血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2022年7月17日日曜日

帯状疱疹-1.増加傾向にある-

 50歳を過ぎると発症率が上がる病気で、日本人が一生涯のうちで、大体3人に1人が経験するという非常に多くみられます。


2021年に入ってから、皮膚科では帯状疱疹にかかる人が多くなっていると指摘されています。


その原因としては、新型コロナウイルスに感染し発症で体力が落ちることや、新型コロナウイルス流行によるストレスが増えたと考えられています。


外出制限や在宅勤務で運動量が減れば体も弱り抵抗力が低下する可能性があり、帯状疱疹を発症するリスクをともなっています。


従来は加齢などで発症が増える傾向にありましたが、近年は若年層でも目立ち、コロナ禍で拍車がかかっている恐れがあります。


生活スタイルが激変することもストレスになり、生活リズムを崩して睡眠不足になったりしても、免疫力が低下することから発症します。


人によっては痛みが長期間続くこともあり、医師らは早期治療とワクチン接種の重要性を呼び掛けています。


2022年7月10日日曜日

新型コロナウイルスについて-65.新型コロナウイルス再流行のおそれ-

 新型コロナウイルスの感染が全国各地で再び増えつつあります、新規感染者数は5月中旬から減少傾向が続いていましたが、ここ1週間平均を見ると、32都府県で前週より増加傾向にあります(6月30日時点)。


その原因はオミクロン株の変異株のひとつ「BA.5」への置き換わりが進んでいることと、一時期感染者が減少したために自粛ムードが緩んだことにあります。


従って油断するといっきに感染者が増える恐れがあります。


6月20日までの1週間にBA.5の疑い例は25・1%を占め、前週の13・6%から倍増しつつあります。


今まで流行の主流だったBA.2に代わり勢力を伸ばしつつあることが増加の要因となっています。


世界保健機関は、オミクロン株の「BA.4」と「BA.5」がヨーロッパやアメリカ大陸で主流となり世界で確認された新型コロナウイルスの新規感染者数がこの2週間で30%近く増えたと発表しています。


米国疾病対策センターは、2022年7月2日現在、アメリカで新たに報告された新型コロナウイルスの感染者のうち、オミクロン株の「BA.5」の割合は53.6%、「BA.4」の割合は16.5%で合わせて70%を超えたと発表しています。


欧州疾病予防管理センター(European Centre for Disease Prevention and Control:ECDC)はBA.5が、BA.2よりも12~13%感染者が増えやすいと報告しています。


さらにこれまでに体が免疫を獲得していても、BA.5系統には働きが悪くなると指摘されています。


2022年7月7日時点で全国の感染者数は47977人となっています。


これから人流が大幅に減るなど感染者数が大きく減少する要因がなければ、1か月後の来月25日でも一日およそ1万5000人と高い水準が続くという計算結果となることが発表されています。

呉れ呉れも機を緩めずに感染対策をして下さい。

2022年7月3日日曜日

2022~23年季節性インフルエンザ大流行の危惧

 2022年これから本格的な冬シーズンに入るオーストラリアで、直近2年はほとんど流行しなかった季節性インフルエンザの患者報告数が増えています。


すでに過去5年でもっとも多かった2017年のピーク時と並び、3月から報告が増え始め5月に入ると1週間あたり約5000人を超え、同月末には同約25000人に急増しています。


これは過去5年で最も流行した2017年8月中旬のピーク時とほぼ同じ水準となります。


流行の原因は、新型コロナウイルスへの対策が緩和されたことが影響しているとの見方もあり、専門家は、日本でも冬のインフルエンザ流行に備える必要があると、警戒をよびかけています。


日本国内においても2022年6月21、22日に東京都内の小学校で2年3ケ月ぶりとなるインフルエンザによる学年閉鎖がされています。


2022~23年にかけてのインフルエンザ流行期には、日本国内での大流行が危惧されています。


一般的にインフルエンザは、南半球で流行後北半球で同様に流行する傾向が強いことから、流行のなかった日本ではインフルエンザに対する免疫がない人が多いことから大流行の可能性が専門家の間で指摘されています。


【ご注意】


インフルエンザは冬場だけでなく、夏場の流行もあります。


数年前にも沖縄で流行がありました。


一昔前までは夏場にはインフルエンザキットは殆どなく、発熱患者にはインフルエンザ検査キットを使用できませんでしたが、現在は通年にわたりインフルエンザ検査キットは流通していますから、検査してインフルエンザと分かるようになってきています。


日本ワクチン学会は、2022年6月23日に『2022-23 シーズンの季節性インフルエンザワクチンの接種に関する日本ワクチン学会の見解』を学会ホームページで公開し今季インフルエンザワクチンの接種を強く推奨しています。


