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2023年10月22日日曜日

医学豆知識17.-インフルエンザと新型コロナウイルスとコロナウイルスの大流行に備えて下さい-

2023年インフルエンザの累積患者数(2023年10月上旬時点)は、49212人で定点あたり9.99となっています。


一方新型コロナウイルス感染症患者数は、25630人で定点あたり5.20となっていて流行は落ち着いているようです。


定点当たり報告数とは、感染症について、すべての定点医療機関からの報告数を定点数で割った値のことで、言いかえると1医療機関当たりの平均報告数のことです。


この定点あたりは、定点の指定医療機関が保健所に報告をした、1週間ごとのすべての全患者数から計算されます。


例えば、計算式でいうと「(1医療機関の報告患者数)÷(定点指定された医療機関数)=(定点当たり)」となります。定点あたりの数値が、


1以上だと「流行開始レベル」


10以上で「注意報レベル」


30以上で「警報レベル」となります。


定点あたり9.99とは、もはや注意報レベルとなります。


特に沖縄県は、30.85で警報レベルとなっています。


その他大分県18.00、愛媛県16.69,山口県19.22神奈川県18.84、東京都16.44.千葉県21.08など注意報レベルを超えています。


2023年は、昨年からの季節性インフルエンザの流行が収まらないうちに例年より早く季節性インフルエンザの流行が始まり、その上にシーズン本番の冬季に向け新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との同時流行を心配する声が高まっています。


インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの同時感染がは危惧されています。


冬は換気が難しく、狭い空間に人が集まりやすくなるという環境要因も加味されて新型コロナウイルスの流行が加速するおそれは十分あります。


これからのシーズンは特に感染に注意てする必要があります。


感染予防対策としては、インフルエンザも新型コロナウイルス感染症も同じことで、


1.室内の湿度管理と適度な換気を行ない、十分な睡眠と栄養を取る予防する。


2.外出後の手洗いやうがいを十分にする。


3.人が密集する場所ではマスクを正しくする。


4.インフルエンザワクチンを接種する。


※100パーセントの予防効果がある訳ではありませんが、予防効果があることと、感染しても症状が軽くてすむ※


インフルエンザに感染したと思われる症状が出たときには、24~48時間以内にインフルエンザ検査を受ける。


24時間以内に検査を受けると感染していてもニセの陰性反応が出ます。


インフルエンザの治療薬は発熱後48時間以内に内服することにより、より良い効果が得られます。

2023年10月15日日曜日

梅毒速報2.無症候性梅毒に注意!!-

日本国内の梅毒患者の現状(2023年9月下旬時点)


依然として梅毒が大流行しています。


2023年9月下旬までに届出のあった梅毒患者は、10957人となりましたが、これは届出のあった患者数だけですから実際はこれ以上の潜在患者がいると推測されています。


この増加傾向は大都市だけにとどまらず地方でも増加しています。


梅毒トレボネーマに感染して梅毒特有の症状が出れば感染に気づき受診して検査を受けますが、全く症状がない場合は感染に気づくことはありません。


無症候性梅毒は梅毒特有の症状がないことから、当人は感染に気づくことなく次々と第三者へ感染を広げていくことになります。


無症候性梅毒はどれくらい存在しているのか


無症候性梅毒は、梅毒検査を受けて初めて梅毒と判明しますから、梅毒検査を受けないとわかりません従ってはっきりした数は把握されていないのが現実です。


専門家の調査結果では、梅毒トレポネーマに感染して何の症状も出ない無症候性梅毒は20~30%前後存在するとの報告がなされています。


直近の無症候性梅毒患者の実態


2023年の患者163人について分析しました。


早期顕性Ⅰ期梅毒75(46.0%)


早期顕性Ⅱ期梅毒54人(33.1%)


無症候梅毒32人(19.6%)


晩期梅毒2人(1.2%)


2021年1年間の無症候梅毒患者は、1346人で21.8%でした。


いずれにしても梅毒トレポネーマに感染しても、梅毒特有の症状を呈さない無症候梅毒が20%以上も存在することは感染を一層広める原因となっています。


梅毒トレポネーマに感染するような行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受けることです。


※解析データのもとは国立感染症研究所の発表データを参照しています※

 

