報告されており、感染者には医師や看護師が含まれています。

対応状況: 約200名の接触者が特定され、追跡・隔離が行われ現時点(1月27日のインド政府発表)では、これら接触者の検査結果はすべて陰性であり、大規模な拡大は食い止められている状況です。

地域的背景: インドではケララ州で毎年のように発生していましたが、西ベンガル州での発生は2007年以来、約19年ぶりとなります。


2. 疫学的分析

ニパウイルスは、世界保健機関(WHO)が「パンデミックの可能性がある優先疾患」の一つに指定している極めて危険なウイルスです。

自然宿主: **オオコウモリ(フルーツバット)**です。

感染経路:動物からヒト: ウイルスに汚染された果実(コウモリが食べ残したナツメヤシの樹液など)の摂取、または感染した豚との接触。

ヒトからヒト: 感染者の体液(唾液、尿、血液)への直接接触で、今回のコルカタの事例のように、医療現場での防護不足が原因となることが多いです。

致死率: 非常に高く、**40%〜75%**に達します。これはエボラ出血熱に匹敵する数字です。

系統: マレーシア型(NiV-M)とバングラデシュ型(NiV-B)があり、インド・バングラデシュで流行するのは**人から人への感染力がより強い「バングラデシュ型」**です。


3. 医学的・臨床的特徴

感染すると、数日から2週間程度の潜伏期間を経て発症します。

症状の進行

初期症状: 発熱、頭痛、筋肉痛、嘔吐、喉の痛みなど、インフルエンザに似た症状。

重症化: 急性呼吸器感染症(重度の呼吸困難)や、致死的な脳炎を引き起こします。

神経学的後遺症: 生還しても、約20%の人にけいれんや性格変化などの後遺症が残ることがあります。また、数ヶ月から数年後に脳炎が「再燃」する稀なケースも報告されています。

診断と治療

診断: RT-PCR検査やELISA法による抗体検査が行われます。

治療: 現在、承認された特効薬やワクチンは存在しません。

対症療法: 重症患者に対する集中治療が主です。

最新動向: 2025年12月からオックスフォード大学などが世界初のフェーズ2治験(ワクチン)を開始しています。

また、一部の臨床現場では抗ウイルス薬「レムデシビル」が試用されるケースもあります。


4. 予防と対策

インドへ渡航する場合、あるいは現地の状況を把握する上でのポイントです。

・接触回避: コウモリが生息するエリアを避け、地面に落ちている果実を食べない。

・未殺菌飲料の回避: ナツメヤシの樹液などの生飲みを避ける。


・手洗いの徹底: 感染予防の基本ですが、ウイルスはアルコール消毒や石鹸に弱いです。

※注記: 現在のインド当局の発表では、監視体制が強化されており、パニックになる段階ではありませんが、医療従事者の感染が見られた点は警戒が必要です。



2026年1月29日木曜日

知ってて損はない医学の知識-7.なぜ20代に漢方がこれほど支持されているのか(2026年現在の最新医学的知見)-

 1. なぜ20代に「漢方」が刺さるのか?(医学的・社会的背景)

かつて「お年寄りの薬」というイメージがあった漢方が、20代に選ばれる理由は主に3つあります。

1)「未病(みびょう)」へのアプローチ: 検査数値には異常が出ないけれど、「なんとなく体がだるい」「生理前にイライラする」「肌荒れが治らない」といった、西洋医学では病名がつきにくい不調(未病)に対して、漢方は得意分野を持っています。

2)SNSによる「パッケージと手軽さ」の普及: 最近ではデザイン性の高いパウチや、コンビニ・ドラッグストアで購入できる「第2類医薬品」の漢方が増えSNSで「#漢方女子」などのハッシュタグとともに、「体質改善」のツールとしてポジティブに発信されています。

3)パーソナライズへの関心: 自分の「証(しょう:体質や状態)」に合わせて薬を選ぶという考え方が、自分らしさを大切にする世代の価値観に合致しています。


2. ニュースが指摘する「自己判断」の医学的リスク

専門医が警鐘を鳴らす最大の理由は、「漢方薬=植物由来だから副作用がなく安全」という誤解にあります。

主な副作用と注意すべき成分

○甘草(カンゾウ):起こり得る副作用としては、グリチルリチン酸が原因で血圧上昇やむくみ、低カリウム血症を引き起こします。

○黄ゴン(オウゴン):起こり得る副作用としては、間質性肺炎・肝障害を引き起こし咳や息切れ、あるいは倦怠感や黄疸が現れることがあります。

○マオウ:起こり得る副作用としては、エフェドリンを含んでいるため、交感神経を刺激しすぎ動悸や不眠を引き起こすとがあります。

※特に注意が必要なのが、**「複数の漢方の併用」**でドラッグストアで買ったニキビ用の漢方と、風邪薬として買った漢方の両方に「甘草」が含まれていると、知らず知らずのうちに過剰摂取(1日上限目安量を超過)となり、副作用のリスクが急増します※


