血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2022年8月28日日曜日

サル痘-5.犬がサル痘感染の初報告受けWHOが注意喚起-

 2022年8月17日世界保健機関(WHO)は、サル痘の人から犬への感染が初めて報告されたことを受け、感染者に対して動物への接触を避けるよう呼び掛けた。


米国疾病対策センター(CDC)も、2022年8月12日、サル痘に感染する可能性のある動物のリストをウェブサイトに掲載し、犬を「感染する恐れあり」と表示しています。


これはフランスで感染した男性と同じベッドで寝ていたペットの4歳の雄犬がサル痘に感染した事例を受けたものです。


ネコの感染は「不明」とされ、他にリスなどが感染する恐れのある動物とされています。


人から犬への感染事例は、仏パリで同居している男性2人とイタリアングレイハウンドの間でのもので、英医学誌ランセット(The Lancet)で先週発表された。


WHOでサル痘の技術責任者を務めるロザムンド・ルイス(Rosamund Lewis)氏は記者会見で、人から動物への感染が報告された初の事例であり、犬が感染した例としても初めてとみられると説明しています。


現在犬から犬への感染、またはイヌからヒトへ感染することを示す証拠はみつかっていません。


こうした感染が起こり得ることは以前から認識されており、各保健機関は感染者に対し、自らをペットから隔離するよう助言していました。


また、野外に生息するネズミなどへの感染リスクを下げるため、廃棄物の管理が重要だと注意を促しています。


ウイルスが種の壁を越えて感染すると、変異により危険性が増す懸念が生じることが多い場合があります。


これに関して現時点ではサル痘ウイルスが変異したという報告はないと強調されています。


世界保健機関は2022年7月、サル痘について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しています。


【参考文献】


【サル痘ウイルスの人から犬への感染の証拠】

2022年8月21日日曜日

梅毒増加に伴うHIV感染に注意!!

 2022年新規梅毒患者数が年間10000人を超えるペースで増加していますが、この影に隠れてHIV感染者の増加が危惧されています。


梅毒トレポネーマに感染している人は、HIV感染リスクが非常に高いということをよく知っておいてください。


新型コロナウイルス感染症の流行でHIV検査をする人が減っており、知らぬ間に感染が拡大している可能性が指摘されています。


HIVに感染すると梅毒トレポネーマに感染するリスクは高くなり、逆に梅毒トレポネーマに感染するとHIVに感染するリスクは増していきます。


これは梅毒だけに限らずクラミジアなどの他の性感染症に感染している人も粘膜の防御力が落ちており、HIVに感染するリスクは高くなります。


梅毒トレポネーマやHIVに感染するリスクのある行為をしてしまったときには、必ず適切な時期にHIVや梅毒検査を受けることです。


早期発見・早期治療によって梅毒は早く完治します。


HIV感染は早く知り早く治療すれば、95%以上は発症を抑えられ、他人への感染を防げるようになっています。


検査を先延ばしして『いきなりエイズ』を告げられることは避けなければなりません。

2022年8月14日日曜日

新型コロナウイルス-66.ブレークスルー感染とは?-

 もともとブレークスルーとは「通り抜ける」という意味で、文字通りワクチンの網から「通り抜けて」感染してしまうことを言います。


新型コロナワクチンの場合は、2回目の接種から約2週間で十分な免疫の獲得が期待されるので、それ以降に感染した場合にブレイクスルー感染と呼んでいます。


新型コロナワクチンを接種してブレイクスルー感染が起きることから、ワクチンを接種しても意味がないのでしょうか?


いいえワクチン完全接種者では、ワクチン未接種者よりも生存可能なウイルスの排出期間が短く、2次感染率が低いことが示されていますからワクチン接種は意味があります。



ある調査から明らかになったことは、2,717人のブレイクスルー感染者のうち、10人(0.37%)の死亡を確認され、年代はすべて60代以上でしたが65歳未満の死亡者はゼロでした。


一方、103,357人のワクチン未接種の感染者のうち、366人(0.35%)の死亡を確認されています。


60代以上の死亡割合についてワクチン接種の有無で比較すると、ワクチン未接種の感染者の死亡割合は4.22%であり、ワクチン接種後の感染者の死亡割合は、0.76%と明らかに差が認められています。


ブレイクスルー感染はどうしても一定程度発生しますが、ワクチンを2回接種することで、死亡や入院に至る率が低下することがわかっています。


そのことから、ワクチンには死亡や重症化による入院を防ぐ有効性があります。


更にワクチン完全接種者では、部分的接種者/ワクチン未接種者よりも生存可能なウイルスの排出期間が短く、2次感染率が低いことが示されてます。


【参考資料】

『 ワクチン接種および非ワクチン接種者における感染性SARS-CoV-2放出動態』

※このサイトは5回まで会員登録なしに見ることが出来ます※



2022年8月7日日曜日

サル痘-4.従来の症状と異なる新たな症状-

 世界保健機関の報告ではこれまでに75ケ国から16000件以上の症例が報告されてます。


一方米疾病対策センター(CDC)によると、2022年7月29日時点の感染者数は5189人と報告されています。


欧米を中心にサル痘ウイルスの感染拡大がまることなく、2022年7月末時点で米国の感染者数はスペインを抜いて世界最多となり、スペイン、ブラジル、インドでは死亡者が出ています。


ロンドンの重大感染症センター(High Consequence Infectious Diseases :HCID)で最初に確認されたサル痘患者197例のデータを解析してその特徴や症状をイギリス医師会誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal:BMJ)(2022; 378: e072410)に報告しています。

 【参考資料】

『2022年のアウトブレイク中のロンドン中心部のセンターにおけるヒトサル痘の臨床的特徴と新しい症状:説明的なケースシリーズ』


その結果ほぼ全例が男性間性交渉者(MSM)であることに加え、直腸痛や陰茎浮腫、孤立性の皮膚病変、扁桃浮腫、皮膚病変が全身症状に先行する症例など、これまでサル痘ウイルス感染の典型とされていなかった新たな臨床的特徴が確認されています。


アフリカにおける従来のサル痘はワクチン未接種の幼児を中心に発生していましたが、今回の症例は全例が男性で、年齢中央値は38歳(範囲21~67歳)、1例を除きゲイやバイセクシャルなどのMSMとの解析がなされています。


更に従来の流行と異なり、直腸痛と咽頭痛、陰茎浮腫が高頻度に認めらています。


皮膚粘膜病変の発生部位は性器(56.3%)、肛門周囲(41.6%)に偏っています。


これらのことからして従来の流行と異なり他疾患と誤認されやすい臨床像が多く含まれていて、サル痘の鑑別に支障をきたしています。