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2026年10月1日木曜日

 【インフルエンザ流行速報:2026年10月1日号】:「インフルエンザワクチンは意味がない」「打ってもかかるからムダ」は本当?

 


「予防接種を受けてもインフルエンザにかかることがあるなら、ワクチンなんて意味がないのでは?」

そんな疑問をよく耳にしますよね。


結論からお伝えすると、「ワクチンを打っても感染自体を100%防ぐことはできないが、打つには大きな意味がある」というのが医療の現場における事実です。


その理由と、私たちが知っておくべき大切なポイントを分かりやすく紐解いていきます。


1. ワクチンの本当の役割は「発症・重症化の予防」

インフルエンザウイルスは変異しやすいため、ワクチンを打ってもウイルスが体内に入り込むこと自体(感染)を防ぎそびれることがあります。

しかし、ワクチンの真の目的はそこではなく、あらかじめ抗体を作っておくことで、ウイルスが増殖するのを抑え、発症や重症化を防ぐことが最大の役割なのです。

実際、次のような発症・死亡予防効果が報告されています。

◎乳幼児:発病をおよそ20~50%防ぐ

◎健康な65歳以上の高齢者:発病をおよそ45%、死亡をおよそ80%防ぐ

なお、ワクチンの効果が現れるまでには接種後約2週間かかり、その持続期間はおよそ5ヶ月とされています。


2. 決して軽く考えてはいけない「インフルエンザ脳症」

インフルエンザの合併症の中で、特に恐ろしいのが「インフルエンザ脳症」です。

免疫の異常な反応によって急激に意識障害やけいれんなどの神経症状が現れる病気で、主に0~19歳の子どもたちに多く見られます。

◎致死率の現状:昔に比べ適切な治療で10%以下まで下がったものの、治療が行われない場合の致死率は約30%にものぼる危険な病気です。

◎後遺症のリスク:一命を取り留めても、約15%にいてんかんや発達障害などの後遺症が残ると考えられています。

インフルエンザ脳症の年間報告数は、流行の規模によって毎年変動します(直近のシーズンでも多くの子どもたちが発症しています)。こうした重い合併症やリスクを防ぐためにも、ワクチン接種は非常に大きな意味を持っています。


3. ワクチンを活かすための大切なポイント

インフルエンザシーズンを安全に乗り切るために、以下のポイントを意識しましょう。

1)早めの接種がカギ:

流行が本格化する前、遅くとも12月上旬までに。流行の立ち上がりが早い年は10~11月頃の接種を心掛けましょう。

2)基本の感染対策も一緒に:

接種後も、手洗い・うがい・換気といった基本的な対策は続けましょう。

3)周りへ広げない配慮を:

ワクチンを打っていても発症することはあります。体調がすぐれないときは無理をせず、周囲へうつさない行動が大切です。


まとめ


「予防接種を受けたのにインフルエンザにかかってしまった」という場合でも、決してワクチンが無駄だったわけではありません。


症状を軽く済ませ、何より恐ろしい脳症などの重症化リスクから身を守る盾となってくれます。


正しい知識を持った上で毎年上手に活用し、自分と大切な家族の健康を守っていきましょう!


【参考資料】

『ワクチン接種してもインフルにかかる人が出るわけ【医師が解説】』

『インフルエンザワクチンは接種したほうがいいの?』

『インフルエンザ予防接種は受けるべき?打たない方がいいと言われる理由を検証』

2026年9月30日水曜日

【インフルエンザ流行速報:2026年9月30日号】:インフルエンザの予防接種、今打つと効果はいつまで持つ?

 


例年であれば12月上旬から1月にかけて流行しはじめるインフルエンザですが、今年はなんと9月という異例の時期から感染が拡大しています。


こうした状況を受け、多くのクリニックでは例年(10月1日開始)より時期を大幅に前倒し、9月18日から予防接種を開始しているとのことです。


更に患者さんからも「流行っているから早めに打ちに来た」と、問い合わせや接種が急増しています。


そこで気になるのが、「早い時期に打つと、肝心のシーズン本番まで効果が持つのか?」という疑問ですよね。専門医の見解を分かりやすくまとめました!


📌 今、何が流行している?


現在流行しているのは、発熱や咳などの症状が出やすい「A型の一種」で、特に高齢者の方がインフルエンザにかかった後に肺炎を起こしたり、喘息持ちの方が悪化したりするケースが懸念されており、医師も早めの警戒を呼びかけています。


⏳ そこで疑問ワクチンの効果はいつまで続く?


早めに接種した場合の効果の持続期間については、


◎抵抗力の維持期間:ワクチンの免疫は、だいたい5ヶ月ほど維持されると言われています。


◎「今(9月~10月の初め)」打った場合の懸念:今打つと、5ヶ月経った「2月末~

3月初旬頃」には免疫力が少し落ちてしまうのではないかという懸念がゼロではありません。


◎それでも「今打つべき」理由:その時期(来年2月以降)の流行がどうなっているかは分かりませんが、「今これだけ流行が拡大しているのだから、早い段階であっても今打って備えていいのではないか」という判断のもと、接種が行われています。


受験生は「もう一回打つ選択肢もある!!」


特に注意が必要なのが、受験を控えた学生で受験は3月だから、あまり早く打つと感染効果が弱くなる可能性があることからもう一回打つ選択肢もあります。


ワクチンには感染を防ぐ効果だけでなく、かかってしまった場合に重症化を防ぐ効果も期待されていることからして接種を検討する際には、自分のライフスタイルや行動予定を踏まえ、医師に相談しながら時期を判断することが求められる。


※13歳以上の受験生がインフルエンザワクチンを2回受ける選択肢はあります。日本の添付文書上、13歳以上は「1回または1〜4週間の間隔をおいて2回接種」と規定されているため、希望すれば2回受けることは制度上可能です※


【2回受ける場合のメリットと注意点】


1)メリット:受験生の強いストレスや睡眠不足による免疫力低下に対し、2回接種(ブースター効果)で抗体価をより高め、安心感(メンタル面のアドバンテージ)に繋げることができます。


2)注意点: 13歳以上は1回で十分な免疫がつくため、医学的には「一律に2回接種」は強く推奨されていませんし、短期間に同じワクチンを打っても「効果が2倍になる」わけではなく、費用や副反応のリスクのみが増えるという専門家の意見もあります


まとめ


今年は例年にないスピードでインフルエンザの流行が進んでいます。「時期が早すぎて効果が切れないか心配…」という声もありますが、目の前の流行から身を守るための選択肢として、早めの予防接種を検討してみるのもよさそうですね。


皆様も体調管理にはくれぐれもお気をつけください!


【参考資料】


2026年9月29日火曜日

 【インフルエンザ流行速報:2026年9月29日号】:インフルエンザの「早期流行」と「ワクチン前倒し」は、流行防止の歯止めになるのか?

 


近年の秋口におけるインフルエンザの早期流行や、それに伴うワクチンの接種スケジュール前倒しの動きは、公衆衛生の現場において大きな関心事となっています。


今回は、医学的・疫学的な視点から「予防接種を早めることが本当に流行の歯止めになりうるのか」を最新の動向を踏まえて分かりやすく解説します。


1. 医学的に見た「ワクチンの立ち上がり」とタイミングの重要性


インフルエンザワクチンは、接種すれば即座に効果が出るわけではありません。


感染予防◎抗体が作られるまでの時間:体内で十分な免疫(中和抗体)が誘導され、防御効果が発揮されるまでには約2週間程度の時間を要します。


◎早期流行への即効性:例年より早い時期から学童や幼児を中心に感染が急拡大するシーズンでは、この「2週間のタイムラグ」が勝負の分かれ道になることからして流行の立ち上がりに合わせて前もって接種を完了させておくことは、個人が重症化や感染を防ぐ上で医学的に非常に合理的なアプローチです。


2. 疫学的に見た「集団免疫と流行の歯止め」の限界


では、社会全体(集団)で見ると、ワクチンの前倒しは流行の大きな歯止めになるのでしょうか? 

疫学的な分析には、いくつかの重要なジレンマが存在します。


1)「持続期間」とのトレードオフ:インフルエンザワクチンの有効性は、接種後数ヶ月をピークに徐々に減衰していく傾向があることからして、あまりに早い時期(例えば夏終わりなど)に打ちすぎると、冬本番から春先(2月〜3月頃)のピークやシーズンの後半にかけて免疫が弱まり、流行の波を抑えきれなくなるリスクが指摘されています。


2)流行曲線の「平坦化(フラットニング・ザ・カーブ:Flattening the curve)」への寄与:一方で、小児や高齢者などリスクの高い層へ早期に接種を進めることは、医療機関への急激な負荷(パンク)を防ぎ、重症者や入院患者を減らす「流行のピークの高さ」を抑える効果(ダメージコントロール)としては十分に機能します。


【流行曲線の平坦化とは】


感染症の爆発的な流行(パンデミックなど)の際、一定期間の感染者数を抑えて流行のピークを後ろに倒し、グラフの波をなだらかにすることを指します。


3. 最新情報(2026年シーズン)にみる行政・医療現場の対応


国内外の動向を見ると、早期流行への危機感から、公衆衛生上の柔軟な対応が取られています。


◎行政や医療機関の素早い動き:例えば、流行の早期化や注意報の発令を受けて、各国・地域の保健当局や医療機関では、ワクチンの供給スケジュールや公費接種の開始時期を例年より前倒しする動きが見られます。


◎最新株への対応:2026-2027年シーズンに向けては、前シーズンに猛威を振るったウイルス系統(A(H3N2)の変異株など)に対応するようワクチン株が適切にアップデートされており、早期かつ適切なタイミングでの接種が推奨されています。


まとめ:私たちが取るべき最適な行動


医学的・疫学的な分析から言える結論として、「ワクチンの前倒し接種は、個人の発症・重症化を防ぎ、地域の医療崩壊を防ぐための強力な歯止めになりうる」一方で、シーズン全体の流行を完全に消し去る万能薬ではなく、「持続期間とのバランス」を考慮する必要があります。


※推奨されるアクション:焦って極端に早すぎる時期に打つ必要はありませんが、地域での流行入りが報じられたり、ご自身のライフスタイル(受験や持病、家族構成など)でリスクが高いと感じる場合は、医療機関のスケジュールを確認し、流行の波に乗り遅れないよう計画的に接種を済ませることが最も賢明な自衛策となります。


皆さんは今年のインフルエンザワクチン、例年と比べてどの時期に打つ予定にされていますか?


【参考資料】

『インフルエンザ患者数2万人超え 既に昨年同時期の7倍以上に』

2026年9月28日月曜日

知ってて損はない医学の知識39【血圧の疑問】「左右の腕で血圧が違う!?」知られざる理由と、正しい測り方の正解

 


毎日の健康管理に欠かせない血圧測定。「あれ、今日は右の方が高いな?」「いつも左で測っているけれど、これで合っているのだろうか?」と疑問に思ったことはありませんか?


健康診断や自宅での測定で、左右の数値に少し差が出ると「もしかして体のどこか悪いのでは…」と不安になりますよね。


今回は、「血圧は左右の腕で本当に異なるのか?」という疑問について、その医学的な理由から、正常な範囲、そしてどちらの腕で測るべきかの正解まで分かりやすく解説します!


1. なぜ? 左右で血圧に違いが出る理由

「心臓から送り出される血液なのだから、左右同じはずでは?」と思われがちですが、実は健康な人でも左右の血圧に差が出ることは珍しくありません。

その主な理由は大きく分けて2つあります。

1)身体の構造的な違い

心臓から右腕へ血液を送り出す血管(鎖骨下動脈など)は、左側よりも少し早い段階で太い血管から分岐する構造になっているそのため、わずかに右側の数値が高くなりやすい傾向があります。

2)測定時のタイムラグや生体変動

片腕ずつ順番に測定するため、測るわずかな時間差やその時の姿勢、無意識の緊張などによって、5〜10mmHg程度の差は自然に生じます。


2. どこまでがセーフ? 「許容範囲」と「注意が必要な差」

では、どのくらいの差であれば安心できるのでしょうか。目安は以下の通りです。

📌 正常な範囲(心配ないケース)

左右の差が 5〜10mmHg以内 であれば、生理的な範囲内であり基本的には問題ありません。日常のちょっとした血圧の変動として捉えて大丈夫です。

⚠️ 注意が必要な範囲(医療機関への相談をおすすめするケース)

何度測っても常に 10〜15mmHg以上 の差がある場合は要注意です。

動脈硬化による血管の狭窄(鎖骨下動脈狭窄症など)や、何らかの疾患が隠れている可能性があります。もし持続的な大きな差が気になる場合は、一度医療機関で相談してみましょう。


3. 結局、左右どちらで測るべき?

