血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2024年7月28日日曜日

アメーバ赤痢抗原検査

 性感染症の中で梅毒の増加は世間を騒がせていますが、その裏で静かに増加しているのが赤痢アメーバ症です!!

発展途上国では汚染された食べ物を口にすることで感染することの多い病気ですが、衛生環境が維持されている先進国ではむしろ性行為での感染が増えているのが現実です。

潜伏期間は2~4週間で、典型的な症状は下痢、高熱、しぶり便、それに排便時の下腹部痛など大腸炎の症状を繰り返します。

診断の決め手となるのは、イチゴ状の粘血便です。

トイレットペーパーに血がつくため痔と間違える患者さんもいます。

2024年初からの新規感染者報告数は272人で、前年同期の255人を上回っています。

【検査法】

①顕微鏡下での病原体検査

② ELISA法またはイムノクロマト法による抗原検査

③ PCR 法による病原体遺伝子検査(一部の研究施設でしか利用できない)

④赤痢アメーバ抗体検査(2017年に検査薬製造中)

※現在の検査法※

糞便を直接または生理食塩水で溶解し、カード式の検査キットで判定する「糞便迅速抗原検査」が用いられます。

これは特別な機器は不要で、30分以内に感染の有無を判定できます。

この検査は、栄養型の表面タンパク(レクチン)に対するモノクローナル抗体を用いたイムノクロマト法で栄養型を検出するため、特異度が高く、偽陽性の頻度は極めて低い検査法です。

【参考資料】

赤痢アメーバQUIK CHEK


リミング(肛門を舐める)・肛門性交・肛門性交をした後にキスやフェラチオをするなどの行為でアメーバ赤痢は感染しますのでこれらの行為を慎む必要があります。

2024年7月21日日曜日

ご注意!! 新型コロナウイルスの第11波に突入!!

 新型コロナウイルスが再び、猛威を振るいはじめました。


全国約5000の定点医療機関から2024年7月8~14日に報告された感染者数は55072人で10週連続で増加し、感染「第11波」に入ったとの見方が強まっています。


現在流行の主流となっているのは、KP.3株です。


現在ま流行している『KP.3』は『BA.2』の子孫の子孫がさらに変異したものです。


「オミクロンKP.3株は親系統株であるオミクロンJN.1変異株と比較しても、より高い免疫逃避能を保持し、高い免疫逃避能を保持する」としています。


このような現状から、今後JN.1株系統である「KP.3株」を中心に対策していくことになると考えられます。


「KP.3株はこれまでの従来株よりも重症化しやすいウイルスである証拠は今のところありません」。


KP.3株が主流株の割合を増やしているのにも関わらず死亡者数の増加に至っているわけではありません。


少なくともこの夏の間、感染がどんどん広がっていく可能性が高くそれが最終的にどの規模になるのかは現時点では分かりません。


要するに新型コロナと共存する時代にはなりつつありますが、新型コロナは完全には収束していません。


これからも従来通りの感染予防対策が必要です。


2024年7月14日日曜日

新しいエイズ治療薬レナカパビルについて-2.新しいHIV予防薬レナカパビルがHIV感染予防役として使用できる可能性について-

 


この治療薬が今回の第III相臨床試験結果によって、新しいHIV予防薬レナカパビルとして期待されているわけです。


16歳から25歳の女性と少女2,134人を対象としてウガンダと南アフリカで行われた臨床試験は極めて高い予防効果が得られています。


2,000人以上の患者がレナカパビル注射による投与を行い、臨床試験期間中にHIVに感染した患者は一人もいなかった。



臨床試験の人口統計は16歳から25歳の若い女性に焦点を当てて行われましたが、この人口層は南部アフリカでHIVの影響が最も大きいとされています。


多くの研究者たちが、この薬による予防効果に驚愕しています。


従来のHIV予防の選択肢は処方通りに服用された場合非常に効果的であることはわかっていますが、PrEPのために半年ごとのレナカパビルは、経口PrEPピルを服用または保管する際に直面する可能性のあるスティグマや差別の解消に役立ち、半年ごとの投薬スケジュールによりPrEPの遵守率と持続性の向上に役立つ可能性があります」とベッカーは説明した。



