血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2020年9月20日日曜日

新型コロナウイルスについて-2.ユニバーサルマスクとは-

 無症状の人も含めてマスクを着用するという考え方をユニバーサルマスク(Universal Masking)と言います。

新型コロナウイルスが流行し始めた当初は、感染予防に役立つというエビデンスがなかったためにマスク着用は日本人以外殆どの国の人は着用してませんでした。

現在ではユニバーサルマスクは、新型コロナウイルスやその他の感染症予防に役立つというエビデンスが大勢を占め、全世界的に感染予防対策にマスクを着用する様になってきています。

しかし正しくマスクを着用しないと意味がありません。

このユニバーサルマスクの考え方が浸透することで、新型コロナウイルス感染師の重症度が下がっているのではないか、一部の専門家が主張しています。

米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)は、2020年7月中旬時点で感染者全体のうち無症候性感染者の占める割合は40%と見積もっていますが、ユニバーサルマスクによってこの比率が80%以上になると主張しています。

専門家の分析によると新型コロナの流行初期には、無症候性感染者の割合は15%程度と見積もられていました。

ダイアモンド・プリンセス号で発生した大規模なクラスターでも無症候性感染者の割合は18%と推測されています。

別のクルーズ船で発生した最近のアウトブレイクイベントの報告では、船内で最初の新型コロナウイルス患者が報告された後、すべての乗客にサージカルマスクが配布され、すべてのスタッフにN95 マスクが提供されています。

その結果最終的に乗客乗員217人のうち128人が感染しましたが、船内の感染者の大多数(81%)は無症状のままだったとのことです。

しかし、こうした無症候性感染者の比率は、集団の平均年齢や基礎疾患を持つ人の割合などが関連する可能性があり、一概にマスクの効果とは言えない場合もあり得ます。

マスク着用が全面的に表に出すぎて、着用できない乳幼児や基礎疾患を持つ人にまで強制的にマスク着用を押し付けるのは間違いです。


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2020年9月13日日曜日

新型コロナウイルスについて-1.飛行機の中でのマスク着用は必要なのか?!

医学的に考えても飛行機の中では、マスクの必要はないと考えられています。

その理由としては、航空機では一般的に客室の空気は2~3分ごとに完全に入れ替わっています。

空気を50%は機外に出し、50%再循環させていますが、再循環させる際にはHEPAフィルターを通過させています。

新型コロナウイルスもこのHEPAフィルターで捕捉されると考えられており、機内での感染拡大は極めて少ないとされています。

また、エアロゾル感染と考えられる座席の離れた乗客への感染もほとんど報告されていません。

インフルエンザやSARSなどの他の呼吸器感染症の機内感染に関するこれまでの研究では、呼吸器感染症の患者の近くに座ることが感染の主要な危険因子であることが明らかにされており、例えばSARSの機内での感染事例では、感染源の乗客の周辺に限局していました。

機内でコロナに感染した「かもしれない」事例は海外で報告されています。

シンガポールから中国に飛んだ民間航空機に乗っていた325人のうち、12人が感染したと考えられる事例が報告されてますが、当時は乗務員は全員マスクを着けていたものの、2020年1月当時は乗客にはほとんどマスクを着けていた人はいなかったようです。

武漢からシンガポールに旅行していた人が感染源と考えられ、この人から11人に広がったものと考えられています。

この事例は本当に機内で感染したのか、例えば空港の待合で感染したのか、はっきりと断定することは出来ていませんが、感染源と考えられる人が機内でマスクをしていなかったことが一因である可能性は完全には否定できていませんし、感染したとも確定はされていません。

それでは飛行機内ではマスクを着用すべきなんでしょうか??!!

新型コロナでは、発症する前の症状がない時期にも感染するリスクがあることからして、人が密集した場所や屋内では症状がない人も含めてマスクを装着する「ユニバーサルマスク」という考えが新型コロナ以降定着してきており、それを支持する科学的根拠も集まってきています。

機内で大声で喋るような方や咳が出ている方は、周辺に飛沫が飛ぶ可能性がありますので、マスクを装着した方が良いと言えるでしょう。

しかし、咳などの症状もなく、喋ることもないようであれば、理論的にはマスクを装着しなくても換気の良好な機内では感染拡大のリスクは低いと考えられています。

しかし「機内ではマスクを着用しなくて良い」というほどのエビデンスは現時点ではありませんので、特にマスク着用に抵抗のない方は着けておく、マスクを着けたくない事情のある方は添乗員に事情を説明し食事中以外はできるだけ喋らない、などの対応で良いのではないかと思います。