3. 最新情報:2026年における漢方治療のトレンド

2026年現在、医療現場では以下のような新しい動きが見られます。

AIによる「証」の判定補助: スマホで舌の写真を撮る(舌診)だけで、AIが現在の体質を分析し、最適な漢方を提案する技術の精度が向上していますが、これはあくまで「目安」であり、最終的な診断は医師が行うのが原則です。

オンライン漢方診療の普及: 忙しい20代にとって、スマホ一つで専門医の診察を受け、自宅に漢方が届くサービスが一般的になりこれにより、ドラッグストアでの「完全な自己判断」による事故を防ぐ役割も果たしています。

◎医学的なアドバイス:安全に漢方を取り入れるために◎

もしあなたが漢方を試してみたい、あるいは現在服用している場合は、以下の3点を守ってください。

1)「お薬手帳」を必ず活用する: 他の薬(低用量ピルやサプリメント等)との飲み合わせを確認するため、ドラッグストアで購入した際も記録に残してください。

2)2週間〜1ヶ月を目安に効果を見極める: 「長く飲まないと効かない」と思われがちですが、合っていない場合は副作用だけが出ることもありますので効果が見られない、あるいは違和感があればすぐに中止してください。

3)初期症状を見逃さない: 手足のしびれ、むくみ、階段を登った時の息切れなどが出た場合は、すぐに服用を止めて医師に相談してください。


【まとめ】

漢方は正しく使えば、20代のQOL(生活の質)を劇的に向上させる強力な味方になりますが、「薬」である以上、リスクはゼロではありませんのてSNSの情報だけを鵜呑みにせず、専門家の目を入れることが、美と健康への一番の近道です。

2026年1月27日火曜日

知って損はない医学の知識-6.コンタクトレンズ利用者が知っておくべき**「アカントアメーバ角膜炎(AK)」**の本質的なリスクと対策-

 1. 「水」の中に潜む最強の単細胞生物

アカントアメーバは、水道水、公園の土壌、プール、温泉など、私たちの身の回りのあらゆる環境に生息しています。

驚異の生命力: 環境が悪化すると「嚢子(シスト)」という殻に閉じこもり、消毒薬や乾燥に対して極めて強い耐性を持ちます。

これが治療を困難にする最大の要因です。

◎「水=安全」ではない: コンタクトレンズを水道水で洗う、あるいは装着したままシャワーを浴びる行為は、アメーバを直接目に招き入れる最も危険な行為です。


2. コンタクトレンズが「感染の足場」になる

統計的に、アカントアメーバ角膜炎患者の約85〜95%がコンタクトレンズ利用者です。

微細な傷: レンズの長時間装用による乾燥や摩擦で角膜にできた目に見えない傷が、アメーバの侵入口となります。

付着と増殖: アメーバはレンズの表面に付着しやすく、レンズと瞳の間に挟まることで角膜組織をじわじわと「餌」として破壊していきます。


3. 特徴的な症状:激痛と「リング状角膜浸潤」

初期症状は結膜炎と似ていますが、進行すると他の病気にはない特徴が現れます。

異常な激痛: 角膜の神経に沿って炎症が広がるため、光を浴びることすらできないほどの「焼けつくような痛み」に襲われます。

視力低下: 角膜が白濁し、末期にはリング状の白い濁り(リング状浸潤)が形成され、急激に視力が失われます。


4. 診断の難しさと「誤診」のリスク

この病気は非常に稀(世界で年間約2万3000例)であるため、眼科医でも即座に診断するのが難しい疾患です。

他疾患との混同: 初期は「ウイルス性結膜炎」や「ヘルペス角膜炎」と誤診されやすく、誤ってステロイド点眼薬を使用すると、免疫が抑制されてアメーバの増殖を劇的に加速させてしまう恐れがあります。

早期発見の鍵: コンタクト利用者が「激痛」を伴う異常を感じた際は、必ず「コンタクトを日常的に使用していること」を医師に告げ、専門的な検査(角膜擦過検鏡など)を仰ぐ必要があります。


