血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2024年6月16日日曜日

HIV再流行の兆し!!

 梅毒、淋病、クラミジアなどの性感染症の増加もさることながら、その影でHIVの再流行が危惧されています。


『HIV検査体制の改善と効果的な受検勧奨のための研究-令和5年度 総括・分担研究報告書-』によりますと、2022年のHIVの検査実施数は42805件で陽性者数が72件だったのに対し、2023年は検査数が63120件で陽性者数は116件と1年で大きく増加しているという現実を突きつけられることになりました。


要するに新型コロナウイルスの流行でHIV検査数が減少しただけで、実質は水面下でHIVの流行は起こっていたことになります。


新型コロナウイルスの流行が収まり、HIV検査を受ける人が戻った結果、なんとHIV流行が起こっていたということなのです。


要するにHIV検査を受ける人が減少した結果、HIV感染者が減少していたという皮肉な話だったわけです。


現在HIVに感染しても早期発見早期治療によって死に至ることはなく、天寿を全うすることが可能となっています。


※エイズを発症してしまってからの治療効果は芳しくありません※


またコンドームを正しく要することにより感染はほぼ予防可能です。


更に『曝露前予防内服』『曝露後予防内服』の進歩による感染予防も高い効果を得ています。


HIVは性行為と血液を介して感染し、HIV感染者と一緒に食事やおしゃべりをしたりしても感染しませんし、蚊などの昆虫が媒介することもないし、唾液で感染することもありません。


要するにほぼ100%近く感染予防ができるわけです。


大切なことは一人ひとりが正しい感染予防を行い、危険な行為をしてしまったら必ず適切な時期にHIV検査を受けることです。


そうすることによりHIV流行を過度に恐れることはなく、正しく感染予防が可能となります。

2024年6月9日日曜日

先天性梅毒増加中!!

 2024年5月26日時点の梅毒患者総数は、5251人と依然として増加中です。

【先天性梅毒とは】

先天梅毒は、梅毒に罹患した妊婦から梅毒トレポネーマが胎児に経胎盤感染することで起きます。

梅毒トレポネーマに感染した胎児の多くは死亡しますが,母体が既療梅毒患者であったり,妊娠2~3ヵ月で梅毒患者となった場合には, 梅毒トレポネーマに感染した新生児が出産される場合があります。

【日本の先天性梅毒の患者の現状】

2024年1年間の先天性梅毒患者は、37人と過去最高となっていて、2024年第1四半期においても8人と、2023年の第1四半期に比べて2人の増加となっています。

【先天性梅毒の分類】

先天性梅毒は、以下のように分類されます。

1.早期先天梅毒・・・出産時すでに症状が現れていたり,出産直後に現れる。

2.晩発性先天梅毒・・・学童期,思春期に入って発病する。

【先天性梅毒の増加してい原因】

1.梅毒が大流行して妊娠適齢期の女性の患者が増加している。

2.妊娠しても妊婦健診を受けない。

※更に妊婦の4人に1人は妊婦健診を適切に受けていない事も明らかになっています※

生まれてくる子供への感染防止のためにも妊婦健診は必ず受けおく必要があります。

【先天性梅毒は防げるのか?】

妊娠中に適切な治療を受ければ、99%以上の割合で、先天性梅毒を予防することができます。

先天性梅毒を防ぐためには、妊娠初期(妊娠4ヶ月まで)に、梅毒血清反応を妊婦健診の中で行うことが必須となっています。

※最近の梅毒の流行によって現在は、妊娠後期にも梅毒検査を受けることが推奨されています※

【先天性梅毒は防げるのか?】

妊娠中に適切な治療を受ければ、99%以上の割合で、先天性梅毒を予防することができます。


先天性梅毒を防ぐためには、妊娠初期(妊娠4ヶ月まで)に、梅毒血清反応を妊婦健診の中で行うことが必須となっています。

2024年6月2日日曜日

日本国内における2024年第1四半期における梅毒患者の状況

 梅毒患者数は3053人で、やはり流行は続いています。

このままで行くと2024年1年間では12000人を超える可能があります。

分析可能であった2495人に付いての梅毒の病期は以下のとおりです。

1.男性同性愛者の梅毒患者の病期(239人)

・早期顕症1 74人

・早期顕症Ⅱ 78人

・無症候  80人

・晩期顕症 7人

2.男性異性間の梅毒患者の病期(1325人)

・早期顕症1 862人

・早期顕症Ⅱ 281人

・無症候  171人

・晩期顕症 11人

3.女性異性間の梅毒患者の病期(931人)

・早期顕症1 228人

・早期顕症Ⅱ 376人

・無症候  323人

・晩期顕症 4人

4.無症候梅毒についてのまとめ

・男性同性愛者 80人(80/239  33.5%)