参考サイト

『2022-23 シーズンの季節性インフルエンザワクチンの接種に関する日本ワクチン学会の見解』

日本ワクチン学会

2022年6月26日日曜日

サル痘-3.間違った情報と正しい情報-

誤った情報がネット上に拡散していますので、呉れ呉れも惑わされないようにして下さい。


【誤った情報】


1.コロナワクチンの副反応


世界各国のSNSでは、最近のサル痘感染例が英アストラゼネカ製新型ウイルスワクチンの「副反応」だという誤った情報が広まっています。


その理由としては、同社製ワクチンがチンパンジーアデノウイルスを遺伝情報のベクター(運び手)として使用していることに関連していると推測されます。


サル痘を引き起こすのはアデノウイルスではなくポックスウイルスの一種であることなどから、この主張は誤りです。


サル痘の発見の経緯は、1958年研究に使われていたマカク属のサルから発見されたことからサル痘と命名されましたが、さる以外にも他の動物にも感染すます。


世界保健機関(WHO)は、サル痘の自然宿主はげっ歯類である可能性が高いと報告しています。


2.ファイザーがサル痘ワクチン製造


SNS上では、米食品医薬品局(FDA)が最近、米ファイザー製の新たなサル痘ワクチンを承認したとの投稿が広まっていますが、このような事実はありません。


米国内で唯一利用可能なサル痘ワクチンはデンマークの製薬企業ババリアン・ノルディック製で、2019年に承認されています。


ファイザー社は、同社製のサル痘ワクチンは存在しないと否定しています。


3.サル痘は帯状疱疹


SNS上では、カナダのCTVニュース(CTV News)の記事とされる画像が投稿され、カナダの当局が調査したサル痘感染例の95%が実は帯状疱疹だったとの情報が拡散されていますが、CTVニュースの親会社ベル・メディアの広報担当は画像に写っている記事はCTVニュースのものではなく、同局が「そのような記事を掲載したことはない」と否定しています。


サル痘も帯状疱疹も、水疱ができることから症状が類似する場合もありますが、原因となるウイルスはそれぞれ異なり、「全く別の感染症」です。


※呉れ呉れも誤った情報に振り回されることのないように、正しい知識を身に付けてください※


【正しい情報】


サル痘には天然痘のワクチンが有効とされています。


日本では1976年まで接種が行われていましたので、現在46歳以上の人は、そもそもサル痘にかかりにくい可能性が高いと指摘されています。


種痘中止後の世代(現在45歳以下)には天然痘やその仲間のウイルスに対する抗体がまったく認められませんが、種痘世代では調査時点で80%の人に抗体が認められています。


特に現在73歳以上の人たちは強い免疫を保持していたという調査結果があります。


これらのことからしてサル等に感染するリスクは若い世代に高いと指摘されています。

2022年6月19日日曜日

サル痘-2.流行状況-

 世界保健機関(WHO)は、2022年5月27日の総会で、動物由来のウイルス感染症「サル痘」が従来継続的に発生し、アフリカ以外で感染が広がっていることは「異例」として、警戒を発しています。


欧米を中心に36カ国以上で約2027人の患者が確認されたとし、今後の見通しは不透明としながらも、増加の恐れがあるとした(2022年6月15日時点)。


また世界保健機関は、疑い例を含めると3000人を超えると発表しています。


欧州疾病予防管理センター(ECDC)は2022年5月23日、患者の報告が相次ぐ「サル痘」について「欧州で複数の性交渉相手がいる人の間で拡散するリスクが高い」との評価を公表しています。


日本国内においては2022年6月17日時点では、患者の確認はされていません。


【参考サイト】


2022年6月12日日曜日

サル痘-1.概要-

 世界保健機関(WHO)は2022年6月8日、天然痘に似た症状が出るウイルス性疾患「サル痘」の発生状況について、世界の30ケ国で、1000件を超える患者を確認したと報告しています。


ではサル痘とはどのような感染症なのでしょうか。


サル痘(モンキーポックス:monkey pox)は、サル痘ウイルス感染による急性発疹性疾患で、ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによって引き起こされます。


実験動物として採集されたサルの一部が感染し発症していたことが最初の発見契機であったため、サル痘と呼ばれますが、本来のウイルス保有動物は土着のリスやネズミ(げっ歯類)などです。


もともと中央・西アフリカの熱帯雨林などで確認されていましたが、現在欧米で広がりつつあります。


サル痘には、コンゴ民主共和国には強毒な「コンゴ盆地型」サル痘ウイルスが分布していますが、西アフリカには比較的弱毒の「西アフリカ型」サル痘ウイルスが分布します。


1.コンゴ盆地型は、強毒で致死率は1~1%で、人から人への感染が多く報告されています。


2.西アフリカ型は、比較で弱毒で致死率は低く、人から人への感染も認められています、現在流行しているのはこのタイプです。


【潜伏期間と症状】

サル痘の潜伏期間は5~21日(通常7~14日)とされ、潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などが1~5日続き、その後発疹が出現します。


