2025年9月現在、例年よりも早い時期からインフルエンザが流行期に入り、全国的に患者数が増加していて、特に学級閉鎖が相次いでいることから、今年は子どもを中心に感染が広がっている傾向が見られます。
この早期流行の背景には、ここ数年間、新型コロナウイルス対策によってインフルエンザへの集団免疫が低下していたことが考えられます。
今回は、インフルエンザの流行状況と、解熱鎮痛剤の使用や抗生物質の処方に関する最新の注意点について、科学的知見をもとに分かりやすく解説します。
1. インフルエンザの治療薬、どう変わった?
熱やのどの痛みがあるとき、つい市販の薬に頼ってしまいがちですが、インフルエンザの場合、使用する薬の種類に注意が必要です。
ロキソニンなど非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は慎重に
厚生労働省は、インフルエンザの治療に際して、一部の解熱鎮痛剤、特に「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」を慎重に使用すべきとしています。
これは、ジクロフェナクナトリウムやメフェナム酸といった特定の成分が、インフルエンザの重篤な合併症であるインフルエンザ脳症・脳炎のリスクを高める可能性が指摘されているためです。
意識障害などを引き起こす危険性があるため、特に子どもへの使用は避けなければなりません。
推奨される解熱鎮痛剤は「アセトアミノフェン」
医師や薬剤師がインフルエンザの際に推奨するのは、アセトアミノフェン(製品例:カロナールなど)で、アセトアミノフェンはインフルエンザ脳症との関連が低いとされており、子どもから大人まで比較的安全に使用できると考えられています。
熱でつらい場合は無理せず、まずは医療機関を受診し、医師の指示に従って適切な薬を服用しましょう。
やむを得ず市販薬を使用する場合は、必ず薬剤師に相談して「アセトアミノフェン」成分の薬を選ぶようにしてください。
2. 「風邪には抗生物質」はもう古い?
インフルエンザや一般的な風邪の治療において、薬の処方方針に大きな変化が起きています。
社会保険診療報酬支払基金は、インフルエンザや風邪といったウイルス性の疾患に対し、抗菌薬や抗生物質を原則として処方しないという方針を明確にしました。
これは、ウイルスに抗生物質は効果がなく、不必要な抗生物質の服用は薬剤耐性菌を生み出すリスクを高めるからです。
この変更は、患者さんの自己負担額を増やすものではありません。
しかし、医療機関側が不適切な処方に対する保険請求を認められなくなることで、「念のため」の抗生物質処方を減らし、医療全体での適正使用を促すのが狙いです。
3. 今すぐできるインフルエンザ対策
今年のインフルエンザは流行が早いため、予防対策も前倒しで進めることが重要です。
ワクチン接種: 多くの医療機関が例年よりも早くインフルエンザワクチンの接種を開始しています。
特に13歳未満の子どもは2回接種が推奨されるため、早めに計画を立てましょう。
基本的な感染対策: 手洗いやうがい、マスクの着用など、基本的な感染対策を徹底することが、感染拡大を防ぐ最も重要な方法です。
夜間に急な発熱で困った場合は、国が提供する電話相談窓口が利用できます。
子ども向け:#8000
大人も利用可能:#7119
これらの番号は、夜間や休日に適切な医療機関を探す手助けをしてくれるので、いざという時のために覚えておきましょう。
最後に、
#8000(こども医療電話相談)と#7119(救急安心センター事業)は、相談料は無料ですが、通話料は利用者の負担となります。