血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2025年4月20日日曜日

感染症速報-5.ノロウイルス未だに流行中-

ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、例年冬に流行ピークを迎えますが 2025年は春になっても流行が続いている状況です。

特に、過去10年間で同時期に最も多い患者数となっていてこれは、2つの異なるタイプのノロウイルスが流行していることや、乾燥した気候、寒暖差などが原因と考えられています。


そのことから今年は春になっても異例の流行が続きマスコミを賑わしています。


今年の長引く流行の原因としては、例年流行するのは1つのウイルスタイプだけですが、今年は2つのウイルスタイプが時期をずらして流行しているからと言われています。


最初GII.4(1つ目のウイルス)が流行し、GII.17(2つ目のウイルス)が流行していることから、流行規模と流行時期が長くなる可能性があると指摘されています。


ヒトに感染する主要なノロウイルスは、現在2つの遺伝子群(GIとGII)、さらにGIは9種類(GI.1~GI.9)、GIIは22種類(GII.1~GII.22)の遺伝子型に分類されています。

【現在流行しているノロウイルスのウイルスタイプ】

1.GII.17」というタイプが65%余り

2.GII.4」というタイプが、17%余り


【予防対策】

1.手洗いの徹底・・特に排便後や食事の前に、手洗いを徹底することが重要です.。

2.適切な食中毒対策・・食品の加熱や、生食を避けるなど、適切な食中毒対策を心がけましょう.。

3.嘔吐物の処理・・嘔吐物を処理する際は、マスクと手袋を着用し、適切な処理を心がけましょう.。

4.医療機関の受診・・吐き気や嘔吐、下痢などの症状がある場合は、素人判断をしないで早めに医療機関を受診しましょう。

2025年4月13日日曜日

感染症速報-4.梅毒-

 日本国内における2024年の梅毒の患者報告数は、全国で14,663人(速報値)となり、2023年の14906人とほぼ同様の患者数となっています。


1948年から梅毒患者について報告制度※注がありますが始まり、患者数は減少傾向にありましたが2011年頃から報告数は再び増加傾向となり、2021年以降大きく増加しています。


この増加の原因としては、


1.出会い系サイトの普及による不特定多数との性交渉の頻度が増えれば、梅毒に感染するリスクも高くなります。


2.性の多様化による感染者の増加。


3.ピル(経口避妊薬)使用のハードルが低くなり、コンドームの使用率の低下。


などいろいろと言われていますが未だにはっきりとしていません。


梅毒はHIVのようにコンドームでは完全に予防できませんが、やはり感染防止には役立っていますので、過信することなく利用する必要があります。


不安な行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受けて、感染がわかればすぐに治療すれば短期間で完治します。


早期の場合はペニシリン注射一回で完治しますが、治療が遅れればそれだけ完治するのは遅れることになります。

2025年4月6日日曜日

感染症速報-4.日本国内において百日咳が患者が急上昇-

百日咳(pertussis, whooping cough)は、特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症です。


乳児期早期から罹患する可能性があり、1歳以下の乳児、特に生後6カ月以下では死に至る危険性も高い感染症です。


百日咳の咳は、短い咳が連続して出るのが特徴で、息を吸うときに「ヒューヒュー」という音がします。


咳発作は連続した咳き込み(スタッカート)の後、息を吸うときに笛の音のようなヒューという音が出る(ウープ)発作の繰り返し(レプリーゼ)が約2~3週間持続し、咳が治まるまで約100日間(3ヵ月程度)続きます。


百日咳の病名は、咳が約100日間(3ヵ月程度)続くことに由来しています。


百日咳特有の咳を紹介した貴重なサイトを以下に記載しておきまのので、参考にして下さい。

『百日咳とはこんな咳』


国立健康危機管理研究機構は、3月23日までの1週間で全国の医療機関から458人の患者が報告されたとの速報値を公表しています。


2025年に入ってからの累積は4100人で、すでに昨年1年間の累積4054人を超え都道府県別では大阪府が最も多く、336人。東京都が299人、新潟県が258人と続きます。


