血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2025年1月26日日曜日

ヒトメタニューモウイルスとは

ヒトメタニューモウイルス(hMPV; human metapneumovirus)は、2001年にオランダで急性呼吸器感染症患児の鼻咽腔吸引液から初めて分離発見された比較的新しいウイルスで、風邪の原因の一つとして知られていて、特に乳幼児や高齢者では重症化することもあり、注意が必要です。

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は感染力が非常に強く、飛沫感染や接触感染によって広がります。

※抗体調査の結果からこのウイルスは50年以上前からヒトの間で流行しており、従来原因不明とされていた呼吸器感染症の病原体のひとつと考えられます(呼吸器感染症患者検体におけるHMPV陽性率は10-20%程度)※

【感染経路】

咳やくしゃみなどの飛沫を吸い込むことで感染する飛沫感染。

ウイルスが付着した手や物に触れ、その手で口や鼻を触ることで感染する接触感染。

【感染期間】

症状が出る5日前から症状発症後1~2週間の間、他者にウイルスを伝播する可能性があるります。

解熱してからは感染力はかなり低下するといわれています。

【症状】

3~5日ほどの潜伏期間を経て、風邪に似た症状で咳、発熱、喘鳴などの症状が現れます。

一般的には症状は1週間ほどで治まることがほとんどですが、重症化することもありますので、乳幼児は特に注意が必要となります。

重症化した場合には、気管支炎、肺炎を発症します。

【治療】

インフルエンザに対するタミフルのような特効薬はなく、症状を緩和させる薬が中心に処方されるれ対処法となります。

抗生物質は効き目がないことから基本的には使用しません。

【検査法】

イムノクロマト法を利用とした『ヒトメタニューモウイルスキット  クイックチェイサーhMPV』があります。

詳しくは以下を参照してください。

『クイックチェイサーhMPV』

【感染経路・感染率】

ヒトメタニューモウイルス感染症の感染経路は、感染者の咳や飛沫がついたものに触れることです。

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)の感染確率は、2歳までに約30%、5歳までに約75%、10歳までにほぼ100%と言われていて、感染力が強いウイルスで発症は繰り返されます。

【予防】

ヒトメタニューモウイルス感染症の感染対策としては、手洗いやマスクの着用など、飛沫感染および接触感染対策が重要です。

家庭内に感染者がいる場合は、食器やタオルを分けて使用しましょう。




 

2025年1月19日日曜日

インフルエンザ予防薬とは

 インフルエンザの大流行が続いていますので、今回はインフルエンザ予防薬に付いて解説させていただきます。

【インフルエンザ予防薬とは】

服用することで、発症を予防したり、発症しても症状を軽くする効果が期待される薬です。

【予防薬の働き】

インフルエンザウイルスが体内に侵入しても、予防薬を服用することで、ウイルスが増殖するのを抑え、病気にかかりにくくする効果があります。

【予防薬の種類】

主な予防薬には、タミフル、リレンザ、イナビルなどがありこれらの薬は、吸入型や飲み薬など、さまざまな形で服用できます。

これらの薬は、インフルエンザの治療薬として承認されており、予防効果も証明されています。

【予防効果】

予防薬の効果は、服用するタイミングや、個人の体質によって異なりますが、一般的には、発症を完全に防ぐものではなく、発症を遅らせたり、症状を軽くしたりする効果が期待できます。

【予防接種との違い】

予防接種は、インフルエンザウイルスの一部を体内に注入することで、体内に抗体を作らせ、感染を防ぐ方法ですが、予防薬はすでにウイルスに感染してしまった場合に、その増殖を抑えることで、発症を防ぐまたは症状を軽くする薬です。

【投与方法】

インフルエンザの予防投与は、インフルエンザ患者との接触から48時間以内に抗インフルエンザ薬を服用することで、インフルエンザの感染を予防する方法です。

【利用対象者】

原則、インフルエンザ患者と同居している人や共同生活をしている人で、次の条件にあてはまる人です。

1.65歳以上

2.呼吸器または心臓に慢性的な疾患がある人

3.糖尿病などの代謝性疾患がある人

4.腎機能障害のある人

【注意点】

予防薬薬の投与により、インフルエンザの症状は出にくくなりますが、100%予防できるわけではありません。

また、インフルエンザ患者との接触から48時間(リレンザは36時間)以上経過してからの投与や10日間以上の投与では、予防効果のあるデータが得られていませんので、予防投与はすみやかに決められた期間だけ行う必要があります。

