血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2024年8月18日日曜日

エムポックス大流行の兆し!!

2024年8月14日、世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長はアフリカ中部で広がる感染症「エムポックス(サル痘)」について、約1年3か月ぶりに「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。 

世界保健機関によりますと、エムポックスの新系統のウイルスが2023年に見つかり、急拡大しコンゴ民主共和国では2024年、15600人以上の感染と537人の死亡が報告されています。

この新系統のウイルスはケニアやルワンダなど周辺国でも確認されています。

更に2024年8月15日、スウェーデン保健当局はアフリカで感染が拡大するエムポックス(サル痘)のウイルスで、より重症化しやすいタイプの「クレード1」感染者を国内で確認したと明らかにしています。

アフリカ外でクレード1の感染が確認されたのは初めてで流行地域に滞在中に感染したと考えられています。

【エムポックスウイルスについて】

コンゴ盆地型(クレードⅠ)と西アフリカ型(クレードⅡa及びⅡb)の2系統に分類される。

コンゴ盆地型(クレードⅠ)による感染例の死亡率は10%程度であるのに対し、西アフリカ型(クレードⅡa及びⅡb)による感染例の死亡例は1%程度と報告されている。

天然痘に似たエムポックスは元々アフリカの風土病でしたが、2022年以降に欧米などで感染が拡大しています。

世界保健機関は2022年7月に緊急事態を宣言し、感染が落ち着いた2023年5月に解除しています。

日本国内においては、2024年8月9日時点で248人の患者が確認されています。

2023年12月には、海外渡航歴のないHIV感染者の30代男性がエムポックスで死亡したていますが、国内の死者確認はこれが初めてです。

今後の流行に気をつける必要があります。



2024年8月11日日曜日

新しいエイズ治療薬レナカパビルについて-3.レナカパビル(注射剤)が、シスジェンダー女性に対するHIV予防の研究的使用において100%の有効性を示す-

ギリアド・サイエンシズ(本社:米カリフォルニア州フォスターシティ)は、2024年6月20日、第III相ピボタルPURPOSE 1試験の中間解析トップライン結果において、年2回投与のHIV-1カプシド阻害剤のレナカパビル(注射剤)が、シスジェンダー女性に対するHIV予防の研究的使用において100%の有効性を示したことを発表しました。

詳細は以下を参照してください。

レナカパビルの有用性について

2024年8月9日金曜日

地震お見舞い申し上げます。

 2024年8月8日に発生しました宮崎県沖の地震に際し、被災されました皆様方に心よりお見舞い申し上げます。


被害のほどが案じられ、損害の軽微と一日も早い復旧を心より願っております。


2024年8月4日日曜日

日本国内でのアメーバ赤痢の現状

 性感染症の中で梅毒の増加は世間を騒がせていますが、その裏で静かに増加しているのが赤痢アメーバ症です!!


発展途上国では汚染された食べ物を口にすることで感染することの多い病気ですが、衛生環境が維持されている先進国ではむしろ性行為での感染が増えているのが現実です。


治療の遅れで亡くなるケースもあります。治療は内服薬が第1選択で比較的簡単ですが、アメーバ赤痢は通常の大腸炎ときちんと鑑別して治療することが重要となります。


世界人口の10%が持つとされるアメーバ赤痢原虫には2種類あり、大腸炎や肝膿瘍の症状をもたらす病原種が90%、非病原種が10%と言われています。


「日本で流行しているのは病原種ですので、要注意です。以前は肛門をなめたり、肛門性交、口腔性交を行う男性同性愛者(MSM)の間の流行でしたが、いまは男女間でも風俗店などを中心に同様な性行為が行われ、増加しているとみられています」


現在の過患者数は氷山の一角で、実際の患者数は昨年約1.5万人の新規患者数が報告された梅毒を上回るとの見方もあります。性感染症検査場の保存血清を調べた2020年報告の研究では、その時点で梅毒陽性率(2.11%)よりアメーバ赤痢症陽性率(2.64%)が高かったのです。なお、2014~17年の新規感染者数は年間1000例を超えたが2018年以降は大きく減少したとされていますが、これは検査試薬が製造中止になったためで、真の減少ではなく、その脅威は年々増しているとみられています。

前回紹介した抗原検査法によって、今後患者数は増加するおそれが指摘されています。

2024年7月28日日曜日

アメーバ赤痢抗原検査

 性感染症の中で梅毒の増加は世間を騒がせていますが、その裏で静かに増加しているのが赤痢アメーバ症です!!