百日咳にはワクチン接種が最も予防に有効とされています。


ワクチンの普及とともに感染者数は減少してはいますが、世界各国でいまだ多くの流行が発生しています。


日本国内での百日咳流行を受けて日本小児科学会は、2025年3月29日付で「百日咳患者数の増加およびマクロライド耐性株の分離頻度増加について」を公開し、日本国内でマクロライド系抗菌薬耐性菌の分離報告が増加していることについて注意喚起するとともに、現行の定期接種に加えて、任意接種での3種混合ワクチンの追加接種を推奨する旨を改めて周知しています。

【参考資料】


『百日咳患者数の増加およびマクロライド耐性株の分離頻度増加について 』

2025年3月30日日曜日

感染症速報-3.サポウイルスによる感染症-

 感染経路】


感染経路は汚染された食品や患者と接触した手を介して感染します。


【潜伏期間と症状】


12~48時間で、嘔吐・下痢・発熱などの症状がある胃腸炎を引き起こしますが、症状からはノロウイルスとサポウイルスの区別はできません。


【感染源】


牡蠣などの二枚貝が有名です。


ノロウイルスもサポウイルスも人間の体内でしか増殖できず、患者の糞便から排泄され、下水を通って海に流れ、牡蠣などの二枚貝に取り込まれて濃縮され汚染された貝を生で食べることで感染します。


貝類を食べていないのに感染するのは人から人への感染です。


サポウイルスに感染した人が感染源になったり、患者の吐物や下痢を処理した人が、手袋着用や手洗いが不十分なまま調理すると食品が汚染されて感染源になります。


サポウイルスは1年中存在するので夏でも発生しますが、冬に多い傾向があります。


【治療法】


ノロウイルスなどと同様で特効薬がないために脱水に対する対症療法が中心となります。


有効な治療法としては水分と電解質を補充するための経口補液です。


嘔吐や下痢があると水分だけでなく塩分が失われますので、市販のスポーツドリンクは、糖分が多く塩分が少ないので、あまりお勧めできません。


OS-1やアクアライトなど小児の脱水の治療に使えると記載されたものが良いです。


いずれにして感染したと考えられる症状が出たときには、素人処置をしないですぐに受診することです。


【正しい予防法】


・牡蠣などの2枚貝は十分に加熱する。


・生鮮食品は十分に洗浄する。


・トイレの後や調理前、食事前には流水による丁寧な手洗いをする。


・手洗い後のタオルの共用を避けて使い捨ての紙タオル使用する。


・患者の吐物や下痢を処理する時は、必ず使い捨て手袋を着用する。


・汚染された衣類は他の衣類と分けて洗濯しましょう。


・胃腸炎のウイルスにはアルコール消毒は効果がないので石鹸を使い流水でよく洗う。


・汚染された器具などは塩素系漂白剤を100倍から200倍程度に薄めて消毒をします。


2025年3月23日日曜日

感染症速報-2.サポウイルスとは-

 1977年に札幌の児童福祉施設で胃腸炎の集団感染があり初めて報告されました。


当時は"サッポロウイルス"呼ばれましたが、2002年の国際ウイルス学会で「サポウイルス」と正式に命名されました。


※"サポ"という名前は、発見された地名(札幌)に由来しています※


小児の散発的な感染性胃腸炎の原因と考えられてきましたが、近頃では食中毒などの集団感染の報告が増加傾向にあります。


サポウイルスは、カリシウイルス科に属するRNAウイルスで、主な感染経路は経口感染で、汚染された食品や水、あるいは感染者との接触によって感染します。


特に、牡蠣などの二枚貝を生で食べることで感染するリスクがあります。


主な症状としては、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などが一般的な症状です。


※これらの症状は、ノロウイルスによる感染症とよく似ています※


潜伏期間は12~48時間で、発症している期間は一般的には1~2日、長い場合は一週間程度続くこともあります。


感染しやすい年齢層としては乳幼児に多く見られますが、近年では成人や高齢者の感染事例も報告されています。


【感染予防法】


1.手洗いの徹底。


2.食品を十分に加熱する(特に二枚貝は、生食を避ける)。


3.感染者の吐物や糞便をビニール袋にいれるなどの処理し、第三者に触れないようにする。


当然のことながらサポウイルスは、ノロウイルスと同様にアルコール消毒は無効ですので、石鹸でよく手を洗い流水で洗い流す必要があります。


【治療療法】


特効薬はなく、対症療法が中心となります。


脱水症状を防ぐために、水分と電解質の補給が重要です。


※※サポウイルスによる胃腸炎は、ノロウイルスによるものと症状が似ているため区別がしにくいのが現実です※※


20年程前からサポウイルスによる胃腸炎も知られるようになってきており、ロタウイルスでもアデノウイルスでもノロウイルスでもないウイルス性胃腸炎は原因はサポウイルスか原因あると指摘する専門家も多くいます。


