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2021年3月7日日曜日

新型コロナウイルスについて-16.新型コロナワクチンに対する日本感染症学会からのCOVID-19ワクチンに関する提言-

 2021年2月よりわが国でも遅ればせながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が始まりました。

これを受けて2021年2月26日、「日本感染症学会」は、『COVID-19ワクチンに関する提言」(第2版)』を同学会のホームぺージで公開してます。

この提言の内容について解説してみます。

第1版は既に2020年12月28日に発表され、ワクチンの開発状況・作用機序・有効性・安全性・国内での接種の方向性そして接種での注意点などが提言されています。

今回は、特にワクチンの有効性(変異株も含む)、ワクチンの安全性などに大幅に加筆が加えられ更に筋肉内注射に関する注意点の項目が新しく追加されています。

まずはワクチンの有効性についてですが、

○COVID-19ワクチンの有効性の追加についてですが、

(1)ファイザーの臨床試験として、55歳以下で95.6%、56歳以上で93.7%、65歳以上で94.7%の有効率が認められたとしています。

しかし、75歳以上では対象者数が十分でなく評価できていないと述べています。

(2)モデルナの臨床試験結果としては、65歳未満で95.6%、65歳以上で86.4%の有効率が認められたとしています。

しかしそれ以上の年齢層では評価されていないとも述べています。

(3)アストラゼネカの臨床試験結果としては、接種群における70歳以上の割合は5.1%にすぎず評価不十分と述べています。

※これらをまとめますと、いずれのワクチンも、75歳を超える高齢者での有効性については今後の検討課題であり、接種群で基礎疾患のある人の割合は、ファイザーの臨床試験で20.9%、モデルナで27.2%、アストラゼネカで24.7%と比較的多く含まれているものの、それぞれの基礎疾患ごとの有効性の評価は十分ではなく、今後検討が必要と結論づけています※

一番気になる変異株とワクチンの効果についてですが、

この提言では「SARS-CoV-2の変異速度は24.7塩基変異/ゲノム/年とされており、2週間に約1回変異が起き、その変異によってウイルスのタンパク質を構成するアミノ酸に変化が起こることがある」とされ、「とくにスパイクタンパク質のACE2との結合部位近くのアミノ酸配列に変化が起きると、SARS-CoV-2の感染性(伝播性)やワクチンで誘導される抗体の中和作用に影響が出る」と述べられています。

更にイギリス変異株については、「感染力(伝播力)が36%から75%上昇すると推定されているものの、ファイザーのワクチンで誘導される抗体による中和作用には若干の減少がみられるが、ワクチンの有効性には大きな影響はない」と述べられています。

南アフリカおよびブラジルの変異株は、「COVID-19回復期抗体の中和作用から回避する変異であることが報告され、ワクチンの有効性に影響が出ることが懸念されている」と述べられています

ワクチンの安全性について

海外の臨床試験では、「活動に支障が出る中等度以上の疼痛が、1回目接種後の約30%、2回目接種後の約15%に、日常生活を妨げる重度の疼痛が、1回目で0.7%、2回目で0.9%報告された」と紹介されています。

「この接種後の疼痛は接種数時間後から翌日にかけてみられるもので、1~2日間ほどで軽快。注射の際の痛みは軽微と思われる」と推定しています。

そして、海外での高齢者や基礎疾患を有する者への接種では、「現在のところ死亡につながるなどの重篤な有害事象は問題になっておらず、COVID-19に罹患して重症化するリスクに比べるとワクチンの副反応のリスクは小さいと考えられる」と考えを呈しています。

一方日本国内での臨床試験における有害事象につていは、ファイザーのCOVID-19ワクチン「コミナティ筋注」では、海外での臨床試験の結果と比べ、「局所の疼痛、疲労、頭痛、筋肉痛、関節痛はほぼ同等、悪寒の頻度がやや高くなっていると述べられています。

発熱に関しては、37.5℃以上対象(国内定義/海外定義は38℃以上)で1回目が10%、2回目が16%と高い頻度で認められたが、発熱者のほぼ半数を37.5~37.9℃の発熱が占めているため、その割合は海外の結果と大きな違いはなかったと述べられています。

