血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2016年9月1日木曜日

電解質検査-2.ナトリウム(Na)-

電解質のひとつであるナトリウム(Na)について解説いたします。


ナトリウムは、身体にはなくてはならない電解質のひとつで、そのほとんどは血液や体液の中に存在しています。

体内の水分バランスを保持することと、神経、筋肉が正常に働くようにすることなどの重要な役割を担っています。

ナトリウムは、日々食べる食物や飲み物から体内に取り込まれます。

そして尿や汗とともに体外に出ていきます。

腎臓は尿の排出をコントロールすることで、体内のナトリウム濃度の数値が一定にするように働いています。

ナトリウムが高くなりすぎると、心臓、血管、腎臓にある感覚器官がそれを察知し、腎臓を刺激してナトリウムの排出量を増やし、それによって血液量を正常に戻します。

逆に、ナトリウム濃度が低くなりすぎると、感覚器官は血液量を増やすしくみを作動させます。

【ナトリウム(Na)の働き】

からだの水分を調節することです。

【検査方法】

イオン選択電極法で調べます。


【基準値】

ナトリウム(Na)…135~150mEq/l(イオン選択電極法)

※検査方法や施設によって若干異なります※

【異常値】

ナトリウムが多すぎると、これを薄めるために体内に水が溜まることになり、むくみや高血圧の原因になります。

高値・・・嘔吐、下痢などによる脱水症、尿崩症、糖尿病、アルドステロン症、クッシング症候群など

低値・・・腎不全、ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下、心不全など

注意・・・下痢や嘔吐を繰り返した時や利尿薬を利用している場合も値が低くなります。

【注意】

ナトリウムは大切であるかを摂取するために塩分を摂らなくてはと意識する必要は全くありません。

なぜなら私たちは普段の生活でむしろ塩分を摂りすぎの可能性が高いからです。

ナトリウムの1日の摂取基準は食塩相当量で【男性8.0g未満】、【女性7.0g未満】。

しかし平成21年の国民健康・栄養調査の結果によりますと、1日当たりの食塩摂取量は成人全体で11.4gとなっており、基準量よりもかなり多くの塩分を取っていることになります。

2016年8月23日火曜日

電解質検査-1.電解質とは-

人間の体はおよそ60%の水分で出来ています。

この水分は細胞内液や血漿などの体液として存在しています。

体液はさらに、水に溶けて電気を通すミネラルイオンであるナトリウムイオンや塩素イオンなどの電解質と、水には溶けるが電気は通さないブドウ糖や尿素などの非電解質とに分類されます。

【電解質とは】

電解質(イオンとも呼ばれます)は、身体の細胞の浸透圧の調節や筋肉・神経細胞の働きを円滑にするために必要不可欠なものです。

また電解質は、多すぎても少なすぎても細胞や臓器の機能が低下し、命にかかわることがあります。

【電解質の役割とは】

身体は電解質が神経や筋肉を調整することで維持されており、さらに、酸と塩基、水分のバランスを調整、維持しています。

身体が正常に働くためには、体液のバランスが必要なのです。

体液のバランスを保つためには、電解質の濃度、つまり電解質平衡を維持することが重要となります。

【電解質の種類】

主な電解質には、ナトリウム(Na)・カリウム(K)・クロール(Cl)・カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)・重炭酸イオン(HCO3)があります。

これらは5大栄養素であるミネラルに属し、ミネラルは水に溶けると陽イオンと陰イオンに分類されます。

一例を揚げますと。塩化ナトリウム(NaCl)は、水に溶けるとナトリウムイオン(陽イオン)とクロールイオン(陰イオン)になります。

【電解質を調べると何がわかるのか】

陽イオンと陰イオンは、バランスを保ちながら体液中に存在し、血液の浸透圧を保っていることから、体液中のイオン濃度を測定することにより、バランスの崩れを調べて体内の障害を診断することが出来ます。

