血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2025年3月9日日曜日

HIVとAIDSの話-1.はじめにー

 HIVとAIDSについて解説していきますのでお付き合いください。


HIV(Human Immunodeficiency Virus:ヒト免疫不全ウイルス)は、体内の免疫細胞を破壊するウイルスでHIVに感染すると、免疫力が低下し、日和見感染症や悪性腫瘍などの重篤な病気にかかりやすくなります。


AIDS(acquired immunodeficiency syndrome:後天性免疫不全症候群)は、HIV感染によって引き起こされる病気の総称でHIVに感染してから2~5年程度と早く発症する事例が多く見られますが、早期発見・早期治療により、AIDSの発症を予防することができます。


HIVの感染経路は、主に以下の3つです。


1.性行為によって


男性同性間性交、異性間性交、肛門性交、激しいオーラルセックスなどによって起こります。


2.血液を介して


血液製剤の輸血、針刺し事故、刺青やボディピアスなどによって起こります


2.母子感染


妊娠中、出産時、授乳時などに母親から子供に感染することがあります。


HIVに感染しているかどうかは、血液検査で調べることができます。


検査結果が陽性の場合、医療機関を受診して治療を受けることが大切です。


現在、HIVの治療薬は非常に進歩しており、適切な治療を受ければ、健康的な生活を送ることができます。


また、感染を予防するために、コンドームや注射針の共有を避けるなどの対策をとることも重要です。


以下に、HIVとAIDSの予防対策をまとめます。


1.性交渉の際には、コンドームを着用する。


2.針刺し事故に気をつけることや刺青・ボディピアスの際には、使い捨ての器具を使用する。


※針刺し事故は医療従事者以外に起こることはまずありません※


3.妊娠を希望する女性は、妊娠前と妊婦健診の際にHIV検査を受ける。


4.HIV感染のある女性は授乳を中止する。


5.日常生活でのHIV感染はまず起こることはありません。


HIVとAIDSは、適切な対策をとることで、予防や治療が可能な病気です。正しい知識を身につけ、感染予防に努めましょう。

2025年3月2日日曜日

薬を飲みやすくするために砕いて服用してもよいのか?

 薬の種類は多くあり飲みにくい薬もあります。

そのことから最近では薬を砕いて服用する人が増加しています。

果たして薬を砕いて服用してもなんの問題もないのでしょうか?

結論から言いますと砕いて飲んではいけない薬は存在します。

【薬の種類】

腸溶錠や徐放錠、舌下錠など、表面がコーティングされている薬や、胃への刺激性がある薬など多種あります。

【砕いてはいけない薬の理由】

・腸溶錠:胃酸によって変化したり、胃を刺激するために、胃では溶けにくく腸で溶ける膜が施されていることから粉砕すると胃に負担がかかります。

・徐放錠:薬の成分がゆっくりと溶け出し、効果が長く続くように加工されていることから粉砕すると、一気に成分が吸収され、血液中の薬の濃度が上がりすぎてしまい危険です。

・舌下錠:口の粘膜から吸収されるように作られているので、粉砕して飲み込んでしまうと効果がありません。

※コーティング錠とは、錠剤の表面をフィルムや糖衣でコーティングした製剤で苦味や臭いのマスキング、光や湿気による安定性の向上、粉落ちの防止、体内での溶ける時間の調節などの効果があります。※

【砕いても良い薬】

口腔内崩壊錠(OD錠、チュアブル錠、 素錠)

・口腔内崩壊錠(OD錠)とは、口の中で唾液や少量の水で溶ける錠剤で水なしで服用でき、高齢者や嚥下機能が低下した患者、水分の摂取制限が必要な患者などに適しています。

・チュアブル錠とは、口の中で噛み砕いて服用する錠剤です

・素(裸)錠 :薬の成分を錠剤の形に圧縮し、表面は何も加工していないもの。 

※苦味や臭いをマスクしているため、嚥下機能低下患者に粉砕し調剤することで、苦味 が強く服薬が難しくなる可能性がありますし、薬の有効成分がゆっくり溶け出すようにした製剤のために砕くとその効果が発揮できません。

近年錠剤の薬を飲みやすくするため砕いて粉にする「便利グッズ」として「お薬クラッシャー」があり、ネット上では数多くの製品が販売されていて、すべての薬が砕くと飲みやすなるような宣伝がされていますが、砕いてはいけない薬を砕いて服用すると効果減少したり、思わぬ副作用が起こることがあります。