・mRNAワクチンによるアナフィラキシーに関して、

 1回目接種直後のアナフィラキシーの報告について、米国での当初の調査では、「100万接種あたりのアナフィラキシーの頻度が、ファイザーのワクチンで11.1、モデルナのワクチンで2.5と、すべてのワクチンでの1.31に比べて高くなっている。

両ワクチンのアナフィラキシーに関する報告をまとめると、女性が94.5%を占め、アナフィラキシーの既往をもつ者の割合は38.7%、接種後15分以内に77.4%、30分以内に87.1%が発症している。

その症状は、ほとんどが皮膚症状と呼吸器症状を伴うもので、アナフィラキシーショックを疑わせる血圧低下は1例のみであった。

なお、その後の米国の調査で、アナフィラキシーの頻度は両ワクチン合わせて100万接種あたり4.5と報告されています。

この提言では、ワクチンの有効性と安全性を評価したうえで、ワクチン接種を望む一方で、「ワクチン接種を受けることで安全が保証されるわけではなく、接種しても一部の人の発症、無症状病原体保有者として人に感染を広げる可能性があること」についても注意をうながし、COVID-19の蔓延状況が改善するまでは、マスク、手洗いなどの基本的な感染対策の維持を推奨しています。

日本感染症学会の提言の全文は以下を参照してください。

  ↓

日本感染症学会



2021年2月28日日曜日

新型コロナウイルスについて-15.その2.二重マスク着用は二重かどうかよりも「フィットするかどうか」が重要-

前回の続きです。 

今回の実験の結果からは"二重がマスク最高!"ということではなく、飛沫が入り込む隙間をいかに減らすかが重要である、ということが理解できると思います。

二重マスクをする理由は「両端の隙間をなくしフィットさせるための方法」としてのものですので、重ねれば良いというものではありません。

1. マスクはノーズワイヤー(マスクの上部に沿った金属片)付きのものを選ぶ。

ノーズワイヤーを鼻の上で曲げて顔に密着させることで、マスク上部からの空気の漏れを防ぎます。

2. マスクフィッターやブレースを使用する。

サージカルマスクなどの使い捨てマスクや布製マスクの上にマスクフィッターやブレースを使用して、マスクの端の周りに空気が漏れないようにします。

3. 鼻、口、顎の上にぴったりとフィットすることを確認することが重要です。

マスクの両端に手を当てて隙間がないか確認してください。

目の近くやマスクの側面から空気が流れていないことを確認してください。

結論としては、顔にフィットさせるために二重マスクを使用することは浴びる飛沫の量を減らすためには有効なようです。

小顔の方は参考にして良いでしょう。

ただし、通常のマスク着用でも十分な効果が確認されています、これを二重マスクにしてよりフィットさせることでどれくらい実際の感染者が減るのかは未知数なのです。

実際には感染リスクは「マスクなし⇒⇒⇒マスク1枚⇒二重マスク」と考えられますので、二重にするかどうかよりも、会食などのマスクを装着していない場面での感染リスクをいかに減らすかの方が重要となるのです。

また、今は冬なので問題ないですが、夏に二重マスクをすれば熱中症のリスクも高くなるのではないかと推測されます。

マスク着用が推奨されるのはいまのところ換気が不十分となりやすい屋内や混雑した場面のみであり、人との距離が十分に保たれている場合は屋外でのマスク着用は推奨されていません。

メリハリをつけてマスクを装着するようにしましょう。


2021年2月21日日曜日

新型コロナウイルスについて-14.その1.二重マスク着用は感染防御効果大!!??-

 2021年2月10日、米国疾病予防管理センター(CDC)は二重マスクの効果に関する研究結果を発表し、これを受けて各メディアは 米国疾病予防管理センターは二重マスクを推奨と報じましたが、これは本当にマスク二重にした方が良いのでしょうか?

この事について分析してみます。

要するにこの論文は、着用時マスクをフィットさせることの重要性を強調しています。

ここで検証された三種類のマスクとは、

1.普通のサージカルマスクで、両側に隙間ができていることが強調されています。

2.二重マスクで、サージカルマスクの上に布製マスクを覆うことにより隙間がなくなっています。

3.結び目マスク(本文中では"knotted/tucked mask")で、両側に結び目を作ることで隙間をなくしています。

この三種類のマスクを使用して飛沫を排出する側と飛沫を浴びる側がそれぞれマスクを着けた場合、着けなかった場合の飛沫を浴びる量を比較しています。

この結果、排出する側/浴びる側がどちらもマスクを装着していた場合、普通のマスクではマネキンが浴びる飛沫の量が84.3%減ったのに対し、二重マスクでは96.4%、結び目マスクでは95.9%減ったとのことです。

