血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2024年9月9日月曜日

2つの肝臓病の新名称

 2023年に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:Non-Alcoholic Fatty Liver Disesase、ナッシュ)と非アルコール性脂肪肝疾患(MASH:metabolic dysfunction-associated steatohepatitis、マッシュ)という2つの肝臓病の名称が変更されることが発表されました。


名称が改変された理由としては、従来の名称である、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に以下の問題点があったからです。


1.患者への偏見


「非アルコール性」や「太っている」といった言葉が、患者に対して否定的な印象を与え、精神的な負担になる可能性がありました。


2.病態の複雑さ


これらの疾患は、単にアルコールや肥満が原因というわけではなく、代謝異常など様々な要因が複雑に絡み合っていることが明らかになってきました。


以上の問題点を踏まえ、新しい名称として下記のように命名されました。



1.非アルコール性脂肪肝(NASH:Non-Alcoholic Fatty Liver Disesase、ナッシュ)


 非アルコール性脂肪肝(NAFLD)は、アルコールをほとんど摂取しないにもかかわらず、肝臓に中性脂肪が蓄積される状態を指し、生活習慣が原因とされていることから、新名称は、『代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH:metabolic dysfunction-associated steatohepatitis、マッシュ)』


2.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver diseaseナッフルディー)


アルコールやウイルスなどを原因としない脂肪肝の総称で、英語の頭文字をとって「ナッフルディー」または「ナッフルド」と読みます。肥満や糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を基盤に発症し、お酒をあまり飲まない人でもアルコール性肝障害の人のように肝疾患が進行することから、新名称は『代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD:Metabolic dysfunction associated steatotic liver diseaseマッスルディー)』

※脂肪肝というと、飲酒によるアルコール性脂肪肝を考えてしまいがちで、確かに飲酒による脂肪肝は多いのは事実ですが、特に飲酒歴もないのに肝臓に脂肪が貯まりすぎてしまう「非アルコール性脂肪性肝障害(NAFLD)」や「代謝異常に関連する脂肪性肝疾患(MASLD)」が近年増加しています※



2024年9月1日日曜日

世界的に性感染症が増加しています!!

日本だけでなく、世界的に性感染症が急増していると、世界保健機関(WHO)が2024年5月に発表した報告書によると、梅毒、淋病、クラミジア、トリコモナスの4種類の性感染症に、世界で毎日約100万人が新たに感染しています。

ここで特に問題となるのは抗生物質に耐性を持つ、つまり治療薬の効かない淋菌も増加しているということです。

報告書によると、世界中で毎日、100万人以上の15歳から49歳の人々が梅毒、淋病、クラミジア、トリコモナスの4つの感染症に新規感染している。

なかでも、梅毒の新規感染症例が急増しています。

2022年のHIVとウイルス性肝炎の新規感染者数は、微減にとどまりましたが、B型肝炎およびC型肝炎の新規感染者数は、それぞれ約120万人、約100万人に達しています。

HIVとウイルス性肝炎の新規感染が十分に減らないなか性感染症が増加しており、持続可能な開発目標(SDGs)の保健衛生目標の達成を脅かしているとWHOは警告しています。

WHOのテドロス・アダノム事務局長は報告書において、「公衆衛生の脅威となる伝染病を2030年までに終結させる手段はある。(中略)各国は各自の目標に向けてできる限りのことをしなければならない」との見解を示しています。

【参考資料】

新たな報告書は、HIVと肝炎の課題の中、性感染症の大幅な増加を警告している

2024年8月25日日曜日

世界保健機関エムポックスに対して国際的な公衆衛生上の緊急事態!!

ポックスウイルス科オルソポックスウイルス属のエムポックスウイルスで、"コンゴ盆地型(クレードⅠ)"と"西アフリカ型(クレードⅡa及びⅡb)"の2系統に分類されています。

コンゴ盆地型(クレードⅠ)による感染例の死亡率は10%程度であるのに対し、西アフリカ型(クレードⅡa及びⅡb)による感染例の死亡例は1%程度と報告されています。

2024年8月15日、スウェーデン保健当局は、アフリカで感染が拡大するエムポックス(サル痘)のウイルスでより重症化しやすいタイプの「クレード1」感染者を国内で確認したと明らかにしました。

アフリカ外でクレード1の感染が確認されたのは初めてで、流行地域に滞在中、感染したとみています。

世界保健機関のテドロス・アダノム事務局長は2024年8月14日、アフリカ中部で広がる感染症「エムポックス(サル痘)」について、約1年3か月ぶりに「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。

世界保健機関によりますと、エムポックスの新系統のウイルスが昨年見つかり、急拡大しコンゴ民主共和国では今年、15000人以上の感染と537人の死亡が報告され、新系統ウイルスはケニアやルワンダなど周辺国でも確認されています。

天然痘に似たエムポックスは元々アフリカの風土病でしたが、2022年以降に欧米などで感染が拡大しました。

日本国内では248人の感染が確認された。

世界保健機関は同年7月に緊急事態を宣言し、感染が落ち着いた昨年5月に解除していた。

エムポックスはリスやネズミなどの「げっ歯類」やサルなどがウイルスを保有しており、かまれると人に感染します。

人から人へは肌の接触や性行為などでうつり、発疹のほか発熱や頭痛、リンパ節の腫れなどの症状が出る。多くは発症後2~4週間で自然回復する。

感染者の体液や血液に触れたり、性的な接触をしたり、近距離での対面で飛沫に長時間さらされたりすることなどでも感染します。

ハイリスク層はMSM(Men who have Sex with Men、男性と性的接触を行う男性)とされる一方、女性や子供の感染事例もあり、妊婦や免疫不全者は重症となる場合があることが指摘されています。