発疹は典型的には顔面から始まり、やがて体幹部へと広がります。


※重症例では天然痘と臨床的に区別できず、サル痘に特徴的な所見としてはリンパ節腫脹が患者に共通に認められる※


症状は発熱と発疹を主体とし、多くは2~4週間で自然に回復しますが、小児等で重症化、死亡した症例の報告もあります。


【感染ルート】

サル痘ウイルスの動物からヒトへの感染経路は、感染動物に咬まれること、あるいは感染動物の血液・体液・皮膚病変(発疹部位)との接触による感染が確認されています。


自然界ではげっ歯類が宿主と考えられていますが、自然界におけるサイクルは現時点では不明です。


ヒトからヒトへの感染は稀ですが、濃厚接触者の感染や、リネン類を介した医療従事者の感染の報告があり、患者の飛沫・体液・皮膚病変(発疹部位)を介した飛沫感染や接触感染があると考えられています。

 【治療】

治療としては対症療法が行われます。


一部の抗ウイルス薬について、実験室レベルおよび動物実験での活性が証明されており、サル痘の治療に利用できる可能性があるとされています。


天然痘のワクチンである痘そうワクチンがサル痘予防にも有効ですが、日本では1976年以降、痘そうワクチンの接種は行われていません。


サル痘ウイルス曝露後4日以内に痘そうワクチンを接種すると感染予防効果が、曝露後4~14日で接種した場合は重症化予防効果があるとされています。


【丘疹の参考】

1970年にギニアから発行された「天然痘撲滅記念切手」で、黒人の少年の背中に生じた天然痘丘疹がリアルに描かれていますので紹介します。



【参考サイト】

疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)

https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/about.html


世界保健機関


https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/monkeypox


2022年5月29日日曜日

原因不明の小児急性肝炎-1.概要-

 ウイルス性肝炎は、A、B、C、D、E型などの肝炎ウイルスの感染によって起こります。


ウイルスは、HAV、HBV、HCV、HEVと呼ばれています。


※これらの肝炎ウイルスに関しては、当ブログでも解説しています※


A型、E型肝炎ウイルスは主に食べ物から感染し、B型、C型、D型肝炎ウイルスは主に血液によって感染します。


特にB型、C型肝炎ウイルスについては、感染すると慢性肝炎という持続的に肝臓に炎症を起こす病態に移行することがあり肝硬変となり最終的には肝がんへと移行するひとあります。


ウイルス性肝炎に感染したときに急性肝炎という激しい肝臓の炎症が起こることがあり、特に肝不全にまで至るほど重篤な病態を"劇症肝炎"と言います。


これらの重篤な劇症肝炎では、肝移植が必要になることもあります。


これらのA?E型の肝炎ウイルス以外にも肝炎を起こす病原体は知られています。


例えば、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルスなどがあります。


そして、現在海外では原因不明の肝炎の症例が報告されています。


2022年4月5日、イギリスにおいてこれまで健康だった10歳未満の小児の間で、原因不明の急性肝炎患者が増加していることが報告されています。


これらの症例の多くは重度の急性肝炎を呈しており、AST、ALTという肝酵素の数値が500IU/L以上の上昇を認め(正常値は40IU/L未満)、多くの症例で黄疸がみられました。


また、一部の症例では、過去数週間に腹痛、下痢、嘔吐などの消化器症状を訴えていましたが、ほとんどの症例に発熱はありませんでした。


イギリスではこれまでに108症例の肝炎の小児が報告されており、このうち8人の小児が肝移植を受けたとのことです。


イギリスだけではなく、現在はアメリカのアラバマ州、スペインでも小児の原因不明の肝炎の症例が報告されています。


肝炎の原因は、現時点でははっきりしていません。


そのような中、検査した症例の77%がアデノウイルスが陽性であったという結果が得られていることから、アデノウイルスがこの肝炎の原因ではないかという仮説が立てらているようです。


日本国内においても同様の症状が出た症例が認められています。


世界保健機関(WHO)の報告によると、今月21日までに12カ国で169例が確認され、1人が死亡した。このうち、74例で夏風邪や結膜炎などの原因ウイルスである「アデノウイルス」が検出されている。症状は黄だんや肝障害の程度を表す肝酵素の数値の異常のほか、一部の症例では腹痛、下痢、嘔吐(おうと)などが報告されている。


 今回の症例は21日に自治体から国に報告があった。アデノウイルスは陰性で、肝移植はしていない。基礎疾患の有無は不明で、新型コロナウイルスは陰性だった。厚労省は症状や居住地、性別、年齢は明かしていない。


 WHOは23日、各国から情報を集めるために、原因不明の子どもの急性肝炎の暫定的な症例の中に「可能性例」を定義。16歳以下で、今年1月以降に確認された急性肝炎で、A~E型のウイルス性肝炎の症例は除外しています。