レナカパビルは、毎日服用する2つの経口薬であるツルバダ (Truvada)とデシコビ(Descovy)と比較された。これらは、HIV予防のためのPrEP(曝露前予防内服)として成功を収めている。


ツルバダのグループでは、試験期間中に1,068人中16人の女性がHIVに感染し、デシコビのグループでは、2,136人中39人の女性がHIVに感染しましたが、レナカパビル注射による投与グループにおいては感染者はなかった。


日本においてもレナカパビルをHIV予防のためのPrEP(曝露前予防内服)として承認する動きが活発になってきていることから、意外と早く承認される可能性があります。


HIV予防における「最も重要な」進展の一つ

南アフリカのデズモンド・ツツHIVセンターの所長であるリンダ・ゲイル・ベッカー教授は、この注射が人々に「重要な新しい選択肢」を提供する可能性があると述べた。


【参考資料】

新しい年2回注射薬レナカパビル、HIV治療におけるこれまでで最大の進歩と称賛される


2024年7月7日日曜日

新しいエイズ治療薬レナカパビルについて-1.レナカパビルとはどのような薬-

HIVに関する医療は目を見張るものがありますが、日本国内のHIV報告件数は7年ぶりに増加しています。


現在HIV感染を早期に発見し、早期に適切な治療を続けていればエイズの発症を防ぐことができ、これまで以上に長く健康的な社会生活を送れるようになってきています。


HIV感染を未然に防ぐ対策と果ては、当然のことながらコンドームによる予防がありますが、PrEP(曝露前予防内服)の効果は世界に認められ使用していますが、日本国内でおいては未だに保険適応が認められていません。


しかし現実としてゲイの間では、PrEPを利用している人が多く存在していることは周知の事実です。


今回新しいHIV感染症の予防薬のレナカパビルが、臨床試験においてHIV予防で100%の有効性を示したとの報告があり期待されています。


それではレナカパビルとは、どのような薬なのでしょうか?


米国リフォルニア州フォスターシティに本社を置く世界第2位の大手製薬会社であるギリアド・サイエンシズが開発したHIV感染症の予防薬です。


このレナカパビルは、年2回投与のHIV予防薬で経口投与と皮下投与の両方に対応しています。


従来からあるHIV予防薬であるツルバダは、1日1回服用する必要がありますが新しいレナカパビルは年2回の服用か皮下注射で予防効果が発揮されるという画期的なHIV予防薬です。


レナカパビルはレナカパビルナトリウムで、HIV-1のカプシドタンパク単量体間の界面に直接結合して、HIV-1のカプシド機能を多段階で選択的に阻害する抗ウイルス薬です。


他の抗レトロウイルス薬との併用により、多くの治療歴を有する多剤耐性HIV感染者に対するHIV治療薬として使用されます。


多剤耐性HIV-1感染症治療薬・レナカパビルは、2023年6月2日日本で承認申請され、


2023年8月1日に日本国内で多剤耐性HIV-1感染症の治療薬として製造販売承認を取得しました。


レナカパビルはHIV-1感染症に対する初のクラスとなる「カプシド阻害薬」に分類される薬剤で唯一の年2回投与の治療選択肢となります。


このレナカパビルがどのようにして、HIV予防に寄与するかは次回詳しく述べたいと思います。

 

