血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2025年2月23日日曜日

非アルコール性脂肪性肝疾患検査-2.非アルコール性脂肪性肝疾患検査「イムニス サイトケラチン18F EIA」について-

 イムニス サイトケラチン18F EIA」は、血清中のCK-18F(M30)を測定する酵素免疫測定法試薬です。


【使用目的】


血清中のヒトサイトケラチン18フラグメント(CK-18F)の測定 (非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)診断の補助)


【検査原理】


特徴ワンステップのサンドイッチ酵素免疫測定法(EIA)でNASHの診断補助に使用する体外診断用医薬品


【特徴】


NASHの特徴のひとつである風船様変性、疾患活動性の病理学的指標とされるNAFLD activity score(NAS)を反映し、リスクの高いNASHの絞り込みに有用


【検査時間】


測定時間は1時間30分


【基準値】


260未満 U/L


1.260U/L以上:ほぼ確実に非アルコール性脂肪肝炎が高いので肝臓専門医の診察が必要となる


2.260未満 U/L:非アルコール性脂肪肝炎の可能性は低いことから経過観察


【参考資料】


『イムニス サイトケラチン 18F EIA』

2025年2月16日日曜日

非アルコール性脂肪性肝疾患検査-1.非アルコール性脂肪性肝疾患検査とは-

 非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)とは、アルコールを多量に飲まない人でも、肝臓に脂肪が蓄積する病気です。


主な原因は、肥満、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や、遺伝的要因などが考えられています。


NAFLDは、初期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると肝炎、肝硬変、肝がんなどに進行する可能性もあります。


NAFLDの診断には、血液検査、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査などが行われます。


治療は、食事療法、運動療法、薬物療法などが行われます。


NAFLDは良性の経過をたどる単純性脂肪肝と、肝硬変や肝癌に進行する可能性がある非アルコール性脂肪肝炎 (nonalcoholic steatohepatitis: NASH)に分かれます。

わが国にはNAFLDが約1,000万人、NASHが約100~200万人いると推定されます。


【参考資料】

2025年2月9日日曜日

薬局でジェネリックを拒否し先発薬希望で"特別の料金追加"加算の新たな仕組み

 2024年10月からジェネリックを拒否し先発薬希望で"特別の料金追加が発生する新しい仕組みをなかなか理解できずに薬局でトラブル事案が発生していることから、今回はこのことについて解説させていただきます。


【2024年10月から始まる薬に関する新しい仕組み】


10月から使用感や味など薬の有効性とは関係がない理由(患者の都合)で先発医薬品を

希望すると"特別の料金"がかかり、患者自身の負担となります。


その料金は先発医薬品とジェネリックの価格差の4分の1相当の料金のことを言います。


【対象となる薬とは】


いわゆる長期収載品と呼ばれる、同じ成分のジェネリックがある先発医薬品が対象と

なります。


 ※ジェネリックの存在しない薬は対象とはなりません※

 

【特別料金は誰にでもかかるのか?】特別料金は誰にでもかかるのか?


普段は薬局での薬代がかからないお子さんなどの場合でも、味の好みなどの理由から

先発医薬品を希望すると"特別の料金"が発生します。


例外としては、患者がそのジェネリックを使用して副作用を起こしたことがあるなど、

医療上の必要がある場合は"特別の料金"は発生しません。


薬局の製造流通が要因となり薬局にジェネリックの在庫がなく、先発医薬品で薬をも

らった場合も特別の料金はかかりません。


【どうしても先発医薬品を希望する場合はどうするの】


どうしても先発医薬品が欲しいという人は、まずは診察時に医師に相談してみてくだ

さい。


医療上の理由で先発医薬品による薬物療法が必要と医師によって判断された場合には

特別の料金はかかりません。


医師により医療上の必要性が認められると処方箋の「変更不可(医療上の理由)」欄

にチェックを入れてもらえば先発医薬品でも"特別の料金"は発生しません。


処方箋の「変更不可(医療上の理由)」欄にチェックがないと「患者希望」の欄にチ

ェックが記載されてしまいシェネリック処方となります。


医師が処方箋を発行する際に「変更不可(医療上の理由)」欄にチェックを入れない

で、薬局で変更はできませんので必ず診察時に医師に申し入れることです。


今回の改悪の趣旨を丁寧に説明しない薬局もありますので注意が必要です。

                 処方箋見本




2025年2月2日日曜日

2024年1年間の梅毒の現状

2024年の梅毒患者報告数は、全国で14,663人でこれは、感染症発生動向調査の全数把握感染症に定められた1999年以降で2023年に報告された14,906人に次ぐ2番目に患者数となっています。