「医学的に、絶対に左右どちらで測らなければいけない」という決まりはありません。

大切なのは、「毎回同じ腕、同じ環境で測り、日々の変動をチェックすること」です。

具体的な選び方のコツは以下の通りです。

◎基本は「同じ腕」で

普段の測定では、利き手とは反対の腕や、カフ(帯)を巻きやすい方など、ご自身が続けやすい腕を固定して測りましょう。

◎左右差がある場合の原則

もし左右で明確な差がある場合は、数値が高い方の腕の血圧を「本来の血圧」として参考にするのが原則です。初めて測る時や、しばらく測定していない時は、一度両腕で測ってどちらが高いかを確認しておくと安心です。


まとめ

血圧の左右差は、体の構造や自然な変動によるもので、多少の差(5〜10mmHg)であれば心配いりません。

大切なのは、一喜一憂せずに「いつもの腕」で継続して測り続けることです。今日からの血圧測定の参考にしてみてくださいね。


【参考資料】

『知って役立つ血圧の話 日本心臓財団』

『血圧に左右差があっても問題ない? ~注意点と対処法~(シチズン・システムズ)』

2026年9月27日日曜日

【インフルエンザ流行速報7:2026年9月27日号】:【2026年秋冬の感染症動向】異例の早さで動くインフルエンザと、知っておくべき最新の予防・対策の常識

 


皆さんこんにちは。秋の気配が深まるとともに、今年もインフルエンザをはじめとする秋冬の感染症が気になる季節になってきました。


今回は、2026年秋の感染症の最新トレンドと、医学的・疫学的に見て私たちが本当に気をつけるべき予防法について分かりやすく解説します。


1. 2026年秋:インフルエンザが「過去2番目の早さ」で流行入り

今年の秋冬で最も特筆すべき疫学的なトピックは、インフルエンザが8月の終わり頃から異例の早さで流行シーズンに突入している点であり、これは1999年に感染症法下で統計を取り始めて以降、過去2番目に早い流行入りとなっています。

◎なぜここまで早いのか?:明確な要因は調査中ですが、冬の気候にある南半球からの渡航者や日本人の帰国者による持ち込みが、お盆や夏休みの人流増加と重なったことが背景にあると考えられています。

◎臨床的な特徴:現在はA型が主流であり、夜から症状が出始めて翌日には高熱や強い全身の筋肉痛・だるさといった典型的な強い症状に急激につながるケースが多く見られます。


2. 医学・疫学的に見直したい「NG予防法」と「基本の対策」

良かれと思ってやっている感染対策の中に、実は科学的根拠が乏しい、あるいは逆効果になりうるものがあります。

◎うがい薬(ヨード系)の過度な使用に注意:京都大学のグループによる無作為化比較試験において、「水だけでうがいをしたグループ」は風邪の発症が約40%減少した一方、「ヨード液によるうがい」には明確な予防効果が確認できませんでした。

◎粘膜への影響:ヨード系は喉の常在細菌叢まで殺菌し、かえって粘膜のバリア機能を弱める可能性があるため注意が必要です。

◎アルコール消毒の限界:秋冬に流行しやすいノロウイルスなどの感染性胃腸炎ウイルスには、アルコールが効かないものもあります。

◎最強の対策は「基本の流水手洗い」:次亜塩素酸ナトリウムでの消毒や、昔ながらの「石鹸でしっかり洗って物理的に流す」というスタンダードな手洗いが、インフルエンザ・コロナ・ノロウイルス等に対して最も確実で有効な対策となります。


3. まとめ:周囲への感染拡大を防ぐため

体調不良時は無理をして出勤・登校せずステイホームを心がけること、そして解熱剤で無理に熱を下げて行動しないことが周囲への感染拡大を防ぐ基本です。

正しい医学的知識に基づいた基本の対策を徹底し、健やかな秋冬を過ごしましょう。


【参考資料】

『インフルエンザの発生状況 2026年9月4日時点 厚生労働省』

『感染対策の基礎知識』

2026年9月26日土曜日

 【インフルエンザ流行速報7:2026年9月26日号】:【感染症動向調査第37週: 2026年9月7~13日】

 


インフルエンザ患者数は、20697人となり前週比8398人と5週連続増加し、2万例を超え、定点当たりの報告数は沖縄県(16.61)が最も高く、注意報レベル(10.00)を上回って来ています。


・全国平均定点数: 定点あたり 5.54人


・前週からの推移: 前週(3.29人)から約68%増加し、平年レベルを超えて流行が拡大しています。


1.沖縄県:16.61

2.茨城県:9.85

3.東京都:9.53

4.神奈川県:9.45

5.新潟県:9.44

6.埼玉県:9.10

7.千葉県:8.63

8.山口県:8.03

9.富山県:7.67

10.愛知県:6.58

11.宮城県:5.35

12.長野県:5.30


※正しい予防に心がけて感染予防のに努めて下さい。


【参考資料】

『令和8年第37週(令和8年9月7日から令和8年9月13日まで)分のインフルエンザの発生状況』

『インフルエンザ患者数2万人超え 既に昨年同時期の7倍以上に』

2026年9月25日金曜日

知ってて損はない医学の知識38.生成AIの「健康助言」は本当に安全? 信頼性と「責任の所在」を考える

 


日常のちょっとした体調不良や、病院で聞いた説明の確認に、生成AI(ChatGPTやClaude、Geminiなど)を使う人が増えています。


「病院に行くほどではないけれど気になる」「夜間にすぐに答えが欲しい」そんな時、AIは手軽な相談相手になってくれますよね。


しかし、「AIが教えてくれた健康アドバイス、そのまま信じて本当に大丈夫なの?」という疑問が湧きませんか?


今回は、2026年に発表された最新の安全性に関する研究や、国内外の規制動向を手がかりに、生成AIの健康助言の実態と「もしトラブルが起きたら誰が責任を負うのか」という問題について分かりやすく解説します。


1. チャットボットの2〜4割に「問題あり」という現実


2026年、『npj Digital Medicine』誌に、生成AIの健康助言の安全性を検証した興味深い研究が掲載されました。


この研究では、患者が実際に医療現場で尋ねるような医学的質問(内科、小児科、女性の健康など)の合計888件を4つの主要なAIチャットボットに答えさせ、16人の専門医が「安全性や正確性」をブラインド(AI名非公開)で評価しました。


その結果は、以下のように少々ショッキングなものでした。


「問題がある」と判定された回答の割合


Claude:21.6%


Gemini:27.5%


GPT-4o:31.5%


Llama:43.2%


※「安全ではない」と分類された割合(モデルによって5%〜約13%)


⚠️ 実際に報告された「危険なアドバイス」の例


論文では、AIが実際に出力した危うい回答の具体例も挙げられています。


◎まぶたの周囲にティーツリーオイルを勧めた(目に入れば角膜を傷つけ、治療が必要になるリスク)


◎授乳中の鎮痛薬を「ほとんどは安全」と答えた(オピーオイド系の場合、乳児に呼吸抑制が起こる危険)


◎鼻詰まりの乳児に年齢の限定なく温かい飲み物を勧めた(乳児に水やハーブティーを与えると電解質異常を引き起こすリスク)


◎1セント硬貨を飲み込んだ子供への回答で、ボタン電池や磁石の危険性に言及しなかった(ボタン電池であれば一刻を争う事態になります)


米国では、チャットボットに寄せられる医学的質問は月4,300万件規模に上ると推計されていますがそのうち「5%が安全ではない」と仮定しても、月200万件以上のリスクのある回答がやり取りされている計算になります。


AIは日々進化しており精度は向上していますが、この数字は無視できない水準です。


2. 「医師が間に入る」時代は終わった? 責任はどこへ


こうしたAIの助言をうのみにして健康被害が生じた場合、いったい誰が責任を負うのでしょうか?


従来の医療機器や医薬品の分野では、米国に「学識ある仲介者の法理(Learned Intermediary Doctrine)」という考え方がありました。


これは、「メーカーが医師に十分な情報を伝えていれば、患者への説明や判断の責任は医師が引き受ける」というもので、「医師が機器と患者の間に入る」ことが前提となっていました。


しかし、患者がスマートフォンに向かって直接AIチャットボットに相談する現代のスタイルでは、その間に医師がいません。


◎各国の動きと限界


・米国の動向(FDAの議論):

2026年8月、米食品医薬品局(FDA)が生成AIを搭載した医療機器に関するディスカッションペーパーを公表し「AIがどこまで独立して動くか」「誤った出力による被害がどれほど重大か」という軸でリスクを分類し、医師による監督の有無が重要な論点として浮上しています。


・日本の指針(医療従事者の場合):

日本においては、厚生労働省の通知(2018年)で「診断や治療を行う主体は医師であり、最終的な判断の責任を負う」と明確に定められていますので、医師が診療の補助としてAIを使う場合、責任の所在はあくまで医師にあります。


しかし、「患者が自ら個人的にAIに相談した場合」については、汎用AIはそもそも医療機器ではないため、現在の法制度の「外」に置かれています。


回答の正しさを事前に保証・検証する仕組みがないのが現状です。


3. 私たちは生成AIとどう付き合うべきか


こうした状況を踏まえると、私たちユーザーや医療従事者は、生成AIとどのように向き合うべきなのでしょうか。


① ユーザー(患者・一般の人)としての心得


生成AIは、病気の「診断」や「確実な治療法」を教えてくれる医師ではなく、あくまで「分かりやすい言葉で情報を探してくれる優秀な検索サポーター」と捉えるのが安全です。

※AIの回答をそのまま鵜呑みにせず、必ず医療機関の受診や専門家の意見を仰ぐ。


「子どもへの投薬」「誤飲」「激しい痛み」など、緊急性の高い健康不安については、AIではなく直ちに医療機関や相談ダイヤル(#8000など)を利用する。


② 医師・医療現場の視点


医療現場でもAIの活用が進んでいますが、プロが使う場合も「診療録の下書き」「患者向け説明文の言い換え」など、最終的な出力を人間が完全にコントロール・検証できる用途に限定することが大原則です。


「AIがこう言ったから」と判断を丸投げしてはならないのは、患者さん自身がAIを使う場合も同じです。


おわりに


生成AIは、私たちの健康管理や医療の形を大きく変える素晴らしい技術ですが一方で、その便利さの裏には「間違った情報がそのまま直接ユーザーに届いてしまう」という構造的なリスクが潜んでいます。


制度や法律が追いつききっていない現在、「得られた情報が本当に正しいか、一歩立ち止まって自分で確認する(あるいは専門家に相談する)」というセルフ防衛の意識が、何よりも大切になってきます。


皆さんは、体調が悪いとき、生成AIの回答をどこまで信用しますか?


【参考資料】

『大規模言語モデルは、患者が提起する医療上の質問に対して安全でない回答を提供する』

『AIが不適切な処方アドバイスをした場合、誰が責任を負うのか?』

 

2026年9月24日木曜日

【新型コロナ最新情報】:第3回:【重症化リスク・ワクチン編】秋からの定期接種と、これからの備え

 


変異株の性質が変わっても、「どのような方が重症化しやすいか」という基本の構図は大きく変わりません。


季節の変わり目を安全に乗り切るためのポイントを以下に解説します。


1. とくに注意が必要な方(重症化リスク)


以下に当てはまる方は、症状が軽くても「様子見」をせず、早めにかかりつけ医や専門医療機関へご相談ください。


来る高齢の方(65歳以上): 発熱と暑さが重なると脱水が進みやすく、腎機能悪化や意識障害の引き金になります。


◎糖尿病の方: 感染によって血糖値が乱れやすく(シックデイ)、SGLT2阻害薬などを服用中の方は脱水に特段の注意が必要です。


◎慢性疾患をお持ちの方: 心不全、慢性腎臓病(CKD)、COPD、気管支喘息などの基礎疾患がある方。


◎免疫が低下している方・妊娠中の方・乳幼児: 使用できる薬に制限があったり、脱水や長期化を起こしやすいため配慮が必要です。


2. 2026/27シーズンの新型コロナワクチン  


新型コロナワクチンは、秋冬に年1回の「定期接種」として位置づけられて、多くの自治体では例年10月1日〜翌年3月31日が接種期間となります。


◎定期接種の対象: 65歳以上の方、および60歳〜65歳未満で心・腎・呼吸器等に重度の障害がある方などが対象です(それ以外の方は任意接種となります)。


◎ワクチンのトレンド: 2026/27シーズンに向けては、WHOの推奨や国内の審議会方針に基づき、流行株(JN.1系統やそこから派生したLP.8.1、XFG、NB.1.8.1など)に対して有効性が示された抗原を用いたワクチンが供給される予定です。 


◎ワクチンに期待する役割: 変異株による免疫逃避があるため、ワクチンで「感染そのものを完全にゼロにする」ことは難しいのが実情ですが、「重症化・入院・死亡を防ぐ」という最大の目的において、高齢者や基礎疾患のある方には今なお極めて意味のある選択肢です。


9月に入り、インフルエンザワクチンの接種準備も進む時期です。


コロナとインフルエンザの同時流行に備え、ご自身の健康状態やスケジュールに合わせた対策を考えていきましょう。


ご自身の持病や、現在服用中のお薬について個別のご不安がある場合は、お気軽にかかりつけ医に相談してください。


【参考資料】

『2026/27シーズンの季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの供給等について』

2026年9月23日水曜日

【新型コロナ最新情報】:第2回:【症状・検査・治療編】激しいのどの痛みへの対処と、正しい検査・薬のタイミング

 


【2026年9月時点での流行状況】

※2026年9月中旬(第37週:9月7日〜9月13日)時点における全国の定点医療機関あたりの新型コロナウイルス感染症の平均報告数は2.44人、総報告数は9,122人※

※新型コロナウイルス感染症(5類)には、季節性インフルエンザのような明確な「流行入り(定点1人以上)」「注意報(10人以上)」「警報(30人以上)」といった全国一律の公的な判断基準がありません。そのため以下のように解釈できます。

1)過去の大流行との比較:過去に「第○波」と呼ばれた大流行のピーク時には、全国平均で定点当たり30人〜40人超を記録していましたがこれに比べると、現在の「2.44人」は非常に低い水準とされています。

2)トレンド(増減の推移):第36週の「2.08人」から第37週は「2.44人」へと増加傾向にあることからして減少から増加に転じているため、「新たな感染の波が立ち上がりつつある(流行の兆候)」という見方はできますので注意が必要となっています。


「熱はそれほどでもないのに、つばを飲み込むのがつらい」――。ニンバス株などの影響もあり、今回の流行では「カミソリをのどに刺されたような激しい痛み」を訴える方が目立ちます。


ここでは、夏かぜや熱中症との見分け方、抗原検査のタイミング、そして治療薬の考え方を分かりやすく解説します。


1. 症状の見分け方と「のどの痛み」の正体

「コロナか、夏かぜか、熱中症か」を症状だけで確実に見分けることは医師でも困難ですか、「のどの痛みが非常に強い」という特徴がある場合は、コロナ(特にニンバス株など)を強く疑うきっかけになります。

◎注意点: のどの痛みが強いからといって、イコール重症(肺炎になりやすい)というわけではなくウイルスが上気道で増えやすい性質によるものです。

◎一番の懸念: 痛みで水分がとれなくなると脱水を招きます。高齢者や小さなお子さんは特に注意が必要で、「しっかり飲めているか」が最大の目安になります。


2. 抗原検査は「いつ」受けるべき?

自己判断で発症直後に検査をして「陰性だから安心」と考えるのは禁物です。

ウイルス量が十分に増えていないと、本当は陽性でも陰性と出てしまいます。

・STEP 1(時間計測): のどの痛みや発熱などの最初の症状が出た時間を「発症日」とします。

・STEP 2(検査の目安): 抗原検査は「発症後おおむね12〜24時間以降」に行うのが確実です。

・STEP 3(受診の判断): 重症化リスクのある方や症状が強い方は、結果を待たずに早めに医療機関へご相談ください(受診時はWEB問診の事前入力がお互いの負担軽減につながります)。


3. 治療の原則:抗ウイルス薬は誰に必要?

大半の軽症の方であれば、解熱鎮痛薬や水分補給などの対症療法で十分に回復します。

そのうえで、重症化リスクを持つ方には抗ウイルス薬の投与を検討します。

◎早期開始がカギ: 経口抗ウイルス薬は、発症早期でなければ十分な効果が期待できません。

◎飲み合わせの確認: 脂質異常症治療薬や一部の睡眠薬など、重要な相互作用(飲み合わせ)がある薬剤が存在するため、お薬手帳の持参が必須です。

◎解熱鎮痛薬の注意: 市販のアセトアミノフェンやイブプロフェンは有効ですが、腎機能が低下している方や脱水傾向の方(NSAIDsの使用に注意が必要な場合)は自己判断を避けましょう。


【参考資料】

『新型コロナ(ニンバス)予防対策を改めて学ぼう│正しいマスク着用・手洗いを』

『令和8年第37週(令和8年9月7日から令和8年9月13日まで)分の新型コロナウイルス感染症の発生状況』

2026年9月22日火曜日

【インフルエンザ流行速報5:2026年9月22日号】:流行ステージ別・抗インフルエンザ薬の正しい選択と治療戦略

 


いざインフルエンザを発症した際、医師はどのような基準で抗インフルエンザ薬を選択すべきでしょうか?


