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2026年7月24日金曜日

知ってて損はない医学の知識28.謎多き「原発不明がん」の現在地:山田五郎さんの訃報に際してー

 


編集者、評論家として知られた山田五郎氏(1958~2026)が2026年7月に67歳で亡くなられました。


生前に公表されていた病名は「原発不明がん」!このニュースを聞き、その病気の名前を初めて知った方も多いのではないでしょうか。

※原発不明がん(Cancer of Unknown Primary:キャンサー・オブ・アンノウン・プライマリー [CUP])とは、その名前の通り、「体のどの部位からがんが発生したのかが分からないがん」※

「がん」と診断されたのに、その原点がどこか分からない、一見すると矛盾しているようですが、実は現代医学においても非常に難治性で、対応が難しいとされる疾患なのです。

今回は、この「原発不明がん」について、医学的な分析と最新の知見、そして今後の展望を分かりやすく解説します。

1. 「原発不明がん」とは?:ミステリーの解明

人間ドックや検査で「肺に転移があります」「リンパ節が腫れています」と診断されたとします。

通常、細胞を採取して顕微鏡で見ると、「これは肺がんの細胞ですね」「これは胃がんの細胞ですね」と、元の臓器が特定できます。

しかし、「原発不明がん」の場合、転移した先の細胞を調べても、それがどこから来たのかが、どうしても特定できないのです。

まさに、「犯人が捕まったのに、どこで犯罪を犯したのかが分からない」という、医学的なミステリー状態と言えます。

2. なぜ見つからないのか?:3つの仮説

なぜ、原発巣(がんの原点)が消えてしまうのか、あるいは最初から見えにくいのか?主な要因として以下の3つが考えられています。

1)原発巣が極小のまま転移: 最初のがんが米粒以下のように非常に小さく、検査機器の限界で見つからない。

2)免疫による原発巣の自然消失: 体の免疫細胞が原発巣だけを攻撃して消滅させたが、転移した細胞は生き残ってしまった。

3)特殊な性質: がん細胞の性質が特殊で、どこの臓器由来かという特徴を失ってしまった(未分化)。

3. 最新の治療アプローチ:2026年現在の潮流

記事にある通り、原発不明がんは治療が難しいがんですが、「特定の治療法が確立されていない=打つ手がない」ではありません。

 現代医療は、このミステリーに対して、個別化医療で挑んでいます。

A. 推定治療(約20%のケース)

転移した細胞の遺伝子やタンパク質の解析から、「おそらく肺だろう」「大腸だろう」と強く推定できる場合がありその場合、推定される臓器のがんに対する標準的な抗がん剤治療を行い、高い効果が得られるケースがあります(全症例の約20%)。

B. 組織の再評価と化学療法

多くのケースでは、推定が困難ですが、近年の病理診断技術の進歩により、昔は分からなかった由来が判明することもありまた、どの臓器由来であっても効果が期待できる「広域スペクトル」な抗がん剤の組み合わせ(プラチナ製剤など)による治療が行われます。

C. ゲノム医療の切り札:「がん遺伝子パネル検査」

これが現在の最も重要な最新アプローチで、患者から採取したがん細胞の遺伝子を網羅的に解析し、「どこの臓器か」ではなく、「がん細胞が持っている遺伝子変異(特徴)」を見つけ出します。

もし、その特徴に合致する分子標的薬(特定の遺伝子に作用する薬)があれば、臓器に関係なく、劇的な効果を発揮する可能性があります。

これは保険診療で実施可能です。

D. 免疫チェックポイント阻害薬

「オプジーボ(ニボルマブ)」などの免疫チェックポイント阻害薬も、原発不明がんに対して承認され、使用されて患者の免疫細胞の力を引き出し、がんを攻撃する治療です。

4. 厳しい治療成績と向き合う

残念ながら、原発不明がんは、依然として治療成績が厳しい(予後不良ながん)のが現実で、5年生存率は約10%前後とされています。

しかし、この数字はあくまで統計的な平均値で上記のような最新治療が奏効し、長期生存されている方もいらっしゃいます。

また、痛みや苦痛を取り除く「緩和ケア」の重要性も増しており、いかにその人らしく生きるかを支える医療が提供されています。

さいごに

山田五郎さんの訃報は、私たちに「がんは、どこに潜んでいるか分からない」という現実を改めて突きつけました。

原発不明がんは、医学部でも学生が深く学ぶ難しい領域ですが、研究は日進月歩で進んでおり、かつては「お手上げ」だった症例が、ゲノム医療の進歩によって光を見いだせるケースも増えつつあります。

