血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2013年6月17日月曜日

臨床検査における感度と特異度について-1.感度について-

臨床検査でよく使用される「感度」と「特異度」について解説します。

臨床検査における感度とは、"陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率"として定義されています。

いわゆる感度が高いという事は、"陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する可能性が高い"、または"陽性と判定されるべきものを間違って陰性と判定する可能性が低い"という意味にほかなりません。

これを具体的に解説しますと、

あるHIV検査キットを用いて100人のHIV陽性者の検査を行った場合、

このHIV検査キットで100人をすべて陽性と判定出来た場合、このHIV検査キットは感度100%と言うことになります。

90人を陽性として10人を陰性とすれば、本来陽性と出ないといけないものを陰性とした訳ですから、感度90%となります。

この場合どちらの検査キットを使用するかと言うと、当然感度100%の検査キットを使用することになります。

特にHIVなどの感染症の感染判断をする検査キットは、感染者を一人でも見逃すことができませんので、感度100%の検査キットしか採用することはできません。

要するにどのようなスクリーニング検査キットにおいても、使用するキットは真の感染者(陽性)をひとりも見逃すことのない検査キットが必要とされます。

感度99%のスクリーニング検査キットは使用することはできません、実際感度99%のスクリーニング検査キットは、日本においては認可されることはありません。

※感度100%のスクリーニング検査キットでも、その検査を受ける最適な時期に受けないと感度100%とはなりません※

【例】

HIV迅速抗体検査は、不安な行為から12週以降に検査を受ければ、感度100%の結果が得られますが、これを不安な行為から6週に受けてその時陰性となり、以後12週で陽性が確認されても、この検査キットは感度100%ではないとは言えません。

どのような検査キットでも、検査を受ける最適な時期が決められていますから、その時期に検査を受けてこそ感度100%が望めるわけです。

受ける時期を間違えて、この検査キットの感度は100%ではなく80%で低いから使用できないというのは間違いです。

特異度に関しては次回解説いたします。

2013年6月10日月曜日

インフルエンザ迅速検査について

インフルエンザは、日本おいては毎年11月~4月に流行が見られますが、夏場でも流行していることが近年明らかになってきています。

これは、インフルエンザ迅速検査の普及によって明らかになりました。

特に 沖縄県ではここ近年、夏のインフルエンザ流行がほぼ毎年続いています。

咽頭拭い液や鼻腔拭い液などの検体を使って迅速にインフルエンザを診断するキットが2001年の秋に承認され、普及してきています。


この検査キットでは、A型インフルエンザもB型インフルエンザも15分で結果が出るようになっています。

重要なことは、インフルエンザ検査が陰性の場合はインフルエンザではないと断定することはできません。

陽性の場合は、まずインフルエンザと断定して間違いはありませんが、陰性の場合にはインフルエンザであることもインフルエンザ でないこともあり得るのです

特に発病後1日以内は感度が低いためインフルエンザであるのに検査では陰性となる可能性があります

検査が陰性であっても主治医の総合的判断によって、検査は陰性であるが臨床症状や流行状況から考えてどう考えてもこれはインフルエンザと、考えれば発症後48時間以内なら効果のある抗インフルエンザ薬を処方します。

※皮肉なことに抗インフルエンザ薬が効果のないと言われる発病後48時間以降にインフルエンザ迅速検査の陽性率は高いのです※

発熱後24~48時間以内が検査の陽性率も高く抗インフルエンザ薬の効果も期待できる貴重な時間帯と言えます。

発熱したら直ぐに受診してインフルエンザの検査を受けることが最適ではありません。

インフルエンザウイルスの増殖は、発病後2~3日で最高に達し、その後急速に減少し、5~7日で消失することからして、迅速診断キットで陽性になるには、インフルエンザウイルスの量がある程度必要で、ウイルスの量が少ない発病の初期は陰性になりやすくなります。