予防効果があるのは、抗インフルエンザ薬を投与している期間のみとなります。

インフルエンザ予防薬は保険が適用されませんので、病院や薬局での支払いは自費(10割負担)となり、医療機関ごとに支払額が異なる点には注意してください。

およその費用の目安

診察費 およそ4000円

薬剤費 5000~6000円

※事前に受診される医療機関にお問い合わせください※

【参考資料】

『抗インフルエンザウイルス薬に関するガイドライン 』


2025年1月12日日曜日

季節性インフルエンザと新型インフルエンザの違いとは

 【季節性インフルエンザとは】

ウイルス粒子内の抗原性の違いからA型・B型・C型に分類されています。

A型は原因となる抗原性が小さく変化しながら毎年世界中のヒトの間で流行しています。

症状は38℃以上の高熱、悪寒、関節・筋肉痛などが特徴です。

多くの変異株が存在し、増殖力が速く、しかも感染力が強いので流行しやすいのが特徴です。

B型は突然変異を起こしにくく、A型の様に世界的な大流行を起こすことはありませんが、症状は重く、数年おきに流行して猛威をふるいます。

C型は感染しても軽症で済むことが多く、免疫を持っている人が多いのが特徴です。

【新型インフルエンザとは】

時折インフルエンザウイルスの抗原性が大きく異なるインフルエンザウイルスが現れますが、これを新型インフルエンザといいます。

多くの人が免疫を獲得していないことから、急速にまん延することによって起こる新型インフルエンザは、いつどこで発生するのか誰にも予測することはできません。

新型インフルエンザの代表的なものとしては、

1.1918から1919年にかけて世界的に流行したスペインインフルエンザ

2.1957から1958年にかけて世界的に流行したアジアインフルエンザ

3.1968から1969年にかけて世界的に流行した香港インフルエンザ

4.2009から2010年にかけて世界的に流行した新型インフルエンザA(H1N1)pdm2009

これらの新型インフルエンザウイルスが世界的に流行して、多くの人々が免疫を獲得すると新型インフルエンザではなくなり季節性インフルエンザという呼び方になります。

2025年1月5日日曜日

インフルエンザA pdm09型 大流行!!

 全国でインフルエンザの感染が急拡大しています。

現在流行しているのは、"インフルエンザA pdm09型"で、全国で検出されたインフルエンザの9割を占めています。

厚生労働省が2024年12月27日発表した、全国平均の定点数は42.66です。

【参考資料】

『インフルエンザの発生状況について』

今シーズンのインフルエンザのおよそ90%が"インフルエンザA pdm09型"で、このウイルス株は2009年にパンデミックとなったインフルエンザの型で、2009の09とパンデミックのpdmが名前の由来で、当時は"新型インフルエンザH1N1型"と呼ばれていました。

呼称が変わったのは、当時は『新型』でしたが、流行が繰り返されるということで、季節性のインフルエンザの一つとして扱われるようになったからです。

"インフルエンザA pdm09型"の特徴はとにかく感染力が強いという一言につきます。

家族内で一人が感染すると、ほぼ間違いなく家族全員が感染するほ感染力が強いわけです。

主な症状としては、

発熱・せき・喉の痛み・筋肉痛・全身の倦怠感です。

またこのウイルスは『下気道感染』を引き起こすことが多いことも特徴のひとつです。

感染が肺の手前か下気道の辺りまで広がっていくと、下気道感染を引き起こし、痰の量が増えたりとか咳がひどくなったりとか、ひどい場合は酸素化が悪くなって呼吸困難感が出現します。

感染予防対策

1.帰宅度の丁寧な手洗いとうがい。

2.マスク着用。

3.部屋の換気。

2025年1月1日水曜日

年賀 2025年

 謹 賀 新 年

本年もよろしくお願いします。 




2024年12月29日日曜日

血液検査パニック値-2.血液パニック値への対応の現実-

 【パニック値が出る主な原因】


パニック値が出る原因は、様々な疾患が考えられますが、代表的なものとしては、


1.腎機能障害: 腎臓の働きが低下し、老廃物が体内に蓄積することで、クレアチニンや尿素窒素などの値が上昇することがあります。


2.肝機能障害: 肝臓の働きが低下し、ビリルビンやAST(GOT)、ALT(GPT)などの値が上昇することがあります。


3.電解質異常: ナトリウム、カリウム、カルシウムなどの電解質のバランスが崩れることで、心不全や神経症状を引き起こすことがあります。


4.感染症: 細菌やウイルス感染によって、炎症反応が強く起こり、CRPや白血球数などの値が上昇することがあります。


5.悪性腫瘍: 癌細胞が分泌する物質や、癌細胞による臓器の破壊によって、様々な検査値に異常が見られることがあります。


【パニック値に関する注意点】


パニック値が出たからといって、必ずしも重篤な状態とは限りません。


パニック値の原因は、一つとは限らず、複数の要因が複雑に絡み合っていることもあります。


パニック値の解釈は、医師の専門的な知識と経験に基づいて行われます。


【まとめ】


パニック値は、生命の危険が差し迫っている可能性を示す重要な指標ですから、パニック値が出た場合は、速やかに医師の診察を受けることが大切です。


血液検査パニック値の取り扱いをめぐっては、日本医療機能評価機構は2016年にパニック値の報告を徹底するよう注意喚起を行っています。


2017年に日本臨床検査医学会が実施したアンケートでは、医療機関で検査項目や閾値、緊急連絡体制、カルテ記録、臨床的対応および確認方法などが統一されていない実態が明らかにされています。