医学的ガイドラインに基づき、状況に応じた2つのステージで整理します。


1. パンデミック時:「全員治療・早期治療」の鉄則

2009年のA/H1N1pdm09流行時に日本感染症学会が提唱したように、社会全体に免疫がないパンデミック時は、若年者や重症化リスクの低い層も含めた「全員治療」が原則です。

◎妊婦への早期投与の重要性:世界の死亡例に妊婦が多く含まれる中、日本は早期治療とワクチン徹底により死亡率を世界最低水準に抑えました。

パンデミック時は「若年者だから無治療で様子を見る」という選択肢はあり得ません。


2. 平常時:「リスク群重点」と臨床の現実

現在は季節性インフルエンザの流行期(平常時)にあたり基本的には高齢者、基礎疾患保有者、乳幼児、妊婦などの「リスク群」が治療の中心となります。

◎リスクなき若年者への対応:日本感染症学会の提言では、インフルエンザは本来自然軽快(self-limited)する疾患としつつも、「リスクがない人でも病初期に重症化を予測することは困難である」としています。

原則として早期診断・早期治療が推奨されており、症状や経過に応じて適切な投与が行われます。

◎治療薬の選択肢拡大:近年では、体重10kg未満の小児にも投与できるバロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)の顆粒製剤が承認されるなど、選択肢が広がっています。

学会のガイドラインでも推奨度が引き上げられており、患者の年齢や状態に応じたきめ細かな処方が可能です。


※まとめ

早まった今シーズンの流行に対し、一般の皆様は手洗い・咳エチケットといった基本の徹底を。そして医療現場においては、流行ステージを見極めた柔軟かつ迅速な抗インフルエンザ薬の活用が、重症化を防ぐ最大のカギとなります。


【参考資料】

『2025/26 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針 日本小児科学会』

『日本感染症学会提言「抗インフルエンザ薬の使用適応について(改訂版)」日本感染症学会』

2026年9月21日月曜日

大腸がんは「防げる」!番外編:女性の部位別がん死亡数『第1位』の現実と、見逃してはいけないサイン

 


「まさか自分が……」

健康に気を遣っているつもりでも、日本の女性にとって身近で、そして最も警戒しなければならないのが「大腸がん」です。


実は厚生労働省や国立がん研究センターの統計によると、女性の部位別がん死亡数において、大腸がんは第1位となっています。


男性の方が罹患率や死亡率の数値自体は高いものの、女性における死因のトップが他ならぬ大腸がんであるという事実は、あまり知られていません。


今回は、なぜ女性に大腸がんが増えているのか、そしてどうすれば命を守れるのかを医学・疫学的視点から紐解きます。


1. なぜ女性の大腸がんは発見が遅れやすいのか?

大腸がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどないめ、気づいた時には進行していたというケースが少なくないのですが、特に女性特有の社会的背景や身体の傾向が、発見を遅らせる要因になっています。  

◎多忙なライフステージと受診控え

発症リスクが顕著に高まるのは50代以降。この世代の女性は、仕事での責任、家事、育児、さらには親の介護などが重なり、自分の健康診断や医療機関への受診が後回しになりがちです。


◎「便秘・痔だから」という自己判断

女性に多い慢性的な便秘や、痔による出血。「いつものことだから」「恥ずかしいから」と、血便や便通異常を放置してしまい、がんの発見が大きく遅れてしまうケースが後を絶ちません。

◎閉経後のホルモンバランスの変化疫学的な背景として、女性ホルモン(エストロゲン)の急減が関係して閉経後はインスリンの働きや内臓脂肪の蓄積に影響が出やすくなり、これが生活習慣病だけでなく大腸がんのリスクを押し上げる一因になると考えられています。


2. 便潜血検査だけでは不十分?知っておきたい検査の真実

「会社の健康診断で便潜血検査が陰性だったから大丈夫」――そう安心していませんか?

ここに大きな落とし穴があります。

便潜血検査は、自覚症状のない人を対象としたスクリーニング(ふるい分け)としては非常に有効ですが、「出血していない初期の大腸がん」や「小さめのポリープ」の多くは、便潜血検査では陰性になってしまいます。

大腸がんは、大部分が「良性のポリープ」が何年かかけて大きくなり、その一部ががん化して発生します。つまり、ポリープの段階で発見して切除できれば、大腸がんは「予防できるがん」そのものなのです。


※一度も大腸カメラを受けたことがない方へ

特に「今まで一度も大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けたことがない50代以上の方」は、症状がなくても一度検査を受けることが強く推奨されています。


3. 放置厳禁!見逃してはいけない「体のサイン」

次のような症状がある場合は、「いつものこと」と片付けず、早めに消化器内科や胃腸内科を受診してください。

1)血便・便に血が付く(痔と決めつけない)

2)便が急に細くなった、形が変わった

3)便秘や下痢を繰り返す、ひどい便秘になった

4)おなかが張る、残便感がある

5)原因不明の貧血症状がある

「血便がある」「便潜血で陽性だった」「家族に大腸がんの人がいる」といった場合はもちろん、少しでも不安な点があれば、日本消化器内視鏡学会認定の「消化器内視鏡専門医」がいる医療機関に相談しましょう。


まとめ:自分の体を後回しにしない選択を

大腸がんは、早期発見でき極めて高い確率で治すことができるがんです。

忙しい日々のなかで、自分の体の小さな変化を無視していませんか? 「これくらい大丈夫」という油断を捨て、定期的な検診と、必要に応じた大腸内視鏡検査を受けることこそが、未来の自分と大切な日常を守る一番の近道です。

今日をきっかけに、ご自身の体の声に耳を傾けてみませんか?


【参考資料】

『女性に増え続ける大腸がんにご用心』

『女性の健康推進室 ヘルスケアラボ 大腸がん』


2026年9月20日日曜日

【新型コロナ最新情報】第1回:猛威を振るう夏のコロナ、話題の「セミ型」・「ニンバス株」を徹底解説


 現在インフルエンザの流行もなることながら、新型コロナウイルスの流行が始まっています。


インフルエンザと新型コロナに対する最新情報を交互に発信していきますのでお付き合い下さい。


「またのどが痛い。ただの夏かぜだと思っていたら、コロナだった」――この夏、外来でそうしたお声を伺う機会が確実に増えています。


厚生労働省が2026年9月4日に公表した第35週(8月24日〜30日)の集計では、全国の定点当たり報告数は1.47(全国報告数5,459人、前週から1,106人増)となっており、7月から続いた増加傾向が、8月に入ってからも高い水準で続いているのが実情です。


厚生労働省の公表によると、夏から続いた新型コロナの増加傾向は8月以降も高い水準で推移しており、9月に入っても油断できない状況が続いています。  


この夏から秋にかけて特に話題となっているのが、「セミ型」と「ニンバス株」という2つの変異株です。名前のインパクトに不安を感じる方も多いと思いますが、正しい情報を整理していきましょう。


1. 話題の変異株:その正体と性質

◎「セミ型」の正体(BA.3.2系統)  

・初期オミクロン株の直系「BA.3」の子孫で2021年末頃に姿を消したあと、長期間どこかで静かに変異を蓄積し、数年ぶりに表舞台に現れたことから、「長く潜って一斉に出てくる」としてセミにたとえられています。

・特徴は、全ゲノムで100か所以上、スパイクタンパク質だけでも70か所以上という圧倒的な変異の多さです。


 ◎ニンバス株」の特徴(NB.1.8.1系統)  

・JN.1系統から派生した変異株で、強いのどの痛みを引き起こすことで知られています。


2. 最大の注意点:「再感染しやすさ」と「重症度」

スパイクタンパク質の変異が多いということは、過去の感染や従来のワクチンで獲得した中和抗体が効きにくくなる「免疫逃避」が起きやすいことを意味します。

「去年かかったから大丈夫」「ワクチンを打ったから大丈夫」とは油断できません。

一方で、世界保健機関(WHO)などの評価によると、「これまでの変異株より重症化率や死亡率が高いというデータはない」とされています。

感染しやすさと、感染したときの重さは別問題です。過度に恐れず、しかし油断せずに備えることが大切です。


💡 第1回のまとめ

2026年秋現在も新型コロナは身近で流行しています。

「セミ型」「ニンバス株」は再感染しやすい性質を持ちますが、重症化リスクが格段に上がったわけではありません。

焦らず正しい予防と対策を心がけましょう。

【参考資料】

『新たな変異コロナウイルス「セミ」について私たちが知っておくべきこと』

『新型コロナ(ニンバス)の特徴はのどの激痛?』

『【ニンバス】新型コロナいつまでうつる? 潜伏期間は?微熱や発熱時の対処法』

2026年9月19日土曜日

【インフルエンザ流行速報4:2026年9月19日号】H3N2からH1N1pdm09へ?ウイルス交代劇と日本のリアルなリスク

 


2026/27シーズンは、流行の「主役」交代が起きようとしています。


25/26シーズンに猛威を振るった型から、新たな脅威へのシフトが懸念されています。


1.A/H1N1pdm09(新型由来)へのシフト予測

◎前シーズンの名残:昨シーズン(2025/26)はA/H3N2(subclade K系統など)が主流でした。このため、日本国内にはH3N2に対する一定の集団免疫が残存しています。

◎今後の主役交代:日本感染症予報協会(JIPA)の予測等によると、免疫の壁が厚いH3N2に代わり、今シーズンはA/H1N1pdm09が優位に立って拡大する可能性が高いと見られています。

これは台湾の流行(約7割がH1N1pdm09)とも合致しています。


2.若年層・健康成人油断大敵のデータ

「若いからインフルエンザにかかってもただの風邪で済む」というのは大きな誤解です。

厚生労働省の昨季の最終データによると、インフルエンザによる入院患者2万3,991人のうち、基礎疾患の少ない15〜49歳の働き盛り世代が全体の約1割(2,264人)を占めていました。

重症化リスクは高齢者や基礎疾患のある人に限った話ではありません。

◎ポイント:ワクチン接種が始まる10月上旬よりも前に流行がピークに向かう可能性があるため、早期の感染対策と流行状況のキャッチアップが不可欠です。

私事になりますが、血液の鉄人と家族は昨日インフルエンザワクチンを接種しました。

今季は早期の接種を心がける必要があります。

【参考資料】

『流行中のインフルエンザ「A(H1N1)pdm09」が現代社会に突きつける意味』


2026年9月18日金曜日

【インフルエンザ流行速報3:2026年9月18日号】なぜ今、インフルエンザが夏に?

 


※2026/27シーズン前倒しの背景を解剖する


「えっ、もうインフルエンザ?」――2026年の夏から秋にかけて、日本国内でインフルエンザの報告数が急増し、医療現場に衝撃が走っています。


例年であれば10月以降に立ち上がるシーズンが、今年は8月下旬という異例のタイミングで前倒しとなりました。


この背景には、国際的なウイルスのダイナミクスと「免疫の盲点」が隠されています。


1.南半球の「流行長期化」が日本を直撃


日本での流行予測において最大の羅針盤となるのが、半年ほど季節が先行する南半球(オーストラリアやニュージーランド)の動向です。


◎オーストラリアの誤算:当初、今年の南半球は流行が遅れていましたが、8月に入ってから急激に感染者数が爆発しました。


◎長期化の代償:前年(2025年)のオーストラリアではシーズン終盤まで流行が長引いたため、市民の多くが免疫を維持し、今年6〜7月の冬本番はむしろ患者数が抑えられましたが、その免疫の切れ目とウイルスの流入が8月に重なり、一気にキャッチアップするように大流行を引き起こしたのです。


2.季節や国境の壁はもう存在しない


ニュージーランドでは8月に10年ぶりの医療逼迫レベルに達し、台湾でも過去10年同期比で最多の患者数を記録しました。

世界中を飛行機が飛び交う現代において、インフルエンザに「好発季節」という概念はもはや通用しません。


免疫の保有状況とウイルスの持ち込みさえあれば、真夏であってもいつでもどこでも大流行が起きる時代になったのです。


※読者へのメッセージ:「冬の病気」という固定観念を捨て、夏場であっても発熱や咽頭痛があればインフルエンザを疑う意識が、ご自身と周囲の健康を守ります。


【参考資料】



2026年9月17日木曜日

【インフルエンザ緊急告 知2026年9月17日号】:あまりに早いインフルの流行 ~その原因と対策~

 


2026年8月末から、異例の早さでインフルエンザの流行期に突入しています。


なぜ今シーズンはこれほど早く拡大しているのでしょうか。


医学的・疫学的視点から、その原因とこれからの対策を分かりやすくまとめました。


1. 異例の早期流行:現状とウイルス交代


・厚生労働省は2026年8月28日にインフルエンザの流行入りを発表しましたが、これは現行調査(1999年以降)において、2009年の新型インフルエンザに次ぎ、季節性としては過去2番目に早い記録です。


・9月11日時点の定点患者数は3.29人と約3倍に急増しており、沖縄県や東日本(東北・関東など)を中心に拡大しています。


・今シーズンの主流はA(H1N1)亜型へとシフトしていて、昨シーズン大流行したH3N2亜型とは異なり、久しぶりの本格的な流行となります。


2. なぜ夏に流行?3つの主な原因


異例の早期流行を引き起こした背景には、複数の要因が絡み合っています。


◎コロナ禍の影響による免疫の減衰


コロナパンデミック以降の感染対策によってインフルエンザの流行が抑えられていた期間があり、私たちの中にあるウイルスへの免疫が全体的に低下していました。



◎東南アジアからのウイルス流入と人流


南半球ではなく、7月頃からH1N1亜型が流行していた東南アジア(香港や台湾など)からの人流を通じてウイルスが持ち込まれたと考えられています。


◎気象要因(多雨による室内滞留)


熱帯地域では雨期にインフルエンザが流行しやすい傾向があります。今年は日本でも夏の降雨日数が多く(東京で15日、仙台で17日など)、雨の多さから屋内で過ごす時間が増え、飛沫感染しやすい環境が整ってしまいました。


3. 今後の推移と私たちが取るべき対策


◎今後の見通し


9〜10月は現在のペースで患者数が増加すると予想され、特に9月下旬の連休などでの人流拡大が懸念され、11月以降は本格的な流行期に入ってピークを迎え、年明け以降はB型の流行や2度目のピークにも注意が必要です。


◎早めのワクチン接種


すでに9月から接種を開始している医療機関もありますので、ワクチンにはA(H1N1)型・A(H3N2)型・B型が含まれており、効果は少なくとも半年持続するため、早期の接種が今シーズン全体をカバーします。


◎日常の感染対策と受診の目安


手洗い、適切なマスク着用、雨の日でも可能な換気を心掛け、発熱やのどの痛みなどの症状がある場合は周囲への拡大を防ぐためマスクを着用し、子どもや高齢者などは早めに医療機関を受診して抗インフルエンザ薬の服用を検討してください。


大腸がんは「防げる」!第8回:身体的・心理的ハードルを劇的に下げる「新しい大腸がん検査」の全貌


 大腸がんは「防げる」!第8回:身体的・心理的ハードルを劇的に下げる「新しい大腸がん検査」の全貌


「便潜血検査で陽性が出たけれど、下剤や内視鏡の苦痛が怖くて精密検査を先延ばしにしている……」


そんな声を、医療現場では今も非常に多く耳にします。


日本国内において、大腸がんは男女全体で最も多くの人が新たに診断されるがんの一つであり、年間5万人以上の方が命を落としている極めて重大な健康課題です。


しかしその一方で、「早期発見できれば極めて高い確率で克服できる(ステージIの5年生存率は9割以上)」という事実をご存知でしょうか。


それにもかかわらず、なぜ命を落とす方が後を絶たないのか?その最大の理由は、検査や精密検査に対する「心理的・身体的ハードル」にあります。


今回は、従来のイメージを覆し受診の選択肢を大きく広げる「大腸CT検査(CTコロノグラフィ)」の全貌と、最新の医学的知見を分かりやすく解説します。


1. なぜ大腸がん検査が重要なのか?