・男性異性間 281人(281/1325 21.2%)

・女性異性間 323人(323/931 34.7%)

◯総 計 684/2495 27.4% 

※梅毒トレポネーマに感染しても典型的な症状を呈さない無症候梅毒が、かなりの数で存在しています※

※無症候梅毒の増加は、感染していても症状が出ないことから感染に気づくことなく次々と感染を広げていくという悲惨な結果を招くことになっています※

1.以上のことからして今年も依然として梅毒が流行していて、収まる気配はありません

2.梅毒トレポネーマに感染しても梅毒特有の症状を呈さない無症候梅毒が多く存在していることから、危険な行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受ける必要があります。

3.梅毒は抗生物質で完治しますから、早期に発見して早期に治療することが求められています。

4.梅毒トレボネーマは、HIVの様にコンドームで完全に予防できないことから過信しないことです。

※※梅毒トレポネーマに感染するような行為をしてしまったときには、必ず適切な時期に梅毒検査を受けることが大切です※※


2024年5月26日日曜日

世界的に性感染症が増加している!!

 2024年4月に世界保健機関(WHO)が先日発表した報告書によりますと、日本だけでなく世界的に性感染症が急増していると指摘しています。

梅毒、淋病、クラミジア、トリコモナスの4種類の性感染症に、世界で毎日約100万人が新たに感染していて、更に悪いことに抗生物質に耐性を持つ、つまり治療薬の効かない淋菌も増加しているという。

この報告書を読み解いてみますと、

1.15歳以上への性感染症が依然増加傾向にある

世界中で毎日、100万人以上の15歳から49歳の人々が梅毒、淋病、クラミジア、トリコモナスの4つの感染症に新規感染していて特に梅毒の新規感染症例が急増している。

この年齢層における梅毒の新規感染者は2022年に800万人に到達(20年から90万人増加)、梅毒関連の死亡者数は23万人であった。

最も増加したのは、南北アメリカとアフリカだった。

アメリカにおける感染状況は、世界的な傾向を映し出していると指摘され、アメリカ疾病対策センター(CDC)が今年初めに発表した報告書によると、2021年から2022年にかけて梅毒の総感染者数は17%以上増加し、20万7255人に到達し、これは1950年以来最大の感染者数を記録した。

また欧州疾病対策センター(ECDC)が3月に発表した最新の年次データ報告によると、2022年に欧州で性感染症が急増し、淋病感染者は前年比48%増、梅毒感染者は34%増、クラミジア感染者は16%増と危機的状況となっています。

こうした状況を受け、一部の国はすでに種々の感染対策対策を導入しています。

2.抗生物質が効かない淋菌が増加

抗生物質への耐性を持つ淋菌の増加も報告され2023年の時点で、淋菌の抗菌薬耐性サーベイランスが強化された87ヶ国のうち、9ヶ国が「治療の最終ライン」とされるセフトリアキソンに対する耐性レベルの上昇(5%から40%)を報告しています。

世界保健機関はこの状況を監視しており、感染拡大を抑えるために推奨治療法を更新しています。

【これらのことから】

1.性感染症は予防対策が重要ですから、コンドームの使用は感染リスクを低下させる効果がありますが、予防できない性感染症もあることを念頭に置く必要があります。

2.危険な行為をしてしまったときには必ず適切な時期に検査を受けて、早期治療を受けることが重要となります。

2024年5月19日日曜日

3大激痛とは

 世間でよく言われている三大疼痛について解説いたします。

一般的に以下の3つの病気の組み合わせを指します。

1.尿路結石

2.痛風

3.胆石症

これらの病気は、いずれも非常に激しい痛みを伴うことから、「三大激痛」とも呼ばれています。

1.尿路結石とは、腎臓や尿管に結石ができる病気で結石が尿路を塞ぐことで、激しい痛みや吐き気、嘔吐などの症状が現れます。

2.痛風とは、血液中の尿酸値が高くなることで起こる病気で尿酸が結晶化して関節に沈着することで、激しい痛みや腫れなどの症状が現れます。

3.胆石症とは、胆嚢に結石ができる病気です結石が胆管を塞ぐことで、激しい痛みや吐き気、嘔吐などの症状が現れます。

これらの病気は、いずれも生活習慣が大きく影響します。

尿路結石は、水分不足や偏った食生活が原因で起こることが多くなります。

痛風は、プリン体の多い食事やアルコールの過剰摂取が原因で起こることが多くなります。

胆石症は、肥満や脂質異常症などが原因で起こることが多くなります。

三大疼痛は、いずれも非常に苦痛を伴う病気ですので、これらの病気にならないためには、日頃から生活習慣に気を配ることが大切です。

これ以外にも、以下の3大激痛と言われています。

・痛風、尿管結石、虫垂炎 

・膵炎、狭心症、くも膜下出血

・心筋梗塞、痛風、群発頭痛

・尿路結石、群発頭痛、心筋梗塞

・尿路結石、痛風、胆石症

※やはり痛風や結石は含まれていますねぇ※

2024年5月12日日曜日

新型コロナウイルスの新しい変異株"ピロラ"とは

新型コロナウイルス(COVID-19)のオミクロン株から新たに派生した変異株「BA.2.86(通称・ピロラ)」が7月下旬にデンマークで初めて確認され、イスラエル、米国、南アフリカ、英国において検出され、日本では2023年9月7日に東京都内で初めて確認されています。

