血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2017年11月12日日曜日

血液凝固機能検査ー4.FDP ー

FDP(Fibrinogen Degradation Products)とは、線溶によってフィブリノーゲンやフィブリンが分解されてできる分解産物で、線溶系検査として実施されています。

【検査の目的】

1.播種性血管内凝固症候群(Disseminated Intravascular Coagulation:DIC)や血栓症を疑うときやその経過観察や治療観察として

※以後播種性血管内凝固症候群はDICと呼びます※

2.線溶や凝固の亢進状態を疑う時

【検査法】

ラテックス凝集法

【基準値】

5.0μg/dl 以下

※基準値は検査方法や測定方法、測定機器、用いる試薬、単位などにより異なります※

【高い値を示す時に考えられること】

・DIC、血栓症、心疾患(狭心症、心筋梗塞)、肝疾患(肝炎、肝硬変など)、悪性腫瘍、大動脈瘤、手術後 など

・肝疾患の場合、肝硬変などにより、肝機能が低下すると、肝臓でFDPを処理する能力が低下し、血液中にFDPが溜まってしまうことから高値を示します。

・DIC、血栓症の場合、血管内で血栓が多発し、体内では血栓を溶解するように働くため、結果的にフィブリンが分解された代謝産物であるFDPの増加が起こります。

・治療目的などでウロキナーゼを投与するとFDPが増加します、これは、ウロキナーゼはプラスミノーゲンをプラスミンに活性化する活性化因子のためで、ウロキナーゼの投与により、プラスミンが過剰に活性化されてフィブリノーゲンを分解するためです。

【検査する際の注意点】

FDPを検査するときは抗線溶剤を添加して採血します。

FDPはフィブリノゲンと類似していることから交差反応を示すため血漿では検査できませんので血清で検査します。

2017年10月17日火曜日

出血時間検査は必要か??!!

出血時間については当ブログ(『出血時間』)でも紹介していますが、今回は"出血時間検査は必要か??!!"について解説してみたいと思います。


出血時間は一次止血を反映する検査として知られており、出血性素因のスクリーニング検査として手術前検査などで実施される事が多のが実情です。

しかし以前から検査手技に関わる問題点が指摘されており、感度や再現性が低いとされているのも事実です。

また出血時間の結果と術中・術後の出血量との相関が乏しいとする見解もあり、術前検査の意義が疑問視されています。

この検査では、いつも一定した測定値が得られるとは限らないため、最近では血小板数や血漿を用いた凝固検査(プロトロンビン時間や活性化部分トロンボプラスチン時間)で、その能力を推定する方向にあります。

【出血時間検査を実施する理由】

出血時間の延長する病態は、以下の三つがあります。

1.血小板数の低下
2.血小板機能の低下
3.血管壁の脆弱性の存在

1の血小板数が低下している場合には、出血時間は延長しているに決まっているので、あえて出血時間をすることはまずありません。

2の血小板数が正常であるにもかかわらず、血小板機能が低下している病態は少なくありません。

この場合には、血小板機能の低下をスクリーニングする検査が出血時間ということになります。

3の血管壁脆弱性の存在は、たとえばオスラー病などですが、この病気は極めて稀で血液内科においても数年に1例遭遇するか否かですのであえて出血時間で見つける為に実施することはありません。

【出血時間検査は必要なのか】

従来術前検査に出血時間は不可欠の検査とされてきましたが、術前検査に出血時間が必要かどうかは、専門家の間でも意見が分かれています。

術前検査として出血時間は不要と考える専門家の意見は、出血時間と手術関連出血量は全く関連しないというものです。

このことを証明した論文が実際に存在します。

逆に術前検査として出血時間は必須と考える場合は、隠れvon Willebrand病が相当するあるという考え方からvon Willebrand病を見逃さないために実施するという考え方です。

しかしvon Willebrand病をスクリーニングするのは出血時間とAPTTですが、APTT検査が正常になってしまう軽症~中等症von Willebrand病があることからして出血時間とAPTTの両者でスクリーニングした方がより安心という考え方です。

