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2012年5月20日日曜日

血液一般検査-番外編-CD4/CD8検査-


白血球には、T細胞(細胞性免疫に関与)、B細胞(液性免疫に関与、抗体を産生する) 、null細胞(T細胞でもB細胞でもない)があります。

このうちCD4陽性細胞は、B細胞の免疫グロブリン産生を補助し、CD8陽性細胞は免疫グロブリン産生を抑制します。

リンパ性の悪性腫瘍や免疫不全症では、T細胞とB細胞の比率、さらにCD4陽性細胞、CD8陽性細胞の比率が変わるため、診断や治療経過観察のためにこの検査は行われます。

CD4陽性細胞は、HIVが非常に結合しやすいために、HIV感染症ではHIVがCD4陽性細胞に感染し細胞を破壊することから、CD4が低値となります。

逆に成人T細胞性白血病(ATL)では、HTLV-1がCD4陽性細胞に感染しCD4陽性細胞が腫瘍化し増殖します。

検査方法としては、血中のT細胞とB細胞の比率を、それぞれの細胞に特異的なモノクローナル抗体により測定します。

【基準値】

CD4 25~56%
CD8 17~44%
CD4/CD8比 0.6~2.9

※基準値は、検査施設によって若干異なります※


【基準値より上昇】

1.CD4

・成人T細胞白血病、HHV-6感染

2.CD8

・EBウイルス感染症

【基準値より下降】

1.CD4

・HIV感染、特発性CD4陽性細胞減少症、先天性免疫不全症候群

2.CD8 

先天性免疫不全症候群

【HIV感染とCD4の数の関係】


※HIV感染すると、通常1年間に60~100個/μlずつ低下しますが、AIDSの発症が近づくと
低下速度が速くなる傾向が見られます。


※CD4陽性リンパ球数が少ないほどAIDSの発症が近いので、500個/μl以下となれば、抗HIV薬の予防投与を開始します。


※350個/μl以下となった場合には、積極的に抗HIV薬による治療を開始する必要があります。


※100個/μl以下になりますと、ほとんどがAIDSを発症してしまいます。

2012年5月13日日曜日

血液一般検査-7.血小板数-


血小板の数が減少したり、その機能が低下すると、出血が止まりにくくなります。

その為、軽く何かに身体を当てても内出血をして青あざができたり、けがをしても出血がなかなか止まらなかったり、鼻血が出やすい、歯肉から出血することが頻回に起こります。

貧血があって慢性出血が疑われるときには、必ず血小板数の検査は行なわれます。

逆に、血小板の数が余りにも多くなりすぎると、血液が固まりやすくなり、血液が固まってできた血栓が血管をふさいで、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす危険性が増大します。

血液1μl中の血小板数が10万以下で血小板減少症、40万以上で血小板増多症とされます。

10万以下になると血が止まりにくくなり、さらに5万を切ると自然に鼻血が出たり皮下出血が始まって皮膚に紫色の斑点が出たりします。

3万以下では腸内出血や血尿が起こります。

2万個以下になると頭蓋内出血を起こすなど生命も危険になります。

血小板が極端に増加している場合は、血栓症が引き起こされるのを予防するためワーファリンなどの薬剤を投与します。

※血小板の異常な増減には、重い病気が隠されていることが多いので、血液内科のある専門病院で精密検査を受けることをおすすめします。


【基準値】

13.0万~34万/μl

※自動血球計算機で測定しますから、使用する機種によって若干の変動があります。

【基準外】

Ⅰ.減少

1.軽度の減少 5~15万

・白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗腫瘍化学療法後、薬剤性血小板
減少症、巨赤芽球性貧血、膠原病、脾機能亢進、肝硬変、ウイルス感染など。

2.中等度の減少 2~5万

・白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗腫瘍化学療法後など。

3.高度の減少 2万以下

・白血病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、抗腫瘍化学療法後など。

Ⅱ.増加

1.中等度の増加 40~80万

・慢性的な出血、鉄欠乏性貧血、術後、膵臓摘出、感染症、慢性骨髄性白血病など。

2.高度の増加 80万以上

・本態性血小板血症、慢性骨髄性白血病、真性多血症など。

2012年4月29日日曜日

血液一般検査-5.白血球数-


白血球は、身体の組織に侵入した細菌や異物を取り込み、消化・分解し無毒化します、更に身体の免疫機能を司ります。

そのことから、白血球が増加したり、減少したりするということは、身体のどこかに細菌・ウイルスなどの異物などが侵入した時や、身体の中の何処かで炎症を起こしていると考えられます。

