今回から数回に分けて性感染症についての間違った認識・わかりにくいこと・勘違いしやすいこと・巷の噂などについて解説していきます。
初回は性感染症はトイレで感染することがあるのか?に付いて解説します。
ここで取り扱うのは以下の性感染症です。
◯淋菌・クラミジア・梅毒トレポネーマ・HIV・HBV・HCV・THTLV-1・尖圭コンジローマ
●ヘルペス・トリコモナス・性器カンジダ
結論から申し上げますと、
◯印の性感染症はトイレでの感染は考えられません。
●印の性感染症はトイレでの感染のリスクはありえます。
【感染しない理由】
便座を介して性感染症に感染しない理由として、以下の3つが考えられます。
1.便座に血液や体液が付いても病原体の生存時間が短い
性感染症を引き起こす細菌やウイルス、寄生虫などの病原体は、人間の体内や粘膜の湿潤環境でのみ生存しやすい特徴を持っていることからして、トイレの便座やドアノブ、洗浄レバー洗面台の表面は乾燥しやすいため、病原体が長時間生存することはまずないと考えて間違いはありません。
・クラミジア・淋菌は、乾燥に弱く、粘膜の外では生存時間が極めて短い。
・梅毒トレポネーマは、空気に触れることにより酸素で死滅する。
・HIVは、熱、乾燥で容易に不活性化する。
・HBV・HCV・THTLV-1は、血液が体内に入ることから感染しますので、トイレで単に接触する程度では感染は起こりません。
・トリコモナスは、水分がある環境では数時間生存可能ですが、乾燥した便座環境では速やかに死滅する。
要するにほとんどの性感染症の病原体は、体外では長く生きられないため、便座を介して感染するリスクは極めて低いといえます。
2.感染に必要な粘膜同士の接触がない
殆どの性感染症は、感染者の体液が直接に他者の性器や口、肛門などの粘膜に接触することで感染しますが、トイレの便座を使用する際、通常は粘膜同士が直接触れ合うことはないことから感染は起こりません。
稀に便座に座ることで皮膚が触れることはありますが、通常、便座に触れる皮膚には性感染症の病原体が入り込むための傷口や粘膜がなく、感染が成立することは殆どありません。
ほとんどの性感染症は「皮膚感染症」ではなく「粘膜感染症」であることからしてトイレなどからの感染は起こらないのです。
3.日常生活では感染しない
仮の話として感染者の体液や血液が便座に付着していたとしても、通常の清掃やアルコール消毒、乾燥によってほとんどの病原体は死滅します。
また、座る前にトイレットペーパーで拭くことにより、血液や体液が付着していたとしてもペーパーで拭き取られて感染に必要な量以下になることから感染はやはり起こりません。