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2026年9月9日水曜日

大腸がんは「防げる」!第6回:進行大腸がんでも「約20%」は便潜血で陰性?

 


はじめに:「毎年陰性だから安心」に潜む落とし穴


健康診断や人間ドックの定番メニューである「便潜血検査」。


「毎年『陰性(異常なし)』だから自分は大丈夫!」と、すっかり安心していませんか?


実はここに、専門医や臨床検査の現場が最も危惧する「見落としの罠」が隠されています。


大腸がんは初期の自覚症状がほとんどない上に、便潜血検査だけではどうしてもすり抜けてしまうケースがあるのです。


今回は、意外と知られていない便潜血検査の「実力と限界」、そして来年度(2027年度)から予定されている大腸がん検診の大改定について、医学的・疫学的な視点から分かりやすく解説します。


1. 疫学データが示す限界:進行がんの20%、早期がんの50%が「陰性」になる現実


便潜血検査は、便に混じった目に見えない微量な血液(ヘモグロビン)を検出する非常に優れたスクリーニング検査で、体への負担がなく職域や地域検診で広く普及したことで、日本の大腸がん死亡率を低下させてきた確かな実績があります。


しかし、検査医学において「感度(病気がある人を正しく陽性と判定できる確率)が100%の検査」は存在しません。


【疫学データが示す衝撃の事実】


◎進行大腸がん(すでにがんが深く進行している状態)であっても、**約20%(5人に1人)は「陰性」**と判定されてしまう。


◎早期大腸がん(粘膜層にとどまる段階)にいたっては、**約50%(2人に1人)が「陰性」**で見落とされる。


「陰性=大腸がんがない」という意味では決してない、という厳格な事実をまずは知っておく必要があります。


2. 【2027年度大改定】検診が「1日法」へ移行する背景と、検査医学的な懸念


現在の大腸がん検診は、異なる日の便を2日分採取する「2日法」が主流でが、これはがんからの出血が「毎日持続するとは限らない」ため、回数を増やして検出率を上げるという合理的な理由に基づいています。


しかし厚生労働省の指針により、2027年度から大腸がん検診は原則「1日法(1回だけの採便)」へ変更される見込みとなっています。


◎なぜ「1日法」へ変更されるのか?(疫学的メリット)


1)統計学的な差のなさ:大規模な疫学調査において、1日法と2日法を比較した際、集団全体での「がんの発見頻度」に決定的な統計学的差が見られなかったため。


2)受診率(提出率)の向上期待:2回採便する手間にハードルを感じていた層が、1回で済むようになることで、検診全体の受診率を底上げできるという公衆衛生上の狙い。


◎臨床検査医学としての「懸念点」


一方で、個人の診断レベルで見ると大きな懸念が残ります。


従来の2日法では、「1回目は陰性だったが、2回目の検体で陽性となり、精密検査でがんが見つかった」というケースが多々ありましたが、1日法への移行により、チャンスが1回きりになるため、個人の「がん見落としリスク(偽陰性率の上昇)」が高まることは否定できません。


これまで以上に、「陰性」という結果を過信しない姿勢が求められます。


3. なぜ見落とされる? がんの「形(肉眼型)」で異なる出血のリアル


大腸がんやポリープがあっても便潜血が陰性になってしまう理由は、がんの「形(肉眼型分類)」にあります。


がんはすべて同じ形をしているわけではなく、その形状によって出血のしやすさが劇的に異なります。


・隆起型(りゅうきがた):キノコのように粘膜から大きく盛り上がるタイプ。便が通り抜ける際に擦れやすいため、比較的早い段階から出血し、陽性に出やすい特徴があります。


・平坦型(へいたんがた)・陥凹型(かんおうがた):粘膜にへばりつくように横に広がる(平坦型)、あるいは奥へもぐり込むように凹んでいる(陥凹型)タイプ。これらはある程度大きく、あるいは深く進行するまで便と擦れず、非常に陽性になりにくい(=陰性になりやすい)性質を持って特に陥凹型は進行が速いため、検査をすり抜けるタチの悪い「隠れがん」になりやすいのです。