白血球数が減少すると、免疫機能の低下から身体の抵抗力が衰えて感染症にかかりやすくなります。

3000個以下になると、感染症に罹りやすくなることから十分な感染症対策注意が必要となります。

特に1000個以下になると無菌室に入り、感染症に感染しないようにしなければなりません。

逆に2万個以上になった場合、慢性白血病や敗血症などの恐れがあります。

【基準値】

3,300~9,000個/μl

※自動血球測定器の機種によって若干の変動があります。

※白血球数は個人差が大きく、また同じ人でも朝は少なく、夜になれば増加する傾向があります。

そのため多少の変動はあまり気にする必要はありません。

【軽度~中等度の増加】 10000~50000

細菌による感染症、自己免疫疾患、重症の代謝異常(腎不全、肝不全など)、薬物中毒、白血病、骨髄増殖性疾患、妊娠、心理的ストレスなど。

【高度の増加】50000以上

白血病、骨髄増殖性疾患、重篤な感染症、悪性腫瘍の全身転移など。

【軽度から中等度の減少】 1000から3000

再生不良性貧血、ウイルス感染症、抗癌剤の投与、薬剤アレルギー、放射線治療、癌の骨髄転移、悪性貧血、脾機能亢進症など。

【高度の減少】1000以下

再生不良性貧血、抗癌剤の投与、薬剤アレルギー、放射線治療、癌の骨髄転移、悪性貧血、ウイルス感染症、AIDSなど。

※白血球の数だけでは、どの様な疾患に感染しているかわかりにくいことから、白血球の種類を調べる白血球分類検査を同時に行います。

※HIVに感染しても感染初期は、一過性に白血球数は軽度減少しますが、本来の数値に戻りますから、HIV感染を白血球数で判定することは出来ません。

※HIVに感染して数年が経過後、目に見えて白血球数が減少してきますが、これはHIVが白血球を破壊することに由来し、免疫機能を司る白血球が減少することによりやがて免疫不全に陥り、AIDSの発症が起こります。

白血球分類検査に関しては、次回紹介致します。

2012年4月22日日曜日

血液一般検査-4.赤血球恒数-


赤血球恒数とは、赤血球の大きさ、赤血球に含まれるヘモグロビンの量を調べる検査のことを言います。

この赤血球恒数には、以下の三種類があります。

1.MCV(平均赤血球容積):血中に含まれる赤血球の大きさを表す。

2.MCH(平均赤血球血色素量):血中に含まれる赤血球1個あたりのヘモグロビンの量を表す。

3.MCHC(平均赤血球血色素濃度):血中に含まれる赤血球1個あたりのヘモグロビン濃度を表す。

貧血になる疾患には、その病態によって特徴的な赤血球恒数の異常を示すものがありますから、赤血球恒数を調べることによって、「小球性低色素性貧血」、「正球性正色素性貧血」、「大球性高~正色素性貧血」の3つの型に分類して鑑別診断を進めることがてきます。

【赤血球恒数の計算方法】

1.MCV(平均赤血球容積)= ヘマトクリット値 / 赤血球数 × 1000 

※ヘマトクリット値、つまり容積を 赤血球数で割ったもので、赤血球の1個あたりの容積の平均値。
   
2.MCH(平均赤血球血色素量) = 血色素量 / 赤血球数 × 1000

※一定量の中の血色素量を、赤血球数で割ったもので、赤血球の1個あたりのヘモグロビン量の平均値。
   
3.MCHC(平均赤血球血色素濃度)= 血色素量 / ヘマトクリット値 × 100  

※個々の赤血球の容積に対する血色素量の比を%で表したもので血色素濃度の高低、すなわち低色素性、高色素性の程度を表す。

注:これらの計算は、自動血球計算機で血液検査を行うことにより、自動的に計算されます。

【基準値】

MCV  男性:84.9~99.6   女性:80.6~98.7  (fl )
MCH  男性:27.5~32.3   女性:25.0~31.9  (pg)
MCHC  男性:31.2~33.8   女性:30.3~33.4  (g/dl)

※使用する自動血球計算機の種類により若干数値が変動します。

基準値を外れた場合

・MCV:79fl以下、MCHC30%以下の場合

小球性低色素性貧血で、鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血、セラセミアの疑い。

・MCV:80~100fl、MCHC31~35%の場合

赤血球とヘモグロビン数に異常がない貧血で、溶血性貧血、急性出血、腎性貧血、再生不良性貧血などの疑い。

・MCV:101fl以上、MCHC31~35%の場合

大球性貧血で、巨赤芽球性貧血、腎性貧血の疑い。

2012年4月15日日曜日

血液一般検査-3.ヘモグロビン量及びヘマトクリット値


1)ヘモグロビン量(Hb)