また、一部ではインフルエンザではないのに陽性にでる場合ことが報告されています。

【インフルエンザ迅速検査の信頼性】

陽性の場合はほぼ100%インフルエンザと診断できるが、陰性の場合は注意を要する。

特に大人は小児よりも陰性に出やすく、また発症初日は陰性になりやすい。

その理由としては、インフルエンザウイルス量が検出できる以下の量であるのであって、インフルエンザではないと断言はできない。

※発症後12時間以内は、ウイルス検出率はかなり悪く、24時間以降の信頼性は高くなります※

2013年6月3日月曜日

尿検査-No.11 尿検査の正しい受け方-

尿検査の正しい受け方について解説しておきます。


1.病院が準備した採尿用紙コップを使用して、必ず名前を確認して下さい。


2.陰部を清潔にしてから採尿します、おりものや雑菌が混入すると間違った結果が出てしまいます。

特に女性の場合は気をつける必要があります。

3.検査前日のセックスは厳禁です、なぜなら精子や雑菌の混入などが尿に混入して誤判定の原因になります。

4.なるべく生理中の検査は避けるべきです、なぜなら尿に生理の血液が混入して誤判定の原因になります。

やむを得ない場合は、担当者に、「生理中」であることを伝えてください。
  
5.出始めの尿は採取しないで排尿して、排尿途中の"中間尿"を採取してください。

最初の尿で尿道のx雑菌を洗い流します。

6.検査に必要な尿の量は、コップの1/3から半分もあれば十分で、最低10cc程度あれば検査は可能です。

7.採尿中にコップの中に陰毛などが入っても手で取らないでください。

手に着いている雑菌が混入しますから。

8.異常値を恐れて水などは絶対に入れないことです。

異常があれば水で薄めても、正常値にはなりませんし、むしろ異常値が出てたいへんなことになります。

9.尿検査を受ける前日から果実や清涼飲料水、ドリンク剤など、ビタミンCを含む物の摂取を控えてください。

尿の定性検査は化学反応を利用したものですから、これらに含まれるビタミンC(アスコルビン酸)が影響して潜血反応や尿糖などを偽陰性(-)にしてしまうことがあります。

2013年5月27日月曜日

尿検査-No.10 尿沈渣-

採尿した尿を5分間低速で遠心分離しますと、尿の液状成分と固形成分とが分離します。

下に沈んだ固形成分を顕微鏡で観察し、赤血球、白血球、尿酸結晶、細胞、細菌などが顕微鏡の一視野の中に幾らあるかを調べる検査が尿沈渣です。

【尿沈渣の目的】

尿沈渣の数の増加や有無を調べて、腎臓などの異常の診断や病状の経過観察を行います。
尿沈渣は、尿タンパク、尿糖、尿潜血などの定性検査で陽性となった場合に実施します。

【尿沈渣で何が分かる】

尿が腎臓でつくられ膀胱や尿路を通って排出される間には、それぞれの上皮細胞など剥がれ落ちて尿中に混入するものを調べることで、腎臓や尿路系の病気の種類や異常部位を推測することができます。

【基準値】

赤血球…1視野に1個以内

白血球…1視野に3個以内

上皮細胞…1視野に少数

円柱細胞…1視野に陰性

結晶成分…1視野に少量

【判 定】

健康人でも、赤血球やその他の固形物がごくわずかは見られますが、数が多い場合はどこにどのような異常があるを判断することができます。

赤血球や白血球が存在すれば出血があると考えられ、白血球が多い場合には炎症が起こっていると考えられます。

また、炎症があると上皮細胞は粘膜などをつくっている細胞剥がれ落ちて尿中に排泄されます。

尿細管に異常があると、腎臓の尿細管を鋳型にして出来た円柱細胞が尿中に排泄されます。

結晶は尿酸などの成分が多い場合に固まって尿中にできます。

【異常が見られた場合】


赤血球の増加:急性糸球体腎炎、腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎、腎腫瘍、腎結石など

白血球の増加:腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎など

円柱細胞の増加:慢性腎炎、糸球体腎炎、腎盂腎炎、ネフローゼ症候群など

上皮細胞の増加:膀胱炎、尿道炎など

結晶成分の増加:腎結石、急性肝炎、閉塞性黄疸、痛風など

細菌:腎・尿路系の細菌感染症など

赤血球や白血球は体調の変化などにより一時的に多くなることもありますから、正確な診断のためには必ず再検査を行ない、再び異常値が見られれば感染症を疑い、細菌培養検査で原因となっている菌を調べます。