また、小さなポリープや早期の病変は常にダラダラと出血しているわけではありません。


たまたま「出血していない日」に採便すれば、結果は当然「陰性」になります。


4. 「陽性」は病気の確定ではない!「痔のせい」と自己判断してはいけない理由


もし健康診断で「陽性(1日でも要精密検査)」と出た場合、どう受け止めるべきでしょうか。


◎「陽性」=「大腸がんが確定した」という意味ではありません。


正しくは、**「大腸のどこかで出血が起きているサインであり、精密検査を受けるべき強力な切符を手に入れた」**状態です。


陽性判定が出た人のうち、実際に大腸がんが見つかる確率は数パーセント程度で多くは痔(じ)や、硬い便による肛門の切れ、女性であれば経血の混入などが原因です。


しかし、ここで最も危険なのは「私は昔から痔持ちだから、この血は痔のせいに違いない」と自己判断して精密検査(大腸カメラ)を拒絶することです。


「痔」と「大腸がん」が体の中で同時に存在している可能性は十分にあります。


せっかく検査が教えてくれた貴重なサインを、思い込みで握りつぶしてはいけません。


5. 早期発見の切り札「大腸カメラ」:40歳を過ぎたら一度は受けるべき理由


便潜血検査はあくまで「可能性」をあぶり出す網に過ぎません。


大腸の内部を直接目で見て、確実な診断と治療(ポリープ切除)を同時に行える唯一無二の存在が「大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)」です。


大腸がんは年齢とともに発症リスクが右肩上がりに上昇するため、医学的には「40歳を過ぎたら、症状がなくても一度は大腸カメラを受けること」が強く推奨されています(家族歴がある場合は35歳からの受診も考慮されます)。


◎特に大腸カメラを受けるべき「リスク・要注意層」


便潜血が陽性だった方はもちろんですが、例え「陰性」であっても以下の項目に該当する方は、一度消化器内科に相談し、大腸カメラを検討してください。


・危険なサイン(自覚症状)がある:血便、原因不明の便秘や下痢、腹痛、急激な体重減少


・家族歴がある:血縁者に大腸がんになった人がいる


・過去の指摘:過去に大腸ポリープを指摘されたことがある


・生活習慣のリスク因子:


肥満、運動不足


日常的な飲酒、喫煙


赤肉(牛・豚などの赤身肉)中心の食生活


加工肉(ハム・ベーコン)や超加工食品(インスタント食品、菓子パン等)の多量摂取


まとめ:将来の「自由」を守るために、賢い選択を


大腸がんは、早期に発見して内視鏡で切除できれば、「完全に治せる確率が非常に高いがん」ですから早期発見できれば、開腹手術のような肉体的負担、長期入院による経済的・精神的ショックを最小限に抑えることができます。


長年「陰性」が続いていた人が、ある年突然「陽性」になり、慌てて大腸カメラを受けたらすでに進行がんだった――というケースは臨床の現場で珍しくありません。


それは今年突然がんができたのではなく、「平坦な形のがんが、過去数年間の便潜血検査をずっとすり抜けていた」可能性を示唆しています。


「まだ痛くないから」「毎年陰性だから」と言い訳をせず、40歳を超えたら定期的に大腸の“中身”を直接チェックする。


これこそが、5年後、10年後も大切な家族と共に美味しいものを食べ、自分の足で歩き続けるための、最高の健康投資なのです。


【参考資料】

『便潜血検査で「1回だけ陽性」と言われました。内視鏡検査は受けたほうがいいのでしょうか?』

『大腸がん検診の便潜血検査、採便2回から1回に変更へ』

『大腸内視鏡検査ってどんな検査ですか?』

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