血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2019年1月1日火曜日

新年のご挨拶

恭賀新年

昨年中は格別のご用命を賜り厚く御礼申し上げます。

本年も皆様方のお役に立てるよう頑張っていきますので、なにとぞよろしくご愛顧のほどお願い申し上げます。

2018年12月27日木曜日

免疫グロブリン検査-4.IgM抗体-

IgM抗体は5量体構造を持ち、補体結合性や凝集活性が強いが、IgG抗体と異なり胎盤透過性は無い。

IgM抗体は、IgG抗体が作られる時期になると産生量が低下し、半減期も5日と短いため感染症感染後に一過性に増加し直ぐに減少してしまいます。

その産生量は、IgG抗体に比較すると低値である。

IgM抗体に属する抗体には、同種血球凝集素、寒冷凝集素、ポールバンネル抗体、リウマチ因子、ワッセルマン抗体、グラム陰性菌体抗原に対する抗体などがある。

日常血清中のIgM抗体は感染症の診断のため感染要因に対するIgM型特異抗体として、測定されることが多い。

各種疾患の診断や、予後、重症度、経過観察などの目的でもIgM抗体は測定され、通常はIgG抗体やIgA抗体と組み合わせて判断される。

IgM抗体はFc部分を5個、Fab部分を10個とそれぞれIgG抗体の5倍もつため、補体結合性、凝集活性、オプソニン活性が強く細菌に対する免疫防御反応や、赤血球の凝集能などに強力な作用を及ぼしている。

分子量が大きいIgM抗体は、胎盤移行性がなく母親から胎児へ移行することがないため、新生児の血清濃度上昇は子宮内感染を受けたことを表しています。

【検査法】

免疫比濁法

【基準値】

男性:31~200mg/dl

女性:52~270mg/dl

※使用する機器や検査法によって若干異なる※

【高値】

急性感染症(初期)、自己免疫性疾患、多発性骨髄腫(IgM型)、単クローン性免疫グロブリン血症、高IgM症候群

【低値】

先天性無ガンマグロブリン血症、IgM欠損症、低ガンマグロブリン血症、多発性骨髄腫(IgM型以外)

【IgM抗体の特性】

感染症に対する抗体産生において、最初に産生されるのはIgM抗体で通常1~2ケ月のうちに減少し、その後順次IgA抗体、IgG抗体が産生されます。

【小児の基準値】

IgM抗体は免疫グロブリンのうち、Bリンパ球の成熟分化過程で最も早期に出現するクラスであり、生下時には活発な産生が行われており、血中濃度も成人レベルとほぼ同様ですが、その量は6~8歳で成人レベルに達する。

そして成人同様に、女性が男性に比べ高値になる傾向があります。




2018年12月19日水曜日

免疫グロブリン検査-3.IgA抗体-

IgA抗体は、形質細胞より産生され成人においては血中に存在する免疫グロブリンの約10%を占めています。

IgA抗体のほとんどは単量体ですが、二量体の分泌型IgAとしても存在し、唾液、涙液、鼻汁、気道・消化管分泌液、乳汁などの分泌液中に高濃度で存在し、局所免疫の中心として、感染防御や食物アレルギーの予防の働きを担っています。

IgA抗体は胎盤通過性はないので、出生直後はごく微量で、生後6ヵ月頃から徐々に産生され、思春期までにほぼ成人値となります。

IgA抗体は特に腸に多く存在しますが、これは食べ物一緒にウイルスや細菌などが侵入しやすいためだと考えられています。

【検査法】

免疫比濁法

【基準値】

90~400mg/dl

※使用する機器や検査法によって若干異なる※

【高値】

多クローン性: 慢性肝炎、膠原病、IgA腎症、ウィスコット・オルドリッチ症候群、慢性感染症、悪性腫瘍

単クローン性:IgA型多発性骨髄腫、形質細胞性白血病、IgA型無症候性M蛋白血症、H鎖病
【低値】

ブルトン型無γ-グロブリン血症、選択的IgA欠損症、IgA型以外の多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、サルコイドーシス、毛細血管拡張型運動失調症、分類不能型免疫不全症、ネフローゼ症候群、ステロイド剤連用

