血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2015年7月7日火曜日

ペプシノーゲン検査

【何を調べる検査なのか】

胃がんのスクリーニング検査として有用な検査のひとつです。

血液中のペプシノーゲンのⅡに対するⅠの割合を調べることにより、胃粘膜の萎縮の広がりとその程度、胃液の分泌機能、胃粘膜の炎症の有無が分かるほか、胃がんのスクリーニング検査として有用な検査方法とされています。

【ペプシノーゲンⅠ、Ⅱとは】

ペプシノーゲンⅠは胃酸の分泌する胃底腺領域に限局しており、ペプシノゲンⅡは、胃酸分泌領域およびガストリン分泌領域にまたがって広くみられます

【検査原理】

ペプシノーゲンは蛋白分解酵素であるペプシンの不活性型前駆体で、血清ペプシノーゲン値は胃粘膜の形態と外分泌機能を反映します。

そして胃酸の働きによってタンパク質を分解する酵素ペプシンにより、胃の分泌される場所によってペプシノーゲンⅠとⅡに分類されます。

※前駆物質は前駆体とも言い、物質代謝ではある物質が一連の反応で別の物質へと代謝される場合,反応のはじめの方により近い物質を,あとの方の物質に対して前駆物質と呼ぶ※

【検査方法】

数mlの血液で検査は簡単にできます。

【検査を受ける際の注意】

胃酸分泌抑制剤の中で、プロトンポンプ阻害剤を内服中の人は、ペプシノーゲンが高値になることからこの検査は適していません。

みぞおちの痛み、嘔吐、血便、体重減少など胃や十二指腸の疾患が強く疑われる症状がある場合は、ペプシノーゲン検査を受けずに、最初から上部消化管内視鏡検査などの精密検査を受けることをおすすめします。

【陰性と陽性の判定基準】

陰性・・・・・・Ⅰ値70以上かつⅠ/Ⅱ比が3以上。

陽性・・・・・・Ⅰ値70未満かつⅠ/Ⅱ比が3未満。

中等度陽性・・・Ⅰ値50未満かつⅠ/Ⅱ比が3未満。

強陽性・・・・・Ⅰ値30未満かつⅠ/Ⅱ比が2未満。

【検査結果の判定】

陽性・・・・胃粘膜に萎縮があると考えられ、萎縮性胃炎、胃がんが疑われます。

※ペプシノーゲン検査単独で胃がんと判定することは出来ないので、上部消化管内視鏡検査などの画像診断との併用が必要不可欠となります※

※陰性でその数値が高い場合には、胃液の分泌が多いと考えられ、胃炎や胃・十二指腸潰瘍、ヘリコバクター・ピロリの感染が疑われます※

※ヘリコバクター・ピロリが除菌されると正常値(Ⅰ値70以上、かつⅠ/Ⅱ比3以上)になるので、除菌治療の効果を判定するのに利用されています※

【ペプシノーゲンⅠ/Ⅱ比の欠点】

胃の萎縮と関係なく発症する未分化型腺がんや、間接X線法では容易に診断できる進行がんが逆に見逃されると言われています。

【ペプシノーゲンⅠ/Ⅱ比の欠点を補うには】

ペプシノーゲンⅠ/Ⅱ比でスクリーニングを実施し、陽性になった人は胃カメラによる精密検査を実施します。

陰性者は胃X線検査を受けるという方法が最適であると考えられています。

【何故ペプシノーゲン検査を実施するのか】

慢性萎縮性胃炎は、胃がん発生と密接な関係があることから、慢性萎縮性胃炎は胃がんの高危険群とされています。

その為慢性萎縮性胃炎を的確に診断することが、胃がんの早期発見と早期診断の向上に有効となります。

要するにペプシノーゲン法によるスクリーニングは、分化型の胃がんのみならず、未分化型の胃がんも数多く発見できる利点があるということです。

2015年6月24日水曜日

膠質反応について-3.ZTT-

【ZTTとは】

Zinc sulfate turbidity test (硫酸亜鉛混濁試験)の頭文字を取った検査です。

【ZTTは何を調べる検査】

肝硬変などにより肝機能が低下すると、血清たんぱくのうちアルブミンが低下し、γ-グロブリンが上昇します。

γ-グロブリンが増加すると、肝臓の線維化、慢性肝炎や肝硬変に進展していることが疑われるため、この検査を実施してその程度を調べることができます。

γ-グロブリンの中のIgGとIgMと相関します。

ZTTは肝臓疾患を見つけるための検査というよりも、すでに慢性肝炎や肝硬変を発症した人の経過観察で、肝臓の症状が改善されているかどうかを確認するための指標によく用いられます