2024年6月30日日曜日

先天性梅毒の怖さ

先天性梅毒とは、梅毒トレポネーマに感染して治療を受けなかった女性が妊娠中に胎盤を介して赤ちゃんに梅毒トレポネーマを感染させてしまうことです。


妊娠中の梅毒感染は特に危険で、死産や早産につながったり、生まれた赤ちゃんに神経や骨の異常をきたしたりする可能性が極めて高くなります。


先天性梅毒は、生後数ヶ月以内に現れる「早期先天梅毒」と、生後2年以降に現れる「晩期先天梅毒」に分類されます。


・早期先天梅毒は、水疱、丘疹、赤銅色の発疹など特徴的な皮膚の症状、リンパ節腫脹、肝脾腫などを起こします。


・晩期先天梅毒は、実質性角膜炎、難聴、歯のエナメル質の形成不全(ハッチンソン歯)などを引き起こします。


先天梅毒は2022年では年間で20例の報告数がありましたが2023年では7月5日の時点で既に20例の報告数となっています。


特に最近の若い女性の梅毒患者増加によって先天梅毒の増加にも繋がっているということがわかるはずです。


生まれてくる子供には何の罪もありませんので、妊娠が判明すれば必ず妊婦健診を受けることです。


妊婦健診では梅毒検査を実施します。


この梅毒検査は、妊娠4~12週の妊娠初期と妊娠後期に受ける必要があります。


※最近では妊婦健診を受けない妊婦の増加による先天性梅毒が発生しています※


梅毒感染を早く知り、早期に治療することにより先天性梅毒は予防可能です。 

2024年6月23日日曜日

妊婦の梅毒患者増加!!

 妊娠した女性の症例数は2021年に187例だったものが、22年には267例、23年には383例と前年比1.4倍程度で増加し、2023年は女性症例に占める妊娠症例の割合が7.2%となり、数と割合のいずれも増加しています。


2019年 208人

2020年 185人

2021年 187人

2022年 267人

2023年 383人


妊娠初期に適切な治療を受ければ胎児への感染リスクを予防可能ですが、現在妊娠初期の妊婦健診を受けないことが増加した結果、梅毒の診断を受けたときの妊娠週数が中期以降であった症例の割合は、2022年以降減少したものの、依然として40%を超えていいます。


日本では、妊娠初期の妊婦健診で梅毒のスクリーニング検査が実施され、早期の発見につなげようとしていますが、しかしながら妊婦健診を受けない妊婦もいることから、別の機会で妊娠初期に検査を受けられる機会を提供することも重要だと考えられています。


また妊娠している女性で梅毒と診断された後、流産(2022年3例・2023年2例)や死産(同11例・9例)、人工妊娠中絶(同43例・28例)に至ったケースが報告されています。


現在の感染症発生動向調査では届出が義務化されていないことから、正確に把握できていない可能性があるのと、梅毒と流産・死産などのの関連も定かではないという現実があります。

【梅毒トレポネーマの感染防止と先天性梅毒の防止には】


以下のことを厳守する必要があります。

1.兎に角男女ともに梅毒に感染しすような行為をしてしまった場合、必ず適切な時期に検査を受ける。


2.結婚前にはお互い梅毒を含む性感染症検査を受ける。


3.妊婦健診時の梅毒検査は、妊娠初期と中期に必ず受ける。


2024年6月16日日曜日

HIV再流行の兆し!!

 梅毒、淋病、クラミジアなどの性感染症の増加もさることながら、その影でHIVの再流行が危惧されています。


『HIV検査体制の改善と効果的な受検勧奨のための研究-令和5年度 総括・分担研究報告書-』によりますと、2022年のHIVの検査実施数は42805件で陽性者数が72件だったのに対し、2023年は検査数が63120件で陽性者数は116件と1年で大きく増加しているという現実を突きつけられることになりました。


要するに新型コロナウイルスの流行でHIV検査数が減少しただけで、実質は水面下でHIVの流行は起こっていたことになります。


新型コロナウイルスの流行が収まり、HIV検査を受ける人が戻った結果、なんとHIV流行が起こっていたということなのです。


要するにHIV検査を受ける人が減少した結果、HIV感染者が減少していたという皮肉な話だったわけです。


現在HIVに感染しても早期発見早期治療によって死に至ることはなく、天寿を全うすることが可能となっています。


※エイズを発症してしまってからの治療効果は芳しくありません※


またコンドームを正しく要することにより感染はほぼ予防可能です。


更に『曝露前予防内服』『曝露後予防内服』の進歩による感染予防も高い効果を得ています。


HIVは性行為と血液を介して感染し、HIV感染者と一緒に食事やおしゃべりをしたりしても感染しませんし、蚊などの昆虫が媒介することもないし、唾液で感染することもありません。


要するにほぼ100%近く感染予防ができるわけです。


大切なことは一人ひとりが正しい感染予防を行い、危険な行為をしてしまったら必ず適切な時期にHIV検査を受けることです。


そうすることによりHIV流行を過度に恐れることはなく、正しく感染予防が可能となります。