確かに服用しにくい薬もあったり、錠剤を飲み込むのが苦手な人のほか、飲み込む力が衰えた高齢者や錠剤に慣れない子どもいることは事実ですが、あくまでも薬は副作用が起こりにくく、そして効果があるように服用する必要があります。

そのためにはそれぞれの薬の服用方法を厳守して服用する必要があります。

飲みやすくなるから何でもかんでも砕いて服用することはやめてください。



2025年2月23日日曜日

非アルコール性脂肪性肝疾患検査-2.非アルコール性脂肪性肝疾患検査「イムニス サイトケラチン18F EIA」について-

 イムニス サイトケラチン18F EIA」は、血清中のCK-18F(M30)を測定する酵素免疫測定法試薬です。


【使用目的】


血清中のヒトサイトケラチン18フラグメント(CK-18F)の測定 (非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)診断の補助)


【検査原理】


特徴ワンステップのサンドイッチ酵素免疫測定法(EIA)でNASHの診断補助に使用する体外診断用医薬品


【特徴】


NASHの特徴のひとつである風船様変性、疾患活動性の病理学的指標とされるNAFLD activity score(NAS)を反映し、リスクの高いNASHの絞り込みに有用


【検査時間】


測定時間は1時間30分


【基準値】


260未満 U/L


1.260U/L以上:ほぼ確実に非アルコール性脂肪肝炎が高いので肝臓専門医の診察が必要となる


2.260未満 U/L:非アルコール性脂肪肝炎の可能性は低いことから経過観察


【参考資料】


『イムニス サイトケラチン 18F EIA』

2025年2月16日日曜日

非アルコール性脂肪性肝疾患検査-1.非アルコール性脂肪性肝疾患検査とは-

 非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)とは、アルコールを多量に飲まない人でも、肝臓に脂肪が蓄積する病気です。


主な原因は、肥満、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や、遺伝的要因などが考えられています。


NAFLDは、初期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると肝炎、肝硬変、肝がんなどに進行する可能性もあります。


NAFLDの診断には、血液検査、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査などが行われます。


治療は、食事療法、運動療法、薬物療法などが行われます。


NAFLDは良性の経過をたどる単純性脂肪肝と、肝硬変や肝癌に進行する可能性がある非アルコール性脂肪肝炎 (nonalcoholic steatohepatitis: NASH)に分かれます。

わが国にはNAFLDが約1,000万人、NASHが約100~200万人いると推定されます。


【参考資料】

2025年2月9日日曜日

薬局でジェネリックを拒否し先発薬希望で"特別の料金追加"加算の新たな仕組み

 2024年10月からジェネリックを拒否し先発薬希望で"特別の料金追加が発生する新しい仕組みをなかなか理解できずに薬局でトラブル事案が発生していることから、今回はこのことについて解説させていただきます。


【2024年10月から始まる薬に関する新しい仕組み】


10月から使用感や味など薬の有効性とは関係がない理由(患者の都合)で先発医薬品を

希望すると"特別の料金"がかかり、患者自身の負担となります。


その料金は先発医薬品とジェネリックの価格差の4分の1相当の料金のことを言います。


【対象となる薬とは】


いわゆる長期収載品と呼ばれる、同じ成分のジェネリックがある先発医薬品が対象と

なります。


 ※ジェネリックの存在しない薬は対象とはなりません※

 

【特別料金は誰にでもかかるのか?】特別料金は誰にでもかかるのか?