国立がん研究センターの最新統計等によると、大腸がんは日本人にとって決して他人事ではない身近な病気です。


◎罹患数(新たに診断される数): 男女総合で年間約15万4千例に及び、全がん種の中でトップクラスの多さを誇ります。


◎死亡数: 年間約5.4万人にのぼり、女性ではがん死亡数の第1位、男性でも上位に位置する深刻な脅威となっています。


※早期発見が「命」と「人生」を分ける


大腸がんは、粘膜の表面にできる良性の「ポリープ」が何年もかけてゆっくりと大きくなり、その一部ががん化していくケースが大半ですので、ポリープやごく初期の段階(ステージIなど)で発見・切除できれば、大腸がんは“防ぐことができる(あるいはほぼ100に近い確率で治せる)”病気なのです。


しかし、自治体の検診などで実施される「便潜血検査(検便)」で陽性(=出血のサイン)が出たにもかかわらず、その後の精密検査(内視鏡など)を受けない人が約4割にも上るというデータがありこの「受診控え」こそが、手遅れを招く最大の障壁となっています。


2. なぜ、精密検査(内視鏡)を放置してしまうのか?


便潜血で陽性が出ても内視鏡検査をためらってしまう背景には、主に以下のような「つらいイメージ」があります。


1)大量の下剤への抵抗感:お腹を空っぽにするため、1.5L〜2Lもの下剤を数時間かけて飲み干す必要があること。


2)身体的苦痛と恥ずかしさ:お尻からスコープを挿入されることへの恐怖や、特有のプライバシーへの不安。


優れた検査であると分かっていても、「怖い・つらい」という理由で足が遠のいてしまう――。このジレンマを解消するために生まれたのが、「大腸CT検査」という新たな選択肢です。


3. 負担を激減させる「大腸CT検査」の画期的な仕組み


1990年代にアメリカで開発され、日本でも近年導入が進む大腸CT検査(CTコロノグラフィ)は、内視鏡のハードルを感じる人にとって強力な味方となります。


◎下剤の量が約10分の1に!「タギング」という技術


検査前日に専用の食事をとり、毎食後に「硫酸バリウム製剤」という液体を少しずつ服用しこれにより、便がバリウムをまとって白く染まります。


コンピュータがこの「白い部分」を自動で綺麗に消去してくれる(タギング)ため、腸内を完全に空っぽにする必要がなくなり下剤の量が大幅に減るため、身体的負担が劇的に軽減されます。


◎わずか15分程度で完了するスムーズな検査


お尻から5cmほど細い管を入れ、炭酸ガスで腸を膨らませて撮影します。カメラを奥まで挿入しないため強い痛みがなく、仰向けとうつ伏せで各約15秒撮影するだけで、トータルでも15分程度で終了し、終わればすぐにガスが抜けるため非常に楽です。


4. 大腸CT検査の「メリット」と「知っておくべき限界」


多くのメリットを持つ一方で、CT検査ならではの特性や限界についても正しく理解しておく必要があります。


【メリット】


◎死角のない立体(3D)解析


腸の急な曲がり角やひだの裏側など、内視鏡では見落としリスクのある死角も、CTなら立体データや平面展開画像によって高精度に捉えることができ6mm以上の病変に対しては、内視鏡に近い優れた検出率を誇ります。


◎他の臓器の病気が偶然見つかることも


お腹全体を撮影するため、大腸だけでなく肝臓、胆嚢、膵臓などの周辺臓器の大きな異常が偶然発見されることもあり実際に大腸CTをきっかけに早期の膵臓がんを発見できたケースも報告されています。


◎女性や高齢者にも選ばれています


内視鏡検査は男性の比率が高い一方、大腸CT検査は男女比がほぼ半々で「苦痛や恥ずかしさが少ない」という理由から、これまで検査を避けていた女性や、スコープのリスクを考慮したい高齢層(80歳以上など)に非常に適した選択肢となっています。


【限界・注意点】


◎5mm以下の小さな病変や平らな病変は苦手


カラー画像ではないため、2〜3mmの極小ポリープや、赤みだけの平らな病変の検出は内視鏡に劣ります。


◎その場で「切除」はできない


検査中に怪しいポリープが見つかっても、その場で組織を取ったり切除したりすることはできませんので、病変があった場合は、後日内視鏡による精密治療が必要になります。


◎放射線被ばく・妊娠中の制限


X線を使用するため、妊娠中の方は受けることができません。


5. 検査後の「納得感」が治療への決定打に


大腸CT検査の大きな強みのひとつに、「次の適切な治療への高い橋渡し効果」があります。


種々の実績では、大腸CT検査で切除が必要なポリープが見つかった際、医師が3D画像を見せながら「ここにこれだけのものがあります」と丁寧に説明すると、なんと93.5%もの患者さんが納得してその後の内視鏡切除治療へ進むといいます。


「いきなりカメラを入れるのは怖いけれど、事前のCTで自分の状態を視覚的に把握できることで、心の準備ができて安心して治療に臨める」というわけです。


結びに代えて:まずは「自分に合った方法」で一歩を踏み出そう


大腸がんは、適切な検査と早期発見によって「防ぎ、完治させることができる」病気です。


◎便潜血検査で陽性が出たけれど、内視鏡の恐怖で放置している方


◎初めての精密検査で、できるだけ体への負担を減らしたい方


こうした方々にとって、大腸CT検査は医療への恐怖心を和らげ、命を守るための素晴らしい扉を開いてくれます。もちろん、医師と相談の上で最初から内視鏡を選ぶことも大切です。


大切なのは、「怖いからと放置しないこと」、そして「少なくとも5年に1回は大腸の状態を確認する習慣を持つこと」です。


ご自身の健康と、愛する家族の未来のために、まずは身近な医療機関で「大腸CT検査」という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。


【参考資料】

『大腸CT検査について教えてください 日本大腸肛門学会』

『大腸CT検査』


2026年9月16日水曜日

【インフルエンザ流行速報2:2026年9月16日号】インフルエンザ変異株「サブクレードK(J.2.4.1)」とは? なぜ猛威を振るうのか医学的・疫学的に紐解く

 


【インフルエンザ流行速報2:2026年9月16日号】インフルエンザ変異株「サブクレードK(J.2.4.1)」とは? なぜ猛威を振るうのか医学的・疫学的に紐解く


近年、季節性インフルエンザの勢力図を大きく塗り替えている新たな変異株「サブクレードK(系統名:J.2.4.1)」。


従来のインフルエンザとは何が異なり、なぜこれほどまでに急速な感染拡大を引き起こしているのでしょうか? 


医学的・疫学的な視点を交えて、その正体と私たちが取るべき対策を分かりやすく解説します。


1. 「サブクレードK」の正体とは?


サブクレードKは、季節性インフルエンザの主要な系統であるA型H3N2亜型(いわゆるA香港型)から遺伝子変異によって派生した新しい変異株です。


ウイルスが少しずつ形を変える「抗原ドリフト」というプロセスを経て出現し、世界各地で爆発的な流行を引き起こす要因となりました。


◎なぜ急速に感染が広がるのか?(疫学的背景)


・免疫のすり抜け(抗原変異):ウイルスの表面にある突起状のタンパク質「ヘマグルチニン(HA)」に変異が生じており、過去の感染や従来のワクチンによって得た免疫(抗体)を巧みにすり抜ける性質を持っています。


・異例の早い流行開始:この免疫逃避能力の高さや、社会全体の感染対策への意識の変化が重なり、例年よりも大幅に早い時期からの大流行を誘発しました。


2. 臨床症状と重症化リスクの特徴


「変異株」と聞くと、毒性が強くなってより重篤な症状を引き起こすのではないかと不安になりますが、臨床現場における症状の傾向には以下のような特徴があります。


◎典型的な全身症状:現時点で、従来のインフルエンザ株と比べて「特異的で全く異なる症状」が起きるという報告はありません。


◎主な症状の現れ方(臨床データの一例):


・38度以上の発熱:約85%


・鼻水:約80%


・咳:約77%


のどの痛み:約61%


基本的な病態や重症化リスクの考え方は従来の季節性インフルエンザと大きく変わりませんが、感染力の高さから罹患する総数が増えることで、結果として高齢者や基礎疾患を持つハイリスク層への脅威となります。


3. ワクチンと治療薬の効果は?


「変異株にはワクチンが効かないのでは?」という懸念の声が聞かれますが、医学的な見解は以下の通りです。


◎ワクチンの有効性:変異によって感染そのものを完全にブロックする効果は一部低下する可能性が指摘されていますが、肺炎や入院、死亡といった「重症化」を防ぐ効果は依然として高く期待で特に免疫応答の反応が良い子供などにおいては、重篤化予防の観点から接種の意義が大きいです。


◎治療薬:既存の抗インフルエンザ薬(タミフル、ゾフルーザ、イナビルなど)は、サブクレードKに対しても引き続き有効とされています。


4. 私たちが取るべき感染対策


サブクレードKが持つ「免疫をすり抜ける性質」に対抗するためには、基本に忠実な感染対策を「より確実に行う」ことが何よりも重要です。


こまめな手洗い・手指消毒:ウイルスが手から粘膜へ侵入するのを防ぎます。


1)適切な換気:密閉空間でのウイルス濃度を下げるため、寒暖差に関わらず定期的な空気の入れ替えを行いましょう。


2)状況に応じたマスク着用:人混みや医療機関受診時などでは有効な防御手段となります。

※インフルエンザ予防には、ウイルスを含む飛沫(ひまつ)をしっかり防ぐことができる不織布(ふしょくふ)製マスクが最も有効※


3)過度に恐れる必要はありませんが、「今年のインフルエンザはこれまでとは一味違う」という疫学的な事実を念頭に置き、早めのワクチン接種や体調管理を心がけましょう。


【参考資料】

『インフルエンザウイルスのサブクレードKについて 厚生労働省』

『インフルエンザ変異株「サブクレードK」とは|ワクチン効果や症状は?』

『マスクの種類とは?』

『マスクの効果と正しい使用方法』

2026年9月15日火曜日

【インフルエンザ流行速報1:2026年9月15日号】インフルエンザが「異例の早さ」で大流行中! 東京都内の一部地域で予防接種が前倒し開始

 


近日、インフルエンザの感染者数が増加傾向にあることを受け、本日より**「インフルエンザ流行速報」**のシリーズ配信を開始いたします。


本シリーズでは、最新の感染状況や、ご家庭・職場ですぐに実践できる効果的な予防・対策について、分かりやすくコンパクトにお伝えしていきます。


なお配信頻度は、流行状況の経感を見据えて配信していきます。


皆様の健康を守るため、ぜひ日々の対策にお役立てください。


今年の冬は、例年とは全く異なる様相を呈しています。


全国的にインフルエンザの流行が記録的なペースで拡大しており、東京都内の一部地域(品川区、港区、文京区)では、高齢者や子どもを対象とした公費予防接種の開始時期を、例年より1週間早い9月24日(火)に前倒しすると発表しました。


「まだ9月なのに、なぜ?」と驚かれる方も多いでしょう。しかし、この前倒しは決して過剰な対応ではありません。医学的・疫学的な根拠に基づいた、極めて妥当かつ緊急性の高い対策なのです。


この記事では、なぜ今年のインフルエンザ流行が「異常事態」なのか、そして私たちが取るべき行動について解説します。


1.なぜ「異例の早さ」なのか? 3つの疫学的要因


厚生労働省の発表によると、今シーズンの流行入りは昨年より5週間も早い8月28日でしたが通常、インフルエンザの流行は気温が下がる12月頃から始まりますが、今年はすでに「秋の流行」が本格化しています。


なぜ、これほどのスピードで感染が拡大しているのでしょうか。主な要因は3つ考えられます。


1)季節外れの流行からの「持ち越し」:

今年の夏は、本来なら収束しているはずのインフルエンザが、一部地域でくすぶり続けていました。夏の間にウイルスが完全に死滅せず、そのまま秋の流行シーズンに突入したため、初動のウイルス量が例年より多い状態です。


2)社会活動の正常化と人流の増加:

アフターコロナの生活様式が定着し、イベントの開催や人の移動が活発になっています。通勤・通学、旅行などでの接触機会が増加し、ウイルスが広がりやすい環境が整っています。


3)集団免疫の低下:

ここ数年、コロナ禍で徹底した感染対策(マスク、手指消毒、ソーシャルディスタンス)が行われていたため、インフルエンザウイルスに自然感染する機会が激減しその結果、社会全体のインフルエンザに対する免疫力が低下しており、一度火がつくと爆発的に感染が広がりやすい(かかりやすい人が多い)状態になっています。


2.ワクチン接種はいつ受けるべきか? 「今すぐ」が正解


今回の都内3区の決定は、「流行のピークが例年より早まる」という予測に基づいています。


インフルエンザワクチンは、接種してから抗体(免疫)が作られるまでに約2週間かかります。そして、その効果は接種後約2週間〜5カ月間持続するとされています。


もし流行のピークが11月〜12月に前倒しされるのであれば、10月下旬〜11月上旬に接種したのでは「遅い」可能性があります。流行が始まってから慌てて接種しても、免疫が追いつかず、感染してしまうリスクがあるのです。


したがって、「流行期に入った今こそ、すぐにワクチン接種を検討する」ことが、最も賢明な自己防衛策となります。


3.重症化リスクのある方は特に注意を


今回の前倒し接種の対象となっているのは、以下の層です。


◎65歳以上の高齢者


◎生後6カ月から高校3年生相当までの子ども


インフルエンザは、健康な成人であれば「つらい風邪」で済みますが、高齢者や基礎疾患のある方、乳幼児などは、肺炎や脳症などを引き起こし、重症化するリスクが高い感染症です。


特に子どもは、学校や保育園・幼稚園などの集団生活でウイルスをもらいやすく、家庭内感染の主要なルートとなり、子ども自身の重症化を防ぐだけでなく、家族や高齢者を守るためにも、子どもへのワクチン接種は非常に重要です。


4.今すぐできる感染対策


ワクチン接種と合わせて、基本的な感染対策も再徹底しましょう。


※こまめな手洗い・手指消毒: ウイルスは手から口や鼻に入ることが多いため、最も有効な対策です。


※適切なマスク着用: 混雑した場所や電車内などでは、不織布マスクの着用が推奨されます。


※室内の換気: 密閉された空間を避け、定期的に空気を入れ替えましょう。


まとめ:今年の冬は「油断大敵」


今年のインフルエンザは、これまでの常識が通用しない「新しいフェーズ」に入ったと言えます。


「まだ秋だから大丈夫」「もう少し寒くなってからでいいや」という油断は禁物です。


流行の早期化に対応するため、準備を急ぎましょう。


お住まいの自治体の情報をご確認の上、準備が整い次第、早めのワクチン接種をご検討ください。


自分自身と大切な家族を守るため、今できる行動を起こしましょう。


【参考資料】

『インフル、夏に異例の早さで全国流行入り 厚労省が警戒呼びかけ』


2026年9月14日月曜日

【エボラ出血熱:緊急解説 2026年9月14日号】コンゴのエボラ出血熱、感染7,000人超えの衝撃ーなぜ過去最悪の猛威を防げないのか?