5. 治療は「年単位」の長期戦

アカントアメーバには特効薬が少なく、治療は過酷を極めます。

頻回点眼: 毒性の強い殺菌剤や抗真菌薬を、初期には1時間おき(24時間体制)で点眼する必要があります。

再発の恐怖: 治療で症状が治まったように見えても、組織の奥で「嚢子」として生き残り、数ヶ月〜数年後に再発することがあります。角膜移植を行っても、移植した新しい角膜が再び破壊されるリスクも伴います。


6. 最新の予防スタンダード

医学的に最も推奨される予防策は、レンズの「衛生管理の徹底」に尽きます。

1dayタイプの推奨: 汚れや菌が蓄積する前に捨てる「毎日使い捨てタイプ」が、疫学的に最もリスクを下げます。

完全乾燥: 2week等の継続利用タイプの場合、ケースは洗浄後に完全に乾燥させてください(アメーバは湿った環境を好みます)。

「NO WATER」ルール: コンタクトを触る前は石鹸で手を洗い、完全に乾かす。水泳やシャワー時は必ずレンズを外す。この徹底だけでリスクの大部分を回避できます。


7. 早期受診が「失明」を防ぐ唯一の道

もし、コンタクトを外しても目が赤い、痛む、ゴロゴロするといった症状が続く場合は、「明日まで待とう」と思わず、すぐに眼科を受診してください。

治療のゴール: 早期に適切な抗アメーバ薬を開始できれば、視力を維持したまま完治できる可能性が高まります。

手遅れになると、失明や眼球摘出という最悪の事態も医学的に否定できませんのでくれぐれもご注意ください。

2026年1月25日日曜日

季節性インフルエンザ特集-14.抗インフル薬、48時間以降に投与していいの?!-

 抗インフルエンザ薬の「48時間の壁」と最新の考え方を以下に解説いたします。


1. 原則は「48時間以内」:ウイルスの増殖を抑えるため

抗インフルエンザ薬(タミフル等)はウイルスの「増殖」を抑える薬で発症から48〜72時間でウイルス量はピークに達し、その後は自然に減るため、早期に飲むほど発熱期間を短縮する効果が高くなります。

2. 「48時間以降」でも投与すべきケースがある

「48時間を過ぎたら無意味」というのは誤解で重症化のリスクが高い人の場合、48時間を経過していても、薬を投与することで肺炎による死亡率の低下や、入院期間の短縮といった重要な効果が認められています。

3. 入院患者や重症化しつつある人は「即投与」

症状が重く入院が必要な患者や、外来診療でも症状がどんどん悪化している(進行性)の場合は、発症から何日経っていたとしても、可及的速やかに治療を開始することが最新の国際基準(IDSA等)で推奨されています。

4. 重症化リスクが高い「ハイリスク群」の定義

以下に該当する方は、48時間を過ぎていても医師の判断で投与が検討されます。

◎年齢: 5歳未満(特に2歳未満)の幼児、65歳以上の高齢者。

◎妊婦: 妊娠中、および出産後2週間以内の方。

◎体格: 高度肥満(BMI 40以上)の方。

5. 注意が必要な「持病(基礎疾患)」がある方

以下の持病がある方は、インフルエンザが重症化しやすいため、48時間を経過していても治療のメリットが大きくなります。

◎喘息などの呼吸器疾患、心臓病、腎臓病、糖尿病。

◎免疫抑制状態(治療中の方やHIV感染など)。

◎神経疾患(てんかん、発達障害など)。

6. 疫学的視点:家庭内や施設内での広がりを防ぐ

薬の投与には、本人の治療だけでなく「周囲への感染期間を短くする」という疫学的な側面もありますから、特にナーシングホームなどの高齢者施設入居者においては、集団感染を防ぐ観点からも適切な投与が重視されます。

7. 最終的な判断は「個別のリスク評価」で決まる

健康な成人の場合、48時間を過ぎれば自然治癒を待つ選択肢もありますが、上記のリスクがある場合は**「48時間はあくまで目安」**ですので、自己判断で受診を諦めず、特に持病がある方は医師に相談することが重要です。

インフルエンザの多くは自然軽快する疾患であり、抗インフルエンザの投与は必須ではないという認識は正しいですが、投与が推奨される背景や条件について確認するためにも、上記の「2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」や「~抗インフルエンザ薬の使用について~」を一読されておくことをお薦めします。


【参考資料】

日本小児科学会「2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」


日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」