同学会は2021年12月に『臨床検査「パニック値」運用に関する提言書』を公表、今年(2024年)6月に改定するなどの取り組みを行っています。


※閾値とは"しきい値"と読み、数値的な境目、境界線となる値を意味する※


【参考資料】

『検査データの意義:基準値・パニック値について 』


2024年12月22日日曜日

血液検査パニック値-1.血液検査パニック値とは-

血液検査は医療機関の規模の大小を問わず、全国各地の施設で幅広く実施されていて、診察だけでは気付けない身体的変化を検査値により知ることができます。

血液検査パニック値とは、「生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示唆する異常値」を指しますが、間髪を容れずに直ちに治療を開始すれば救命可能となりますが、そもそも臨床的な診察だけでは把握が困難で検査によってのみ可能と定義されています。

パニック値を放置すると患者の予後に著しい悪影響を及ぼすため、臨床検査技師から検査オーダー医師への迅速かつ確実な報告が必要となります。

【血液パニック値の特徴】

1.基準値から極端に逸脱した値であること

2.直ちに治療を開始しなければ生命に危険が及ぶ可能性があること

3.臨床的な診察だけでは診断が困難で、検査によってのみ診断が可能であること

【パニック値が出た場合の対応】

パニック値が出た場合の対応は、医療機関によって異なりますが、一般的には以下の流れになります。

1.検査技師から医師に速やかに報告

2.医師は患者の状態を速やかに把握し、必要な対応を迅速に決定する

3.必要に応じて緊急治療

※ただし、前回の検査結果を確認することも重要で数日間同じような値であれば、担当医が状況を把握している可能性が高く、緊急連絡は不要な場合もあります※

【血液パニック値に対する注意点】

1.パニック値は、あくまでも検査値の一つであり、それだけで診断が確定するものではありません。

2.パニック値が出たからといって、必ずしも重篤な状態であるとは限りません。

3.最終的な診断は、医師が患者の状態を総合的に判断して行います。

【まとめ】

血液パニック値は、生命の危機を示唆する重要な指標です。パニック値が出た場合は、速やかに医師に報告し、適切な対応をとることが重要です。

続く


2024年12月15日日曜日

マイコプラズマ肺炎2.マイコプラズマ肺炎の現状-

【2024年の報告数】

1999年以降最多

【年齢別の報告数】

5~9歳が43.5%、10~19歳が30.9%

【性別別の報告数】

男性が53.9%

【マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数】

2週連続で減少しましたが、過去5年間の同時期の平均と比較してかなり多く、都道府県別の上位3位は福井県(7.00)、青森県(4.67)、岡山県(4.60)となってといます。

【2014年かな2024年の第31週から35週までの定点あたりの報告者数】



【参考資料】

2024年12月8日日曜日

マイコプラズマ肺炎1.マイコプラズマ肺炎とは-

 マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)という病原体によって引き起こされる呼吸器感染症でこの病原体は自己増殖可能な最小の微生物であり、細胞壁を持たないのが特徴です。


分類は細菌に分類されています。


幼児や若い人々での肺炎の原因として、マイコプラズマ肺炎は比較的多いです。この病気は全年齢で報告されていますが、特に学童期から青年期にかけての感染例が目立ちます。

【症状】


1.発熱は、微熱から高熱まで人によって様々です。


2.全身倦怠感があり、だるさや体が重い感じがします。


3.強い頭痛:で頭が痛みます。


4.乾いた咳が特徴で、熱が下がっても長期間続くことがあります。


5.咽頭痛:があり喉が痛みます。


【診断法】


1.血液検査 肺炎マイコプラズマに対する抗体検査(IgMやPA抗体)を行います。


2.咽頭拭い液や喀痰などの検体からマイコプラズマ・ニューモニアエを分離する検査 PCR法や抗原検査などによってマイコプラズマのDNAや抗原を検出します。


3.胸部X線検査 肺炎の有無や程度を調べます。


※初期段階ではX線の写真上に明確な異常が見られないことも多く、進行するにつれて、両側肺に斑状陰影*が現れ始め重症例では、より広範囲に浸潤影が見られるようになります※


【治療】


1.マクロライド系抗生物質などが有効です。


2.対症療法としては、解熱剤、鎮咳剤などを用いて症状を緩和します。


【感染予防対策】


1.こまめな手洗いは、感染予防の基本です。


2.人が多い場所ではマスクを着用することで、感染リスクを下げることができます。

2024年12月1日日曜日

Doxy PEP(ドキシペップ:Doxycycline Post-Exposure Prophylaxis)について

 Doxy PEP(ドキシペップ:Doxycycline Post-Exposure Prophylaxis)とは、リスク行為後の24~72時間以内にドキシサイクリン(ビブラマイシン)を内服することで、梅毒やクラミジア、淋病を一定の効果で予防する性病の予防法です。

ビブラマイシン(一般名:ドキシサイクリン塩酸塩水和物)とは、グラム陽性菌・グラム陰性菌をはじめクラミジア属の細菌に対しても幅広く抗菌作用を発揮するテトラサイクリン系の抗生物質です。