【出血検査の現状】

術前ルーチン検査として漫然と出血時間検査を実するのではなく、出血のリスクがあるか否かは術前の診察・問診で見極めて必要性があると判断した場合に出血時間とその他の追加試験を実施する様になりつつあります。

現実管理人の知る医療機関の90%以上で出血時間検査を廃止しています。




2017年10月7日土曜日

血液凝固機能検査ー3.D-ダイマー ー

D-ダイマー (D-dimer) はフィブリンがプラスミンによって分解される際の生成物で、 血液検査において血栓症の判定に用いられます。

【検査の目的】

主に深部静脈血栓症(deep veinthrombosis:DVT)と肺血栓塞栓症
(pulmonarythromboembolism:PE)というふたつの関連しあう血栓症が疑われる患者の評価において臨床的有用性があります。

※深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症はほとんどセットの病気ですので、深部静脈血栓症を発症したら、ほとんどの場合、肺血栓塞栓症を合併症で引き起こしますからこのふたつは併せて"静脈血栓塞栓症(Venous thrombosis:VTE)"と呼ばれています※

【検査法】

3.2%のクエン酸ナトリウム液0.2mL入り容器に血液1.8mLを正確に入れ、全量2.0mLにしてよく混和後、1,500×g、15分間、冷却(2~4℃)遠心分離し得られたクエン酸血漿を使用します。

ラテックスの粒子にFDPが反応する物質を結合させてた検査試薬を採取したクエン酸血漿を加え、FDPが集まってきてかたまりをつくる反応で測定します。

ラテックス凝集反応を利用した検査です。

【基準値】

150ng/ml以下

※測定キットは10数種類が市販されており、基準値はそれぞれの検査キットで異なる※

【検査結果の判定】

高値・・・DIC(播種性血管内凝固症候群)、深部静脈血栓症(DVT)、肺血栓塞栓(PE)、悪性腫瘍、肝硬変症、大動脈瘤、手術後、妊娠中、血液凝固亢進状態など

低値・・・臨床的意義は少ない

【おまけ】

Dダイマーは多くの場合、血液中のFDPと同時に測定します。

2017年9月18日月曜日

キアゲン HPV Test

キアゲン HPV Test は、日本で初めて厚生労働省に承認された体外診断用医薬品です。

【検査の目的】

この検査は、子宮頸部の高度病変やがんを引き起こす可能性の高く臨床的にもっとも重要な13種類の高リスク型HPVグループに感染しているかどうかを判定します。

この検査はハイブリッドキャプチャー (HC2) 法と呼ばれる方法により“HPV DNA「キアゲン」HC II” により、子宮頸がんを引き起こす13種類の高リスク型HPV(16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68型) の感染の有無を検査します。

高リスク型HPV をダイレクトに発見できるすぐれた検査法として、アメリカやヨーロッパで広く認められています。

30歳以上の女性が細胞診とHPV 検査を併用すると、子宮頸がんに進行するリスクについて、細胞診だけを受診した場合よりも、より正確に調べることができます。

【検査原理】

子宮頸部から採取した細胞を検体として、HPV-DNAを、ハイブリッドキャプチャー法により検出する検査。

【検査方法】

検体中のDNAを検体抽出液により抽出し、HPV プローブ試薬を用いてハイブリダイゼーションを行い、検体中にHPV-DNAが存在するとDNA/RNA ハイブリッドが形成されます。

これをマイクロプレートに固相化した抗DNA/RNA抗体により捕捉し、更にアルカリフォスファターゼ標識抗 DNA/RNA 抗体を反応させ、得られた抗原抗体反応複合物と化学発光基質を反応させ、その化学発光を測定することにより検体中のヒト・パピローマウイルスのDNAを検出します。

【利用方法】

子宮頸がん検診でHPV 検査を従来から実施されている細胞診と併用することにより、前がん病変の段階でほぼ確実に発見することが出来るとされています。

欧米では子宮頸がん検診の標準の検査法として普及しており、日本でもHPV検査の普及により子宮頸がん検診による子宮頸がんの予防が期待されています。

【注意点】

この検査が陽性となってもどのタイプのHPVに感染しているとは判断できません。

13種類の高リスク型HPV(16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68型) のいずれかに感染していることしか分かりません。

2017年9月5日火曜日

血液凝固機能検査ー2.活性化部分トロンボプラスチン時間 (APTT)ー.

