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2018年2月4日日曜日

人獣共通感染症-5.細菌性人獣共通感染症としてのコリネバクテリウム・ウルセランス感染症

犬や猫などから人間にうつるとされる人獣共通感染症「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」による死者が2018年1月14日国内で初めて確認されました。

国立感染症研究所調べによりますと、国内では2001年から2017年11月末までに25例の発生が確認されています。

【感染経路】

コリネバクテリウム・ウルセランス感染症は、家畜やペットの動物が持つ「コリネバクテリウム・ウルセランス菌」に感染することで起きる人獣共通感染症です。

コリネバクテリウム・ウルセランスはジフテリア菌に類縁なグラム陽性の短桿菌で、おもに家畜などの動物に常在しており、ウシの乳房炎の原因となることがあります。

人から人に感染することはほとんどありません。

【症状】

症状としては、基本的にジフテリアと類似した臨床症状を示します。

喉の痛みや咳など風邪の症状が出て、重症化すると呼吸困難などで死亡することもあります。

【検査】

患者の体液を培養し、病原菌を単離、同定するか、PCRを用いて検査する。

【治療法】

マクロライド系抗菌薬が有効とされています。

【予防法】

人での国内感染事例の多くは犬や猫からの感染であることが確認されていることから、この菌に感染した動物と接する場合には注意が必要となります。

感染した動物は、くしゃみや鼻汁などの風邪に似た症状や皮膚病を示すことがあり、動物間で感染が拡大することも報告されていますので注意が必要となります。

無症状の保菌動物の存在も報告されています。

日常生活において過度に神経質になるのではなく、一般的な衛生管理として動物と触れあった後は手洗いを確実に行うことなどにより、感染のリスクを低減することが可能となります。

【感染対策】

国内では、人に対する定期の予防接種の対象である3種混合(最近では4種混合)ワクチンにジフテリアトキソイド(ワクチン)が含まれていますので、このワクチンはコリネバクテリウム・ウルセランス感染症に対しても有効であると考えられています。

2018年1月26日金曜日

人獣共通感染症-4.細菌性人獣共通感染症としてのカプノサイトファーガ・カニモルサス感染症-

舌を噛みそうな人獣共通感染症ですが、ご一読下さい。

カプノサイトファーガ・カニモルサス(Capnocytophaga canimorsus)は通性嫌気性グラム陰性の桿菌で、人獣共通感染症の病原体で、イヌやネコ口腔内に常在しています。

【感染経路】

イヌやネコに咬まれたり、ひっ掻かれたりすることで感染・発症します。

免疫機能の低下した方において重症化する傾向があります。

動物による咬傷事故等の発生数に対し、実際報告されている患者数は非常に少ないことから、本病は極めて稀にしか発症しないと考えられています。

※犬の咬傷事故については、保健所に報告されたものだけでも年間6000件以上もあり、報告に至らないものを含めるとさらに多く発生していると考えられます※

菌の感染力は弱く、今のところ人から人への感染の報告もないようです。

【症状】

発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などです。

重症化すると、敗血症や髄膜炎を起こし、播種性血管内凝固症候群(DIC)や敗血性ショック、多臓器不全に進行して死に至ることがあります。

重症化した場合、敗血症になった患者の約30%が、髄膜炎になった患者の約5%するとの医学統計があります。

【検査】

患者の体液を培養し、病原菌を単離、同定するか、PCRを用いて検査する。
 
【国内での患者の発生状況】

日本においては、これまで重症化した患者の文献報告例が14例あります。

患者の年齢は、40歳代~90歳代と中高年齢が多く、糖尿病、肝硬変、全身性自己免疫疾患、悪性腫瘍などの基礎疾患が見られます。

感染原因は、イヌの咬傷6例、ネコの咬傷・掻傷6例、不明2例となっています。

その内6人(内訳は50代1人、60代3人、70代1人、90代1人)が死亡しています。

なお、近年この感染症報告が多いのは、臨床現場で本病が認知されてきたためと言われています。

【海外での患者の発生状況】

1976年に最初に報告されています。

その後、現在までに世界中で約250人の患者が報告されています。

【治療法】

早期に抗菌薬等による治療を開始することが重要で、ペニシリン系、テトラサイクリン系抗菌薬が一般的に推奨されています。

カプノサイトファーガ-カニモルサスにはβラクタマーゼを産生する菌株もあるので、ペニシリン系の抗菌剤を用いる際にはβラクタマーゼ阻害剤との合剤などその影響を受けにくい抗菌剤を選択する必要があります。

【予防法】

イヌやネコに触れたり、その排泄物を処理した後は、手洗いやうがいを確実にする。

イヌやネコへ口移しで餌を与えない、キッスなど濃厚な接触をしない。

咬まれたり、引っ掻かれるなどして、発熱や頭痛など体調の悪化が認められた時は、早く医師による診断と治療を受ける。

【注意】

脾臓摘出者、アルコール中毒、糖尿病などの慢性疾患、免疫異常疾患、悪性腫瘍にかかっている人や、高齢者など、免疫機能が低下している方は、重症化しやすいので注意が必要です。