【ビブラマイシンについての参考資料】

 Doxy PEPは日本国内ではまだあまり馴染みのない予防法ですが、徐々に知名度が上がってきており、その有効性を実感している人も増加しつつあります。


 Doxy PEPが推奨されない理由としては、以下があります。

理由1:薬剤耐性菌の増加

Doxy-PEP(ドキシペップ)の広範な使用により、性感染症を引き起こす細菌だけでなく、その他の細菌に対しても抗菌薬耐性が増加する懸念があり、これにより以前はこれらの薬剤で管理可能だった感染症の治療が困難になる可能性があります。

理由2:副作用と細菌叢への影響

抗生物質の濫用は副作用があり、体の正常な細菌叢(例えば、消化管、皮膚などの元々いる細菌で体の中でバランスを保っているもの)を乱すことがあります。

これは性感染症の予防を超えて他の健康問題を引き起こす可能性があります。

理由3:国による推奨の違い

Doxy-PEP(ドキシペップ)の使用に関するガイダンスは、米国では有効性が認められて推奨されていますがイギリスやオーストラリアなどでは抗菌薬耐性の懸念と長期的なデータの不足を理由にその実施を推奨していません。

理由4:日本における抗生剤市販の歴史

日本でも以前に内服の抗生剤が市販されていたことがあり、容易に手に入れやすいということがありましたが、現在は全て中止されています、その理由は薬剤耐性菌が生まれやすくなるためです。

今回は医師が処方するという違いはありますが、現在自己輸入で抗生剤(正規の安全なものかどうかは不明)を購入することも出来ることからして、このような内服方法が正しいと誤解を与える流れを医療機関や医療者が作るべきではない指摘する専門家も多数存在します。

理由5:感染拡大のリスク

薬剤耐性菌を作り出した場合、自分だけの問題ではなく、パートナーにもその薬剤耐性菌を感染させてしまうことになります。


以上の理由からDoxy-PEP(ドキシペップ)を勧めない医療機関も存在しています。

以上により、個々の医院の考え方によってDoxy-PEPが実施されないこともあります。

2024年11月24日日曜日

2024年梅毒の新規感染報告件数増加ご注意!!

2024年11月3日時点の日本の梅毒患者数は、12293人となり現在の方式で統計を取り始めて以来、過去最多を記録した2023年同期の累計数12679人に比べて、マイナス389人となりましたが、依然として大流行が続いています。

このままの状況下では患者や数は2023年を超えると危惧されています。

報告患者数は表に出た患者数ですので、水面下ではこれの数倍の潜在患者が存在しているとされています。

不安な行為をしてしまったときには必ず、適切な時期に梅毒検査を受けることが必要です。

梅毒トレポネーマは、オーラルセックスだけでも感染しますし、コンドームを使用しても完全には予防できません。

ただし梅毒は抗生物質で完治します。

 

くれぐれも梅毒にはご注意!!



2024年11月10日日曜日

前立腺癌について-5.新しい前立腺癌検査『ミュータスワコーS2,3PSAi50』-

『ミュータスワコーS2,3PSAi50』は、迅速測定が可能な全自動蛍光免疫測定装置「ミュータスワコー i50」の専用試薬で、富士フイルム和光純薬と国立大学法人弘前大学が共同で開発したものです。

PSA検査で前立腺癌が疑われる患者に対する二次スクリーニング検査に本製品を活用することで、F/T%PSAを用いた従来の検査法と比較して、前立腺癌と良性疾患の識別精度が向上します。

詳細は以下を参照してください。

【参考資料】

『ミュータスワコーS2,3PSAi50』

「S2,3PSA%検査(前立腺特異抗原(PSA)レクチン結合分画比)」は、2024年2月1日付けで保険適用され、国産で初めて保険適用された前立腺がん腫瘍マーカー検査として、臨床現場で使用可能となりました。

前立腺癌に罹患するとPSAに結合している糖鎖の構造が変化し、健常者や良性疾患では糖鎖構造としてα2,6 結合型シアル酸を持つ PSA(S2,6PSA)が多く、前立腺癌では糖鎖構造が変異してα2,3 結合型シアル酸を持つPSA(S2,3PSA)が増加します。 

S2,3PSA%は次の式のとおり、S2,6PSAとS2,3PSAの総和に占めるS2,3PSAの割合です。

PSA 4~10ng/mL のグレーゾーンにおいて、S2,3PSA%はF/T(%)PSAより前立腺癌と良性前立腺疾患の鑑別に有用と報告されています。 

トータルPSA 4~10ng/mLのグレーゾーンの患者を対象とした2次スクリーニングにおいても、本法は前立腺肥大症と前立腺癌の識別に有用であることが分かりました。

S2,3PSA%検査の導入により、前立腺癌診断の特異度が向上し、不要な針生検の低減が期待されます。

前立腺癌の患者では、糖鎖構造が変異することで、PSA(S2,3PSA)の割合が多くなります。

そのため、S2,6PSAとS2,3PSAの総和に占めるS2,3PSAの割合(S2,3PSA%)をみることで、 前立腺癌と前立腺肥大症との識別が有用であると示されています。

前立腺癌が強く疑われる人で,前立腺癌特異抗体(PSA)が4.0ng/mL以上かつ10.0ng/mL以下である場合に確定診断目的で実施します。

基準値  38.0%未満

一般的に、PSA 検査値が4ng/mL 以上となると精密検査の受診対象となりますが、特にPSA検査値4~10 ng/mL の「グレーゾーン」と呼ばれる領域では 70%程度が実際はがんではなかったという疫学データが報告されています。