確かに二重マスクと結び目マスクでは、普通のサージカルマスクよりも飛沫を浴びる量が減るようです。

普通のマスクの84.3%という結果も立派なものだとは思いますが・・・。

【つづく】

2021年2月14日日曜日

新型コロナウイルスについて-13.抗体依存性感染増強(Antibody-dependent enhancement:ADE)とは-

ワクチンの接種などにより起こりうる現象で、「抗体依存性感染増強(ADE)」と呼ばれます。

本来、ウイルスなどから体を守るはずの免疫抗体が、免疫細胞などへのウイルスの感染を促進し、その結果ウイルスに感染した免疫細胞が暴走し、あろうことか症状を悪化させてしまうという現象です。

それではこの抗体依存性感染増強はどの様なメカニズムで発生するのでしょうか?

抗体依存性感染増強の詳細なメカニズムについては、現時点では明らかになっていないことが多いのが現実です。

詳しい原因は不明で、中途半端な抗体ができたためともいわれています。

ただこれまでに、複数のウイルス感染症で抗体依存性感染増強に関連する報告がなされています。

実例をあげますと、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)に対するワクチンの研究では、フェレットなどの哺乳類動物にワクチンを投与した後、ウイルスに感染させると症状が重症化したとの報告があり、この現象は抗体依存性感染増強と考えられています。

人の免疫機構としては、抗体というたんぱく質を作ることで病原体に直接作用して生体を守る機能と、免疫細胞に取り込ませて処理をさせる液性免疫と、リンパ球などの免疫細胞が病原体に感染した細胞を処理する仕組みである細胞性免疫が存在していて、この機能によって人はウイルスなどの病原体から体を守っています。

これらの免疫は、本来はウイルスなどの病原体に感染した時の体の防御システムであり、再びと同じ病原体にかからないようにする仕組みです。

ワクチンはその仕組みを使っているのです。

ワクチン接種による大きな懸念として抗体依存性感染増強があるのです。

過去のワクチン開発でも動物実験のレベルでこの抗体依存性感染増強が発症して開発中止となった例もあります。。

免疫反応を確認しながらワクチンは開発されることから、その分だけ時間がかかります。

また上記のようにウイルスに対する抗体も、その機能を確認したうえで判定する必要があります。

抗体があるからといって、一概に安全とは言えないのです。

抗体依存性感染増強のように生体を危険にする抗体もあるということです。

2021年2月7日日曜日

新型コロナウイルスについて-12.各種マスクの予防効果について-

 ・不織布マスク

吐き出し飛沫量カット 80%

吸い込み飛沫量カット 70%

・布マスク

吐き出し飛沫量カット 74%

吸い込み飛沫量カット 40%

・ウレタンマスク

吐き出し飛沫量カット 50%

吸い込み飛沫量カット 35%

・フェイスシールド

吐き出し飛沫量カット 20%

吸い込み飛沫量カット 小さい飛沫に対しての効果はなし(エアゾルは防げない)

・マウスガード

吐き出し飛沫量カット 10%

吸い込み飛沫量カット 小さい飛沫に対しての効果はなし(エアゾルは防げない)

※各専門家・専門機関のデータから算出した平均値※

マスクの素材によって防御効果に差がかなりありますが、使用する場所や注意点を守れば問題はないと専門家も指摘しています。

不織布マスク以外は一切認めず、その他のマスクは認めないというのは間違いです。

不織布マスク以外は一切認めないという根拠は、理化学研究所などの研究チームが行ったスーパーコンピューター「富岳」のシミュレーションが影響しているようです。

確かに不織布に比べウレタンや布のマスクは飛沫の遮断性能が劣りますが、フェースシールドやマウスガードほどではなく、理研の担当者は「特徴の差で、使うなという意味ではない」と強調していることを理解する必要があります。

結論としては、どれも一般的な使用なら問題は無く、密な場所や病院など、より注意が必要な場所では不織布マスク、換気の良い場所で長時間使う場合はウレタンマスクと使い分けをすれば良いことです。

