大腸がんは「防げる」!第8回:身体的・心理的ハードルを劇的に下げる「新しい大腸がん検査」の全貌
「便潜血検査で陽性が出たけれど、下剤や内視鏡の苦痛が怖くて精密検査を先延ばしにしている……」
そんな声を、医療現場では今も非常に多く耳にします。
日本国内において、大腸がんは男女全体で最も多くの人が新たに診断されるがんの一つであり、年間5万人以上の方が命を落としている極めて重大な健康課題です。
しかしその一方で、「早期発見できれば極めて高い確率で克服できる(ステージIの5年生存率は9割以上)」という事実をご存知でしょうか。
それにもかかわらず、なぜ命を落とす方が後を絶たないのか?その最大の理由は、検査や精密検査に対する「心理的・身体的ハードル」にあります。
今回は、従来のイメージを覆し受診の選択肢を大きく広げる「大腸CT検査(CTコロノグラフィ)」の全貌と、最新の医学的知見を分かりやすく解説します。
1. なぜ大腸がん検査が重要なのか?
国立がん研究センターの最新統計等によると、大腸がんは日本人にとって決して他人事ではない身近な病気です。
◎罹患数(新たに診断される数): 男女総合で年間約15万4千例に及び、全がん種の中でトップクラスの多さを誇ります。
◎死亡数: 年間約5.4万人にのぼり、女性ではがん死亡数の第1位、男性でも上位に位置する深刻な脅威となっています。
※早期発見が「命」と「人生」を分ける
大腸がんは、粘膜の表面にできる良性の「ポリープ」が何年もかけてゆっくりと大きくなり、その一部ががん化していくケースが大半ですので、ポリープやごく初期の段階(ステージIなど)で発見・切除できれば、大腸がんは“防ぐことができる(あるいはほぼ100に近い確率で治せる)”病気なのです。
しかし、自治体の検診などで実施される「便潜血検査(検便)」で陽性(=出血のサイン)が出たにもかかわらず、その後の精密検査(内視鏡など)を受けない人が約4割にも上るというデータがありこの「受診控え」こそが、手遅れを招く最大の障壁となっています。
2. なぜ、精密検査(内視鏡)を放置してしまうのか?
便潜血で陽性が出ても内視鏡検査をためらってしまう背景には、主に以下のような「つらいイメージ」があります。
1)大量の下剤への抵抗感:お腹を空っぽにするため、1.5L〜2Lもの下剤を数時間かけて飲み干す必要があること。
2)身体的苦痛と恥ずかしさ:お尻からスコープを挿入されることへの恐怖や、特有のプライバシーへの不安。
優れた検査であると分かっていても、「怖い・つらい」という理由で足が遠のいてしまう――。このジレンマを解消するために生まれたのが、「大腸CT検査」という新たな選択肢です。
3. 負担を激減させる「大腸CT検査」の画期的な仕組み
1990年代にアメリカで開発され、日本でも近年導入が進む大腸CT検査(CTコロノグラフィ)は、内視鏡のハードルを感じる人にとって強力な味方となります。
◎下剤の量が約10分の1に!「タギング」という技術
検査前日に専用の食事をとり、毎食後に「硫酸バリウム製剤」という液体を少しずつ服用しこれにより、便がバリウムをまとって白く染まります。
コンピュータがこの「白い部分」を自動で綺麗に消去してくれる(タギング)ため、腸内を完全に空っぽにする必要がなくなり下剤の量が大幅に減るため、身体的負担が劇的に軽減されます。
◎わずか15分程度で完了するスムーズな検査
お尻から5cmほど細い管を入れ、炭酸ガスで腸を膨らませて撮影します。カメラを奥まで挿入しないため強い痛みがなく、仰向けとうつ伏せで各約15秒撮影するだけで、トータルでも15分程度で終了し、終わればすぐにガスが抜けるため非常に楽です。
4. 大腸CT検査の「メリット」と「知っておくべき限界」
多くのメリットを持つ一方で、CT検査ならではの特性や限界についても正しく理解しておく必要があります。
【メリット】
◎死角のない立体(3D)解析
腸の急な曲がり角やひだの裏側など、内視鏡では見落としリスクのある死角も、CTなら立体データや平面展開画像によって高精度に捉えることができ6mm以上の病変に対しては、内視鏡に近い優れた検出率を誇ります。
◎他の臓器の病気が偶然見つかることも
お腹全体を撮影するため、大腸だけでなく肝臓、胆嚢、膵臓などの周辺臓器の大きな異常が偶然発見されることもあり実際に大腸CTをきっかけに早期の膵臓がんを発見できたケースも報告されています。
◎女性や高齢者にも選ばれています
内視鏡検査は男性の比率が高い一方、大腸CT検査は男女比がほぼ半々で「苦痛や恥ずかしさが少ない」という理由から、これまで検査を避けていた女性や、スコープのリスクを考慮したい高齢層(80歳以上など)に非常に適した選択肢となっています。
【限界・注意点】
◎5mm以下の小さな病変や平らな病変は苦手
カラー画像ではないため、2〜3mmの極小ポリープや、赤みだけの平らな病変の検出は内視鏡に劣ります。
◎その場で「切除」はできない
検査中に怪しいポリープが見つかっても、その場で組織を取ったり切除したりすることはできませんので、病変があった場合は、後日内視鏡による精密治療が必要になります。
◎放射線被ばく・妊娠中の制限
X線を使用するため、妊娠中の方は受けることができません。
5. 検査後の「納得感」が治療への決定打に
大腸CT検査の大きな強みのひとつに、「次の適切な治療への高い橋渡し効果」があります。
種々の実績では、大腸CT検査で切除が必要なポリープが見つかった際、医師が3D画像を見せながら「ここにこれだけのものがあります」と丁寧に説明すると、なんと93.5%もの患者さんが納得してその後の内視鏡切除治療へ進むといいます。
「いきなりカメラを入れるのは怖いけれど、事前のCTで自分の状態を視覚的に把握できることで、心の準備ができて安心して治療に臨める」というわけです。
結びに代えて:まずは「自分に合った方法」で一歩を踏み出そう
大腸がんは、適切な検査と早期発見によって「防ぎ、完治させることができる」病気です。
◎便潜血検査で陽性が出たけれど、内視鏡の恐怖で放置している方
◎初めての精密検査で、できるだけ体への負担を減らしたい方
こうした方々にとって、大腸CT検査は医療への恐怖心を和らげ、命を守るための素晴らしい扉を開いてくれます。もちろん、医師と相談の上で最初から内視鏡を選ぶことも大切です。
大切なのは、「怖いからと放置しないこと」、そして「少なくとも5年に1回は大腸の状態を確認する習慣を持つこと」です。
ご自身の健康と、愛する家族の未来のために、まずは身近な医療機関で「大腸CT検査」という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。
【参考資料】