この検査を利用することにより、より正確に前立腺癌を検出できることと、前立腺癌確認のための苦痛の伴う不必要な針生検を回避でき患者に余計な負担をかけることがなくなります。。


2024年11月3日日曜日

前立腺癌について-4.S2,6PSAとS2,3PSAの違い-

 【S2,6PSAについて】


S2,6PSAは、前立腺特異抗原(PSA)というタンパク質の糖鎖構造の種類の一つでPSAは、前立腺に存在するタンパク質で、血液中にもわずかに存在し前立腺癌になると、このPSAの値が上昇することが知られています。


【S2,6PSAとS2,3PSAの違い】


S2,6PSA:主に健康な前立腺や良性の前立腺肥大症で多く見られるPSAの糖鎖構造です。


S2,3PSA:主に前立腺癌で多く見られるPSAの糖鎖構造です。


要するにS2,6PSAは「良性のPSA」、S2,3PSAは「悪性のPSA」と捉えることができます。


【S2,6PSA検査を受けるの意義】


1.前立腺癌の診断補助


S2,6PSAとS2,3PSAの割合を比較することで、前立腺癌の可能性をより正確に評価することができます。


2.不必要な針生検の減少


S2,6PSAの割合が高い場合、前立腺癌の可能性が低いと判断でき、不必要な針生検を避けることができる場合があります。


S2,6PSA検査を受ける場合


1.PSA検査で異常が見られた場合


PSAの値が基準値を超えている場合や、年齢や症状から前立腺癌が疑われる場合に、S2,6PSA検査が勧められることがあります。


2.前立腺癌のリスクが高い場合


家族に前立腺癌の患者がいるなど、前立腺癌のリスクが高いと判断される場合にも、S2,6PSA検査を受けることがあります。


【S2,6PSA検査を受ける際の注意点】


1.絶対的な診断方法ではない


S2,6PSA検査は、前立腺癌の診断補助であり、最終的な診断は、病理組織検査など他の検査結果を総合的に判断して行われます。


2.保険適用について


S2,6PSA検査は、保険適用となる場合と、自費となる場合があります。検査を受ける前に、医療機関にご確認ください。


【まとめ】


S2,6PSA検査は、S2,3PSA検査と合わせて、前立腺癌の診断精度を向上させるために用いられる検査です。


PSA検査の結果が気になる場合は、医師にご相談ください。


2024年10月27日日曜日

前立腺癌について-3.新しい前立腺癌の診断検査 S2,3PSAとは?-

 S2,3PSAは、前立腺癌の診断に役立つ新しい検査です。

【S2,3PSAとは?】

PSA(前立腺特異抗原)とは、前立腺に存在するタンパク質で、血液中にもわずかに存在し前立腺癌になるとPSAの値が上昇することがあります。

一方S2,3PSAとは、PSAの糖鎖構造の種類の一つで、前立腺癌ではこの種類のPSAが増加する傾向があります。

S2,3PSA%とは、血液中のPSAのうち、S2,3PSAが占める割合でこの割合が高いほど、前立腺癌の可能性が高くなります。

【S2,3PSA検査の意義】

前立腺癌の早期発見に役立ちます、PSA検査だけでは前立腺癌と良性の前立腺肥大症を区別するのが難しい場合がありますが、S2,3PSA検査を併用することで、より正確に診断することができます。

患者に負担を与える不必要な針生検が減少します。

PSA検査の値が高くてもS2,3PSA検査で前立腺癌の可能性が低いと判断された場合は、針生検をせずに済む可能性があります。

S2,3PSA検査の結果は、治療方針の決定にも役立ちます。

【S2,3PSA検査を受ける場合】

1.PSA検査で異常が見られた場合

PSAの値が基準値を超えている場合や、年齢や症状から前立腺癌が疑われる場合に、S2,3PSA検査が勧められることがあります。

2.前立腺癌のリスクが高い場合

家族に前立腺癌の患者がいるなど、前立腺癌のリスクが高いと判断される場合にも、S2,3PSA検査を受けることを勧められることもあります。

【S2,3PSA検査の注意点】S2,3PSA検査の注意点

1.絶対的な診断方法ではない

S2,3PSA検査は、前立腺癌の診断補助であり、最終的な診断は、病理組織検査など他の検査結果を総合的に判断して行われます。

2.保険適用について

S2,3PSA検査は、保険適用となる場合と、自費となる場合がありますので、検査を受ける前に医療機関にご確認ください。

S2,6PSAは、前立腺がんの診断において重要なバイオマーカーとされ、健常者や良性疾患で多く見られます。

【どのような人が検査を受けるのか】

前立腺癌が強く疑われる人で,前立腺癌特異抗体(PSA)が4.0ng/mL以上かつ10.0ng/mL以下である場合に確定診断目的で行う。

【判定】

基準値  38.0%未満

※一般的なデータとして、PSA 検査値が4ng/mL 以上となると精密検査の受診対象となりますが、特にPSA検査値4~10 ng/mL の「グレーゾーン」と呼ばれる領域では 70%程度が実際はがんではなかったという疫学データが報告されています※

