血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2020年8月14日金曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について-31.クラスターの種類とは-

国立感染症研究所がこの度、7月までの半年間に各地で確認されたクラスターのおよそ100例を分析し、典型的なケースをまとめた事例集を公表しましたので、見てみましょう。

典型的なクラスターは、以下の6つとされています。

1.医療機関での院内感染

2.カラオケを伴う飲食店

3.職場での会議

4.スポーツジム

5.接待を伴う飲食店

6.バスツアー

要するにいずれの場合も3密の環境となっています、したがって3密防止が感染対策として重要となっています。

ほかのケースでも換気の悪い場所で、長時間及び近距離での会話や飲食をともにするなどして感染が広がっており、改めて、3密の環境を避けるとともに、消毒やマスクの着用や十分な換気をするなど基本的な対策を徹底することが大切であることが理解できます。

2020年8月7日金曜日

ポピドンヨードのうがいで新型コロナウイルスの感染予防ができる!!??

ポビドンヨード(Povidone-iodine)は、ヨウ素の酸化作用を利用した抗微生物成分です。

ポピドンヨードは、イソジンのうがい薬の中に入っている成分です。

※うがい薬でおなじみのイソジン改め【明治うがい薬】にポビドンヨードが含まれています※

ポピドンヨードは中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)などの大流行を引き起こしたMERS-CoVやSARS-CoVなどのコロナウイルスを含む広範なウイルスに高い効果を持つことが示されていますが、新型コロナウイルスに効果があるかどうかは2020年8月6日時点ではわかっていません。

ポビドンヨードは強力な殺菌性ゆえに、のどや口の中にもともといる『正常な細菌』をも殺菌てしまい、さらには粘膜なども痛めてしまうから長期には使用できません。

一般的には、ポビドンヨードのうがい薬の安全性は高いと考えられますが、長期使用に関しては甲状腺機能を障害する可能性も指摘されています。

確かにポビドンヨードによるうがいをすると、一時的に唾液中の新型コロナウイルスの量が減るということは間違いはありません。

これは検出されにくくなっただけなのかもしれないのです。

なお、新型コロナウイルスに関して、『予防的・定期唾液の中の新型コロナが減っても、その後の新型コロナによる悪化が防がれるという研究結果ではありません。

単に検査の陽性率が下がったという結果なのです。

新型コロナウイルスにポビドンヨードの使用が有効かどうかは、今後の研究に待たなければなりません

ここで再認識しておく必要があることとして、ポビドンヨードでうがいを続けると、口の中の良い常在細菌を殺してしまい、これによって逆に免疫力が低下して感染しやすくなということです。

要するにポビドンヨードを使いすぎると逆に喉への感染が起こりやすくなります。

今回ポビドンヨードを使用することによりPCRの陽性率が低下したのは、唾液腺から喉に排泄された新型コロナウイルスが一時的に殺菌されたからと考えるべきです。

ポビドンヨードが新型コロナウイルスに感染を低下させたり、症状を軽くするとは考えられません。

今回の検討結果は、検討症例が少なすぎ確かに効果があるとは言い切れません。

過去にポビドンヨードによるうがいは、『風邪予防に有効ではない』という研究結果があります。

1)水でうがいをするグループ

2)ポビドンヨードでうがいをするグループ

3)特にケアをしないグループ(対照群)

に分けてその後60日間でどれくらい風邪をひくリスクが変わるかというテーマで検討されました。

すると、水のみでうがいをすると、うがいをしないグループよりも風邪にかかる確率が下がったものの、ポビドンヨードでうがいをするグループは効果が認められなかったという結果が得られています。

ビドンヨードは確かに、細菌やウイルスを殺菌する効果がありますが、水のみのうがいのほうがポビドンヨードのうがいよりも有効だったという興味深い結果が得られています。
【参考資料】

American journal of preventive medicine 2005; 29:302-7.

2020年8月4日の大阪府の吉村知事の発言の真意は、ポビドンヨードのうがい薬で新型コロナウイルスの感染予防効果があるのではなく、ポビドンヨードが唾液腺から口の中に排泄された新型コロナウイルスを殺菌作用で一時的に減少させたことからPCR検査の陰性率が高くなったと考えるべきでしょう。

現在ポピドンヨードが新型コロナウイルスを殺すという医学的な確証は得られていませんので、更に多くの人を対象に検討していく必要があります。

今回の吉村大阪府知事の記者会見で、ポピドンヨードのうがい薬を使用するかしないかは、各人の考え方によりますが、絶対的に効果があると信じて使い続けることはよくありません。

