欧州疾病予防管理センター(ECDC)の2026年8月21日の発表によると、今年、欧州の12か国において蚊媒介性感染症である「ウエストナイル熱」の市中感染(国内感染)が確認されました。
今回は、このウエストナイル熱の医学的・疫学的特徴について、最新の報告をもとに分かりやすく解説します。
1. 欧州で広がる感染拡大の現状
ECDCのデータによると、今年の市中感染はアルバニア、オーストリア、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、コソボ、オランダ、北マケドニア、ルーマニア、セルビア、スペインの12か国、99地域で確認されています。
そのうち21地域では初めての市中感染が報告されました。
前年同期の9か国67地域からさらに範囲が広がって国別の症例数では、イタリアが311例で最多となり、次いでギリシャの157例が続いています。
また、ウイルスを媒介するイエカはすでに欧州全域に広く生息しているほか、デング熱やチクングニア熱を媒介する外来種のヒトスジシマカも、12年前の2倍となる16か国で定着が確認されています。
感染例の多くは晩春から秋にかけての「蚊のシーズン」に発生し、7~9月にピークを迎えます
2. ウエストナイル熱の医学的特徴と症状
ウエストナイルウイルスに感染した人の約8割は無症状ですが、発症した場合には以下のような経過をたどります。
・発症した場合、初期にはインフルエンザに似た症状が現れます。
・重症化すると、高熱、震え、昏睡、さらには脳炎・脳脊髄炎などの深刻な神経症状を引き起こします。
3. ワクチンや治療法の現状
世界保健機関(WHO)によると、現時点においてヒト用の承認済みワクチンや特効薬は存在しないため、治療は対症療法に限られています。
4. 今後に向けた対策とアプローチ
ECDCで食品媒介・水系・ベクター媒体・人獣共通感染症の責任者を務め責任者は、ウイルスの感染拡大と外来種の蚊の拡散を防ぐため、欧州各国が蚊の防除能力を強化しなければならないと指摘しています。
効果的な蚊の防除に向けては、以下のような統合的なアプローチが必要とされています:
1)欧州域内での密接な協力
2)蚊の監視体制の強化
3)地域社会の積極的な関与
4)環境への影響を考慮した、標的を絞った蚊の防除の組み合わせ
【追加の話】
日本では2026年8月現在までウエストナイル熱の感染例は報告されていません。
ウイルスを媒介する蚊や野鳥は国内にも存在しますが、国内での常在や流行は確認されていませんが、北米やヨーロッパ、中東などへの渡航時には注意が必要です。
◎流行の可能性を否定できない3つの理由
1)媒介する蚊が日本に広く生息しているウエストナイルウイルスを媒介する「アカイエカ」や「ヒトスジシマカ(ヤブカ)」は、日本のどこにでもいるごくありふれた蚊が生息している。
2)ウイルスを運ぶ鳥が豊富にいるウイルスは「蚊 ⇄ 鳥」の間で維持されて増殖し、日本にはカラスやスズメ、ハトなど、ウイルスを保有しやすい鳥が数多く生息しています。
3)国際的な人や物の移動が激しい海外の流行地域(アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、中近東など)から、飛行機や船のコンテナ等に紛れ込んだ蚊、あるいは潜伏期間中の渡航者を介してウイルスが日本に持ち込まれるリスクはゼロにできません。
現状、過度に恐れる必要はありませんが、海外の流行地域へ渡航する際は虫よけ対策を徹底してください。
【参考資料】

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