ヘモグロビンは赤血球に含まれ、酸素を運搬する働きをすることから、この量が低下すると貧血となります。

反対にヘモグロビン量の増加は赤血球の増加に伴って見られます。

【基準値】

男性 13.8-16.6g/dL

女性 11.3-15.5g/dL

減りすぎている場合

・鉄欠乏性貧血:鉄分の不足による貧血で特に若い女性に多くみられます。

・病気や傷口からの出血が原因の貧血:痔、胃潰瘍、子宮筋腫など、日々気付かないほどの少量の出血でも、長期に続くと貧血になります。

・悪性貧血:ビタミンB12の不足。

・再生不良性貧血:骨髄の造血機能の低下。

・溶血性貧血:赤血球の寿命が短くなって、骨髄での赤血球の製造が間に合わない。

増えすぎている場合

・激しい運動後など身体が脱水状態の場合、循環血漿量が減少するため、見かけ上高値となります。

・高地居住者の場合、酸素濃度が少なく、その状況下で体内に酸素を必要量取り込む必要があるために高値となります。

・喫煙者では高値を示すことがあります。

2)ヘマトクリット値(Ht)

血液中に占める血球の割合を示します。

貧血があるとヘマトクリット値は低下し、多血症では増加します。

【基準値】

男性 40~52%

女性 35~47%

減りすぎている場合

・貧血:大部分は女性に多い鉄欠乏性貧血、悪性貧血、再生不良性貧血、白血病やがんの転移による貧血です。


増えすぎている場合

・脱水症状:全身の衰弱がひどく、飲食物を口からとれない、日射病、熱射病など。

・多血症:赤血球が徐々に増え、白血球や血小板も増えてくる。

※赤血球数やヘモグロビン量の検査結果を加味して赤血球恒数(次回解説予定)を求めれれば、貧血の種類や性質をおおよそ診断することができます。

※ヘモグロビン量とヘマトクリット値は、現在では自動血球計算機で赤血球数とともに自動的に測定されます。

※使用する自動血球計算機の機種によって基準値は若干異なります。

2012年4月8日日曜日

血液一般検査-2.赤血球数-


赤血球はヘモグロビン(血色素)を主成分として出来ています。

ヘモグロビンは、肺から取り込まれた酸素と結合して身体の各細胞に酸素を運び、同時に不要になった炭酸ガスを肺に運ぶ働きをしています。

赤血球の数を調べることにより、赤血球数が少ない病気や赤血球数が多すぎる病気が分かります。

赤血球の数が少ないと、全身運搬される酸素量が減少し、立ちくらみを起こしたり、血液を早く全身に運び酸素の運搬量を増やそうとすることから、脈が速くなったり、動悸、息切れといった貧血症状を起こします。

また、赤血球の数が多すぎる場合は、赤血球の数そのものは正常ですが脱水などで血液中の液体成分が減って相対的に赤血球の濃度が高くなっている場合は、水分を補給すれば問題ありません。

赤血球数そのものが増えている場合は、心臓や肺の病気で不足しがちになる場合の酸素供給を補うために増える二次性多血症と、病気のために赤血球が多く作られる真性多血症があります。

真性多血症は注意が必要な病気で、赤血球だけでなく白血球や血小板も増加しています。
赤血球数が多すぎるために血栓ができやすく、脳梗塞を起こしたりしますので、積極的に赤血球数を減らす治療が必要になります。

一方、ストレス多血症と呼ばれるものがありますが、これにはストレス、高血圧、喫煙、肥満などが関係していることがあり、中年男性に多くみられますが、これは生活習慣を改めることにより改善されます。

【基準値】

男性 430~570万/μl

女性 380~500万/μl

※基準値は検査方法や測定方法、測定機器、用いる試薬、単位などにより値が異なります。

男女とも1μl(=1mm3)中の赤血球数が300万個以下の場合は、明らかな貧血と診断されます。

ただし貧血の種類は、その他の検査を組み合わせて行わないと解りません。

赤血球の数が増えすぎて600~800万個になる場合は、多血症(赤血球増多症)と考えられます。

※HIVの感染の判断は、赤血球数検査では解りません。

2012年4月1日日曜日

血液一般検査-1.血液一般検査の種類-


血液一般検査とは、体調が悪くなり受診した時や健康診断では必ず行われる検査のひとつです。

検査を実施する理由としては、身体に異常があるとそれが血液にいち早く反映されるため、病気の有無の判断や健康状態を調べる上で血液一般検査はとても重要な検査のひとつと言えます。

血液一般検査の検査項目には、以下の種類があります。

1.赤血球数

2.ヘモグロビン量及びヘマトクリット値

3.赤血球恒数

4.白血球数

5.白血球分類

6.血小板数

上記の検査を順次わかりやすく解説していきます。