要するにサポウイルスはノロウイルスに比べて、まだ、詳細な情報が不足しているのが現実です。

2025年3月16日日曜日

感染症速報-1.ヨーロッパでハシカ流行-

世界各国の感染症の情報をいち早くお知らせします。

2025年3月13日、世界保健機関と国連児童基金はロシアやヨーロッパを含む53カ国でハシカ(麻疹)の感染件数が2024年に127352件に上り、21万件を超えた1997年以降最悪となったと発表しました。


5歳未満の子どもの感染が全体の43%と多く「肺炎や腎不全を併発し、生命に関わるケースもある」と警告を発し予防接種の重要性を訴えています。


世界保健機関と国連児童基金の報告書によりますと、ヨーロッパ地域では1997年以降、ハシカは減少し、2018年から再流行し始め新型コロナウイルスの世界的流行を経て2024年に急増しました。


このハシカは半数以上が入院が必要な重症であったと報告されています。


今回のハシカ再流行の一因としては、新型コロナウイルスの流行によるハシカの予防接種率の低下を指摘しています。


新型コロナ感染者への対応で医療施設は逼迫し、ロックダウンも影響し定期予防接種を含む医療サービスが混乱したのも一因とされています。


今後日本国内においてもハシカが流行する危険性は否定できません。


【ハシカ(麻疹)について】

麻疹ウイルスの感染経路は、空気感染・飛沫感染・接触感染で、ヒトからヒトへ感染が伝播し、その感染力は非常に強いと言われています。


免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%発症し、一度感染して発症すると一生免疫が持続すると言われています。


現在の日本国内における麻疹患者数はかつてより著しく減少していますが、未だ年間約10~20万人と推計されています。


小児にとって麻疹は重症度の高い疾患で、近年は成人での発症も問題となっていることから、その対策は国民全体の健康を守るという点でも重要とされています。 

2025年3月9日日曜日

HIVとAIDSの話-1.はじめにー

 HIVとAIDSについて解説していきますのでお付き合いください。


HIV(Human Immunodeficiency Virus:ヒト免疫不全ウイルス)は、体内の免疫細胞を破壊するウイルスでHIVに感染すると、免疫力が低下し、日和見感染症や悪性腫瘍などの重篤な病気にかかりやすくなります。


AIDS(acquired immunodeficiency syndrome:後天性免疫不全症候群)は、HIV感染によって引き起こされる病気の総称でHIVに感染してから2~5年程度と早く発症する事例が多く見られますが、早期発見・早期治療により、AIDSの発症を予防することができます。


HIVの感染経路は、主に以下の3つです。


1.性行為によって


男性同性間性交、異性間性交、肛門性交、激しいオーラルセックスなどによって起こります。


2.血液を介して


血液製剤の輸血、針刺し事故、刺青やボディピアスなどによって起こります


2.母子感染


妊娠中、出産時、授乳時などに母親から子供に感染することがあります。


HIVに感染しているかどうかは、血液検査で調べることができます。


検査結果が陽性の場合、医療機関を受診して治療を受けることが大切です。


現在、HIVの治療薬は非常に進歩しており、適切な治療を受ければ、健康的な生活を送ることができます。


また、感染を予防するために、コンドームや注射針の共有を避けるなどの対策をとることも重要です。


以下に、HIVとAIDSの予防対策をまとめます。


1.性交渉の際には、コンドームを着用する。


2.針刺し事故に気をつけることや刺青・ボディピアスの際には、使い捨ての器具を使用する。


※針刺し事故は医療従事者以外に起こることはまずありません※


3.妊娠を希望する女性は、妊娠前と妊婦健診の際にHIV検査を受ける。


4.HIV感染のある女性は授乳を中止する。


5.日常生活でのHIV感染はまず起こることはありません。


HIVとAIDSは、適切な対策をとることで、予防や治療が可能な病気です。正しい知識を身につけ、感染予防に努めましょう。