【IgG抗体と新生児の関係】

母乳にはIgA抗体が特に多く含まれており、赤ちゃんを感染から守っています。

【小児の基準値】

生まれてすぐは10mg/dl以下で、加齢に伴い徐々に漸増し、15~18歳で成人レベルになります。

2018年12月10日月曜日

免疫グロブリン検査-2.IgG抗体-

IgGは、血液中に最も多く存在し、量的には免疫グロブリン全体の約80%を占め、液性免疫の主役です。

IgGは免疫抗体で、細菌やウイルスの感染性を失わせる中和抗体で、細菌やウイルスを補足するのを助ける働きや補体活性因子の役割をします。

膠原病・慢性感染症・悪性腫瘍・多発性骨髄腫などで高値に、無γ-グロブリン血症・重症免疫不全症・ネフロ-ゼ症候群などで低値になります。

【検査法】

免疫比濁法

【基準値】

820~1740mg/dL

※使用する機器や検査法によって若干異なる※

【高値】

■急性感染症(後期)、慢性感染症、慢性肝炎、自己免疫性疾患、多発性骨髄腫(IgG型)、単クローン性免疫グロブリン血症

【低値】

先天性無ガンマグロブリン血症、低ガンマグロブリン血症、多発性骨髄腫(IgG型以外)、ネフローゼ症候群

【IgG抗体と新生児の関係】

IgG抗体はヒトの胎盤を通過できる唯一のIg クラスで、生後数ヶ月の間は新生児の保護に大きな役割を果たしています。

【IgG サブクラス】

ヒトには4つのIgG1・IgG2・IgG3・IgG・4のサブクラスがあります。

2018年12月1日土曜日

免疫グロブリン検査-1.免疫グロブリンの種類-

免疫の中で大きな役割を担っているのが免疫グロブリン(Immunoglobulin、略称Ig)で、血液中や組織液中に存在しています。

免疫グロブリンとは、血液や体液中に存在し抗体としての機能と構造を持つ蛋白質の総称で、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5クラスに分類され、それぞれの分子量、その働く場所・時期にも違いがあります。

これら5種類の免疫グロブリンの基本的な形はY字型をしています。。

1.IgG

5種類の免疫グロブリンのうち血中にもっとも多量に存在しており、生体内に侵入してきた病原体(細菌やウイルス)の抗原と結合して、白血球の働きを助けたり、ウイルスや細菌が出す毒素と結合して無毒化する働きを担っています。

2.IgA

喉の表面、腸の内側、気管支の内側の壁などの粘膜の表面に存在し、侵入してきた病原菌やウイルスなどの侵入を防ぐ働きを担っています。

3.IgM

細菌やウイルスに感染した初期段階で産生される抗体で、補体という蛋白質と共同して病原菌やウイルスなどの抗原を破壊したり、白血球がこれらを食べるの働きを担っています。

4.IgD

リンパ球の成熟、分裂になんらかの役割を果たしているものと考えられていますが、今のところまだ働きはよくわかっていません。

5.IgE

免疫グロブリンとしては最も量が少なく、アレルギー反応に主要な役割を果たしており、アレルギー性疾患、寄生虫感染症などで増加します。

次回から免疫グロブリン個別の解説をしていきます。

2018年11月22日木曜日

シェネリックとオーソライズド・ジェネリック-2.オーソライズド・ジェネリック-

オーソライズド・ジェネリックとは、は新薬メーカから許諾を受けたジェネリックで有効成分・原薬・添加物・製法・製造工場(注:同一でない場合もある)・効能効果全てが新薬と同じ薬です。