2018年1月15日月曜日

人獣共通感染症-3.細菌性人獣共通感染症としてのパスツレラ症-

パスツレラ症は、パスツレラ属(Pasteurella)菌を原因菌とする日和見感染症です。

パスツレラは、フランスの化学者・細菌学者のルイ-パスツール(1822~1895年)に因んでの命名されています。

日本国内では、2002年にネコから感染した95歳の女性が死亡した症例が文献的に報告された国内初の症例で、私の知る限りでは以後これまでに5例の死亡例を含む14例が報告されています。

この14例の内訳は、イヌからの感染が7例、ネコからの感染が6例、不明1例となっています。

近年、日本ではパスツレラ症の患者発生が増えていますが、この要因としてはイヌやネコに咬まれて感染する感染症として患者数が多いことと考えられています。

【症状】

パスツレラ菌の感染後、30分~2日で皮膚症状、呼吸器症状が現れます。

イヌやネコ咬まれたり、引っ掻かれたりしたあと、傷ができたところが腫れ、化膿する症状が主で呼吸器系の疾患、骨髄炎、外耳炎等の局所感染、敗血症、髄膜炎等の全身重症感染症を引き起こし最悪死亡することもあります。

傷口から精液様の臭いのする浸出液が排液されるのが特徴です。

高齢者、糖尿病患者、免疫不全患者等の基礎疾患を持つ人が特に感染しやすく、重症化の例も多く視られます。

【パスツレラ菌の保菌動物】

イヌの約75%、ネコのほぼ100%(爪70%)がパスツレラ菌を口腔内常在菌として保有しています。

【動物の症状】

イヌやネコでは一般に無症状です。
    
【検査と診断】

パスツレラ症では特徴的な症状が無いため、受診時の注意点としてどの診療科を受診してもイヌやネコとの接触があることを申告する必要があります。

細菌鑑別培地にマッコンキ-寒天培地を第一選択肢とすべきですべきで、BTB寒天培地にはパスツレラ菌以外の細菌が発育することからしてBTB寒天培地は使用すべきではありません。

PCR法を用いた培養サンプルからの直接的なパスツレラ菌遺伝子の検出も可能です。

【治療法】

高齢者、基礎疾患のある患者、咬・掻傷等では抗生物質の早期投与が重要となります。

早期に適切な薬剤を選別し、初期治療を十分に行う必要があります。

多くの抗生剤が有効であり、ペニシリン系、テトラサイクリン系、クロラムフェニコール、セファロスポリン系に高い感受性を示し有効です。

グリコペプチド系のバンコマイシン、リンコマイシン系のクリンダマイシンには高い耐性が認められるため使用は適切ではありません。

【感染予防対策】

ペットとしてのイヌやネコとの濃密な接触が増える昨今、パスツレラ菌の感染も増加することが心配されていますが、この病気は口移し等の過剰な接触を行わないこと、動物からの受傷に気をつけることにより防止できます。

2018年1月8日月曜日

人獣共通感染症-2.細菌性人獣共通感染症としてのネコひっかき病-

細菌性人獣共通感染症としては、炭疽、ペスト、結核 、パスツレラ症、サルモネラ症、リステリア症、カンピロバクタ症 レプトスピラ病、ライム病、細菌性赤痢、エルシニア・エンテロコリティカ感染症、野兎病、鼠咬症、ブルセラ症などがあります。

今回はネコひっかき病について紹介します

グラム陰性菌のバルトネラ・ヘンセラ菌(Bartonella henselae)によって引き起こされる人獣共通感染症のひとつです。

バルトネラ・ヘンセラ菌は猫に対しては全く病原性はなく、長い間、この菌を保有するネコは保菌状態になっており、18ヶ月以上も感染が続くこともあります。

ネコからルコへの菌の伝播にはネコノミが関与しており、ネコの血を吸って感染したネコノミは、体内で菌を増殖させ糞便として排泄されそれがネコの歯あるいは爪に付着します。

そのネコに咬まれたり引っかかれたりすることによって人間の傷に感染します。

日本ではネコの9~15%が菌を保有しているとの報告があります。

犬からも抗体が検出され、犬やサルからの感染報告もあります。

感染したネコの血液を吸ったネコノミが人間を刺す事による感染例も報告されています。

人の猫ひっかき病は日本では全国調査がされていないために患者数は不明ですが、おそらく全国で年間2万人程度であろうと言われています。

【症状】

菌の侵入した箇所が数日から4週間程の度潜伏期間後に虫刺されの様に赤く腫れます。

痛みのあるリンパ節腫脹、37℃程度の発熱、倦怠感、関節痛などが代表的な症状で、まれに重症化する事があります。

肝膿瘍を合併することがあり、免疫不全の人や、免疫能力の落ちた高齢者では重症化して麻痺や脊髄障害を引き起こすこともあります。

【治療法】

特に治療を行わなくても、自然に治癒することも多ですが、治癒するまでに数週間から数ヶ月もかかることもあります。

エリスロマイシン、ドキシサイクリン、シプロフロキサシン等が有効とされていますが、多くの症例でその効果は認められていません。

予防ワクチンはありません。

【検査】

1.関節蛍光抗体法(Indirect Fluorescence Assay:IFA)