 


アフリカ・コンゴ民主共和国(旧ザイール)で猛威を振るうエボラ出血熱の感染拡大が止まりません。


コンゴ保健省の発表によると、確認された感染者は7,022人、死者は3,398人に達しました。


新たに北西部の南ウバンギ州でも感染が確認され、影響は計7州に拡大し、過去最大の流行となった2018〜2020年の規模をわずか数カ月で大幅に超え、現地や国際社会に大きな衝撃を与えています。 


 なぜこれほどまでに感染が拡大し、収束が見通せないのでしょうか? 医学的・疫学的背景と最新の状況を紐解きます。


1. 疫学的データで見る「異例のスピード」

今回の流行は、これまでの歴史的傾向から見ても異常な速度で拡大しています。  

◎爆発的な伝播速度:前回(2018〜2020年)の流行では、感染者1,000人に達するまでに約235日を要しましたが、今回はわずか40日で到達しました。  

◎広範な地理的拡散:東部の中心地から数千キロ離れた北西部の州へも患者の移動を介して持ち込まれており、国内の広範囲で警戒が必要な状態が続いています。


2. なぜここまで拡大するのか? 3つの医学的・社会的背景

医療・検査体制(検査機関の増加や病床の確保)は強化されているにもかかわらず、感染の連鎖が断ち切れない背景には、特有の障壁が存在します。

① 原因ウイルス「ブンディブギョ株」の特性今回の流行を引き起こしているのは、比較的珍しい「ブンディブギョ株」で一般的なザイール株と異なり、出血症状が現れにくい特徴があり、初期症状がマラリアや腸チフスなどの風土病と区別しにくく、診断の遅れや受診行動の遅れにつながっています。 

② 承認済みワクチン・特効薬の不在  ザイール株に対しては有効なワクチン(エルベボなど)や治療薬が確立されていますが、ブンディブギョ株に対しては現時点で承認されたワクチンや特異的治療法がなく現在、臨床試験を通じた検証が進められている段階です。  

③ 治療体制と実態のギャップ医療センターや病床数は増えたものの、直近の死者の約6割がいまだに治療センターの外(地域社会)で発生しています。

医療システムへの不信感や伝統的な埋葬慣習、さらには武力紛争による移動制限などが、患者を早期治療から遠ざけています。  


3. 隣国・国際社会の動向と私たちのリスク

幸いにも、5月以降に感染が確認されていた隣国ウガンダでは、迅速な封じ込めにより8月下旬にWHOから流行終息が宣言されました。

また、ルワンダでの感染確認はありませんが、コンゴ国内での収束は見通せず、世界保健機関(WHO)なども警戒レベルを維持しています。

ヒトの移動がグローバル化する現代において、遠く離れた地域への飛び火リスクをゼロにすることはできません。

現地への渡航や最新の健康情報(外務省海外安全ホームページなど)への注意を引き続き払うことが重要です。  

今回のエボラ流行において、未知のウイルス株(ブンディブギョ株)に対する医療体制の脆弱性が浮き彫りになりました。

今後、臨床試験中のワクチンや治療法の確立が、この局面にどう影響を与えるのでしょうか?

【参考資料】


『エボラ病(エボラ出血熱)』

『コンゴのエボラ熱7000人超え、体制拡大でも収束せぬ理由』

『エボラ出血熱の感染拡大、何が危険なのか-「ブンディブギョ株」とは』

2026年9月13日日曜日

知ってて損はない医学の知識 37.「トイレを我慢し、水分を控える」が腎臓を壊す? 医療現場が警鐘を鳴らす本当の理由

 


「忙しくてトイレに行けないから、水分は控えめにしよう……」


仕事や移動の合間、あるいは接客業などの現場で、そんなふうに無意識あるいは意図的に水分補給を制限していませんか?


日常のちょっとした我慢や心掛けが、実は私たちの身体、特に「沈黙の臓器」と呼ばれる腎臓に想像以上の深刻なダメージを与えていることがあります。


今回は、トイレや水分制限に隠された医学的・疫学的なリスクと、最新の知見から見えてきた腎臓防衛策を分かりやすく紐解きます。


1. 尿の我慢と水分制限が引き起こす「腎臓の悪循環」


私たちが口にした水分は、心臓から送り出され、両側の腎臓にある「糸球体」で1日に約150リットルもの「原尿」として濾過されます。その大部分は尿細管で再吸収され、最終的に1.5リットル前後が尿として排泄されます。


この精巧なシステムにおいて、水分制限や排尿の我慢を続けると、以下のような危険なドミノ倒しが発生します。


◎尿路感染症から腎盂腎炎へのステップアップ

尿意があるのに習慣的に我慢を続けると、膀胱内に残った尿(残尿)が細菌の格好の培養基となります。膀胱炎にとどまらず、上行性感染を引き起こして腎盂腎炎に至り、腎実質へ直接的なダメージを残すリスクが高まります。


◎脱水と急性腎障害(AKI)の急転直下

水分摂取が不足し、さらに発熱・下痢・発汗などが重なると、腎臓への実効血流量が急激に減少します。腎臓は血流低下に極めて敏感な臓器であり、短期間で糸球体濾過量(GFR)が低下する「急性腎障害(AKI)」の引き金となります。


◎慢性腎臓病(CKD)への不可逆的な移行

AKIが重症化し、代謝性アシドーシスや高カリウム血症などを引き起こすと、一時的あるいは継続的な血液浄化療法(人工透析)が必要になる事態を招き、運良く離脱できたとしても、ネフロンの数が減ることで将来的にCKDへの移行リスクを背負うことになります。


2. 「片方の腎臓が機能低下」の裏にある医学的背景


SNSや日常会話では「水分を控えていたら片方の腎機能が失われた」というショッキングな体験談が語られることがあります。

医学的に見れば、単なる水分不足だけで直ちに片方だけが壊死するわけではありません。しかし、ここには見逃せない病態の罠があります。


◎もう片方の腎臓による「沈黙の代償」

もともと無症候性の尿管結石、軽度の尿管狭窄、あるいは片側の腎動脈狭窄などがあった場合、片方の機能が低下していても、健常なもう片方の腎臓が「代償肥大」して全体としてのクレアチニン値を正常範囲内に維持してしまいます。

これが、異常の発見を遅らせる最大の罠です。


◎脱水が引き金となる「隠れた疾患の顕在化」

その代償バランスの上に「長期間の水分制限や脱水」という負荷が加わると、もともと脆弱だった側の血流が決定的に破綻し、急激な機能低下として表面化します。

患者さんにとっては「突然片方がやられた」ように見える現象の正体は、こうした潜在的リスクの顕在化なのです。


3. 現代を生き抜く「腎臓ケア」3つの極意


腎臓は初期の機能低下ではほとんどサインを出さない沈黙の臓器です。

ご自身の、そして大切な人の腎臓を守るために、次のポイントを日々のルーティンに組み込みましょう。


1)「喉が渇く前」の戦略的水分補給

高齢者では口渇中枢の感度が低下するため、喉が渇いたと感じた時にはすでに軽度脱水に陥っています。

特に夏季や体調不良時は、時間を決めたこまめな水分摂取が鉄則です。


2)市販薬(NSAIDs)と脱水の危険な関係

ロキソニンなどの非ステロイド性消炎鎮痛薬は、腎入力小動脈を収縮させて腎血流量を低下させます。

「水分を我慢している状態」や「発熱・脱水時」にこれらを安易に服用すると、急性腎障害の導火線に火をつけることになりかねません。


3)健診データの「トレンド」を読み解く

血液検査の「クレアチニン」や「eGFR」、尿検査の「尿蛋白・潜血」は単発の数値ではなく、過去数年からの変化の傾き(トレンド)を確認することが極めて重要です。また、高血圧や糖尿病の厳格なコントロールも腎保護の基本です。


「これくらい我慢しても大丈夫」という小さな油断の積み重ねが、取り返しのつかない腎機能の低下を招きます。


ご自身の身体という最高のシステムを過信せず、適切な水分とトイレの環境を整えていきましょう。


【参考資料】

『腎臓の病気について調べる  日本腎臓学会』

『腎臓を保護しましょう~生活編 東邦大学医療センター大森病院 腎臓センター 』

『なぜ腎臓病患者さんにロキソニンはダメなの?』


2026年9月12日土曜日

【インフルエンザ速報 2026年9月12日号】 過去2番目の早さでインフルエンザが流行入り!その背景と今取るべき対策とは

 


「まだ9月なのに、学校で学級閉鎖が相次いでいる……」


そんなニュースに驚かれた方も多いのではないでしょうか。


今年のインフルエンザの流行シーズン入りは、過去2番目の早さを記録しています。


なぜこれほど早く感染が拡大しているのか、その背景にある医学的・疫学的な要因と、これからのワクチン接種の考え方を分かりやすく解説します。


1. なぜ今年はインフルエンザの流行がここまで早いのか?


専門家や厚労省のデータによると、記録的な早期流行の背景には主に3つの要因が絡み合っていると考えられています。


1)夏の猛暑による免疫力の低下:厳しい暑さが続いたことでいわゆる「夏バテ」状態が長引き、自律神経の乱れや体力・免疫力の低下を招いたこと。


2)「まさかこの時期に」という油断・見落とし:季節外れの流行という意識の低さから、発熱してもインフルエンザを疑わず、発見や対応が遅れるケースがあること。


3)活発化する国際的な人の往来:南半球など海外で流行が続いている地域との往来により、ウイルスが持ち込まれやすい環境にあること。


さらに、近年の傾向として、冷房による室内の乾燥や、換気が不十分になりがちな空間で過ごす時間が増えていることも、ウイルスが好む条件を作り出しています。


2. ワクチン接種はいつ受けるべき?最新の判断基準


「すぐにでもワクチンを打ったほうがいいの?」という疑問について、医療現場や行政の動きも変化しています。


◎早期接種の動き:全国的な流行の早まりを受け、厚生労働省は自治体の判断による早期のワクチン開始を周知しており、医療機関でも前倒しの予約が増えています。


◎ワクチンの持続期間と効果:接種後、体内で抗体ができるまでに約2週間かかり、効果はおおよそ5か月間持続するとされています。


◎時期選びのジレンマ:あまりに早く接種しすぎると、冬本番(1月〜2月)のピーク時に効果が弱まる懸念もあるため、自身の健康状態や生活環境に合わせて検討することが重要です。


3. 今のうちから心がけたい基本的な感染対策


本格的なワクチン接種の体制が整うまでの間は、日常の基本的なセルフケアが最大の防御となります。


◎こまめな手洗いや、必要に応じたマスクの着用


◎室内におけるこまめな換気


◎栄養と十分な睡眠による免疫力の維持


「まだ秋口だから大丈夫」という思い込みを捨て、自身の体を守るための早めの意識づけが大切です。日々の健康管理を万全にして、この異例の流行シーズンを乗り切っていきましょう。


ご自身のライフスタイルや基礎疾患の有無に合わせて、早めにかかりつけ医や医療機関に相談してみるのも一つの確実な方法です。


【参考資料】

『インフル、夏に異例の早さで全国流行入り 厚労省が警戒呼びかけ』

『インフルエンザの発生状況をお知らせいたします 厚生労働省』



2026年9月11日金曜日

大腸がんは「防げる」!第7回:直腸がん手術、「肛門温存」の本当の意味とQOLの真実

 


低位直腸がんの診断を受けたとき、多くの患者さんが最初に気にかけるのが「果たして自分の肛門は残せるのか」という疑問です。


外科医は「腫瘍の位置」や「がんの進行度」から技術的に温存が可能かどうかを判断しますが、患者さんが本当に知りたいのは、臓器が残るかどうかそのものではなく、「手術のあと、自分はどのような人生を歩むことになるのか」という切実な未来のはずです。


今回は、最新の医学的知見(World J Surg 2026)をベースに、「肛門温存(LAR)」と「永久人工肛門(APR)」が患者さんのQOL(生活の質)に与える影響の真実を、科学的な視点と臨床の現実を交えてわかりやすく紐解きます。


※肛門温存(Low Anterior Resection:LAR、ロウ・アンテリア・リセクション):がんのある直腸を切除した後、残った大腸と直腸(または肛門)をつなぎ合わせ、人工肛門を避け自然の肛門を残す方法で低位前方切除術と言われます※


※永久人工肛門(Abdominoperineal Resection:APR、アブドミノペリネアル・リセクション):がんなどの病気で自然の肛門を切除した場合に、お腹の皮膚に新しく作る便の出口で、排便を自分でコントロールする筋肉が残らないため、専用の袋(パウチ)で便を受け止めますので慣れることで、入浴やスポーツ、旅行も楽しめます、腹会陰式直腸切断術と言われます※


1. 「肛門温存」=「元の生活に戻れる」ではない現実


技術の進歩により、直腸がんの手術では人工肛門を回避して肛門を温存するケースが増えていますが医学的に重要なのは、「解剖学的に肛門が残ること」と「良好な排便機能が残ること」は決してイコールではないという点です。


肛門を残す手術(低位前方切除術:LAR)を受けた場合、以下のような症状からなるLARS(低位前方切除症候群)に悩まされることがあります。


◎頻便・便意切迫(トイレに駆け込む回数が増える)


◎分割排便(1回で出し切れず、何度もトイレに行く)


◎便失禁・排便困難


自然の肛門から排便できる一方で、1日のスケジュールが「トイレの場所」に支配されてしまうケースも少なくありません。


一方で、人工肛門(APR)を選択した場合は、ストーマ(排泄口)の管理、漏れの心配、皮膚のトラブル、身体の変化といった別の負担が生じます。


2. 科学的検証:全般的QOLに「単純な優劣」はない


では、機能障害を抱えるリスクのある「肛門温存(LAR)」と、永久人工肛門となる「APR」では、どちらがトータルのQOL(生活の質)に優れているのでしょうか?