鼻を覆わないなど誤った着用で性能は大幅に低下することの方が重要で、材質より正しく使う方が大切です。

注意することとしてはウレタンマスクは繰り返し力が加わったりすると劣化するため、多くの製品で洗濯回数に制限が明記されていますからよく説明書を読んで使用してください。

何度も洗濯すると、見た目はきれいであってもフィルターの能力が落ち感染予防には役に立ちませんので注意が必要です(説明書に記載されている洗濯回数が来れば新品に交換)。

2021年1月31日日曜日

新型コロナウイルスについて-11.変異株と変異種の違いとは-

変異株と変異種とは全く概念が異なります。

変異株を説明する前に突然変異について解説しておく必要があります。

突然変異はすべての生物において、遺伝子の複製過程で一部読み違えや組み換えが発生し、遺伝情報が一部変化する現象です。

突然変異の結果、新しい性質を持った子孫ができることがあります。

この子孫のことを変異株と呼びます。

変異株そのものは、変化した遺伝情報の影響を受けた一部の性質が変化していますが、もともとの生物の種類は変化していません。

従って変異株は、同じウイルスの複製産物に過ぎないことからして、ウイルスの名称は変化しません。

英国や南アフリカで新たに発見された新型コロナウイルスは、突然変異によるこウイルスの変化したものですから変異種ではなく変異株ということになります。

一方変異種とは、極まれに近縁の生物種の間で多くの遺伝子組み換えが起きると、ふたつの生物種の特徴を併せ持った新しい生物種が誕生することがあります。

これを変異種と呼称します。

この場合は、新型のウイルスが誕生することになるので、新しいウイルスの名前が与えられることになります。 

2021年1月27日、日本感染症学会は報道機関向けに声明を発表し、新型コロナウイルスの"変異株"を"変異種"と表記しているメディアに対して「これは学術的には誤用となりますので、今後は変異"株"と正しく表記していただきたくお願い申し上げます」と要望しています。 

2021年1月24日日曜日

新型コロナウイルスについて-10.ネットで販売されている新型コロナウイルス抗体検査についてのご注意-

 現在ネットを見ると、新型コロナウイルス抗体検査キットは数多く販売されています。

これらの検査キットの説明文には「15分で自宅にいながらすぐに結果が陽性か陰性かがわかる」、「病院に検査しに行って逆に感染するリスクをなくせます」と、紹介されています。

そもそも抗体検査キットは、体内にウイルスの抗体があるかどうかを調べるもので、PCR検査のように感染の有無を診断するものではありません。

これら抗体検査キットは、研究用試薬で、感度や特異性がはっきりわかっていません。

厚生労働省も抗体検査キットについて、「研究用試薬で精度がわからない」として注意を呼びかけています。

また、2020年12月時点、厚生労働省によって医薬品として承認されている抗体検査キットは存在していません。

抗体検査キットで感染を正確にリアルタイムで知るのは無理なのです、なぜなら血液の中に感染を示す抗体があるなしの判定しかできません。

感染して、まだ症状が出始めた時、そういう感染初期の早い時期にはまだ抗体はてきていませんし、仮にできていても量が少ないことから検査は陽性にはなりません。

こたこのキットで検出された抗体の種類は、

1.感染したことを示す感染抗体

2.感染を防ぐ感染予防抗体(中和抗体)

の区別をすることができません。

抗体検査で感染を正確にリアルタイムに知ろうということは、不可能なのです。

現在巷で売られている抗体検査キットは、信頼性はないと考えて利用することを控えるべきです。

【追加】

新型コロナウイルスの抗体検査キットをウイルス感染の判定に利用できるとうたって販売したのは景品表示法に触れる恐れが強いとして、消費者庁は2020年12月25日、業者6社に表示の修正を求める行政指導を行った。

同庁は「抗体検査は感染歴の傾向を調べる疫学調査目的では利用されているが、感染判定には適さない」と強調し、販売している6社の商品は認可を得ていないことなどを説明しておらず、消費者が誤解する恐れが強いとした。

※これらのキットいずれも中国製で、抗体の有無をきちんと判定できる保証もないという※

感染拡大を受け、ネット上では安価な抗体検査や無認可のPCR検査、抗原検査のキットも多く販売されている。

同庁担当者は「偽陽性や偽陰性の判定で感染拡大や医療逼迫(ひっぱく)を加速させかねない。必要な場合に限り、医療機関で検査してほしい」と話している。