普段は薬局での薬代がかからないお子さんなどの場合でも、味の好みなどの理由から

先発医薬品を希望すると"特別の料金"が発生します。


例外としては、患者がそのジェネリックを使用して副作用を起こしたことがあるなど、

医療上の必要がある場合は"特別の料金"は発生しません。


薬局の製造流通が要因となり薬局にジェネリックの在庫がなく、先発医薬品で薬をも

らった場合も特別の料金はかかりません。


【どうしても先発医薬品を希望する場合はどうするの】


どうしても先発医薬品が欲しいという人は、まずは診察時に医師に相談してみてくだ

さい。


医療上の理由で先発医薬品による薬物療法が必要と医師によって判断された場合には

特別の料金はかかりません。


医師により医療上の必要性が認められると処方箋の「変更不可(医療上の理由)」欄

にチェックを入れてもらえば先発医薬品でも"特別の料金"は発生しません。


処方箋の「変更不可(医療上の理由)」欄にチェックがないと「患者希望」の欄にチ

ェックが記載されてしまいシェネリック処方となります。


医師が処方箋を発行する際に「変更不可(医療上の理由)」欄にチェックを入れない

で、薬局で変更はできませんので必ず診察時に医師に申し入れることです。


今回の改悪の趣旨を丁寧に説明しない薬局もありますので注意が必要です。

                 処方箋見本




2025年2月2日日曜日

2024年1年間の梅毒の現状

2024年の梅毒患者報告数は、全国で14,663人でこれは、感染症発生動向調査の全数把握感染症に定められた1999年以降で2023年に報告された14,906人に次ぐ2番目に患者数となっています。

細菌では10~20代の若年層の女性に多く感染しています。 

【調査できた11802人の梅毒の病期】

◯男性 同性愛感染者 1259

早期顕症Ⅰ 367

早期顕症Ⅱ 474

無症候  403

晩期顕症 15

◯男性 異性間感染者 6267

早期顕症Ⅰ 4014

早期顕症Ⅱ 1480

無症候  705

晩期顕症 68

◯女性 異性間感染者 4276

早期顕症Ⅰ 1049

早期顕症Ⅱ 1780

無症候  1428

晩期顕症 19

【無症候梅毒の分析】

◯男女合計

2536/11802 21.5%

◯男性

1108/7526 15.3%

◯女性

1428/4276 33.4% 

※梅毒とトレポネーマに感染しても梅毒特有の症状を呈さない患者がかなり見られ特に女性の場合に多い傾向があります※

※無症候梅毒は感染に気づくことなく感染者を広げる危険性が高いことから、不安な行為をしてしまったら必ず適切な時期に梅毒検査を受けることが感染者増加を防ぐ手段となります※

2025年1月26日日曜日

ヒトメタニューモウイルスとは

ヒトメタニューモウイルス(hMPV; human metapneumovirus)は、2001年にオランダで急性呼吸器感染症患児の鼻咽腔吸引液から初めて分離発見された比較的新しいウイルスで、風邪の原因の一つとして知られていて、特に乳幼児や高齢者では重症化することもあり、注意が必要です。

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は感染力が非常に強く、飛沫感染や接触感染によって広がります。

※抗体調査の結果からこのウイルスは50年以上前からヒトの間で流行しており、従来原因不明とされていた呼吸器感染症の病原体のひとつと考えられます(呼吸器感染症患者検体におけるHMPV陽性率は10-20%程度)※

【感染経路】

咳やくしゃみなどの飛沫を吸い込むことで感染する飛沫感染。

ウイルスが付着した手や物に触れ、その手で口や鼻を触ることで感染する接触感染。

【感染期間】

症状が出る5日前から症状発症後1~2週間の間、他者にウイルスを伝播する可能性があるります。

解熱してからは感染力はかなり低下するといわれています。

【症状】

3~5日ほどの潜伏期間を経て、風邪に似た症状で咳、発熱、喘鳴などの症状が現れます。

一般的には症状は1週間ほどで治まることがほとんどですが、重症化することもありますので、乳幼児は特に注意が必要となります。

重症化した場合には、気管支炎、肺炎を発症します。

【治療】

インフルエンザに対するタミフルのような特効薬はなく、症状を緩和させる薬が中心に処方されるれ対処法となります。

抗生物質は効き目がないことから基本的には使用しません。

【検査法】

イムノクロマト法を利用とした『ヒトメタニューモウイルスキット  クイックチェイサーhMPV』があります。

詳しくは以下を参照してください。

『クイックチェイサーhMPV』

【感染経路・感染率】

ヒトメタニューモウイルス感染症の感染経路は、感染者の咳や飛沫がついたものに触れることです。

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)の感染確率は、2歳までに約30%、5歳までに約75%、10歳までにほぼ100%と言われていて、感染力が強いウイルスで発症は繰り返されます。

【予防】

ヒトメタニューモウイルス感染症の感染対策としては、手洗いやマスクの着用など、飛沫感染および接触感染対策が重要です。

家庭内に感染者がいる場合は、食器やタオルを分けて使用しましょう。