細菌では10~20代の若年層の女性に多く感染しています。 

【調査できた11802人の梅毒の病期】

◯男性 同性愛感染者 1259

早期顕症Ⅰ 367

早期顕症Ⅱ 474

無症候  403

晩期顕症 15

◯男性 異性間感染者 6267

早期顕症Ⅰ 4014

早期顕症Ⅱ 1480

無症候  705

晩期顕症 68

◯女性 異性間感染者 4276

早期顕症Ⅰ 1049

早期顕症Ⅱ 1780

無症候  1428

晩期顕症 19

【無症候梅毒の分析】

◯男女合計

2536/11802 21.5%

◯男性

1108/7526 15.3%

◯女性

1428/4276 33.4% 

※梅毒とトレポネーマに感染しても梅毒特有の症状を呈さない患者がかなり見られ特に女性の場合に多い傾向があります※

※無症候梅毒は感染に気づくことなく感染者を広げる危険性が高いことから、不安な行為をしてしまったら必ず適切な時期に梅毒検査を受けることが感染者増加を防ぐ手段となります※

2025年1月26日日曜日

ヒトメタニューモウイルスとは

ヒトメタニューモウイルス(hMPV; human metapneumovirus)は、2001年にオランダで急性呼吸器感染症患児の鼻咽腔吸引液から初めて分離発見された比較的新しいウイルスで、風邪の原因の一つとして知られていて、特に乳幼児や高齢者では重症化することもあり、注意が必要です。

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は感染力が非常に強く、飛沫感染や接触感染によって広がります。

※抗体調査の結果からこのウイルスは50年以上前からヒトの間で流行しており、従来原因不明とされていた呼吸器感染症の病原体のひとつと考えられます(呼吸器感染症患者検体におけるHMPV陽性率は10-20%程度)※

【感染経路】

咳やくしゃみなどの飛沫を吸い込むことで感染する飛沫感染。

ウイルスが付着した手や物に触れ、その手で口や鼻を触ることで感染する接触感染。

【感染期間】

症状が出る5日前から症状発症後1~2週間の間、他者にウイルスを伝播する可能性があるります。

解熱してからは感染力はかなり低下するといわれています。

【症状】

3~5日ほどの潜伏期間を経て、風邪に似た症状で咳、発熱、喘鳴などの症状が現れます。

一般的には症状は1週間ほどで治まることがほとんどですが、重症化することもありますので、乳幼児は特に注意が必要となります。

重症化した場合には、気管支炎、肺炎を発症します。

【治療】

インフルエンザに対するタミフルのような特効薬はなく、症状を緩和させる薬が中心に処方されるれ対処法となります。

抗生物質は効き目がないことから基本的には使用しません。

【検査法】

イムノクロマト法を利用とした『ヒトメタニューモウイルスキット  クイックチェイサーhMPV』があります。

詳しくは以下を参照してください。

『クイックチェイサーhMPV』

【感染経路・感染率】

ヒトメタニューモウイルス感染症の感染経路は、感染者の咳や飛沫がついたものに触れることです。

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)の感染確率は、2歳までに約30%、5歳までに約75%、10歳までにほぼ100%と言われていて、感染力が強いウイルスで発症は繰り返されます。

【予防】

ヒトメタニューモウイルス感染症の感染対策としては、手洗いやマスクの着用など、飛沫感染および接触感染対策が重要です。

家庭内に感染者がいる場合は、食器やタオルを分けて使用しましょう。




 