病気になるとこのバランスが崩れ、体内が酸性(アシドーシス)、アルカリ性(アルカローシス)に傾きます。

【電解質の検査方法は】

血液を自動分析機で検査します。

次回から各種電解質について詳細に解説していきます。

2016年8月15日月曜日

ジカ熱-3.ジカ熱とセックス-

流行地から入国(帰国を含む)した男女は、ジカウイルス病の発症の有無に関わらず、最低8週間(パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中)は性行為の際にコンドームを使用するか、性行為を控えることが推奨されています。

つい最近までは、ジカウイルスに感染した男性の精液の中に感染から2ケ月間にわたってジカウイルスの存在が認められていました。

ところが2016年8月11日付の感染症専門誌「ユーロサーベイランス」に、ジカウイルスが6ケ月以上も男性の精液中に残存していた事例が報告されています。

この30代の男性は発症から188日後に精液中にウイルスの遺伝子が検出されたということです。

この事について研究チームは、世界保健機関(WHO)が感染拡大防止のために性行為を控えるよう勧告した期間について「延長が必要になるかもしれない」と指摘しています。

今後ジカウイルスが男性の精液に残存する期間について研究を進める必要がありそうです。

これまで公式に報告された最長期間は93日で、今回の例は2倍になります。

ジカウイルスが各体液の中に感染のどの段階から、どのくらいの期間、どのくらいの量存在するのかについての詳細は分かっていません。

今後の研究で明らかにされていくでしょう。

2016年8月1日月曜日

ジカ熱-2.検査と治療法および予防法-

【検査】

特異的な臨床症状・検査所見が乏しいことから、診断のための検査は、血液または尿からのジカウイルス分離または PCR法によるジカウイルス遺伝子の検出により行います。

また、血清学的検査による診断としては、IgM抗体または中和試験による抗体の検出により行います。

IgM抗体を用いて診断を行う場合は、患者が感染したと考えられる地域で流行中のその他のフラビウイルス属ウイルス(デング熱、黄熱、ウエストナイル熱、日本脳炎等)による先行感染又は共感染がないこと、半年以内の黄熱ワクチンの接種歴がないことを確認する必要があります。

ジカウイルス以外のフラビウイルス属ウイルスによる先行感染又は共感染を認める場合は、ペア血清によるIgM抗体以外の方法による確認試験を実施する必要があります。

これらのことからして血清学的検査による診断は、かなり難しいといえます。

【ジカウイルスを含むもの】

血液、精液、尿、唾液、子宮の頸管粘液、母乳、眼球内の房水から検出されています。

【性行為による感染】

性行為によるジカ熱の感染で男性が感染源となる事例が米国などで多数報告されています。

性感染対策の項目では米国で男性から女性への感染に加え、男性から男性に感染したケースがあったことを指摘しています。

この時点では女性から性行為によってパートナーへ感染した事例は報告されていませんでしたが、2016年7月米国CDCは、性交渉で女性から男性に感染した例を初めて確認したと発表し、注意を呼びかけています。

更にジカウイルスに感染した男性の精子で感染から93日後にもウイルスが確認されたとする論文が発表されています。

【臨床症状・徴候】

潜伏期間は3~12日で、不顕性感染率は約80%と考えられています。

過去の流行では詳細な症状の解析ほとんどされていません。

最近の調査では、発熱(38.5℃を超える高熱は比較的稀)、斑状丘疹性発疹、関節痛・関節炎、結膜充血が半数以上の症例に認められ、筋肉痛・頭痛、後眼窩痛、その他にめまい、下痢、腹痛、嘔吐、便秘、食欲不振などが認められています。