活性化部分トロンボプラスチン時間は、APTT(activated partial thromboplastin time)とも略されます。

先に紹介したプロトロンビン時間PTは、外因系の凝固異常を調べるのに対し、この活性化部分トロンボプラスチン時間APTTは、内因系の凝固異常を調べる検査です。

トロンボプラスチンは、血小板や白血球に含まれる物質で、血液を凝固させる働きを持っています。

【検査の目的】

血液が凝固するまでの時間を計る検査で、血友病のスクリーニング検査として最も重要な検査です。

内因系凝固系は異物面との接触により動き出す凝固系で、血友病ではこの内因系凝固因子が異常のため、活性化部分トロンボプラスチン時間は長くなります。

血液を凝固させるためには、12種類の血液凝固因子と呼ばれる物質が働くことが知られていますが、活性化部分トロンボプラスチン時間は、血友病の原因となる第Ⅷ因子と第Ⅸ因子の欠乏を調べるためのものです。

【検査法】

血液を採取し、血漿に部分トロンボプラスチンの試薬とカルシウムイオンを加えることによって、部分トロンボプラスチンを活性化し、血液が凝固するまでの時間を測定します。
現在では、殆どが自動分析装置で検査します。

【検査原理】

1.血液1にクエン酸ナトリウム9になるように採血し、直ちに遠心分離し得られた血漿を使用する。

2.患者血漿100μLに検査試薬100μL+塩化カルシウム100μLを加えて37℃でフィブリンが析出するまでの時間を測定する。

【基準値】

血液が凝固するまでの時間が、25~45秒なら正常。

※使用する検査機器や施設によって若干異なる場合がある※

【検査法による基準値】

Langdell法:26.0~38.0秒

エラジン酸活性化法:26.0~38.0秒

光散乱法:23.5~42.5秒

※採血方法や血漿のとり扱い方などによって測定値が変動するため、基準値より延長していも足以上と判定しないで、採血方法をかえたり、同一検体で再検査をする必要があります※

【検査結果の判定】

・時間短縮・・・血栓症(凝固亢進時)、生理的変動(高齢者)

・時間延長・・・先天性凝固因子欠乏症・異常症(Ⅰ・Ⅱ・Ⅴ・Ⅷ・Ⅸ・Ⅹ・?・?)肝機能障害、播種性血管内凝固症候群(DIC)、尿毒症、多発性骨髄腫、線溶亢進、ヘパリン、ワルファリンカリウム等の抗凝固薬の使用時。

【異常が認められた場合どうするか?】

活性化部分トロンボプラスチン時間が著しく延長するのは、圧倒的に血友病の可能性が大となります。

血友病には第Ⅷ因子が欠乏している血友病Aと、第Ⅸ因子が欠乏している血友病Bとがあることからして、これらのいずれかの区別をするには凝固因子活性化検査などを追加検査する必要があります。

2017年8月15日火曜日

血液凝固機能検査ー1.プロトロンビン時間ー

プロトロンビン時間(PT:Prothrombin Time)とは、血液中の止血作用を担う凝固因子の働きを調べる検査です。

プロトロンビン時間は、凝固外因系共通の検査で凝固第Ⅰ・Ⅱ・Ⅴ・Ⅶ・Ⅹ因子の総合的活性を反映しています。

【検査の目的】

血液凝因子は12あります。

血管内で働くものを内因系と呼び、血管外で働くものを外因系と呼びますが、プロトロンビン時間は外因系の凝固因子の異常を見つけるために行なわれる検査です。

外因系の凝固因子はタンパクで肝臓で合成されることから、肝硬変や肝臓がんなどにより、肝臓のたん白合成能力が低下すると、プロトロンビン時間は長くなることから、肝機能検査のひとつとしても検査されます。