その他の異常値では、おもに腎臓内科や泌尿器科で尿中成分の定量検査、尿素窒素、クレアチニン、電解質などの血液検査、超音波検査、X線CT検査、腎盂造影、腎生検などの詳しい検査を実施します。

また、結晶成分が多く肝炎や黄疸が疑われる場合は、肝機能検査やエコー検査を実施します。

2013年5月20日月曜日

尿検査-No.9亜硝酸塩検査-


亜硝酸塩検査とは、尿中に亜硝酸塩が存在するかを調べる検査です。

日常生活において私たちは、主に野菜から硝酸塩と呼ばれる物質を摂取しています。

口から取り込まれた硝酸塩は、主に消化管の上部から体内に吸収され、一部は唾液中に分泌されますが、大部分が腎臓から尿中へ排泄されます。

膀胱炎などの尿路感染症に感染して、尿中に細菌が繁殖していると、硝酸塩は細菌によって還元されて亜硝酸塩へと変化します。

従って、通常時の細菌の存在しない尿中には亜硝酸塩は検出されません。

テステープで尿中の亜硝酸塩の有無を調べることにより、尿路感染症がの有無を判断します。

しかし、すべての細菌が硝酸塩を亜硝酸に還元するわけではありませんので、尿中の白血球の数や尿沈渣の結果を踏まえて総合的に細菌感染の有無の判断を下します。

【参考基準値】

陰性

【陽性の場合】

膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症が疑われます。

【検査時の注意点】

細菌が硝酸塩を亜硝酸塩に還元するには4時間以上必要なことからして、膀胱炎で頻回に排尿を繰り返している場合は、膀胱内に尿が滞留している時間が短く、細菌が亜硝酸塩を作るための時間が不十分のため、尿の中に細菌が繁殖していても陰性となることがあります。

頻回な嘔吐や過度のダイエットによる食物からの硝酸塩の摂取不足があると、尿の中に細菌が存在しても亜硝酸塩が作られる量が少ないため、陰性となることがあります。

細菌感染のない尿を採取してしばらく放置した場合にも、陽性となることがあります。

2013年5月13日月曜日

尿検査-No.8尿潜血反応-


尿潜血反応とは、尿の中に血液が混じっているか否かを調べる検査です。

健康人でも、1日におよそ20000個の赤血球が尿中に排泄されていますが、腎臓や膀胱、尿道などに異常があると尿中の赤血球の量が増加します。

尿中に多くの血液が混ざれば肉眼でひと目で分かります(血尿)が、ごく微量の血液が尿中に混ざっても肉眼では判定できません。

その為にテステープで尿中の血液を調べます。

テステープ検査によって尿中の微量の血液即ち尿潜血反応を調べることができます。

【基準値】


陰性(-)

※健康な人でもわずかに赤血球が尿中に出ることがありますが、テステープ検査では検出されません※

【尿潜血反応が陽性となる原因】

腎臓系の疾患や膀胱における疾患が考えられますが、その原因は多数あり、結石であったり炎症や、時によっては腫瘍がある可能性もあります。

腎臓や尿管、膀胱といった尿の尿路・尿道になんらかの異常が起きている場合ことが考えられます。

腎臓…急性・慢性腎炎、腎結石、腎膿瘍、遊走腎など

尿管…尿管結石、尿管腫瘍、尿管異物など

膀胱…膀胱炎、膀胱結石、膀胱腫瘍など

尿道…前立腺炎、前立腺腫瘍、尿道炎など

その他…白血病などの出血傾向のある病気や溶血性疾患など

※生理中の場合は、尿潜血反応が陽性となりますし、激しい運動後や発熱・過労などにより起こる生理的な血尿や、一部の鎮痛解熱剤や抗生物質、利尿剤を服用している場合でも偽陽性または陽性反応がでる場合がありますが、この場合は問題ありません※