今回の吉村大阪府知事の記者会見を否定したり、文句を言う政治家が多くいますが、血液の鉄人としては、具体的な対策を一切打ち出さず、文句ばかり言う政治や医療関係者より"成果が出るか出ないかは分からないが、やってみるだけの価値はあると思っている"と主張する吉村知事の考え方に賛成です。

松井一郎大阪市長も「結果が出たのに、黙っていろと言うのか」と不快感を示されるのも当然と思います。

残念なことは吉村大阪府知事の記者会見の真意を汲み取れなかったことが多く存在しポピドンヨードのうがい薬の買い占めに走ったことです。

2020年8月1日土曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について-30.新型コロナウイルスは空気感染する??!!-

2020年8月時点では、空気感染する感染症は麻疹、水痘、結核の三種類しか存在していません。

よく間違われるのはインフルエンザは、空気感染するのではなく飛沫感染です。

新型コロナウイルスも2020年6月末時点では、空気感染するのではなく、飛沫感染しかしないと言われていましたが、今回の報告で空気感染する可能性が高いと指摘されましたが、果たしてどうなんでしょうか?

2020年7月6日、世界の科学者239人が新型コロナウイルスに関する共同意見書を発表し、世界保健機関(WHO)などの当局に対し、このウイルスが2mをはるかに超える距離で"空気感染"する可能性があることを認識し、それに応じて感染防止策を見直すよう訴えました。

※この意見書は英オックスフォード大学(University of Oxford)の学術誌「臨床感染症(CID)」に掲載されています※

科学者らは、新型コロナウイルスが空気中で数十メートル移動できることが「合理的疑いの余地なく」示されており、これが新型コロナウイルスについても当てはまることが複数の感染事例の分析で示されたとしています。

科学者たちは手洗いや対人距離の確保は適切ですが、感染者が空中に放出するウイルスを含む微小飛沫からの保護には不十分だと言明しています。

感染予防対策として、屋内では換気を良くすること、高効率エアフィルターと紫外線ランプを導入すること、建物内や公共交通機関での混雑を避けることを推奨しています。

新型コロナウイルスを含む微粒子の感染能力については、医学界や科学界で激しい議論が交わされてきていますが、世界保健機関(WHO)は今のところ、こうした感染は患者が人工呼吸器を装着した場合など、病院内の「特定の状況」でのみ起こるとの見解示していますが、現在の世界保健機関(WHO)の言うことはあまり説得力がありません。

一方、新型コロナウイルスの拡散事例に関する研究では、微粒子による感染が病院内に限定されないことが示されていることにも注視する必要があります。

米疾病対策センター(CDC)の専門誌「新興感染症(Emerging Infectious Diseases)」に掲載された研究によると、2020年1月に客の集団感染が起きた中国のレストランでは、新型コロナウイルスが空調によって複数のテーブルに運ばれたと見解を示してます。

今回の学者たちの新型コロナウイルスが空気感染するという見解を無視することなく、感染予防対策の一環として取り入れる必要はあると思います。

そして新型コロナウイルスが空気感染するか否かを十分検証することが求められます。

2020年7月7日世界保健機関(WHO)高官は、新型コロナウイルスの空気感染(飛沫核感染)の可能性を示す「証拠が出始めている」ことを認識し、「感染経路の一つである可能性を見極めている」と明らかにしました。

仮にこれが事実であれば、1~2メートルの間隔をあけるソーシャルディスタンスをはじめ、各国は対策の見直しを迫られる可能性もありえます。

しかし世界保健機関(WHO)は最終的な結論は出ておらず、今後数日のうちに新たな結果を報告する見通しだと付け加えた。

一方米国立アレルギー感染症研究所所長のファウチ博士は、エアロゾル化が新型コロナウイルスの発現に与える影響について、決定的な証拠は現時点では認められていないが、似たようなウイルスであるSARSでは、エアロゾルによる拡散の明確な事例があったことからして完全に排除はできない」と述べています
    
そしてファウチ博士は、これこそがマスク着用が必要な理由の1つだと発言しています。

新型コロナウイルスが空気感染するか否かは、今後の調査研究に待つしかありませんが、空気感染する専門家の意見にも耳を傾けて感染予防対策をする必要はありそうです。



2020年7月26日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について-29.新型コロナウイルスには本当に感染予防抗体は存在するのか??!!-

2020年7月14日厚生労働省は、本年6月月に宮城、東京、大阪の3都府県で実施した新型コロナウイルスの疫学調査で、参加者から検出された抗体に、感染を防ぐ働きがある抗体すなわち中和抗体ことを確認したと明らかにしました。

国立感染症研究所の分析では、アボット社とロシュ社の二つのメーカーの検査手法でいずれも「抗体がある」と判定された場合に感染を防ぐ働きがあることが判明したとのことです。

どちらか片方だけが陽性では、こうした能力は確認できなかったとのことです。

今後、この中和抗体がどれだけ体内で残り続けるのかを調べていく必要があるとのペています。

ここでは以下の疑問点について解説してみます。

1.何故二社の検査で陽性になった場合のみの抗体が、中和抗体なのか?