【どのようにして検査するのか】

検査前日の夕食の後は絶食し、翌日の空腹時に採血をし、血液を遠心分離し得られた血清成分に検査試薬の硫酸亜鉛バルビタール緩衝液を加えてその混濁の程度を測定することにより、IgGの量を測定します。

【基準値】

2~12 U(Kunkel単位)

※免疫機能の活性と比例するので、免疫機能を抑制する副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)や抗がん剤を長期投与していると、ZTTの数値は低くなります※

※基準値は医療機関によって異なる場合があります※

【異常値と疑われる疾患】

高値:高脂血症、急性及び慢性肝炎、自己免疫性肝炎、肝硬変、肝細胞がん、慢性炎症、膠原病など

低値:脂肪肝、胆汁うっ滞症、ネフローゼ症候群、糸球腎炎、骨髄腫、無グロブリン血症、糖尿病、

【異常が見られたら】

特異性が低い検査ですから、異常値となった場合には蛋白分画やAST、ALT、LDH、ALPなどの肝機能検査やCRP、抗核抗体、IgM-HA抗体など関連する検査を実施して総合的に判断します。

血液検査の前日に脂肪分の多い食事を取った場合にはγ-グロブリンが増加しやすくなり、数値が高くなる傾向があります。

【ZTTでHIV感染の判断はできるのか】

この検査は、血清中のγ-グロブリンの増加の度合いを調べる検査ですから、HIV感染に特異的な検査ではないのでHIV感染の判断には利用できません。


HIVに感染して肝機能障害やリウマチ,膠原病などがないにも係わらず,ガンマグロブリンの値やZTTの値が高値になる場合がありますが、ZTTの値が高値になったからHIVに感染しているとはいえません。

HIV感染の判断は適切な時期にHIV検査を受けないと分かりません。

2015年6月11日木曜日

膠質反応について-2.TTT-

【TTTとは】

Thymol Turbidity Test(チモール混濁試験)の頭文字を取った検査です。

【TTTは何を調べる検査】

ガンマーグロブリン(特にIgM、IgG)の増加やアルブミンの減少及び脂質の増加と相関し、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、多発性骨髄腫などで上昇します。

特にA型急性肝炎で極めて高い数値を呈します。

従って肝機能のスクリーニング(ふるい分け)検査のひとつとして実施されます。

【どのようにして検査するのか】

検査前日の夕食の後は絶食し、翌日の空腹時に採血をし、血液を遠心分離し得られた血清成分に検査試薬のチモールを加えて血清中のガンマーグロブリンとベータグロブリンが混濁するの量(混濁)する度合いを調べます。

グロブリンや脂質及びリポタンパクなどが増加すると混濁度が増しますが、アルブミンが減少すると混濁度が下がるので、グロブリンとアルブミンの量的な比率と変化を測定する事ができます。

【基準値】

0~4U以下(Maclagan単位)

※男女差があり、男性のほうが少し数値が高めですが、妊娠中あるいは更年期の女性になると男性とほぼ同等以上の数値となります※

※基準値は医療機関によって異なる場合があります※

【異常値と疑われる疾患】

高値・・・・・A型肝炎、慢性活動性肝炎、高脂血症、膠原病、脂肪肝、多発性骨髄腫、肝硬変など

低値・・・・・栄養不良、転移性肝がん

【異常が見られたら】

特異性が低い検査ですから、異常値となった場合には蛋白分画やAST、ALT、LDH、ALPなどの肝機能検査やCRP、抗核抗体、IgM-HA抗体など関連する検査を実施して総合的に判断します。