※、女性では生理中のために尿に血液が混じってしまうために起こる血尿などがあり、病的でないものが多くあります※

※乳幼児の血尿は、一般的に7歳くらいになると半数近くの方が尿潜血が陰性となります※

※良性家族性血尿※

遺伝性のもので、腎臓にある糸球体基底膜と呼ばれる膜が生まれつき薄い病気で、
一般的に予後の良い病気です。

【検査時の注意事項】

女性の場合、生理中や生理後数日は経血により尿潜血が陽性となることがありますので、可能であればこの期間は尿潜血の検査は避けるべきです。

テステープ検査では、大量のビタミンC(アスコルビン酸)が尿中に存在すると、偽陰性(実際は陽性でも陰性になってしまう)になることがありますので、尿検査を受ける前日からはビタミンCを多く含む飲料(清涼飲料水やジュースなど)や食物は摂取しないように注意する必要があります。

2013年5月6日月曜日

尿検査-No.7 ウロビリノーゲン-


尿中のスクリーニング検査は、テステープ(試験紙法)による定性法で実施されます。

尿に専用のテステープを浸し、色の変化で判定します。

尿中ウロビリノーゲンは、肝臓や胆のうの機能の異常を診断する尿検査の一種です。

ウロビリノーゲンは、古くなった赤血球が肝臓で分解されてできるビルビリンという成分が胆汁となり腸に排出され、そこで腸内細菌により分解されたものです。

ウロビリノーゲンは、腸から少量吸収され、肝臓でビリルビンとなりますが、すべてがビリルビンとはならず、一部は腎臓から尿中へ排泄されます。

従って健康な人でも微量のウロビリノーゲンが尿中に検出されるのが普通で、多く検出される或いは検出されない場合は異常と判断します。

【便秘・下痢とウロビリノーゲンの関係】

頑固な便秘の場合、便が長時間腸内に停滞しているため、ウロビリノーゲンが吸収される量がふえるために、陽性を示すことがあります。

下痢の場合、腸内の内容物が留まっている時間が短くなり、腸内細菌によってウロビリノーゲンに変換されにくくなるため、陰性を示すことがあります。

【ウロビリノーゲンの生理的変動】

1.年齢による変動

新生児の場合、腸内細菌叢が未発達なためにビリルビンをウロビリノーゲンに変換できないために陰性となります。

2.日内変動

一般的にすべての人は、ウロビリノーゲンが尿中へ排泄される量には日内変動があり、夜間や午前中には排泄が少なく、午後に増加して午後2時~4時頃に排泄量がピークとなります。

【検査の目的】

1.尿のスクリーニング検査として

2.肝障害や胆道系疾患を疑う時

【基準値】

プラスマイナス (±)

※基準値は施設ごとで異なる場合があります※

【ウロビリノーゲンが異常値を示す病態】

1.陽性の場合

胆道が閉塞され、ビリルビンを含む胆汁が腸に排泄されないため陰性となります。

肝疾患(肝炎、肝硬変など)・溶血性貧血・心不全・腸閉塞・過度の便秘など

2.陰性の場合 

※テステープでは判定不能※

重度の肝障害によりウロビリノーゲンの前段階であるビリルビンが作られないため陰性となります。

胆石・胆管閉塞・腎機能障害(高度)・下痢・抗生剤の長期使用など

【検査時の注意事項】

ウロビリノーゲンは、放置しておくと酸化されてウロビリンに変化してしまうので、新鮮な尿で検査する必要があります。

陽性または陰性反応が出た場合は再検査・精密検査受ける必要があります。