2024年10月20日日曜日

前立腺癌について-2.PSA(前立腺特異抗原:prostate-specific antigen)検査の問題点とは-

 PSA検査(前立腺特異抗原検査)には、次のような問題点があります。

1.過剰診断や過剰治療のリスクがある

2.前立腺がんの確定診断には、前立腺生検などの精密検査が必要で、身体に負担がかかる

3.前立腺がんがないのに陽性を示す偽陽性の可能性がある

4.検診では発見できないがんが存在する

【PSA検査の基準値】

・4ng/mL以下が正常範囲

・4.1~10ng/mLがグレーゾーン

・4.1~10ng/mL以上だと前立腺がんの確率が高くなります。

【PSA値が高くなる原因】

前立腺がん、前立腺肥大症、前立腺の炎症などが考えられます。

また、前立腺以外の病気によっても高くなる。

【PSA検査を受ける意義】

・PSA検査を受けることで、前立腺がんによる死亡率が低下することを示す研究結果もあれば、死亡率減少効果に関する科学的証拠がないとする研究結果もあります。

・PSA検査を受けることで、臨床的に重要ではないがんが発見され、過剰な治療を受けることによる不利益が存在することも無視できません。

【PSA検査を検診で受けることを何故推奨されないのですか?】

最近、厚労省の研究班がPSA検診は推奨しないと公表していますが、これは「死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診(住民検診)として実施することは勧められないということにほかなりません。

【重要なこと】

1.PSA検査は、前立腺がんの可能性を調べる検査であって、前立腺がんの確定診断を下す検査ではありません。

2.PSA検査は、前立腺がん以外の病気でも高い値を示すことがあるため、高値になったとしても必ずしも前立腺がんとは限りません。

3.前立腺肥大症、尿閉、前立腺炎などの前立腺以外の病気によっても高くなることから、PSA検査があてにならないと考えられています。

4.前立腺への刺激を与えるような行為、たとえば射精や長期間の車の運転、前立腺マッサージなどでも高くなります。

※PSA検査の値が高くても正確な診断をするには、前立腺の組織を取って調べるか、直腸内検診、あるいはCT検査が必要となります※


続く

2024年10月14日月曜日

前立腺癌について-1.前立腺癌とは-

【前立腺とは】 


前立腺は男性のみにある臓器で、精液の一部となる前立腺液をつくっています。


前立腺液には、PSA(前立腺特異抗原:prostate-specific antigen)というタンパク質が含まれてほとんどのPSAは前立腺から精液中に分泌されますが、ごく一部は血液中に取り込まれます。


【前立腺癌とは】


前立腺の細胞が何らかの原因で異常に増殖することにより起こる病気で、悪性腫瘍の1つで多くの場合比較的ゆっくり進行し、早期に発見して適切な治療を行えば、高い確率で治癒が望めます。


早期発見し適切な治療を受ければ、ステージⅠ・Ⅱで100%、ステージⅢで99.2%と良好な予後が期待されますが、気づかずに治療しないでステージⅣとなるとリンパ節や骨に転移し5年生存率は53.4%と著しく悪くなることから、早期発見が必要となります。


【前立腺癌患者数】


前立腺癌患者数は、2019年に日本全国で94,748人で日本人男性で最も罹患数が多い癌とされています。


2023年の男性の前立腺がんの罹患数は約9万8,600人です。


前立腺癌にかかる人数は、1年間で男性10万人中154人程度で、高齢になるほど高くなります。


前立腺癌はもともと欧米に多く、日本は欧米の1/10~1/20の罹患率とされていましたが近年では日本でも前立腺癌の罹患数が増加しています。


【日本人に前立腺癌が多くなった原因】


近年の食生活の欧米化に伴い、動物性脂肪を多く摂ることに比例して前立腺癌発症に何らかの影響を及ぼしていると考えられています。


また、PSA検査によって早い時期に癌を見つけることが可能となったことも前立腺癌患者の増加の一因になっていると考えられています。

続く

2024年10月6日日曜日

インフルエンザ4価ワクチンとは?

インフルエンザワクチンの4価ワクチンとは、その名の通り4種類のインフルエンザウイルスに対応したワクチンです。

※インフルエンザ4価ワクチンは、インフルエンザウイルスA型株(H1N1株とH3N2株)とB型株(山形系統株とビクトリア系統株)の4種類を培養して製造されているインフルエンザワクチン※

1.A型株

・A/ビクトリア/4897/2022(IVR-238)(H1N1)pdm09

・A/ダーウィン/9/2021(SAN-010)(H3N2)


2.B型株

・B/オーストリア/1359417/2021(BVR-26)(B/ビクトリア系統)

・B/プーケット/3073/2013(B/山形系統)


【なぜ4種類になったのか】

インフルエンザウイルスは、毎年少しずつ形を変えていきます(変異)。

このため、ワクチンに含まれるウイルス株も、流行が予想される種類に合わせて毎年更新されます。

4価ワクチンでは、A型インフルエンザウイルスが2種類(H1N1とH3N2)、B型インフルエンザウイルスが2種類(山形系統とビクトリア系統)の計4種類に対応することで、より幅広い種類のインフルエンザウイルスから身を守ることができるようになるわけです。。