2023年10月8日日曜日

梅毒速報1.2023年9月24日時点での梅毒患者-

 2023年も梅毒は依然として大流行しています。

これに鑑み『梅毒速報』を今後掲載していきますので、よろしくお願いいたします。

第一回目として2023年9月24日時点での梅毒患者患者の現状についてお知らせいたします。

【2023年9月24日時点での梅毒患者】

累計で10957人となっています。

以前大流行が続き、このまま行けば2022年の患者数を上回ります。

【追跡可能な患者163人の梅毒の病期】

早期顕症I期75人

早期顕症II期54人

晩期顕症2人

無症候32人

梅毒トレポネーマに感染しても典型的な症状の出ない無症候梅毒が、32人/163人(19.6%)存在していることは、梅毒トレポネーマに感染したことに気づかずに次々と感染者を広げる大きな要因となっています。

【梅毒患者の多い都道府県10位】

1.東京都 2684人

2.大阪府 1489人

3.愛知県 628人

4.福岡県 652人

5.北海道 519人

6.神奈川県 496人

7.兵庫県 351人

8.千葉県 334人

9.埼玉県 332人

10.広島県 314人

いずれも大都市に多く見られますが、地方都市においても患者数は増加しています。

【まとめ】

梅毒トレポネーマに感染しても、典型的な症状を表さない無症候梅毒が多いことから、危険な行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受けてください。



2023年10月1日日曜日

医学豆知識-16.季節性インフルエンザにご注意-

 毎年12月前後に流行が始まりますが、2023年は8月中旬頃より流行が始まっています。


季節性インフルエンザの全国5000の定点医療機関の2023年9月末時点での低点数は、7.03となり流行しています。


※定点数 1 流行入り・10 注意報・30 警報※


これは2022年末からの流行が収まらずに2023年はすでに流行期に突入したことになります。


※特に九州を中心とした西日本に流行は顕著※


9月末時点で全国1500以上の学校がすでに休校・学年および学級閉鎖となっています。


毎年10月頃から行われる予防接種のワクチンも間に合わない事態となってきています。


※ワクチン接種をしてもすぐに感染予防抗体はできず、接種後2週間前後経過しないと効果が期待できないのです。


このままの状態が続くと2023年から2024年にかけて大流行することが懸念されています。


今後我々が取れるた対策としては、新型コロナ感染対策と同じことです。


1.予防ワクチン接種が開始されれば、可能な限り早く受ける。


2.マスク着用・手洗い・うがいを行う。


3.可能な限り人混みは避ける。


4.室内にいるときは十分な換気を行う

2023年9月24日日曜日

医学豆知識-15.咽頭淋菌検査にPCR検査は不向き-

咽頭淋菌検査に淋菌のPCR検査はニセの陽性反応を引き起こします!!


 淋菌に特徴的なDNAをコピーしたつもりでも、実は仲間の非病原性ナイセリア属のDNAだったということがよく起こります。


ナイセリア属は主に口や喉に寄生していることから、喉の淋菌検査の場合はPCR法を使うことができません。


喉ので淋菌をPCR法で調べると70%以上で、ニセの陽性反応(偽陽性反応)が出てしまいます。


このニセの陽性反応を引き起こすのは、無毒のナイセリア属だったことが判明し約2年前にPCR法の検査基準を見直さなければならなくなりました。


最近ではPCRの欠点をおぎなうように、ナイセリア属の偽陽性が出にくいSDA法が開発されましたので、咽頭の淋菌検査にはSDA法が使用されています。


SDA法は淋菌とクラミジアも同時に測定できるので便利ですが,男性では健康保険の適応が通っていませんし、咽頭の性感染症はまだ一般的に認識が広まっていませんから,健康保険で査定されてしまうことがありますので原則的に自費扱いになります。


SDA法は、淋菌とクラミジアを同時に測定できる検査方法ですが、女性には保険適応ですが、男性には保険が使えません※

淋菌を確実に見つけ出すには嫌気性培養法が昔から採用されていますが、この検査は検査物適切な処理をしないと淋菌が死んでしまうために、通常の医療機関では実施が難しい検査方法です。


淋菌を見つける最も手っ取り早い検査は、顕微鏡てぜ検査物を見ることにより淋菌は意外と簡単に見つけることができます。


患者の分泌物をスライドガラスに塗りつけて、メチレンブルーという染色液で染色をして顕微鏡で観察するのです。


咽頭淋病は、咽頭クラミジアと同じで症状があまりなく、のどの痛みや腫れといった風邪に似た症状が出ることもあります。 


潜伏期間は2~7日で、殆どの場合風邪や単なる咽頭炎と勘違いしてそのままにしてしまったり、風邪薬を飲んでいたりと咽頭淋菌感染に気づかず放置してしまうことになります。