血液検査の前日に脂肪分の多い食事を取った場合にはガンマグロブリンが増加しやすくなり、数値が高くなる傾向があります。

【TTTでHIV感染の判断はできるのか】

TTTはHIVの感染の判断が出来るのかと質問を受けますが、

この検査は、血清中のガンマーグロブリンの増加の度合いを調べる検査ですから、HIV感染に特異的な検査ではないのでHIV感染の判断には利用できません。


HIVに感染して肝機能障害やリウマチ,膠原病などがないにも係わらず,ガンマグロブリンの値やTTTの値が高値になる場合がありますが、TTTの値が高値になったからHIVに感染しているとはいえません。

HIV感染の判断は適切な時期にHIV検査を受けないと分かりません。

2015年6月3日水曜日

膠質反応について-1.総論-

【膠質反応とは】

血清アルブミンとガンマーグロブリンの増加を調べる検査です。

【膠質反応は何を調べる検査】

肝機能検査のスクリーニング検査として使用されます。

ガンマーグロブリンが増加すると、肝臓の線維化・慢性肝炎・肝硬変に病態が進展していることが疑われるために膠質反応を調べることにより病気の程度を調べられる検査です。

【どのようにして検査するのか】

検査前日の夕食の後は絶食し、翌日の空腹時に採血をし、血液を遠心分離し得られた血清成分に検査試薬を加え、その混濁する具合を調べます。

【血清とは】

血液を採取して、遠心分離すると試験管の底には血液が固まりその上層部に黄色い液体が得られます。

これが血清です。

生化学検査の多くはこの血清を用いて検査を行います。

【異常が見られたら】

膠質反応の検査だけでは、診断を確定できないので、GOT・GPT、γ-GTP、ALP、LDH、血清総たんぱく分画、γ-グロブリン、コレステロールなどの測定も行ない、肝臓の病気かどうかを確かめます。

【膠質反応の種類】

ZTT(Zinc sulfate Turbidity Test:硫酸亜鉛混濁試験)とTTT(Thymol Turbidity Test:チモール混濁試験)があります。

※次回からZTT及びTTTについて紹介します※

2015年5月16日土曜日

HIV感染による初期症状について

HIVに感染した時の初期症状についてよく質問されますので、臨床検査とは直接的には関係ありませんが紹介しておきます。

【いつ頃現れるのか】

HIVに感染してから通常2~6週以内に現れます。

【HIVに感染した人全てに現れるのか】

感染した人の約半数から2/3に、これらの症状が起こることがあります。

 全ての感染者にこのような症状が現れるとは限りませんし、全く症状の現れない人もあります。

【初期症状はどのくらい続くのか】


大部分が数日で治り消失しますが、2週間程度続くこともあります。

また症状の続く期間は人によりまちまちです。

【初期症状が収まった後に再度初期症状が出ることがあるのか】

HIVに感染して感染初期に出るから"初期症状"と言います。

初期症状が出て、消失した後に再度初期症状は出ることはありません。

【初期症状が出なければHIVに感染していないのか】

HIVに感染して初期症状が全く出ない人もありますし、出ても軽く気づかない人もあります。

初期症状は何もしなくて放置しておいても自然に消失しますから、初期症状が出ないからHIVに感染していないとは絶対に言えません。

【主な初期症状の一覧】


【初期症状でHIVの感染は判断できるのか】

上記の症状はHIVに感染していなくても他の感染症でも出ますから、これらの症状だけでHIVの感染の判断はできません。

※HIV感染の判断は、適切な時期に適切なHIV検査を受けないと分かりません※




2015年4月20日月曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-7.セロディア・HIV-1/2について-

【セロディア・HIV-1/2とは】

HIV-1抗体およびHIV-2抗体検出用試薬です。

【販売メーカ】

富士レビオから販売されています。


【検査原理】

ゼラチンを粒型化した人工担体に不活化処理HIV-1抗原および不活化処理HIV-2抗原をそれぞれ吸着させ、これらの感作粒子が検体中のHIV-1抗体またはHIV-2抗体と反応し、凝集することを応用した粒子凝集反応法(PA法:Particle Agglutination Test)検査です。
【検出抗体】