血清診断としては,バルトネラ・ヘンセラ菌体を抗原とする間接蛍光抗体法が用いられる。

陽性・・・IgM抗体が1:16希釈以上,IgG抗体が1:128希釈以上で特異的な蛍光が見られる

2.抗体検査

単一血清でIgG抗体価が1:256以上、ペア血清で4倍以上のIgG抗体価の上昇、IgM抗体が陽性、のいずれかを認めれば陽性診断とする。

3.PCR法検査

臨床材料中のバルトネラ・ヘンセラ菌の遺伝子を検出する方法が迅速診断上有用な検査法です。

【注意】

最近のペットブームによりイヌやネコがペットが家族の一員として、ヒトがペットと濃密な接触をするが多くなっています。

動物を飼う場合には猫ひっかき病等の動物とヒトの間で起こる人獣共通感染症に対する知識を持つことは家族の健康とペットの健康を守る上で大切なことです。

2018年1月2日火曜日

人獣共通感染症-1.分類-

人獣共通感染症(ズーノーシス:zoonosis)とは、ヒトとそれ以外の脊椎動物の両方に感染または寄生する病原体により生じる感染症のことを言います。

人獣共通感染症は、以下のように分類されます。

1.単純型(ダイレクトズーノーシス:Direct zoonosis)

同種の脊椎動物間で感染し、感染動物から直接あるいは媒介動物を介して機械的に感染するタイプです。

1)動物からヒトへと伝播する(Zooanthroponoses)

2)ヒトから動物へと伝播する(Anthropozoonoses)

3)ヒトと動物の双方に伝播する(Amphixenoses)

などに細分されます。

具体例としては狂犬病、結核、ブルセラ症 、サルモネラ菌、炭疽、オウム病、腎症候性出血熱、細菌性赤痢、アメーバ赤痢、旋毛虫症、カンジダ症、ブドウ球菌症などが知られています。

2.循環型(サイクロズーノーシス:Cyclo-zoonosis)

病原体が感染するためには、複数の脊椎動物を必要とするタイプでこの型には寄生虫が多く含まれます。

実例をあげますと、アニサキス症、エキノコックス症、有鉤条虫症、無鉤条虫症などが知られています。

3.異型型(メタズーノーシス:Meta-zoonosis)

脊椎動物と無脊椎動物の間で感染が成立するタイプです。

実例をあげますと、アルボウイルス感染症、発疹熱、日本住血吸虫症、肝吸虫症、リーシュマニア症などが知られています。

4.腐生型(サプロズーノーシス:Sapro-zoonosis)

病原体が発育・増殖する場として、有機物・植物・土壌などの動物以外の環境を必要とするタイプです。

実例をあげますと、クリプトコッカス症、トキソカラ症、アスペルギルス症、ボツリヌス症、ウェルシュ菌食中毒などが知られています。

5.混合型

上記4型が組み合わされたタイプです。

実例をあげますと肝蛭症、ダニ麻痺症などが知られています。

2018年1月1日月曜日

2018年新年のご挨拶

恭賀新年

昨年中はご利用いただきありがとうございます。

本年も皆様方のお役に立てる情報を発信していきますので、よろしくご利用の程お願い申し上げます。

2017年12月18日月曜日

性行為感染症についてー8.梅毒診断と梅毒治療について(その2.梅毒完治の確定)ー

1)RPR検査が陰性または、抗体価が8倍以下となる

2)梅毒特有の症状の消失

注意点

※TP抗体が一度体の中に出来てしまうと、体内の梅毒トレポネーマを完全に駆除してもTP検査は一生涯陽性のままとなります※

※このことからしてTP検査を梅毒治療の目安の検査には利用出来ません※

3.梅毒治療の過ち

梅毒に対しての知識の乏しい医師は、以下の過ちを犯す事がままあります。

1.治療判定にTP検査を使用して陰性になるまで、延々と抗生物質を投与する。

※幾ら抗生物質を投与してもTP検査は陰性にはなりません※

2.RPR検査が陰性となるまで延々と抗生物質を投与する。

抗生物質の投与により体内のトレポネーマが駆除されても、RPR検査が陰性とならない場合もあります。

抗体価が8倍以下に固定されれば、梅毒は完治したと判定します。

※RPR法の測定値がゼロになるまで、完治ではないとするのは間違いです※