現時点では「予防」が難しいがんですが、早期発見・早期治療の重要性は変わりません。
定期的な健診を受け、体の異変を感じたらすぐに専門医を受診することが、今できる最大の自衛策と言えるでしょう。

知ってて損はない医学の知識、今回はここまで。

※この記事は一般的な医学情報を提供するものであり、個別の診断・治療を推奨するものではありません。詳細な診断は必ず専門医にご相談ください※

【参考資料】



2026年7月23日木曜日

【時別警戒】2026年7月23号:マダニ媒介「SFTS」患者数が7月中旬で100人突破!全国的リスクとペットからの感染に要注意

 


マダニが媒介するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の今年(2026年)の累計患者数(速報値)が、7月12日時点で104人に達し、2021年から6年連続で100人を超えており、昨年(過去最多)とほぼ同等のハイペースで感染が拡大しています。


かつては西日本中心の疾患とされていましたが、近年は関東や北海道など全国に拡大しており、専門家は「日本全国どこでもリスクがある」と強く警鐘を鳴らしています。


1.SFTSの恐ろしさと最新の流行状況

・高い致死率: 致死率は10%〜30%に達し、特に高齢者で重症化しやすい傾向があります。

・全国への広がり: 愛媛県や静岡県、愛知県、三重県など西日本・東海地方を中心に報告されているほか、茨城県や東京都などの関東圏でも患者が確認されています。

・ペットからの二次感染リスク: マダニに咬まれるだけでなく、ウイルスに感染したネコやイヌの血液や体液を介してヒトへ感染する事例が確認されて過去には獣医師がペットからの感染により亡くなったケースもあり、動物を飼っている方も油断禁物です。

・人から人への感染: まれではあるものの、患者の体液等を介した人ト人感染の可能性も指摘されています。


2.主な症状と発症の流れ

1)潜伏期間: マダニに咬まれてから 6日〜14日

2)初期〜進行期の症状: 発熱、消化器症状(嘔吐、下痢、腹痛)、全身倦怠感など

3)治療: 発症初期における抗ウイルス薬(ファビピラビル/商品名:アビガン等)の早期投与が効果的とされていますので、異変を感じた場合は、速やかに医療機関を受診してください。


3.今日からできる徹底的な予防対策

マダニの活動が活発になる春から秋にかけては、野外だけでなく日常生活の身近な場所(庭や畑、草むらなど)でも注意が必要です。

1)野外での防護(マダニに咬まれない)

肌の露出を極力なくす: 長袖、長ズボン、手袋、長靴を着用し、首にはタオルを巻くかハイネックを着用する。

2)隙間をシャットアウト: シャツの裾はズボンに入れ、ズボンの裾は靴下や長靴の中にしっかり入れ込む。

3)虫よけ剤を活用する: ディートやイカリジンを高濃度で配合した忌避剤を、衣類の上からも使用する。

4)帰宅時の確認: 屋内に戻る前に、服や体にマダニがついていないか必ず確認する。

5)ペットを飼っている方の注意点

アウトドアに行った犬や猫の体にマダニがついていないかこまめにチェックする。

動物用のマダニ駆除薬を定期的に使用し、感染予防に努める。

体調不良のペットに素手で触れたり、汚物処理をしたりする際は手袋を着用するなど十分な衛生管理を行う。


【重要】マダニを見つけたら

マダニに咬まれているのを発見した場合、無理に引き抜こうとするとダニの口部分が皮膚に残ったり、ウイルスを含んだ体液が逆流する恐れがありますので、自分で取ろうとせず、皮膚科などの医療機関を受診して除去してもらってください。


【参考資料】

『ダニ媒介感染症 厚生労働省』

『マダニ対策、今できること 国立健康危機管理研究機構』