ヒト血液中のHIV-1抗体とHIV-2抗体を区別して検出出来ます。

【特異性】

非常に高い特異性を有することからヒト血液中のHIV-1抗体とHIV-2抗体を区別して検出できます。

【非特異反応の出現率】

ゼラチン粒子に対して非特異的に反応をするヒトがいることから、0.03%以下の偽陽性反応が見られます。

【検出可能なグループとサブタイプ】

HIV-1の以下のタイプに対する抗体は全て検出可能

グループM(サブタイプA~H)

グループ0

グループN

HIV-2のサブタイプA~Gに対する抗体は検出可能

【日本での普及率】

HIV抗体スクリーニング検査で陽性となった場合、HIV-1抗体とHIV-2抗体のどちらを有するかを検査して、HIV-1またはHIV-2の感染であることを区別する目的で利用されている。

【判定基準】

・陽 性 

未感作粒子の反応像の読みが(-)で、HIV-1感作粒子またはHIV-2感作粒子の反応像の読みが(+)以上を示すものを陽性と判定。

・陰 性 

未感作粒子の反応像の読みが(-)で、HIV-1感作粒子またはHIV-2感作粒子の反応像の読みが(-)を示すものを陽性と判定。

・判定保留

未感作粒子の反応像の読みが(-)で、HIV-1感作粒子またはHIV-2感作粒子の反応像の読みが(±)を示すものを判定保留判定。

・非特異反応

未感作粒子の反応像の読みが(+)で、HIV-1感作粒子またはHIV-2感作粒子の反応像の読みが(+)又は(-)を示すものを非特異反応として判定保留判定。

※判定保留又は非特異反応の場合は、再度検査を実施する※

【結果判定】

1.HIV-1感作粒子とHIV-2感作粒子が共に陽性:HIV-1とHIV-2の感染。

2.HIV-1感作粒子のみが陽性:HIV-1の感染。

3.HIV-2感作粒子陽性:とHIV-2の感染。

4.HIV-1感作粒子とHIV-2感作粒子が共に陰性:HIV-1とHIV-2の感染は無し。

※HIV-1とHIV-2陽性の確認は、ウエスタンブロット法などの異なる専用試薬で再検査を実施する※

【利用上の注意】

セロディア・HIV-1/2は、HIV-1とHIV-2の感染を区別する検査ですから、HIV抗体のスクリーニング検査としては利用できません。

あくまでもHIV抗体のスクリーニング検査で陽性となった場合に初めて使用して、HIV-1とHIV-2のいずれかに感染しているかを判断するために使用する検査法です。

2015年4月9日木曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-6.もうひとつのリアルタイムPCR検査 アキュジーン m-HIV-1について-

HIV検査のPCR検査は、リアルタイムPCR検査がよく知られていますが、現在わが国で
実施されているもう一つのPCR検査の"アキュジーン m-HIV-1"について解説してみます。

【アキュジーン m-HIV-1とは】

HIV-1 RNAを定量的に検出するRT-PCR法(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)を用いた検査です。

【販売メーカ】

アボット社が販売しています。

【最小検出感度】

検体量0.6ml→40コピー/ml

検体量0.5ml→75コピー/ml

検体量0.2ml→150コピー/ml

【測定範囲】

40コピー/ml~10の7乗コピー/ml

【特異性】

100%

【非特異反応の出現率】

おそらく0%

【検出可能なグループとサブタイプ】

HIV-1の以下のタイプは全て検出可能

グループM(サブタイプA~H)

グループ0

グループN

※HIV-2は検出できない※

【HIV-1 グループPは検出可能なのか】

メーカはグループPでの検出検討をしていないのでコメントできないとの回答

現実グループPで検査を行わないと検出出来るか否かは不明です。

【検査はどのようにするのか】

アボット社のAbbott m2000rtアナライザーを使用して全自動で検査を行います。

【アキュジーン m-HIV-1はリアルタイムPCR検査なのか?】

リアルタイムPCR検査です。

【TaqMan HIV-1「オート」の比較】

感度、特異性、検出可能なHIV-1はTaqMan HIV-1「オート」と同じ。

【日本での普及率】

日本国内では、TaqMan HIV-1「オート」が先行販売されたことから、後発販売となったアキュジーン m-HIV-1の普及率は低いのが現状です。