心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症が起こった場合や、心臓の手術の時には抗凝固剤を用いますが、過剰に投与すると血液が固まらなくなる危険があることから、抗凝固剤の使用適量を調べるための指標としても検査されます。

【検査原理】

プロトロンビンは血液凝固因子の第II因子で、トロンボプラスチンという物質を加えると固まります、そのことから血漿にトロンボプラスチンを加え、固まるまでの時間を測定したものが、プロトロンビン時間(PT)です。

【検査方法】

自動分析器により測定します。

【基準値】

秒数:10~15秒

プロトロンビン活性値:80~120%

プロトロンビン比(検体凝固時間/対照凝固時間):0.9~1.1

プロトロンビン時間 国際標準比(PT-INR)1.0

※検査に使用する機器により基準値は施設ごとで異なる場合があります※

【異常値】

プロトロンビン時間の延長・・・まず第Ⅶ因子欠乏異常症などの先天的な病気、肝炎や肝硬変など肝細胞障害、心不全、悪性腫瘍、ビタミンK欠乏症、プロトロンビン欠乏症などの病気が疑われます。

プロトロンビン時間の短縮・・・凝固因子などの製剤を投与している、血栓症、妊娠、生理的変動

※プロトロンビン時間が短縮している場合は一般的には症状はありません※


【異常が認められた時には】

活性化部分トロンボプラスチン時間など、ほかの血液凝固に関する検査を実施します。

肝硬変などの肝臓病の場合には、ほかの肝機能検査を合わせて実施します。

【プロトロンビン時間の検査の注意点】

プロトロンビン時間の検査は、困難な点が多く、数値の変動が比較的多い検査ですから一回だけの検査結果だけで異常値が出ても、すぐには異常とは判断できませんので、再検査の必要があります。

心臓病などの血栓症予防として抗凝固剤を服用していると、凝固時間が延長しますから検査の前にその情報を得ておく必要があります。

2017年8月3日木曜日

性行為感染症についてー6.梅毒の流行が依然として収まらない!!ー

梅毒診療の専門家は、患者が増えるにつれて非典型例(梅毒特有の症状を呈さない症例)も増えてくるとし、「見逃しを防ぐために、どの診療科においても梅毒抗体検査のルーチン化が肝要」と指摘しています。

梅毒を見た医師が少ないことや、正しい検査の受け方や解釈を分からない医師が多いことから、かなりの梅毒患者が見逃されているとの指摘もあります。

国立感染症研究所のIDWR速報データ(2017年第28週)によると、7月10日? 7月16日までの1週間で梅毒の報告数が61人だった。2017年累計では2880人となり、半年ですでに、昨年1年間(4518人)の60%を超えています。

 都道府県別では、2017年第28週までの累計で、東京都が905人と最多となっている。大阪が378人、愛知県が169人、神奈川県が163人、福岡県が136人、埼玉県が110人と続いている。島根県が0人だった以外、全ての都道府県から報告されており、地域的な広がりも見せています。

以下に2007年から2017年までの患者数を示しますが、患者の増加は衰える気配は一向にありません。

2007   719人
2008   839人
2009   691人
2010   621人
2011   827人
2012   883人
2013  1220人
2014  1661人
2015  2660人
2016  4518人
2017  2880人※(2017年7月16日時点)

梅毒はコンドームを使用しても完全には感染予防が出来ず、オーラルセックスでも簡単に感染しますから、オーラルセックスを含めて不安な行為を一度でもしてしまった場合は、必ず梅毒検査を受けることです。

梅毒流行の影にHIV流行があることを忘れてはなりません。