2.アボット社とロシュ社の検査キットで見つけられる抗体の種類はどのようなものなのか?

3.本来はアボット社とロシュ社のどちらのキットでも中和抗体を見つけられるが、検査を実施する時期によって見つけられないのか?

いずれにしても中和抗体の存在の有無は今後もっと多くの検査を実施して、分析しないと確定的なことはわかりません。

【追加解説】

抗体には以下の二種類があります。

1.感染抗体
このウイルスに感染したという証拠となる抗体で、例を上げればHIV抗体がそうです。

この感染抗体は、感染した事実のみがわかる抗体で、感染予防の働きはありません。

2.中和抗体

感染予防抗体とも呼ばれます。

この抗体があると再び感染することはなかったり、感染しても症状が軽くてすみます。

風疹やおたふく風邪や麻疹などの抗体がこれに相当します。

2020年7月19日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について-28.新型コロナウイルスに感染した時の共通の症状とは-

米国疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)は、2020年7月18日までに、新型コロナウイルスに感染した人の共通の病状について分析結果を報告しています。

それによりますと大半の感染者に発熱、せきや息切れのうち少なくとも1つの症状の共有があると報告しています。

新型コロナウイルス感染症は、新しい病気のため症状に関する情報は限定的で、尚且入院していない患者の症状についての知見も乏しいのが現実です。

今回の米国疾病対策センターによる分析によりますと、

・患者の96%に発熱、せきや息切れのうちの1つの症状が出た。

・3つの症状全てを抱えたとしたのは約45%であった。

・最も多かった症状としては咳の84%。

・次が発熱の80%。

・息切れは入院した患者の間でより目立っていた。

・他の症状も色々と見られ、筋肉痛、寒気、疲労感や頭痛が含まれた。

・調査対象の患者の半数は下痢を中心にした腹部機能の障害も報告されています。

・一部の感染者は腹痛、吐き気や嘔吐に襲われていた。

・入院の必要がなかった患者では高い比率で味覚や嗅覚の喪失が認められています。

※今回の米疾病対策センターの分析結果は、検査が特定の患者あるいは特定の時期に限られているため一般化出来る種類のものでは無いことと、調査の対象者の多数が入院の感染者に偏っていることも的確な症状の分析には程遠いとも考えられますが、医師が感染拡大の阻止を図るため検査や隔離が必要と診断する際に貴重なデータとなる可能性は十分あるデータとなっています※

2020年7月17日金曜日

「令和2年7月豪雨」により被害を受けられた皆さまへ

この度の「令和2年7月豪雨」によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆さまに心よりお悔やみ申し上げます。

また、被災された方々に謹んでお見舞い申し上げますとともに、一刻も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

2020年7月13日月曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について-27.-新型コロナウイルスのワクチン製造は非常に難しい!!-

新型コロナウイルスは、インフルエンザウイルスやHIVと同じように、『DNA』ではなく、『RNA』を遺伝子に持つウイルスです。

このRNAウイルスの場合は、効果的なワクチンを作るのは極めて難しいことが知られています。

その理由は、二重らせんという安定的な構造を持つDNAに対し、一重らせんのRNAはその構造が不安定で遺伝子が変異しやすいからなのです。

HIVワクチンがHIVが発見されてもなお30年が経過した時点ても今で完成していないことや、インフルエンザウイルスが流行している間にウイルスの遺伝子が変異してウイルスに対するワクチンが効きにくくなったり、まったく効かなくなったりするのことからもワクチン開発の難しさが理解できるはずです。

新型コロナウイルスもインフルエンザ同様に遺伝子が変異するスピードが非常に速いことから、2019年12月中国で発生して以来、世界各地に広がっていく過程で変異を繰り返し、2020年7月ですでに数百の変異があるという報告があります。

そのためにワクチンが完成しても、開発当初とは異なる遺伝子のウイルスが蔓延していれば、せっかく出来上がったワクチンも一部のウイルスにしか効かないことも十分にありあり得ることです。

2018年に『免疫を抑制するたんぱく質「PD-1」を発見し、がん治療薬「オプジーボ」の開発に大きく貢献した功績』でノーベル生理学・医学賞(2018年)を受賞した本庶佑京都大学特別教授(1942~)も上記の理由で新型コロナウイルスワクチンの日本でのワクチン開発、治験など現実離れした話と警鐘を鳴らしておられます。

予防ワクチンが可能な限り早く出来上がるのを願う次第です。