発展途上国では汚染された食べ物を口にすることで感染することの多い病気ですが、衛生環境が維持されている先進国ではむしろ性行為での感染が増えているのが現実です。

潜伏期間は2~4週間で、典型的な症状は下痢、高熱、しぶり便、それに排便時の下腹部痛など大腸炎の症状を繰り返します。

診断の決め手となるのは、イチゴ状の粘血便です。

トイレットペーパーに血がつくため痔と間違える患者さんもいます。

2024年初からの新規感染者報告数は272人で、前年同期の255人を上回っています。

【検査法】

①顕微鏡下での病原体検査

② ELISA法またはイムノクロマト法による抗原検査

③ PCR 法による病原体遺伝子検査(一部の研究施設でしか利用できない)

④赤痢アメーバ抗体検査(2017年に検査薬製造中)

※現在の検査法※

糞便を直接または生理食塩水で溶解し、カード式の検査キットで判定する「糞便迅速抗原検査」が用いられます。

これは特別な機器は不要で、30分以内に感染の有無を判定できます。

この検査は、栄養型の表面タンパク(レクチン)に対するモノクローナル抗体を用いたイムノクロマト法で栄養型を検出するため、特異度が高く、偽陽性の頻度は極めて低い検査法です。

【参考資料】

赤痢アメーバQUIK CHEK


リミング(肛門を舐める)・肛門性交・肛門性交をした後にキスやフェラチオをするなどの行為でアメーバ赤痢は感染しますのでこれらの行為を慎む必要があります。

2024年7月21日日曜日

ご注意!! 新型コロナウイルスの第11波に突入!!

 新型コロナウイルスが再び、猛威を振るいはじめました。


全国約5000の定点医療機関から2024年7月8~14日に報告された感染者数は55072人で10週連続で増加し、感染「第11波」に入ったとの見方が強まっています。


現在流行の主流となっているのは、KP.3株です。


現在ま流行している『KP.3』は『BA.2』の子孫の子孫がさらに変異したものです。


「オミクロンKP.3株は親系統株であるオミクロンJN.1変異株と比較しても、より高い免疫逃避能を保持し、高い免疫逃避能を保持する」としています。


このような現状から、今後JN.1株系統である「KP.3株」を中心に対策していくことになると考えられます。


「KP.3株はこれまでの従来株よりも重症化しやすいウイルスである証拠は今のところありません」。


KP.3株が主流株の割合を増やしているのにも関わらず死亡者数の増加に至っているわけではありません。


少なくともこの夏の間、感染がどんどん広がっていく可能性が高くそれが最終的にどの規模になるのかは現時点では分かりません。


要するに新型コロナと共存する時代にはなりつつありますが、新型コロナは完全には収束していません。


これからも従来通りの感染予防対策が必要です。


2024年7月14日日曜日

新しいエイズ治療薬レナカパビルについて-2.新しいHIV予防薬レナカパビルがHIV感染予防役として使用できる可能性について-

 


この治療薬が今回の第III相臨床試験結果によって、新しいHIV予防薬レナカパビルとして期待されているわけです。


16歳から25歳の女性と少女2,134人を対象としてウガンダと南アフリカで行われた臨床試験は極めて高い予防効果が得られています。


2,000人以上の患者がレナカパビル注射による投与を行い、臨床試験期間中にHIVに感染した患者は一人もいなかった。



臨床試験の人口統計は16歳から25歳の若い女性に焦点を当てて行われましたが、この人口層は南部アフリカでHIVの影響が最も大きいとされています。


多くの研究者たちが、この薬による予防効果に驚愕しています。


従来のHIV予防の選択肢は処方通りに服用された場合非常に効果的であることはわかっていますが、PrEPのために半年ごとのレナカパビルは、経口PrEPピルを服用または保管する際に直面する可能性のあるスティグマや差別の解消に役立ち、半年ごとの投薬スケジュールによりPrEPの遵守率と持続性の向上に役立つ可能性があります」とベッカーは説明した。



レナカパビルは、毎日服用する2つの経口薬であるツルバダ (Truvada)とデシコビ(Descovy)と比較された。これらは、HIV予防のためのPrEP(曝露前予防内服)として成功を収めている。


ツルバダのグループでは、試験期間中に1,068人中16人の女性がHIVに感染し、デシコビのグループでは、2,136人中39人の女性がHIVに感染しましたが、レナカパビル注射による投与グループにおいては感染者はなかった。


日本においてもレナカパビルをHIV予防のためのPrEP(曝露前予防内服)として承認する動きが活発になってきていることから、意外と早く承認される可能性があります。


HIV予防における「最も重要な」進展の一つ

南アフリカのデズモンド・ツツHIVセンターの所長であるリンダ・ゲイル・ベッカー教授は、この注射が人々に「重要な新しい選択肢」を提供する可能性があると述べた。


【参考資料】

新しい年2回注射薬レナカパビル、HIV治療におけるこれまでで最大の進歩と称賛される