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2026年5月8日金曜日

帯状疱疹今昔物語ー第3回:たかが痛みと侮れない、「帯状疱疹後神経痛(PHN)」の恐怖


帯状疱疹の本当の怖さは、皮膚の症状が治まった後に続く「痛み」にあります。


◎執拗に続く後遺症

最も代表的な合併症が**帯状疱疹後神経痛(Postherpetic neuralgia:PHN)**です。

※Postherpetic neuralgia:ポストハーペティック・ニューラルジア※

ウイルスによって神経が傷つけられることで、数ヶ月から数年にわたり激しい痛みが残ることがあります 。

帯状疱疹後神経痛(PHN)は、帯状疱疹の皮膚症状(発疹や水ぶくれ)が治った後も続く、非常に厄介で強い痛みのことです 。


1. なぜ痛みが続くのか?

原因ウイルスである「水痘・帯状疱疹ウイルス」が、神経そのものを激しく攻撃して傷つけてしまうためで皮膚が再生しても、傷ついた神経が炎症を起こしたり過敏になったりしているため、痛みの信号が脳に送られ続けてしまいます 。


2. 痛みの特徴

・性質: 「焼けるような」「ズキズキする」「電気が走るような」と表現される鋭い痛みです 。

・期間: 数ヶ月から、重症化すると数年にわたって続くことがあります 。

・QOLへの影響: 激しい痛みにより、睡眠不足や抑うつ状態を招き、日常生活の質を大きく低下させます 。


3. リスクと予防のポイント

・高齢者ほどなりやすい: 帯状疱疹の発症リスクは50歳から急増し、高齢になるほどこの後遺症(PHN)が残りやすくなります 。80歳以上では3人に1人が帯状疱疹を発症すると推定されています 。

・治療薬の限界: 抗ウイルス薬などの治療薬はありますが、発症した後に投与してもPHNを完全に防ぐことは医学的に困難です 。

・ワクチンによる予防: 最新の不活化ワクチン(シングリックス)は、PHNの予防効果が約88.8%と非常に高いことが報告されています 。

この痛みは「なってから治す」のが難しいため、ワクチンによる事前の予防が極めて重要視されています 。


◎合併症のリスク

・高齢者ほど高リスク: 80歳以上では3人に1人が帯状疱疹を発症すると言われ、PHNへの移行率も高くなります 。

・薬だけでは防げない: 優れた治療薬はありますが、発症してからでは後遺症を完全に防ぐことは困難です。そのため、**「かからないための予防」**が医学的に極めて重要視されています 。

【参考資料】

『帯状疱疹後神経痛 疼痛JP』

続く

2026年5月7日木曜日

感染症速報ークルーズ船でのハンタウイルス集団感染(2026年5月)

 


2026年5月初旬、大西洋を航行中のクルーズ船でハンタウイルスの集団感染が発生したというニュースが入ってきました。WHO(世界保健機関)などの報告に基づき、ニュースの概要とウイルスの正体について解説します。


1. ニュースの概要:クルーズ船での集団感染(2026年5月)

現在報告されている主な状況は以下の通りです。

まる発生場所: アルゼンチンから南極などを経て大西洋を北上中だったクルーズ船「MVホンディウス(Hondius)」  

◎被害状況: 2026年5月4日時点で、3名が死亡、2名が確定診断、その他5名の感染が疑われています。乗客には日本人も1名含まれているとのことです。  

◎現在の状況: 船は西アフリカのカーボベルデ沖に停泊しており、感染拡大を防ぐため乗客・乗員は船内隔離などの措置が取られています。


2. ハンタウイルスとは?

ハンタウイルスは、主にネズミなどのげっ歯類が媒介するウイルスです。  

◎感染経路

・空気感染が中心: 感染したネズミの尿、糞、唾液に含まれるウイルスが乾燥し、ホコリと一緒に舞い上がったものを吸い込むことで感染します。  

・接触・噛傷: ネズミに直接噛まれたり、排泄物に触れた手で口や鼻を触ったりすることでも感染します。  

・ヒトからヒトへの感染: 基本的にヒトからヒトへは移りにくいですが、南米の「アンデスウイルス」という種類では、ごく稀に濃厚接触による家族内感染などが報告されています。

◎主な症状

潜伏期間は通常1〜8週間で、初期は風邪やインフルエンザに似ています。  

・初期: 発熱、頭痛、筋肉痛、腹痛、吐き気。

・進行後(重症化): 肺に水が溜まる「肺症候群(HPS)」や、腎不全や出血を引き起こす「腎症候群(HFRS)」に発展し、致死率は種類により1%〜35%と非常に高くなる場合があります。


3. なぜクルーズ船で発生したのか?

現在調査中ですが、以下の可能性が検討されています。

・環境への接触: 船が南極や離島などの「野生動物が豊かな地域」に寄港した際、乗客が野生動物の生息地に立ち入って感染した可能性。  

・船内環境: 船の中にネズミが入り込み、換気の悪い場所でウイルスが飛散した可能性。


4. 予防と対策

  現時点で有効なワクチンや特効薬はありません。早期の対症療法が生存率を高める鍵となります。  

・ネズミを寄せ付けない: 食べ物を密閉し、ネズミの侵入経路を塞ぐ。

・掃除の際は注意: ネズミのフンがある場所を掃除するときは、乾燥したまま掃かない(ウイルスが舞うため)。消毒液や水で湿らせてから拭き取ることが推奨されます。  


今回のクルーズ船のケースは非常に珍しい事例ですが、一般的な旅行者が過度に恐れる必要はありません。ただ、野生動物の排泄物があるような古い小屋や換気の悪い場所には近づかないよう注意が必要です。


【参考資料】


『疾病発生ニュース ハンタウイルス集団感染はクルーズ船旅行に関連、複数国に及ぶ』

『ハンタウイルス感染症(腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群)(Hantavirus Infection)』

『ハンタウイルス肺症候群(詳細版)』