何が何でもマスクを着用すべきと強要するのはいただけません。

航空会社の職員は、マスクの必要不要を医学的科学的に丁寧に説明できるよう勉強する必要があります。

殆どの職員がマスクが何故必要なのか、また必要でない場合はどうなのかを理解することなく、着用を一方的に乗客に押し付けているとしか言えないのが現状です。

いわゆるマニュアル人間としてしか対応していないのです、これではだめです。

航空会社も搭乗前にすべての乗客に何故機内でマスクの着用が必要なのかを丁寧に説明する必要があるのと、着用しなくても良い場合も説明する必要があります。

現実は、マスク着用の必要性については搭乗される航空会社によって異なることと、十分な対応をしていない航空会社もありますから、搭乗の際には必ず事前に確認をするほうが搭乗してから揉めることがなくなるはずです。

事前に問い合わせたり質問しても、納得の行く説明の出来ない航空会社はトラブルを防ぐためにも利用しないのが得策です。

納得のできる説明もしないし、利用者の話もろくに聞かずに威圧的に着用を押し付けてくる航空会社は、信用できません。

マスクの着用も重要ですが、それに加えて前述の事例のように環境からの接触感染も起こりえますので、トイレ後の手洗いなども重要ですよ。

2020年9月6日日曜日

新型コロナウイルスの検査につてい-3.抗体検査-

【何を調べる】

新型コロナウイルスに感染したという感染抗体と感染を防止する中和抗体の有無を調べる。

※どちらの抗体が検出可能かは現時点では、はっきりしていない※

【調べる目的】

現時点で新型コロナウイルスに感染したことがあるかを調べる検査。

【検査に要する時間】

迅速検査で15~30分程度

【検査検体】

血液で検査。

【受ける適切な時期】

感染してから9~12日では陽性率は50%、13日以降では、96.9%の陽性率

【感度・特異度】

多くの資料から分析した結果、キットによってかなりの差が見られます。

感度は66.0~97.8%、特異度は96.6~99.7%

IgGの感度 30/30 100% 特異度 89/90 98.9%

IgMの感度 27/30 100% 特異度 88/90 97.8%

【今後の展望】

抗体検査は、見つける抗体が感染抗体か中和抗体の区別がつかない・感度や特異度にかなりの差があることなどからしてまだまだ改良の余地があります。

2020年8月30日日曜日

新型コロナウイルスの検査につてい-2.抗原検査とは-

【何を調べる】

新型コロナウイルスの持つ特有のタンパク質を調べる検査で、ウイルスそのものを調べる検査ではありません。

【調べる目的】

現在新型コロナウイルスに感染しているか否かを調べる。

【検査に要する時間】

迅速検査で15分程度

【検査キット】

エスプラインSARS-CoV-2

【検査検体】

唾液で検査。

【受ける適切な時期】

新型コロナウイルス感染症 を疑う症状発症後 2 日目以降から9日目以内の者(発症日を 1 日目とする)。

※本キットで陰性となった場合は追加の PCR 検査等を必須とはしない※

※この時期に受けて陰性であれば新型コロナウイルス感染症ではないと言い切ることが出来ると言われています※

【感度・特異度】

感度は67%、特異度は100%

※PCR検査との比較検討結果※

【注意点】

検出に一定以上のウイルス量が必要であることから、現時点では、無症状者に対する使用、無症状者に対するスクリーニング検査目的の使用には適していない。



2020年8月23日日曜日

新型コロナウイルスの検査につてい-1.PCR検査-・抗原検査・抗体検査とは

新型コロナウイルスの検査法を正しく理解していただけるように解説していきます。

初回はPCR検査についてです。

【PCR検査とは】

PCR検査の正式名称は、Polymerase Chain Reaction; 核酸増幅法 といい、増やしたい対象のDNA断片を検査装置の中で選択的に増幅させ、ウイルスに感染しているかを調べる検査です。

【何を調べる】

新型コロナウイルスの遺伝子を調べる検査で、ウイルスそのものを調べる検査ではありません。


【調べる目的】

現在新型コロナウイルスに感染しているか否かを調べる。

【検査に要する時間】

4~6時間、最近では1時間で検査できる方法も開発されています。

【検査検体】

鼻の奥の粘膜を擦過して採取して検査するのと唾液からも検査可能。

※発症から9日以内であれば唾液からの検査も可能※
※唾液中の新型コロナウイルスは発症から10日を過ぎると減っていくからです※
※発症から数日間は、新型コロナウイルスは「のど」よりも唾液中の方に多く存在するというデータが確認されています※

【受ける適切な時期】

感染してから7~10日

【感度・特異度】

感度は70~90%、特異度は70~90%

【欠点】

PCR検査は難しく検査過程に々な試薬を混ぜる過程があり、かなりこの検査に熟練した臨床検査技師が行わないと、偽陽性反応の出現率が高くなることと、偽陰性も出現します。
結果が出るまでの時間が数時間と長い。

検査機器が高価。

【注意点】

今回のコロナウイルス感染症については、実際に感染していることの把握が難しいことから、実際の感染者に対してPCR検査がどれほど正しく診断できているかについての正確性の計算がまだできていません。

2020年8月14日金曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について-31.クラスターの種類とは-

国立感染症研究所がこの度、7月までの半年間に各地で確認されたクラスターのおよそ100例を分析し、典型的なケースをまとめた事例集を公表しましたので、見てみましょう。