最新の比較研究(Ju氏ら, 2026年)では、2019〜2023年に手術を受けた低位直腸がん患者142例を対象に、背景要因を厳密に調整した上で術後QOLが比較されました。


📊 研究の主なポイント


◎全般的QOL(GHSスコア:0〜100点、高値ほど良好)の比較


・LAR群(肛門温存):68.3点


・APR群(人工肛門):71.2点


・結論:数値上は人工肛門群がやや高かったものの、統計学的・臨床的な「明確な優劣」はなく、「永久人工肛門=QOLが低くなる」というイメージは、必ずしも成り立たないことが示されています。


◎残る負担の種類は異なる


・LAR群の 44.9% に重度のLARS(major LARS)が認められました。


・APR群の 31.3% がストーマ関連のQOL不良と評価されました。


・どちらの術式にも特有の負担がありますが、「測定する軸(尺度)が違うため、単純にどちらが悪いとは比べられない」のが実情です。


3. 「機能障害の重さ」と「QOLの高さ」は別物である


直感的には「排便障害が重ければ重いほど、QOLも低くなるはず」と思われがですが、データを見るとそう単純ではないことが分かります。


・重度のLARS(major LARS)がありながら、QOLスコア(GHS)が70を超えて快適に過ごしている患者さんが22.9%いた。


・逆に、軽度の症状(minor LARS)にとどまりながらも、QOLが50を下回って深く悩んでいる患者さんが20.0%いた。


4.なぜこのような「ズレ」が起きるのか?


QOLを決定づけるのは、身体の症状そのものだけではありません。


・症状を自分で予測し、食事や対策を工夫して「自分でコントロールできているという感覚」があるか


・仕事の環境や、家族・医療者からの手厚いサポートがあるか


・術前の説明と現実のギャップにどう向き合い、生活を再構築(適応)できているか


質的研究でも、人工肛門を「自分の分身のようで愛おしい」と捉え直す患者さんや、排便トラブルと上手に向き合う術を見つける患者さんがいることが報告されています。


QOLは手術で一度に決まる静的なものではなく、患者さんが残された機能とともに日々を再構築していく動的な結果なのです。


まとめ:本当に共有すべき「治療後の生活像」


直腸がん治療において、「人工肛門か、肛門温存か」という二者択一に、すべての患者さんに共通する正解はありません。


外科医は「技術的に肛門を残せたか」を気にしがちですが、患者さんはその「残された機能とともに毎日を生きていく」当事者です。


◎術前説明では、「肛門を残せるか・残せないか」の結果だけに終始しないこと。


◎LAR後に起こりうる排便障害のリアルと、APR後のストーマ管理の実態を具体的に伝えること。


◎患者さんが「どの負担ならより受け入れやすいと感じるか」「生活を支える環境はあるか」を一緒に見つめ直すこと。


温存すべきなのは、解剖学的な臓器だけではなく「患者さんが納得し、自分らしく選べる生活そのもの」こそが、最も守られるべき大切なものなのです。


【追加の話】


日本人の人工肛門の数はおよそ16~20万人


【参考資料】

『直腸がんの手術大腸がんに対する肛門温存手術と人工肛門造設術について』

『低位直腸癌患者の術後機能とQOL:低位前方切除術と腹会陰切除術の多次元比較』

『永久ストーマとの生活:大腸がん患者の術後体験に関する記述的現象学的研究』


2026年9月10日木曜日

知ってて損はない話医学の知識37.【絶対ダメ】食中毒患者数「第1位」の罠!シイタケそっくりな毒キノコ「ツキヨタケ」の科学と恐怖

 秋の気配が近づき、山歩きやキノコ狩りが楽しいシーズンがやってきました。


そんな中、農林水産省が公式SNSで行った「毒キノコ当てクイズ」が、ネット上で大きな話題を集めました。

『HUFFPOST:ハフポスト 』


「シイタケやムキタケにそっくりで、全く見分けがつかない…!」「全部美味しそうに見えてしまう」そんな声が相次ぎましたが、実はこの中に、日本で最も多くの食中毒患者を出している「最恐の毒キノコ」が潜んでいました。


その名も「ツキヨタケ」です。  


今回は、なぜこれほど多くの人が被害に遭うのか、その医学的・科学的なメカニズムと、絶対に間違えないための見分け方を徹底解説します!


1. なぜ間違える?「ツキヨタケ」が食中毒1位の理由


厚生労働省のデータによると、ツキヨタケは日本国内における毒キノコ中毒の発生件数・患者数で常に上位(実質的要因として最多クラス)を争う危険なキノコです。


※平成28年から令和7年までの10年間ツキヨタケによる食中毒は事件数105件・感受数298人とダントツの第一位です※


被害が後を絶たない最大の理由は、食用キノコ(シイタケ、ヒラタケ、ムキタケ)と見分けがつきにくいこと。


夏から秋にかけて、ブナやイタヤカエデなどの広葉樹の幹に、まるでタイルのように重なり合って生える姿は、プロの目から見ても紛らわしいほどです。


農林水産省のクイズでも、多くの人が安全な「ムキタケ」と答えた写真の中に、このツキヨタケが巧妙に紛れ込んでいました。


2. 【医学的分析】食べてから30分で何が起きるのか?


ツキヨタケの恐ろしさは、その強力な毒成分にあります。主な毒素は「イルジンS(Illudin S)」や「イルジンM」などで、発症までの時間は食後わずか 30分〜1時間と短く主な症状としては激しい嘔吐、止まらない下痢、耐え難い腹痛などの急性消化器系中毒を引き起こします。


重症化した場合は、大量の嘔吐・下痢による脱水症状だけでなく、幻覚やけいれんを伴うケースも報告されています。


3. 科学で暴く!ツキヨタケを確実に見抜く2つのポイント「


じゃあ、どうやって見分ければいいの?」安心してください。科学的・形態学的な決定的な違いが2つあります。


1)縦に割ると「黒いシミ」がある(最大の識別点)ツキヨタケを傘から柄にかけて縦にスパッと半分に割ってみてください。

柄の付け根(肉の部分)に、黒褐色のシミ(組織の変色)があるのがツキヨタケの大きな特徴でシイタケやムキタケにはこの黒い染みはありません。


2)暗闇で「蛍光黄緑色」に光るその名の通り、ツキヨタケのヒダの部分は、暗闇の中でぼんやりと蛍光黄緑色に光る性質があります(※ただし、鮮度や条件によって光が弱い場合もあるため、これだけで判断するのは禁物です)。  


まとめ:秋の味覚を安全に楽しむために


9月から11月は、年間を通じて毒キノコによる食中毒が最も急増するシーズンです。


農林水産省も強く呼びかけている通り、以下の鉄則を必ず守ってください。


※確実に食用と判断できない場合は、採らない・食べない・売らない・人にあげない」※


「もしかしたらシイタケかも…」という軽い気持ちが生死を分ける事態につながります。


少しでも不安がある場合は絶対に口にせず、安全に管理された市場やスーパーのキノコで、安心して秋の味覚を堪能しましょう!


【参考資料】

『自然毒のリスクプロファイル:キノコ:ツキヨタケ』

『ツキヨタケによる食中毒について』

『ツキヨタケ(毒)キシメジ科 食品衛生の窓』


2026年9月9日水曜日

大腸がんは「防げる」!第6回:進行大腸がんでも「約20%」は便潜血で陰性?

 


はじめに:「毎年陰性だから安心」に潜む落とし穴


健康診断や人間ドックの定番メニューである「便潜血検査」。


「毎年『陰性(異常なし)』だから自分は大丈夫!」と、すっかり安心していませんか?


実はここに、専門医や臨床検査の現場が最も危惧する「見落としの罠」が隠されています。


大腸がんは初期の自覚症状がほとんどない上に、便潜血検査だけではどうしてもすり抜けてしまうケースがあるのです。


今回は、意外と知られていない便潜血検査の「実力と限界」、そして来年度(2027年度)から予定されている大腸がん検診の大改定について、医学的・疫学的な視点から分かりやすく解説します。


1. 疫学データが示す限界:進行がんの20%、早期がんの50%が「陰性」になる現実


便潜血検査は、便に混じった目に見えない微量な血液(ヘモグロビン)を検出する非常に優れたスクリーニング検査で、体への負担がなく職域や地域検診で広く普及したことで、日本の大腸がん死亡率を低下させてきた確かな実績があります。


しかし、検査医学において「感度(病気がある人を正しく陽性と判定できる確率)が100%の検査」は存在しません。


【疫学データが示す衝撃の事実】


◎進行大腸がん(すでにがんが深く進行している状態)であっても、**約20%(5人に1人)は「陰性」**と判定されてしまう。


◎早期大腸がん(粘膜層にとどまる段階)にいたっては、**約50%(2人に1人)が「陰性」**で見落とされる。


「陰性=大腸がんがない」という意味では決してない、という厳格な事実をまずは知っておく必要があります。


2. 【2027年度大改定】検診が「1日法」へ移行する背景と、検査医学的な懸念


現在の大腸がん検診は、異なる日の便を2日分採取する「2日法」が主流でが、これはがんからの出血が「毎日持続するとは限らない」ため、回数を増やして検出率を上げるという合理的な理由に基づいています。


しかし厚生労働省の指針により、2027年度から大腸がん検診は原則「1日法(1回だけの採便)」へ変更される見込みとなっています。


◎なぜ「1日法」へ変更されるのか?(疫学的メリット)


1)統計学的な差のなさ:大規模な疫学調査において、1日法と2日法を比較した際、集団全体での「がんの発見頻度」に決定的な統計学的差が見られなかったため。


2)受診率(提出率)の向上期待:2回採便する手間にハードルを感じていた層が、1回で済むようになることで、検診全体の受診率を底上げできるという公衆衛生上の狙い。


◎臨床検査医学としての「懸念点」


一方で、個人の診断レベルで見ると大きな懸念が残ります。


従来の2日法では、「1回目は陰性だったが、2回目の検体で陽性となり、精密検査でがんが見つかった」というケースが多々ありましたが、1日法への移行により、チャンスが1回きりになるため、個人の「がん見落としリスク(偽陰性率の上昇)」が高まることは否定できません。


これまで以上に、「陰性」という結果を過信しない姿勢が求められます。


3. なぜ見落とされる? がんの「形(肉眼型)」で異なる出血のリアル


大腸がんやポリープがあっても便潜血が陰性になってしまう理由は、がんの「形(肉眼型分類)」にあります。


がんはすべて同じ形をしているわけではなく、その形状によって出血のしやすさが劇的に異なります。


・隆起型(りゅうきがた):キノコのように粘膜から大きく盛り上がるタイプ。便が通り抜ける際に擦れやすいため、比較的早い段階から出血し、陽性に出やすい特徴があります。


・平坦型(へいたんがた)・陥凹型(かんおうがた):粘膜にへばりつくように横に広がる(平坦型)、あるいは奥へもぐり込むように凹んでいる(陥凹型)タイプ。これらはある程度大きく、あるいは深く進行するまで便と擦れず、非常に陽性になりにくい(=陰性になりやすい)性質を持って特に陥凹型は進行が速いため、検査をすり抜けるタチの悪い「隠れがん」になりやすいのです。


また、小さなポリープや早期の病変は常にダラダラと出血しているわけではありません。


たまたま「出血していない日」に採便すれば、結果は当然「陰性」になります。


4. 「陽性」は病気の確定ではない!「痔のせい」と自己判断してはいけない理由


もし健康診断で「陽性(1日でも要精密検査)」と出た場合、どう受け止めるべきでしょうか。


◎「陽性」=「大腸がんが確定した」という意味ではありません。


正しくは、**「大腸のどこかで出血が起きているサインであり、精密検査を受けるべき強力な切符を手に入れた」**状態です。


陽性判定が出た人のうち、実際に大腸がんが見つかる確率は数パーセント程度で多くは痔(じ)や、硬い便による肛門の切れ、女性であれば経血の混入などが原因です。


しかし、ここで最も危険なのは「私は昔から痔持ちだから、この血は痔のせいに違いない」と自己判断して精密検査(大腸カメラ)を拒絶することです。


「痔」と「大腸がん」が体の中で同時に存在している可能性は十分にあります。


せっかく検査が教えてくれた貴重なサインを、思い込みで握りつぶしてはいけません。


5. 早期発見の切り札「大腸カメラ」:40歳を過ぎたら一度は受けるべき理由


便潜血検査はあくまで「可能性」をあぶり出す網に過ぎません。


大腸の内部を直接目で見て、確実な診断と治療(ポリープ切除)を同時に行える唯一無二の存在が「大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)」です。


大腸がんは年齢とともに発症リスクが右肩上がりに上昇するため、医学的には「40歳を過ぎたら、症状がなくても一度は大腸カメラを受けること」が強く推奨されています(家族歴がある場合は35歳からの受診も考慮されます)。


◎特に大腸カメラを受けるべき「リスク・要注意層」


便潜血が陽性だった方はもちろんですが、例え「陰性」であっても以下の項目に該当する方は、一度消化器内科に相談し、大腸カメラを検討してください。


・危険なサイン(自覚症状)がある:血便、原因不明の便秘や下痢、腹痛、急激な体重減少


・家族歴がある:血縁者に大腸がんになった人がいる


・過去の指摘:過去に大腸ポリープを指摘されたことがある


・生活習慣のリスク因子:


肥満、運動不足


日常的な飲酒、喫煙


赤肉(牛・豚などの赤身肉)中心の食生活


加工肉(ハム・ベーコン)や超加工食品(インスタント食品、菓子パン等)の多量摂取


まとめ:将来の「自由」を守るために、賢い選択を


大腸がんは、早期に発見して内視鏡で切除できれば、「完全に治せる確率が非常に高いがん」ですから早期発見できれば、開腹手術のような肉体的負担、長期入院による経済的・精神的ショックを最小限に抑えることができます。