2025年1月19日日曜日

インフルエンザ予防薬とは

 インフルエンザの大流行が続いていますので、今回はインフルエンザ予防薬に付いて解説させていただきます。

【インフルエンザ予防薬とは】

服用することで、発症を予防したり、発症しても症状を軽くする効果が期待される薬です。

【予防薬の働き】

インフルエンザウイルスが体内に侵入しても、予防薬を服用することで、ウイルスが増殖するのを抑え、病気にかかりにくくする効果があります。

【予防薬の種類】

主な予防薬には、タミフル、リレンザ、イナビルなどがありこれらの薬は、吸入型や飲み薬など、さまざまな形で服用できます。

これらの薬は、インフルエンザの治療薬として承認されており、予防効果も証明されています。

【予防効果】

予防薬の効果は、服用するタイミングや、個人の体質によって異なりますが、一般的には、発症を完全に防ぐものではなく、発症を遅らせたり、症状を軽くしたりする効果が期待できます。

【予防接種との違い】

予防接種は、インフルエンザウイルスの一部を体内に注入することで、体内に抗体を作らせ、感染を防ぐ方法ですが、予防薬はすでにウイルスに感染してしまった場合に、その増殖を抑えることで、発症を防ぐまたは症状を軽くする薬です。

【投与方法】

インフルエンザの予防投与は、インフルエンザ患者との接触から48時間以内に抗インフルエンザ薬を服用することで、インフルエンザの感染を予防する方法です。

【利用対象者】

原則、インフルエンザ患者と同居している人や共同生活をしている人で、次の条件にあてはまる人です。

1.65歳以上

2.呼吸器または心臓に慢性的な疾患がある人

3.糖尿病などの代謝性疾患がある人

4.腎機能障害のある人

【注意点】

予防薬薬の投与により、インフルエンザの症状は出にくくなりますが、100%予防できるわけではありません。

また、インフルエンザ患者との接触から48時間(リレンザは36時間)以上経過してからの投与や10日間以上の投与では、予防効果のあるデータが得られていませんので、予防投与はすみやかに決められた期間だけ行う必要があります。

予防効果があるのは、抗インフルエンザ薬を投与している期間のみとなります。

インフルエンザ予防薬は保険が適用されませんので、病院や薬局での支払いは自費(10割負担)となり、医療機関ごとに支払額が異なる点には注意してください。

およその費用の目安

診察費 およそ4000円

薬剤費 5000~6000円

※事前に受診される医療機関にお問い合わせください※

【参考資料】

『抗インフルエンザウイルス薬に関するガイドライン 』


2025年1月12日日曜日

季節性インフルエンザと新型インフルエンザの違いとは

 【季節性インフルエンザとは】

ウイルス粒子内の抗原性の違いからA型・B型・C型に分類されています。

A型は原因となる抗原性が小さく変化しながら毎年世界中のヒトの間で流行しています。

症状は38℃以上の高熱、悪寒、関節・筋肉痛などが特徴です。

多くの変異株が存在し、増殖力が速く、しかも感染力が強いので流行しやすいのが特徴です。

B型は突然変異を起こしにくく、A型の様に世界的な大流行を起こすことはありませんが、症状は重く、数年おきに流行して猛威をふるいます。

C型は感染しても軽症で済むことが多く、免疫を持っている人が多いのが特徴です。

【新型インフルエンザとは】

時折インフルエンザウイルスの抗原性が大きく異なるインフルエンザウイルスが現れますが、これを新型インフルエンザといいます。

多くの人が免疫を獲得していないことから、急速にまん延することによって起こる新型インフルエンザは、いつどこで発生するのか誰にも予測することはできません。

新型インフルエンザの代表的なものとしては、

1.1918から1919年にかけて世界的に流行したスペインインフルエンザ

2.1957から1958年にかけて世界的に流行したアジアインフルエンザ

3.1968から1969年にかけて世界的に流行した香港インフルエンザ

4.2009から2010年にかけて世界的に流行した新型インフルエンザA(H1N1)pdm2009

これらの新型インフルエンザウイルスが世界的に流行して、多くの人々が免疫を獲得すると新型インフルエンザではなくなり季節性インフルエンザという呼び方になります。