典型的なクラスターは、以下の6つとされています。

1.医療機関での院内感染

2.カラオケを伴う飲食店

3.職場での会議

4.スポーツジム

5.接待を伴う飲食店

6.バスツアー

要するにいずれの場合も3密の環境となっています、したがって3密防止が感染対策として重要となっています。

ほかのケースでも換気の悪い場所で、長時間及び近距離での会話や飲食をともにするなどして感染が広がっており、改めて、3密の環境を避けるとともに、消毒やマスクの着用や十分な換気をするなど基本的な対策を徹底することが大切であることが理解できます。

2020年8月7日金曜日

ポピドンヨードのうがいで新型コロナウイルスの感染予防ができる!!??

ポビドンヨード(Povidone-iodine)は、ヨウ素の酸化作用を利用した抗微生物成分です。

ポピドンヨードは、イソジンのうがい薬の中に入っている成分です。

※うがい薬でおなじみのイソジン改め【明治うがい薬】にポビドンヨードが含まれています※

ポピドンヨードは中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)などの大流行を引き起こしたMERS-CoVやSARS-CoVなどのコロナウイルスを含む広範なウイルスに高い効果を持つことが示されていますが、新型コロナウイルスに効果があるかどうかは2020年8月6日時点ではわかっていません。

ポビドンヨードは強力な殺菌性ゆえに、のどや口の中にもともといる『正常な細菌』をも殺菌てしまい、さらには粘膜なども痛めてしまうから長期には使用できません。

一般的には、ポビドンヨードのうがい薬の安全性は高いと考えられますが、長期使用に関しては甲状腺機能を障害する可能性も指摘されています。

確かにポビドンヨードによるうがいをすると、一時的に唾液中の新型コロナウイルスの量が減るということは間違いはありません。

これは検出されにくくなっただけなのかもしれないのです。

なお、新型コロナウイルスに関して、『予防的・定期唾液の中の新型コロナが減っても、その後の新型コロナによる悪化が防がれるという研究結果ではありません。

単に検査の陽性率が下がったという結果なのです。

新型コロナウイルスにポビドンヨードの使用が有効かどうかは、今後の研究に待たなければなりません

ここで再認識しておく必要があることとして、ポビドンヨードでうがいを続けると、口の中の良い常在細菌を殺してしまい、これによって逆に免疫力が低下して感染しやすくなということです。

要するにポビドンヨードを使いすぎると逆に喉への感染が起こりやすくなります。

今回ポビドンヨードを使用することによりPCRの陽性率が低下したのは、唾液腺から喉に排泄された新型コロナウイルスが一時的に殺菌されたからと考えるべきです。

ポビドンヨードが新型コロナウイルスに感染を低下させたり、症状を軽くするとは考えられません。

今回の検討結果は、検討症例が少なすぎ確かに効果があるとは言い切れません。

過去にポビドンヨードによるうがいは、『風邪予防に有効ではない』という研究結果があります。

1)水でうがいをするグループ

2)ポビドンヨードでうがいをするグループ

3)特にケアをしないグループ(対照群)

に分けてその後60日間でどれくらい風邪をひくリスクが変わるかというテーマで検討されました。

すると、水のみでうがいをすると、うがいをしないグループよりも風邪にかかる確率が下がったものの、ポビドンヨードでうがいをするグループは効果が認められなかったという結果が得られています。

ビドンヨードは確かに、細菌やウイルスを殺菌する効果がありますが、水のみのうがいのほうがポビドンヨードのうがいよりも有効だったという興味深い結果が得られています。
【参考資料】

American journal of preventive medicine 2005; 29:302-7.

2020年8月4日の大阪府の吉村知事の発言の真意は、ポビドンヨードのうがい薬で新型コロナウイルスの感染予防効果があるのではなく、ポビドンヨードが唾液腺から口の中に排泄された新型コロナウイルスを殺菌作用で一時的に減少させたことからPCR検査の陰性率が高くなったと考えるべきでしょう。

現在ポピドンヨードが新型コロナウイルスを殺すという医学的な確証は得られていませんので、更に多くの人を対象に検討していく必要があります。

今回の吉村大阪府知事の記者会見で、ポピドンヨードのうがい薬を使用するかしないかは、各人の考え方によりますが、絶対的に効果があると信じて使い続けることはよくありません。

今回の吉村大阪府知事の記者会見を否定したり、文句を言う政治家が多くいますが、血液の鉄人としては、具体的な対策を一切打ち出さず、文句ばかり言う政治や医療関係者より"成果が出るか出ないかは分からないが、やってみるだけの価値はあると思っている"と主張する吉村知事の考え方に賛成です。

松井一郎大阪市長も「結果が出たのに、黙っていろと言うのか」と不快感を示されるのも当然と思います。

残念なことは吉村大阪府知事の記者会見の真意を汲み取れなかったことが多く存在しポピドンヨードのうがい薬の買い占めに走ったことです。