長年「陰性」が続いていた人が、ある年突然「陽性」になり、慌てて大腸カメラを受けたらすでに進行がんだった――というケースは臨床の現場で珍しくありません。


それは今年突然がんができたのではなく、「平坦な形のがんが、過去数年間の便潜血検査をずっとすり抜けていた」可能性を示唆しています。


「まだ痛くないから」「毎年陰性だから」と言い訳をせず、40歳を超えたら定期的に大腸の“中身”を直接チェックする。


これこそが、5年後、10年後も大切な家族と共に美味しいものを食べ、自分の足で歩き続けるための、最高の健康投資なのです。


【参考資料】

『便潜血検査で「1回だけ陽性」と言われました。内視鏡検査は受けたほうがいいのでしょうか?』

『大腸がん検診の便潜血検査、採便2回から1回に変更へ』

『大腸内視鏡検査ってどんな検査ですか?』

2026年9月8日火曜日

知ってて損はない話医学の知識36.「もしかして、臭っているのでは…?」その苦しみの正体:最新医学が捉える『嗅覚関連づけ障害(自己臭関係付け症)』の全貌

 


「自分の体臭や口臭が周囲に不快感を与えているのではないか」という強い苦痛と囚われが生じる自己臭関係付け症(嗅覚関連づけ障害:Olfactory Reference Disorder: ORD、オルファクトリー・レファレンス・ディスオーダー)について、近年の医学的分類や最新の知見を交えて分かりやすく整理しました。


※自己臭関係付け症(自己臭恐怖症・自臭症)の正確な全国患者数は公表されておらず、一般成人における有病率は約1~2%程度(10代〜20代の若い時期に発症し、女性にやや多い傾向が見られます)と推測されています※


「電車の中で隣の人が鼻を触ったのは、自分の体臭のせいだ」「周囲が自分の口臭を避けているに違いない」——。


このように、実際にはごく軽微であるか、あるいは全く存在しない体臭・口臭が「周囲に悪臭を放っている」と強く信じ込み、日常生活に深刻な支障をきたす状態を、医学的に嗅覚関連づけ障害(自己臭関係付け症:ORD)と呼びます。


かつては単なる「思い込み」や「気分の問題」として見過ごされがちでしたが、近年の精神医学では独立した疾患概念として厳格な位置づけがなされています。


1. 医学的・科学的な位置づけの変遷

長年、この症状は統合失調症の一部や妄想性障害、あるいは単なる強迫性障害(OCD)の亜型として扱われてきましたが、国際的な診断基準である世界保健機関(WHO)のICD-11において、ついに「強迫症または関連症群(Obsessive-Compulsive and Related Disorders:オブセッシブ・コンパルシブ・アンド・リレイテッド・ディスオーダーズ)」のカテゴリーに正式に独立した診断名(コード:6B22)として収載されました。


また、米国精神医学会のDSM-5-TRにおいても、「その他の指定される強迫症および関連症群」の中に位置づけられています。


これは、本疾患の本質が「妄想」というよりも、「特定の観念にとりつかれ、それを打ち消すための確認やこだわり(強迫行動)がやめられない」という、強迫スペクトラムに近い特徴を持っているためです。


2. 主な臨床的特徴と「悪循環」


嗅覚関連づけ障害に悩む方には、以下のような共通した心理・行動パターンが見られます。 


◎関係念慮(かんけいねんりょ)の強さ


・他人が咳をしたり、窓を開けたり、鼻をこすったりする何気ない仕草のすべてを「自分の臭いのせいに違いない」と結びつけて確信してしまいます。


◎過剰な確認とカモフラージュ(強迫行動)  


・自分の匂いを確かめるために何度も匂いを嗅ぐ、1日に何度も入浴や着替えをする、あるいは大量の香水、マウスウォッシュ、消臭剤で匂いを覆い隠そうとします。


◎社会的な引きこもりと孤立


・「他人に迷惑をかけている」「恥ずかしい」という強烈な苦羞感から、学校や職場を休みがちになり、最悪の場合は完全な引きこもり状態に陥ることがあります。


3. なぜこのような症状が起きるのか?(病態の背景)


本人が「実際に自分の鼻で臭いを感じている」と主張することが多いため、周囲には理解されにくいのが特徴で科学的な背景としては、脳内におけるセロトニンなどの神経伝達物質のバランス異常や、自身の身体感覚・嗅覚情報を処理する脳のネットワークの機能不全が関与していると考えられています。


また、日本の文化圏で見られる「対人恐怖症(特に自分の身体特徴が他人を不快にさせているのではないかと恐れるタイプ)」とも密接に関連していることが知られています。


4. 現代における治療アプローチ


以前は治療が難しいとされていましたが、現在は明確な治療法が確立されています。


◎薬物療法  


・脳内のセロトニン環境を整えるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やクロミプラミンなどの抗うつ薬が中心となります。症状の囚われを和らげるために、非定型抗精神病薬が補助的に使われることもあります。


◎認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT、コグニティブ・ビヘイビアラル・セラピー)


・「臭っているかもしれない」という思考(認知)にとらわれた際、それに伴う確認行動を少しずつ手放していくトレーニングや、社会的な状況への暴露療法が行われます。


本人は「気の持ちよう」でコントロールできる範疇を超えて苦しんで居ることが多いため、消化器科や皮膚科、歯科などを何軒も受診して「異常なし」と言われ続けているケースが少なくありませので適切な精神科や心療内科への早期の橋渡しが何よりも重要です。  


【参考資料・文献】


MSDマニュアル(プロフェッショナル版 / 一般利用者向け): 「嗅覚関連づけ障害(Olfactory reference disorder)」

『自己臭症(自己臭恐怖症 / 嗅覚参考障害) Olfactory reference disorder(疾患理解・診察準備)プロンプト』


2026年9月7日月曜日

【緊急警告】2026年9月7日号:1999年以来の異常事態!インフルエンザが「異例の夏流行」—今すぐ備えるべきワクチンの真実

 


通常のシーズンであれば、秋が深まり冬の足音が聞こえ始める頃に話題になるインフルエンザ。しかし、今シーズン(2026-2027年)の動向は、医療現場に大きな衝撃を与えています。


厚生労働省の発表によると、全国のインフルエンザ流行入りは8月下旬。これは、感染症法が施行された1999年以降で史上2番目に早い、異例のスピードでの幕開けとなりました。


この「異例の夏〜秋の早期流行」という疫学的背景と、本格化するワクチン戦線について詳しく解説します。


1. なぜここまで早いのか? 1999年以来「第2位」のスピード流行


例年であれば、本格的な流行は12月頃から始まりますが、それが夏真っ盛りの時期に定点当たり報告数が基準を超えた背景には、人の移動の活発化や、夏場の免疫環境の変化、ウイルスのサーベイランス(動向監視)の感度など、複数の要因が絡み合っていると考えられます。


季節外れの流行という言葉で油断してはなりません。ウイルスは季節を選ばず、免疫の隙を突いて拡大する準備を整えているのです。


2. 動き出したワクチン供給網:KMバイオロジクスからの出荷開始


こうした急速な感染拡大の兆候を受け、国内最大の供給体制の一つである熊本県大津町のKMバイオロジクス配送センターでは、早くも9月5日未明から全国の医療機関に向けてインフルエンザワクチンの出荷がスタートしました。


厚生労働省が示す今シーズンの総供給量は約5,190万回分。国内メーカーおよび輸入により、来月(10月)までに順次市場へ供給される見込みとなっています。


3. 臨床現場からの警鐘:流行本格化前の「先手必勝」対策


ワクチンは、接種してから抗体が体内で十分に作られるまでに約2〜4週間かかることからして、「流行してから打つ」のでは遅すぎるのです。


◎早めのスケジュール調整: ワクチン供給が本格化する10月上旬から中旬にかけて、計画的な接種を心がけましょう。


◎ハイリスク者への配慮: 高齢者や基礎疾患(腎疾患や糖尿病など)を持つ方、そしてその周囲にいる家族にとって、早期の免疫獲得は重症化を防ぐ唯一にして最大の防衛策です。


「まだ暑いから大丈夫」というこれまでの常識は、今シーズンに限っては通用しません。


異例の早さで進む波に飲み込まれる前に、今から「手洗い・換気・早期ワクチン接種」の防衛体制を整えていきましょう。


【参考資料】

『令和8年第35週(令和8年8月24日から令和8年8月30日まで)分のインフルエンザの発生状況』



2026年9月6日日曜日

大腸がんは「防げる」!第5回:検査の入り口はどこでもいい。一番の敵は「放置」

 


大腸がんの最大の敵は「放置」です。


放置すると、腫瘍が大腸を塞ぐ[腸閉塞]や、肝臓や肺への[転移]を引き起こし命に関わります。


大腸がんはポリープから10年以上かけてゆっくり進行するため、[便潜血検査]などの検診を受け、症状がないうちに早期発見することが極めて重要です。



大腸CTを受けて「ここにポリープがありますよ」と3D画像で説明を受けると、93.5%もの方が納得して、その後、内視鏡での切除治療に進みます。


自分の目で見て理解すれば、不安は「解決への意欲」に変わるのです。


最後にお伝えしたいのは、「大腸がんは、あなた自身がコントロールできる」ということです。


放置すれば人生を脅かす脅威となりますが、5年に一度の精密検査という習慣さえあれば、それは怖れるに足りない病気です。


今日、この記事を読んだのが「きっかけ」です。ぜひお住まいの地域名で「大腸CT検査」と検索してください。


あなたの未来を守るために、一番楽な方法で、今すぐ一歩を踏み出しましょう。


【参考資料】


『大腸がんの基礎知識〜症状と治療〜』

2026年9月5日土曜日

【緊急告知】2026年9月5日号:8月に異例の全国流行入り!夏のインフルエンザに厳重警戒が必要な理由と対策

 


厳しい残暑が続く8月に、早くもインフルエンザが全国的な「流行シーズン」に突入しました。


厚生労働省が8月28日に発表したデータによると、異例の早いペースで感染が広がっており、今後の動向に大きな警戒が呼びかけられています。


1. 異例の早さ!8月の全国流行入りと感染状況


◎厚生労働省が8月28日に発表した17日〜23日の1週間の感染報告数は、1医療機関当たり1.11人となり、流行開始の目安である「1」を超えました。


◎2023年を除くと、感染症法が施行された1999年以降で2番目に早いシーズン入りとなります。


◎報告された全国の感染者数は4,094人で、昨年同期の1,183人を大幅に上回っています。


◎沖縄県(4.43人)を筆頭に、岩手県、青森県、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、新潟県、鹿児島県、東京都、さらに北海道(1.12人)など、全国の広い地域で患者が報告されています。


2. なぜ夏に?例年にない早期流行の背景


◎インフルエンザは例年12月〜3月頃に流行しますが、今年は多くの学校で夏休みが明けない8月中の流行入りとなりました。


◎最も早かったのは新型インフルエンザが大流行した2009年ですが、通常の季節性インフルエンザとして8月に全国的流行入りするのは極めて異例です。


◎国際的な人の往来によってウイルスが持ち込まれる機会が常にあることなどが背景に挙げられますが、今年の詳細な原因や流行の中心となっているウイルス型(A香港型やB型など)については、今後の全国的な病原体分析が待たれています。


3. 今後の見通しとワクチン・予防のポイント


◎過去の傾向では、一度定点当たり報告数が1.00人を超えると、その後冬場のピークへ向かう例が多く見られます。


◎今秋から使用されるワクチンについては、すでにA型2種類とB型1種類で構成される「3価ワクチン」の製造が6月に決定されています。


◎高齢者や基礎疾患のある人は感染すると重症化リスクが高いため、医療機関や高齢者施設を訪れる際などのマスク着用が強く推奨されています。


■ 私たちが今すぐできる基本的な感染対策



※こまめな手洗い(外出後や食事前など)


※マスク着用を含む咳エチケットの徹底


※効果的な換気


※体調管理


※異例の夏インフルエンザに対し、季節を問わず油断せずに予防を継続すること


【参考資料】

『2026年 8月28日 インフルエンザの発生状況について厚生労働省 』


2026年9月4日金曜日

大腸がんは「防げる」!第4回:CT vs 内視鏡――どちらを選べばいいのか?


 科学的な視点で、それぞれの特性を理解しておきましょう。


CTは「広い範囲を短時間で調べたい時」や「他臓器への転移を確認したい時」に、内視鏡は「病変を直接観察して、その場で組織採取や治療を行いたい時」に選ばれます。検査目的や身体への負担が異なるため、症状に合わせて使い分けることが一般的です

。


1.CT検査(コンピュータ断層撮影)


・メリット: 短時間で腹部全体を撮影でき、胃や大腸の壁の外側にある他臓器(肝臓やリンパ節など)の状態も同時に把握できます。


・デメリット: 粘膜の微細な変化やごく初期のガンを見つけることは内視鏡に劣ります。また、放射線被ばくがあり、ポリープの切除や組織採取(生検)はできません。


※おすすめな人: 強い痛みや症状があり、まずは原因がどこにあるか広く早く探りたい方。


2.内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)


・メリット: 粘膜の表面を直接観察するため、微小な病変や早期ガンを発見する精度が非常に高いです。異常があればその場で組織を採取したりポリープを切除したりできます。


・デメリット: スコープを挿入するため、嘔吐反射や腹部の張りなどの苦痛を伴うことがあります。


・おすすめな人: 早期発見・治療を確実に行いたい方、健康診断などで異常を指摘され精密検査が必要な方。


※総合的な選び方


検診や自覚症状からの精密検査であれば、確定診断と治療が同時に可能な大腸内視鏡検査や胃カメラが第一選択となることが多くあります。


一方で、「内視鏡を入れるのが体力的に難しい」「バリウム検査でひっかかったが、まずは負担の少ない方法で全体像を確認したい」といった場合は、大腸CT検査などが選択されます。


もしすでに具体的な症状(腹痛、血便など)や受診の目的(健康診断の再検査など)が決まっていましたら、より具体的な検査の流れやおすすめの選択肢を絞り込むことができます。

大腸CTの「強み」: 腸を立体画像として俯瞰するため、内視鏡で見落としがちな曲がり角やひだの裏側の死角がありません。


また、お腹全体を撮影するため、肝臓や膵臓といった隣接する臓器の異常が偶然見つかることもあります。


特に「痛いのは絶対に嫌だ」「まずは全体を把握したい」という方、そして80代以上の方には非常に理にかなった選択です。


内視鏡の「強み」: やはり最大の利点は「見つけた瞬間に切除できる」ことで、ポリープ体質の方や、効率的に治療まで終わらせたい方には、こちらが最適です。


結論として、どちらかが優れているわけではなく、あなたの「今の心身の状態」に合う方を選ぶことが正解なのです。


【参考資料】

『大腸CT vs 大腸内視鏡どっちがいい?』


2026年9月3日木曜日

ワクチンの話2.💉 【2026年秋】コロナ&インフルワクチンは十分な供給へ!安心して備える秋からの定期接種

 