しかし、薬の色、味、形状、添加物、などにおいて新薬と異なる場合があります。

要するに新薬と同じ作り方をした薬をオーソライズド・ジェネリックと言います。

オーソライズド・ジェネリック(Authorized Generic)は略してAGと呼ばれています。

残念なことに全てのジェネリックにオーソライズド・ジェネリックはありません。

その理由としては、別の医薬品メーカーが特許を保有している場合もあり、同じものが利用できなかったり、飲みやすくするための工夫をしている場合や、安定性を良くするために変更していること等が挙げられます。

患者の体質によっては、添加剤の違いにより、アレルギー反応などの副作用を引き起こすことがまれにあります。

これは、ジェネリック医薬品に限らず、新薬であっても同様に起こりうることです。

2018年11月11日日曜日

シェネリックとオーソライズド・ジェネリック-1.シェネリック-

臨床検査から少し外れますが、多くの方から質問のありますシェネリックとオーソライズド・ジェネリックについて解説いたします。

一回目はシェネリックについて解説いたします。

シェネリックとは、新薬(先発医薬品)の特許が満了した後に、他のメーカによって製造販売される薬を言います。

新薬と同じ有効成分の医薬品ですが、開発にかかるコストが安価なために新薬より価格が安いのが特徴です。

新薬と、有効成分が同じで、効果、有効性や安全性について違いはなく、厚生労働省の審査を経て、新薬と同じ効き目・安全性、品質であることが証明されてから初めて、販売することが認められています。

気をつけなければいけないのは、薬によっては先発医薬品の効能・効果の一部がないものがあります。

その理由としては「先発医薬品に新しい効能・効果が追加され、再審査期間が設けられている」または「用途に対して特許がある」などが考えられます。

新薬で効き目があったのにジェネリックに変更後効き目が悪くなった場合、ジェネリック医薬品への不安感による心理的要因も考えられますが、ジェネリックそのものに問題がある可能性も完全に否定はできません。

実際薬の種類によってジェネリックは新薬より効き目が悪いものもあるのは事実です。

例を上げますと、

・ステロイドを含む塗り薬のジェネリックは効き目が悪いことがありますが、これは皮膚に塗った時、有効成分を均一に浸透させていくのに技術が必要なためと考えられます。

・湿布などの貼り薬では、有効成分の放出をコントロールするといった製剤技術に特許があるために、この技術に関する特許が失効していなければ、その製法は使えないことから効き目に違いが出てきますし、仮に特許が切れていたとしても、ジェネリックメーカーによっては製剤技術に差があることから効き目が悪い場合も当然あります。

アメリカやイギリスなどの先進国にもジェネリック薬はありますが、それらの国には、専門の審査機関があり、厳しい品質管理が行われています。

しかし我が国においては、ジェネリック薬専門の審査機関はなく、医薬品の品質管理の遵守は、製造するメーカーごとに義務づけられていますが、第三者によるチェックは行われていないため、品質管理が甘くなる場合があります。

更に新薬とは違い、開発費用のかからないジェネリック薬を製造するメーカーには、小規模の会社も多く存在することから、どうしても品質の悪いジェネリックは存在しています。

要するに大手製薬会社による一流のジェネリック薬がある一方、三流のジェネリック薬も存在することを頭に入れておく必要があります。

ジェネリック薬に切り替えたあとに効き目がなくなったり、これまでになかった副作用が続いたりする場合は、症状の悪化を考える前に、「ジェネリック薬のせいかな」と疑って医師に相談されることです。

ジェネリックの良いところは、コスト面ですが、飲みやすいように大きくて飲みづらい錠剤を小さくしたり、またコーティングすることによって、薬そのものにある苦味などを抑えるなど改良を加えた薬もあります。

ジェネリックを国が推奨するのは、医療費削減を第一目標にしているからです。

なぜならジェネリック医薬品を広めることにより、国の医療費削減にも繋がるからです。