初期の研究では、ピロラにはさまざまな変異が生じていますが、免疫回避能力は以前の変異株とさほど変わっていません。

これはワクチンでこれまでと同様の予防効果を期待でき、XBB変異株に自然感染したことがあれば、この新たな変異株に対する免疫力は高まっているとされています。

これほど多くの変異を経たにもかかわらず、ピロラの免疫回避力はさほど高くないのは、おそらく現在はもう見なくなった有名な古株である初期のオミクロン株「BA.2」から進化したと考えられています。

しかしながら現在米国内でこの新しい変異株「BA.2.86(通称ピロラ)」が急速に広がっていきています。

この変異株は米国内で3番目に多い変異株となっています。

CDCや製薬会社はピロラやその派生型に対してもある程度の防御効果があると説明しています。

ピロラは免疫回避能が高くワクチン接種や過去の感染による免疫をすり抜ける能力が高いことが分かっています。

更に感染力が高く、BA.2よりも感染力が10%以上高いと推定されています。

重症化リスクについては現時点では不明です。

主な症状としては、発熱・喉の痛み・咳・鼻水・頭痛・倦怠感・筋肉痛等となっています。

日本においても数例か検出されています。

予防あ対策は、従来の新型コロナウイスと同じです。

※現時点では、新型コロナウイルス変異株「ピロラ」の名称の由来は、公式には発表されていません※

【参考資料】

『急速に広がる"ピロラ"COVID変異株BA2.86について知ってゆくべきこと、そしてワクチンが予防効果をもたらすかどうか』




2024年5月5日日曜日

ヴァンパイアフェイシャル(吸血鬼美顔術)でHIVに感染!!

【お断り】

今回の記事は、ヴァンパイアフェイシャル(吸血鬼美顔術)の、効果をウンヌンしたり否定しているわけではなく、感染の事実を伝えて施術者に注意を促すことを目的としています。


 ヴァンパイアフェイシャルは、血液療法の一種で1950年代に多血小板血漿(PRP:Platelet-Rich Plasma)の使用が始まり、現在では美容分野でも活用されるようになりました。

肌へ微細な傷をつけることで、傷を修復しようとする人体の自然治癒力の作用により、体内のコラーゲン生成を促進し、加齢とともに生じるシワやたるみ、毛穴の開き、ニキビ跡、妊娠線など、様々な肌の症状を改善する美容皮膚科治療の一つです。

PRP(多血小板血漿)注入療法は、ご自身の血液から専用の自己型注入剤を作り、血小板と白血球の放出する成長因子によって、シワ・たるみなどの老化症状を改善させる新しい美容再生治療です。

※多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma)とは、再生医療の一種であるPRP(Platelet-Rich Plasma)療法で用いられる血小板が豊富に含まれた液体の血液製剤です※

※ヴァンパイアフェイシャルは、施術後に顔に赤みが出ることに由来して名付けられました。※

自身の血液から採取したPRPを使用するため、自然な方法で肌の再生を促すことができます。

ダーマペンと呼ばれる特殊な機器を使って、肌に微細な穴を開けることで、PRPの浸透を促進します。

※ダーマペンと呼ばれる先端にマイクロ針の付いたマシンで肌に微細な穴を空け、その穴にPRPを入れて肌の再生を促す治療です。

主な適応症は、アクネ、アクネ跡、シワ、たるみ、毛穴の開き、肌質の改善などです。

肌の再生を促すことをうたう美容ケア「ヴァンパイアフェイシャル」によって、少なくとも3人の女性のHIV感染が判明しています。

【感染の原因】

本来自分自身の血小板を使用することから血液そのものからの感染は考えられません。

しかし、施術者の中にHIV感染者がいて、その施術者に使用したダーマペンや注射器の使い回しや滅菌の不備が原因でHIVに感染したと考えられています。

しかも今回のHIV感染は無許可のスパで発生しています。

【注意】

1.血液を使う美容術は、HIVやHBVなどの血液を介して感染する感染症に感染するリスクが有る。

2.使用する器具が使い捨てや滅菌が不十分であるとこれらの器具から感染する。

3.無許可のスパで受けずに医療機関で受ける。

【参考文献】

CDC週報