タイの疾病管理当局は2024年8月22日、従来より致死性の高いコンゴ盆地型(クレードⅠ)の感染を、国内で確認したと発表しています。

これはアフリカ大陸以外での感染確認の2例目となりアジアでは初めてのことです。

日本国内での死亡者は2023年12月に、海外渡航歴のないエイズウイルス(HIV)感染者の30代男性がエムポックスで死亡しています。

国内の死者確認はこれが初めてです。

※このウイルスは西アフリカ型(クレードⅡa及びⅡb)※

今後日本国内でも致死性の高いコンゴ盆地型(クレードⅠ)が入り込む危険性はあります。



2024年8月18日日曜日

エムポックス大流行の兆し!!

2024年8月14日、世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長はアフリカ中部で広がる感染症「エムポックス(サル痘)」について、約1年3か月ぶりに「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。 

世界保健機関によりますと、エムポックスの新系統のウイルスが2023年に見つかり、急拡大しコンゴ民主共和国では2024年、15600人以上の感染と537人の死亡が報告されています。

この新系統のウイルスはケニアやルワンダなど周辺国でも確認されています。

更に2024年8月15日、スウェーデン保健当局はアフリカで感染が拡大するエムポックス(サル痘)のウイルスで、より重症化しやすいタイプの「クレード1」感染者を国内で確認したと明らかにしています。

アフリカ外でクレード1の感染が確認されたのは初めてで流行地域に滞在中に感染したと考えられています。

【エムポックスウイルスについて】

コンゴ盆地型(クレードⅠ)と西アフリカ型(クレードⅡa及びⅡb)の2系統に分類される。

コンゴ盆地型(クレードⅠ)による感染例の死亡率は10%程度であるのに対し、西アフリカ型(クレードⅡa及びⅡb)による感染例の死亡例は1%程度と報告されている。

天然痘に似たエムポックスは元々アフリカの風土病でしたが、2022年以降に欧米などで感染が拡大しています。

世界保健機関は2022年7月に緊急事態を宣言し、感染が落ち着いた2023年5月に解除しています。

日本国内においては、2024年8月9日時点で248人の患者が確認されています。

2023年12月には、海外渡航歴のないHIV感染者の30代男性がエムポックスで死亡したていますが、国内の死者確認はこれが初めてです。

今後の流行に気をつける必要があります。



2024年8月11日日曜日

新しいエイズ治療薬レナカパビルについて-3.レナカパビル(注射剤)が、シスジェンダー女性に対するHIV予防の研究的使用において100%の有効性を示す-

ギリアド・サイエンシズ(本社:米カリフォルニア州フォスターシティ)は、2024年6月20日、第III相ピボタルPURPOSE 1試験の中間解析トップライン結果において、年2回投与のHIV-1カプシド阻害剤のレナカパビル(注射剤)が、シスジェンダー女性に対するHIV予防の研究的使用において100%の有効性を示したことを発表しました。

詳細は以下を参照してください。

レナカパビルの有用性について

2024年8月9日金曜日

地震お見舞い申し上げます。

 2024年8月8日に発生しました宮崎県沖の地震に際し、被災されました皆様方に心よりお見舞い申し上げます。


被害のほどが案じられ、損害の軽微と一日も早い復旧を心より願っております。


2024年8月4日日曜日

日本国内でのアメーバ赤痢の現状

 性感染症の中で梅毒の増加は世間を騒がせていますが、その裏で静かに増加しているのが赤痢アメーバ症です!!


発展途上国では汚染された食べ物を口にすることで感染することの多い病気ですが、衛生環境が維持されている先進国ではむしろ性行為での感染が増えているのが現実です。


治療の遅れで亡くなるケースもあります。治療は内服薬が第1選択で比較的簡単ですが、アメーバ赤痢は通常の大腸炎ときちんと鑑別して治療することが重要となります。


世界人口の10%が持つとされるアメーバ赤痢原虫には2種類あり、大腸炎や肝膿瘍の症状をもたらす病原種が90%、非病原種が10%と言われています。


「日本で流行しているのは病原種ですので、要注意です。以前は肛門をなめたり、肛門性交、口腔性交を行う男性同性愛者(MSM)の間の流行でしたが、いまは男女間でも風俗店などを中心に同様な性行為が行われ、増加しているとみられています」


現在の過患者数は氷山の一角で、実際の患者数は昨年約1.5万人の新規患者数が報告された梅毒を上回るとの見方もあります。性感染症検査場の保存血清を調べた2020年報告の研究では、その時点で梅毒陽性率(2.11%)よりアメーバ赤痢症陽性率(2.64%)が高かったのです。なお、2014~17年の新規感染者数は年間1000例を超えたが2018年以降は大きく減少したとされていますが、これは検査試薬が製造中止になったためで、真の減少ではなく、その脅威は年々増しているとみられています。

前回紹介した抗原検査法によって、今後患者数は増加するおそれが指摘されています。