【3価ワクチンとの違い】

3価ワクチンは、B型インフルエンザウイルスが1種類しか含まれていなかったために、流行するB型インフルエンザウイルスの種類によっては、効果が低くなる可能性がありました。

4価ワクチンは、B型インフルエンザウイルスが2種類含まれているため、より多くの種類のB型インフルエンザウイルスに対応でき、より効果が期待できるようになっています。


【4価ワクチンのメリット】

より幅広いインフルエンザに対応できる 4種類のインフルエンザウイルスに対応することで、より多くの種類のインフルエンザから身を守ることができます。

インフルエンザにかかってしまうと、高熱や咳、筋肉痛などの症状が出ることがありますが、特に高齢者や基礎疾患のある方は、重症化のリスクが高まります。

しかし4価ワクチンを接種することで、重症化を防ぐ効果が期待できます。

【4価ワクチンを受ける際の注意点】

副反応 他のワクチンと同様に、接種後に発熱や痛み、倦怠感などの副反応が出る場合があります。

度のワクチンもそうですが、インフルエンザワクチンは100%効果があるわけではありません。

ワクチンを接種しても、インフルエンザにかかってしまう可能性はゼロではありません。

【まとめ】

インフルエンザ4価ワクチンは、より多くの種類のインフルエンザウイルスに対応できるため、より効果的にインフルエンザ予防ができるワクチンです。

インフルエンザの流行前に接種することが推奨されています。

※インフルエンザワクチンにもメリットとデメリットがありますので、これらをよく理解した上に接種を受ける受けないは、ご自身で判断してください※

2024年9月30日月曜日

新しいインフルエンザワクチン

 毎年インフルエンザの予防ワクチンは、事前に流行するインフルエンザ株を予想して製造されます。

昨シーズンに流行・分離されたウイルス株から、そのシーズンに流行が予想されるウイルスに合わせて毎年インフルエンザワクチン株が決定・製造されています。

先日、今年度のインフルエンザワクチン株が決定し、昨年の3価から、新しく4価ワクチンに変更になりました。

これまでの3価インフルエンザワクチン製造株は、

A/H1N1pdm09・A/H3N2とB型1種の3種類(3価)が含まれ、このうちB型株については、山形系統あるいはビクトリア系統のどちらか一方のワクチン株を選定していました。

近年のインフルエンザの流行は、A(H1N1)pdm09およびA(H3N2)に加えてB型である山形系統とビクトリア系統の混合流行が続いていることからしてWHOも2013年シーズン(南半球向け)から4価ワクチン向けにB型2系統からそれぞれワクチン株を推奨しています。

米国においては2013/14シーズンから4価ワクチンが製造承認され、世界の動向は4価ワクチンへと移行してきています。

このことから、わが国においても4価ワクチン導入の是非を検討し(インフルエンザワクチン株選定のための検討会議)、2015-16シーズンよりA/H1N1pdm09、A/H3N2、に加えてB/山形系統およびB/ビクトリア系統の4価ワクチンとしました。


※さらに詳しく知りたい方は、厚生労働省「平成27年度インフルエンザワクチン株選定理由」をご確認ください※

平成27年度インフルエンザワクチン株選定理由

2024年9月22日日曜日

2024年7月までの日本国内における梅毒患者の分析

 2024年7月までの梅毒患者数は6770人で、依然として大流行が続いています。

患者状況としては、男性は20代から全年齢層に患者が見られますが、女性は20代にピークが認められています。

【病態の分析(5438人 男3433人・女2005人)】

Ⅰ.男性 

1.同性間感染者 573人

早期顕症Ⅰ期梅毒 165人

早期顕症Ⅱ期梅毒 207人

無症候梅毒 192人

晩期顕症梅毒 9人

2.異性間感染者 2860人

早期顕症Ⅰ期梅毒 1829人

早期顕症Ⅱ期梅毒 651人

無症候梅毒 347人

晩期顕症梅毒 33人

Ⅱ.女性

1.異性間感染者 2005人

早期顕症Ⅰ期梅毒 489人

早期顕症Ⅱ期梅毒 822人

無症候梅毒 687人

晩期顕症梅毒 7人

【無症候梅毒の分析】

1.男性 539/3433 15.7%

2.女性 687/2005 34.3%

3.男女 1226/5438 22.5%

※女性が男性の2倍以上無症候梅毒が見られますが、これは女性が男性に比べて症状がわかりにくいことに由来します※

※いずれにして梅毒トレポネーマに感染しても典型的な症状の出ないことが上記のように多数存在することから、感染するような行為をしてしまった場合には、必ず適切な時期に梅毒検査を受ける必要があります※


2024年9月15日日曜日

レプリコンワクチンに対する懸念

 2024年10月を目途に接種開始予定といわれ、今、世間を騒がせている新型コロナウイルスの次世代型mRNAワクチンの「レプリコンワクチン」について解説します。


従来の新型コロナワクチンは、コロナウイルスのタンパク質を作るもとになる遺伝情報の一部(mRNA)を体内に入れることでウイルスの免疫を作るというものでしたが、今回開発されたレプリコンワクチンは、そのmRNAが体内で自己増殖するタイプに改変したものです。