気づかずに放置すると悪化し、淋菌性の咽頭炎・扁桃腺炎といった病気を引き起こします。


※最近では、TMA法によるPCR検査で検査を行うことによりニセの陽性反応は起きなくなってきています※



2023年9月17日日曜日

医学豆知識-14.眼梅毒にご注意-

2023年9月3日までの梅毒患者数が10113人となり、2022年同時期の8155人を上回りました。

10000人を超えたのは2022年より2ケ月速いペースとなっています。

このままのペースで増え続けると年間累計は1万6300件超となると危惧されています。

梅毒トレポネーマが性器に感染して症状を引き起こすことを多くの人数知っていてますが目に障害(梅毒性眼疾患)を引き起こすことを知っている人は少ないと思われます。

そこで今回は梅毒トレポネーマが引き起こす眼の症状について解説いたします。

梅毒トレポネーマが目に感染して引き起こされる梅毒性眼疾患は、梅毒患者の2.5~5%と報告されていますが、臨床症状が多彩で特徴的な所見に乏しいため、実際にはもっと多いと懸念されています。

巷で"眼梅毒"と言われるぶどう膜炎は、視神経炎、硝子体炎といった後眼部病変が目立つ症状で、両目に現れることが多く、充血、視力低下や視野欠損、かすみ目、飛蚊症、羞明が起きることが知られています。

成人では梅毒トレポネーマの感染から1カ月前後の早期梅毒第1期には眼瞼や結膜にも感染の仕方によっては潰瘍を生じる場合がありますが、梅毒による目の潰瘍は見逃されるケースも少なくないとされています。

梅毒トレポネーマの感染から1~3カ月ごろの早期梅毒第2期には梅毒性ぶどう膜炎が多くなります。

更に後部ぶどう膜炎では、眼底に出血を伴い、網膜血管炎を生じる場合もみられる視力を出すのに重要な視神経乳頭部に散在性の網脈絡膜炎を発症し、その後、網膜色素変性症様変化を生じることもあり硝子体混濁や強膜炎などもこの時期にみられる病態の一つでもあります。

第3期になると、眼瞼ゴム腫や二次性網膜色素変性症などがみられるが、治療は極めて困難となります。

梅毒トレポネーマの感染は眼科の診察だけではまず鑑別不可能です。

梅毒性眼疾患の重大性から、早期発見・早期治療は不可欠でが、その多様な病態を考えれば、眼科医の診察だけで梅毒性眼疾患のリスクを知ることは難しく、皮膚科などの協力も不可欠となります。

梅毒と診断された人が眼科を受診するの当然のことですが、梅毒の疑いがある人は眼科医にその可能性を告知することも"眼梅毒"を見逃さないためにも非常に大切です。

2023年9月10日日曜日

医学豆知識-13.新型コロナウイルス"エリス"-

XBB株についで非常に短いスパンで新しい変異株である「EG.5株」が台頭してきています。


EG.5は2023年8月8日時点では50カ国以上で確認されています。


EG.5株・EG.5.1株とはオミクロン株の派生株「XBB株」からさらに枝分かれした株の1つで、EG.5株は2023年2月17日に初めてインドネシアで報告され、2023年7月19日にVariant under monitoring (VUM)に指定され、2023年8月9日に瞬く間に注目すべき変異株(VOI)に指定されました。


BJ.1株とBM1.1.1株が組み合わさったのが「XBB株」。その後非常にバリエーションにとんださまざまな「XBB株」が生み出されます。その中の「XBB.1.9.1株」から派生した株が「EG.5株」「EG.5.1株」です。


この変異株は、ギリシア神話の不和と争いの女神にちなんで「エリス」と呼称されています。


EG.5株は他のウイルスに比べて後述するように、これまでのウイルス以上に成長優位性が高いのが特徴の1つ。8月7日時点で中国(30.7%)をはじめ、アメリカ、韓国、日本、カナダ、オーストラリアを中心に広がっており、WHOでも8月7日時点で「世界的に患者発生率が上昇し、優勢になる可能性がある」と発表しています。


EG.5株・EG.5.1株の症状としては、


・39℃以上の発熱と悪寒、倦怠感


・頭痛と関節痛


・喉の痛み


・咳、鼻詰まり、鼻水、呼吸困難


・下痢などの消化器症状


・味覚嗅覚の喪失


EG.5株・EG.5.1株は重症化しやすいのか?


少なくとも現時点では「重症化しやすい傾向はない」ように見えます。


世界保健機関の報告書でも、EG.5 は有病率の増加、成長優位性、免疫逃避性を示しているが、重症度の変化は報告されていないと報告されています。


【参考資料】

CDC「Monitoring Variant Proportions」)