1.百日咳の流行状況
2025年11月9日時点で患者数は、85476人と報告されています。
百日咳は百日咳菌という細菌によって引き起こされる呼吸器感染症です。
百日咳菌が体内に入ると、気道の粘膜に感染して毒素を放出し、激しい咳の発作を引き起こします。特に乳児やワクチン未接種の子どもは感染しやすく、重症化のリスクも高くなります。
※「百日咳」という名称は、強い咳が治まるまでに100日ほどかかることがあるという特徴に由来します※
患者の多くは10代以下の子どもで、特に乳児ではけいれんや呼吸停止、肺炎、脳症による死亡例も報告されています。
百日咳の症状の特徴は、数週間から数か月続く慢性的な咳です。
特に子どもの場合は、咳のあとに息を吸うと「ヒュー」と音が鳴ったり、激しい咳の後に嘔吐するケースも見られ、百日咳菌が作り出す毒素には抗生物質が効かないため、咳が長引き始めると治療が難しくなることもままあります。
百日咳の特有の咳は、「コンコンコン」と連続する激しい咳の後に、「ヒュー」という笛のような音を立てて息を吸い込む発作(レプリーゼ)が特徴です※
2. 薬剤耐性菌の増加
国立感染症研究所などの調査(2023年7~9月)により、患者から検出された百日ぜき菌の約8割が抗菌薬の継続がない「薬剤耐性菌」でした。
この耐性菌の遺伝子型は、2022年に中国で流行した型と近いことがわかっています。
耐性菌は、訪問日外国人など国内に認められた可能性が指摘されています。
3.治療への影響
新型コロナウイルス対策で人々の百日ぜき菌への免疫が弱まり、感染しやすくなっています。
薬剤耐性菌の増加により、従来の抗菌薬(アジスロマイシン、クラリスロマイシンなどマクロライド系)が効きにくくなり治療が困難な状況となっています。
※耐性菌対策としては2種類の抗菌薬を配合したST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム配合剤)が第2選択薬として推奨されています※
感染症研究所の専門家は「感染した菌が耐性菌かどうかはすぐに分からないが、全国で認められているため、治療時には耐性菌の可能性も考慮する必要がある」と指摘しています。
4. まとめ
百日咳は現在日本国内で大流行中で、特に子どもや乳児の重症化リスクが懸念されています。
薬剤耐性菌の割合が非常に高くなっており、治療が正しいため、早期の診断と適切な治療選択が重要です。
百日咳の予防には、ワクチン接種が最も効果的でワクチン接種を受けることで、百日咳にかかるリスクを80~85%程度減らせます。