新型コロナウイルスを構成するスパイクタンパク質が自己増殖するから少量の投与で効果が長続きするというメリットがあるとされていますが、このワクチンに安全性および倫理性に関する懸念が持たれています。


その理由としてこのワクチンの開発国であるアメリカや大規模治験を行なったベトナムでは認可が下りていないものを、今回日本が世界に先駆けて認可したことにより、色々の疑念が持たれています。


このワクチンに関しては以下の懸念があるとされています。


1.このワクチン接種者の飛沫から非接種者に感染する恐れがあり、これに対する臨床実験もなされていない。 


2.自己増殖に歯止めが効かなくなり、永久にスパイクタンパクのトゲトゲが生産され続ける恐れがある。 


3.そもそもmRNAが人体の遺伝情報に影響を及ぼさないという確証がない。 


以上のことからこの新しいワクチンの使用に反対する専門家が多く存在します。


現に日本看護倫理学会が異例とも言える緊急声明”を出しています。


※日本看護倫理学会は、いわば医療関係者の身内でもある団体が、このワクチンの接種に対して安全性および倫理性に関する懸念を表明したことからしてもこのワクチンに対する懸念が増幅されます。


『一般社団法人 日本看護倫理学会 レプリコンワクチンに対する緊急声明』


※レプリコンワクチンに関しては以下を参照してください※


『医事速報2024年09月15日号 レプリコンワクチンについての考察』







2024年9月9日月曜日

2つの肝臓病の新名称

 2023年に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:Non-Alcoholic Fatty Liver Disesase、ナッシュ)と非アルコール性脂肪肝疾患(MASH:metabolic dysfunction-associated steatohepatitis、マッシュ)という2つの肝臓病の名称が変更されることが発表されました。


名称が改変された理由としては、従来の名称である、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に以下の問題点があったからです。


1.患者への偏見


「非アルコール性」や「太っている」といった言葉が、患者に対して否定的な印象を与え、精神的な負担になる可能性がありました。


2.病態の複雑さ


これらの疾患は、単にアルコールや肥満が原因というわけではなく、代謝異常など様々な要因が複雑に絡み合っていることが明らかになってきました。


以上の問題点を踏まえ、新しい名称として下記のように命名されました。



1.非アルコール性脂肪肝(NASH:Non-Alcoholic Fatty Liver Disesase、ナッシュ)


 非アルコール性脂肪肝(NAFLD)は、アルコールをほとんど摂取しないにもかかわらず、肝臓に中性脂肪が蓄積される状態を指し、生活習慣が原因とされていることから、新名称は、『代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH:metabolic dysfunction-associated steatohepatitis、マッシュ)』


2.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver diseaseナッフルディー)


アルコールやウイルスなどを原因としない脂肪肝の総称で、英語の頭文字をとって「ナッフルディー」または「ナッフルド」と読みます。肥満や糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を基盤に発症し、お酒をあまり飲まない人でもアルコール性肝障害の人のように肝疾患が進行することから、新名称は『代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD:Metabolic dysfunction associated steatotic liver diseaseマッスルディー)』

※脂肪肝というと、飲酒によるアルコール性脂肪肝を考えてしまいがちで、確かに飲酒による脂肪肝は多いのは事実ですが、特に飲酒歴もないのに肝臓に脂肪が貯まりすぎてしまう「非アルコール性脂肪性肝障害(NAFLD)」や「代謝異常に関連する脂肪性肝疾患(MASLD)」が近年増加しています※



2024年9月1日日曜日

世界的に性感染症が増加しています!!

日本だけでなく、世界的に性感染症が急増していると、世界保健機関(WHO)が2024年5月に発表した報告書によると、梅毒、淋病、クラミジア、トリコモナスの4種類の性感染症に、世界で毎日約100万人が新たに感染しています。

ここで特に問題となるのは抗生物質に耐性を持つ、つまり治療薬の効かない淋菌も増加しているということです。

報告書によると、世界中で毎日、100万人以上の15歳から49歳の人々が梅毒、淋病、クラミジア、トリコモナスの4つの感染症に新規感染している。

なかでも、梅毒の新規感染症例が急増しています。

2022年のHIVとウイルス性肝炎の新規感染者数は、微減にとどまりましたが、B型肝炎およびC型肝炎の新規感染者数は、それぞれ約120万人、約100万人に達しています。

HIVとウイルス性肝炎の新規感染が十分に減らないなか性感染症が増加しており、持続可能な開発目標(SDGs)の保健衛生目標の達成を脅かしているとWHOは警告しています。

WHOのテドロス・アダノム事務局長は報告書において、「公衆衛生の脅威となる伝染病を2030年までに終結させる手段はある。(中略)各国は各自の目標に向けてできる限りのことをしなければならない」との見解を示しています。

【参考資料】

新たな報告書は、HIVと肝炎の課題の中、性感染症の大幅な増加を警告している