今年も秋の足音が近づき、そろそろ気になるのが「新型コロナウイルス」と「インフルエンザ」の流行シーズンへの備えですよね。


厚生労働省は2026年8月26日の専門部会(厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発および生産・流通部会)において、今秋から始まる新型コロナおよびインフルエンザのワクチンについて、いずれも近年の使用実績を大きく上回る十分な量が確実に確保できる見込みであると発表しました。


「今年はワクチンが足りなくなるのでは?」「どんな種類のワクチンが選べるの?」といった疑問や不安をお持ちの方に向けて、今回の供給見込みと医学的なポイントをわかりやすく解説します。


📉 1. 新型コロナワクチン:約702万回分が供給へ


今秋(10月1日からの定期接種スタートを予定)に向けた新型コロナワクチンの総供給量は、約702万回分が見込まれて、昨年度の実績(約403万回分)を大きく上回っており、希望する方がスムーズに接種できる体制が整う予定です。


本年度の供給内訳には、いくつかの異なるタイプのワクチンが含まれており、それぞれの特徴に合わせた選択が可能となっています。


・mRNAワクチン:約548万回分


・組み換えタンパクワクチン:約102万回分


・レプリコンワクチン(mRNAが細胞内で複製されるタイプ):約52万回分


新型コロナウイルスは高齢者や基礎疾患を持つ方にとって依然として重症化・死亡リスクが高い感染症で変異を続けるウイルスや、時間の経過とともに低下する免疫(減衰)に対応するため、秋以降の流行株に合わせた定期接種を計画的に受けることが推奨されます。


🌡 2. インフルエンザワクチン:約5190万回分の豊富な供給


一方、インフルエンザワクチンについても、総供給量は約5190万回分と十分な見込みが発表されています。


すでに9月最終週の時点で約3147万回分が出荷されており、10月上旬の段階で過去3年の平均使用量を上回るペースで市場に行き渡る見通しで今シーズンも、A型2種類とB型1種類をカバーした「3価ワクチン」が使用され、幅広い流行株に備えます。


コロナとインフルエンザの同時流行(ツインデミック)を防ぐ上でも、例年通りの順調なワクチン供給は大きな安心材料と言えます。


📋 3. 安心のスケジュールと対象者


・新型コロナワクチンの定期接種:10月1日から開始(原則65歳以上の方、および60〜64歳で特定の基礎疾患を持つ方が対象で、自治体による公費助成があります)。


・インフルエンザワクチン:例年10月から順次接種が開始されます。


「いつ打つのがベスト?」と迷われる方も多いですが、ワクチンの免疫がついてから実際に効果が発揮されるまでの期間や、流行のピーク(例年冬から春にかけて)を考慮すると、定期接種の開始時期に合わせて計画的に接種を済ませておくことが最も確実な予防策となります。


🧬 まとめ|供給の不安を解消し、万全の冬支度を


「今年はちゃんとワクチンを打てるかな?」という供給面の心配はクリアされそうです。

新型コロナもインフルエンザも、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患をお持ちの方にとっては、依然として油断できない感染症です。

十分な量のワクチンが確保されるこの機会に、ご自身と大切なご家族の健康を守るため、早めのスケジュール確認と接種をご検討ください。


【参考資料・情報源】

厚生労働省「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発および生産・流通部会」(2026年8月26日発表)


『第40回 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会 』

 

2026年9月2日水曜日

ワクチンの話1.💉 3学会が合同で見解を発表!2026年度のコロナワクチン定期接種を「強く推奨」する理由

 


10月から始まる今年度の新型コロナウイルスワクチンの定期接種に向けて、日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本ワクチン学会の3学会が合同で公式見解を発表しました。


見解の結論はズバリ、「最新の新型コロナワクチンの定期接種を強く推奨する」というもの。


「まだ打ったほうがいいの?」「副反応や安全性はどうなの?」といった疑問や不安をお持ちの方に向けて、3学会の発表と最新の医学的知見をわかりやすく解説します。


🦠 なぜ今、再びワクチンの定期接種が必要なのか?


1. 高齢者の重症化・死亡リスクは依然として高い


新型コロナウイルスは「ただの風邪」になったわけではなく、特に高齢者や基礎疾患を持つ方にとっては、依然として肺炎などを引き起こし、重症化や死亡につながるリスクの高い感染症です。


2. ウイルスの「変異」と免疫の「減衰」


新型コロナウイルスは、私たちの免疫を巧みにすり抜けようと絶えず変異を続けて、更にワクチン接種や過去の感染によって得られた免疫(発症予防効果など)は、数ヶ月が経過すると徐々に減衰(低下)してしまうことがわかっています。

そのため、その時期の主流となっている「流行株」に合わせた最新のワクチンを、毎年追加で接種することが重要になります。


🛡 気になる「副反応」と「安全性」の真相は?


ワクチン接種において、多くの方が気になるのが副反応や安全性に関するデータで、3学会の見解では、この点についても科学的な事実に基づいて正直に説明されています。


◎一般的な副反応:接種した部分の痛み、発熱、倦怠感などは一定の割合でみられますが、これらは体内で免疫が正常に作られている証拠であり、基本的には一過性のもので回復します。


◎重篤な事例の報告について:副反応の疑いがある場合、医学的な因果関係がはっきりしていなくても行政への報告が義務付けられているため、死亡例なども一定数報告されます。


◎実際の安全性(疫学研究の結果):国内外の数多くの信頼性の高い疫学研究において、「ワクチン接種と接種後の死亡との間には因果関係(関連性)はない」ことがしっかりと確認されており、安全性の高さが示されています。


📋 まとめ:今年の冬・来年の夏に向けた備えとして


今回の3学会の発表は、科学的データに基づき「ベネフィット(重症化を防ぐメリット)が、リスク(副反応などのデメリット)を大きく上回る」ことを改めて強調したものです。


10月から始まる定期接種の対象となる方(原則65歳以上など)は、自身の命と健康を守るため、そして周囲への感染拡大を防ぐためにも、流行株対応ワクチンの積極的な接種をご検討ください。


正確な医学情報を味方につけて、これからの季節も安心して過ごしましょう!


【参考資料】

日本感染症学会・日本呼吸器学会・日本ワクチン学会 合同見解:『2026 年度の新型コロナワクチン定期接種に関する見解』(2026年9月1日発表)


2026年9月1日火曜日

大腸がんは「防げる」!第3回:【技術の進歩】下剤の苦しみから解放される「大腸CT検査」


 内視鏡へのハードルを下げたいという方のために、世界中で急速に普及しているのが「大腸CT検査」です。


大腸CT検査は、肛門から入れた細いチューブで炭酸ガスを注入し大腸を膨らませた状態でCT撮影を行い、3次元画像をコンピューターで構築する検査で内視鏡(カメラ)を奥まで挿入しないため体への負担が少なく、約10〜15分と短時間で終わるのが特徴です。


かつての手法とは一線を画す、その最大の特徴は「タギング技術」にあります。


※「タギング(Tagging)技術」は、対象に目印(タグ)を付けて識別・追跡・制御する技術※


検査前に少量の造影剤(硫酸バリウム)を飲み、便を白く染め上げます。


これにより、CT撮影後の画像解析で「便だけをデジタルで消去する」ことが可能になりました。


その結果、内視鏡のように2リットルもの量の下剤を飲む必要はなく、量はわずか1/10程度。お尻から炭酸ガスを注入し、わずか15分寝ているだけで、あなたの腸の状態が鮮明に浮かび上がります。


「あの辛い準備がないなら」と、多くの方がCT検査をきっかけに検診を再開されています。


※しかしデメリットもあります。


1)画像診断のみのため、ポリープが見つかったその場で切除(ポリープ切除)したり、組織を採取して生検を行ったりすることはできません。

これらが必要になった場合は、別途大腸内視鏡検査を受ける必要があります。


2)平坦な病変や5mm以下の小さなポリープの検出は、大腸内視鏡検査に比べると劣ります。


【参考資料】

『「大腸CT検査について教えてください」日本大腸肛門病学会』


2026年8月31日月曜日

大腸がんは「防げる」!第2回:沈黙の「精密検査拒否」――4割の人が陥る罠

 


便潜血検査で陽性が出たにもかかわらず、その後の精密検査を受けない人が約4割もいるという驚きのデータがあります。


精密検査(大腸内視鏡検査)で大腸がんが見つかる確率は約3〜4%ですので早期に発見すれば多くは完治しますが、放置すると進行してしまう恐れがあるため、必ず受診することが重要です。


忙しいから? 忘れているから? いえ、その多くは「内視鏡検査への強烈な恐怖と恥ずかしさ」です。


インターネットの掲示板を見て、「苦しい」「下剤が地獄」といった体験談に触れ、心が折れてしまうのです。


臨床の現場にいると、その不安は痛いほど分かります。


しかし、どうか考えてみてください。その「恐怖」を避けるために検査を先延ばしにし、もし数年後に取り返しのつかない状況になったとしたら……。


そのリスクは、検査に伴う一時的な不快感とは比較になりません。


今、その一歩を踏み出すことで、将来の「本当の恐怖」を確実に消すことができます。


【参考資料】

『大腸がん検診について』

『「大腸がん検診」日本大腸肛門病学会』



2026年8月30日日曜日

大腸がんは「防げる」!第1回:なぜ「大腸がん」だけは、見つけた瞬間に勝負が決まるのか?

 


1. 日本人が最もかかりやすい「身近すぎるがん」の現実


日本における大腸がんは、男女を合わせた罹患数(新たにがんと診断される数)で第1位を誇り、日本人が最もかかりやすいがんで、さらに死亡数においても全体で第2位(女性では第1位、男性では第2位)に位置し、年間約15万人が新たに診断され、5万人以上が命を落としています。


この脅威は、決して遠い世界の話ではありません。2026年春頃には、お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さんが血便をきっかけに医療機関を受診し、大腸がんの切除手術と一時的な人工肛門(ストーマ)の造設を行ったことを公表して大きな話題となりました。また、同年7月23日未明には、人気作家の東野圭吾さんが大腸がんのため68歳という若さで急逝されるなど、著名人のニュースを通してその深刻さを痛感させられた方も多いはずです。


2. 医療現場で感じる「あまりにも惜しい」という悔しさ


日々の臨床現場において、医師として最も胸が締め付けられる瞬間があります。


それは、「あの時、さえ検査を受けていれば確実に助かったはずなのに……」という患者さんが、すでに進行したステージで来院される時です。


大腸がんは、現在の日本でがん死亡数の上位を占める恐ろしい病気であることに間違いはありません。しかし、医学的視点に立てば、「これほど早期発見さえすれば完勝できるがん他にはない」とも言えるのです。


3. 「ポリープの時代」に摘めば、がんへの進行は完全に防げる


なぜ大腸がんは、そこまで確実に防げるのでしょうか。その理由は、大腸がんが突如として発生するわけではなく、長い「ポリープ」という良性の時代を経てからがん化する性質を持っているからです。


この良性のポリープの段階で発見し、内視鏡を使って「プチッ」と切除してしまえば、がんへの進行を100%完全に防ぐことができ万が一がんが見つかったとしても、ステージIであれば5年生存率は9割を超える非常に予後の良いがんです。


「検診を受けること」は、単なる面倒な医療チェックではありません。あなたの大切な日常や、未来の人生設計そのものを守るための最強の手段なのです。まずは自分の体と向き合う第一歩を踏み出してみませんか?


【参考資料】


『日本人が最も多くかかる「大腸がん」は早期発見がカギ。』

『大腸がんの基礎知識〜症状と治療〜』

2026年8月29日土曜日

【緊急告知】2026年8月29日号:インフルエンザが異例の全国流行入り

 


発表の概要: 厚生労働省は2026年8月28日、全国の約3,000カ所の定点医療機関からの報告数が基準値(1.00)を超える1.11(報告数4,094)に達したと発表しました。


これは感染症法施行(1999年)以降、2009年に次ぐ2番目の早さでの流行入りとなります。


1. 疫学データから読み解く「今回の異例さ」

今回のインフルエンザ流行入りは、例年に比べて極めて早い時期に観測されました。

昨シーズンは9月後半の流行入りでしたが、今年はさらに前倒しとなっています。

定点当たりの報告数を地域別に見ると、特に関東や東北、沖縄において高い数値が記録されています。

・沖縄県 4.43 全国で最も高く、早期流行の起点となる傾向

・岩手県 / 青森県 2.10 / 2.08 北日本における早期のウイルス伝播を示唆

・神奈川県 1.99 人口密集地における高い伝播速度

・東京都 1.49 基準値(1.00)を大きく上回り、市中感染が拡大


※なぜ「夏〜初秋」に流行が始まるのか?

本来インフルエンザは冬季に流行しやすいウイルスですが、近年の人流の活発化、海外との往来の正常化、そして集団免疫の変動(免疫負債など)により、季節性の垣根が低くなっています。ウイルスとの接触機会が増えることで、シーズンオフの概念が変わりつつあります。


2. 医学的視点:インフルエンザウイルスの脅威と重症化メカニズム

インフルエンザウイルス(Influenza virus)は、主にA型およびB型がヒトに感染し感染力が極めて強く、くしゃみや咳による飛沫感染だけでなく、ウイルスが付着した手で粘膜(目・鼻・口)に触れる接触感染によっても広がります。

基礎疾患を持つ方(糖尿病、慢性呼吸器疾患、心疾患など)、高齢者、および5歳未満の小児においては、インフルエンザ脳症や二次性の細菌性肺炎といった致命的な合併症を引き起こすリスクが高まります。

発症後48時間以内 の抗インフルエンザ薬の投与が、重症化を防ぐための医学的タイムリミットとなります。


3. エビデンスに基づく今日からできる感染対策

厚労省が呼びかける基本的な感染対策は、疫学研究においてもその有効性が証明されています。

個人の予防だけでなく、社会全体の感染拡大を防ぐために以下の対策を徹底しましょう。


1)正しい手洗いと手指消毒


流水と石鹸を用いた20秒以上の手洗いは、ウイルスのエンベロープ(脂質二重膜)を破壊し、感染力を失わせるために最も効果的ですし、アルコール製剤による手指消毒も有効です。


2)咳エチケットとマスクの賢い活用


症状がある場合のマスク着用は、飛沫の飛散を物理的にブロックします。また、人混みや医療機関を受診する際は、感染防御の観点からも不織布マスクの着用が推奨されます。


3)早期受診と適切な休養


発熱や関節痛などの症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診してください。

自己判断で出歩くことは、周囲への感染拡大(基本再生産数 R_0 の上昇)を招きますので発症後数日間は十分な休養を取りましょう。


【参考資料】

『厚生労働省発表』

『インフルエンザ(総合ページ) 厚生労働省』