また、ギラン・バレー症候群や神経症状を認める症例が報告され、ブラジルの流行では妊婦がジカウイルスに感染することで胎児が感染し、小頭症児が多発している。

胎児が小頭症と確認された妊婦の羊水からジカウイルスRNAが検出され、小頭症で死亡した新生児の脳の病理組織からもウイルスが検出されています。

ジカ熱そのもので健康な成人が死に至ることは稀ですが、何らかの基礎疾患があり免疫力が低下している場合は死に至ることもあるので注意が必要です。

【治療法】

対症療法のみで効果的な治療法は存在しません。

痛みや発熱に対して解熱鎮痛剤を投与する程度にとどまることがほとんど、脱水症状が強い場合は輸液も実施します。

【予防】

感染予防ワクチンは存在しません。

日中に蚊(ヤブカ)に刺されない工夫が大切です。

具体的には、長袖服・長ズボンの着用、昆虫忌避剤(DEETを含むものが効果が高い)の使用などがあります。

※特に妊婦あるいは妊娠の可能性のある女性はジカ熱流行地への渡航を避けるべきです※

2016年7月18日月曜日

ジカ熱-1.ジカ熱とは-

いま騒がれていますジカ熱について紹介していきたいと思います。

【ジカ熱とは】

ヤブカ属の蚊によって媒介されるジカウイルスによる感染症です。

【いつ発見されたのか】

ジカウイルスは、1947年にウガンダのジカ森林のアカゲザルから初めて分離され、ヒトからは1968年にナイジェリアで行われた研究の中で分離されています。

【流行地域】

中央および南アメリカ大陸、カリブ海地域では20の国や地域に流行が見られます。

【病原体】

デングウイルスと同じフラビウイルス科フラビウイルス属のウイルスです。

【感染経路】

1.蚊からの感染

2.母子垂直感染

3.性的接触からの感染

4.輸血や血液製剤による血液感染

【媒介する蚊】

媒介蚊はヤブカ属のネッタイシマカやヒトスジシマカが媒介蚊として確認されています。
※日本に生息するヒトスジシマカも媒介可能な日の一種です。

【症状】

軽度の発熱、発疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛、倦怠感、頭痛などが主な症状です。

2016年7月4日月曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-9.ダイナスクリーン・HIV Comboの判定(陰性事例と判定無効事例)

陰性・・・・・コントロール判定窓だけに赤色ラインが現れ、抗原判定窓及び抗体判定窓には赤色ラインが認められない場合。



判定無効(再検査)・・・コントロール判定窓に赤色ラインが認められない場合は、陽性・陰性とは判定できず判定無効とし、再度検査を実施する。

(左)抗体判定窓(AB)に赤色ラインが認められても、コントロール判定窓(C)に赤色ラインが認められない。

(左より二番目)抗原判定窓(AG)に赤色ラインが認められても、コントロール判定窓(C)に赤色ラインが認められない。

(左より三番目)抗原判定窓(AG)と抗体判定窓(AB)に赤色ラインが認められても、コントロール判定窓(C)に赤色ラインが認められない。

(右端)抗原判定窓(AB)と抗体判定窓(AB)に赤色ラインが認めらなく陰性と判断できそうですが、コントロール判定窓(C)に赤色ラインが認められないことから陰性ではなく判定無効。









2016年6月29日水曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-8.ダイナスクリーン・HIV Comboの判定(陽性事例)

検体滴下20分後にコントロールラインと抗原判定ライン及び抗体判定ラインを肉眼で観察し、赤色ラインの有無を確認して判定する。

1.陽性・・・抗原及び抗体判定窓及びコントロール判定窓の両方に赤色ラインが現れた場合。

(1)HIV-1のp24抗原陽性・・・Cのコントロール判定窓に赤色のラインが認められ、AGの抗原判定窓に赤色ラインが認めら、ABの抗体判定窓に赤色ラインが認められない。


(2)HIV抗体陽性・・・Cのコントロール判定窓に赤色のラインが認められ、ABのHIV抗体判定窓に赤色のラインが認められ、AGの抗原判定窓に赤色ラインが認めらない。


(3)HIV-1抗原とHIV抗体が共に陽性・・・Cのコントロール判定窓に赤色のラインが認められ、AGの抗原判定窓とABのHIV抗体判定窓の両方に赤色のラインが認められる。


C・・・コントロールライン
AG・・・抗原ライン
AB・・・抗体ライン