血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2020年5月24日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について-20.新型コロナウイルス感染は発症前から発症5日が最多、6日以後はほとんど感染しない!-

台湾衛生福利部疾病管制署(台湾CDC)からJAMA Internal Medicine(2020年5月1日オンライン版)に「台湾のCOVID-19感染ダイナミクス」という論文が出ました。

100人の感染確定者と2,761人の接触者について追跡を行い、その時期による感染力の違いが明らかにされています。

この論文の最大のポイントは「COVID-19感染は発症前から発症5日が最多で、6日以後はほとんど感染しない!」ということです。

まとめますと、

1.接触者追跡は発症4日前までさかのぼれ

2.COVID-19は発症前から発症5日までに感染リスクがあり、6日以降はない!
COVID-19の二次感染までの期間(serial interval)は4~5日、SARSは8.4日

3.すなわちCOVID-19患者が肺炎を起こして入院するころにはもう感染しにくくなっているというのです。

これら3点には医療者にとっては非常に有益なこととなります。

発症6日以後にCOVID-19患者に接触した852人で発症はなんと0(95%CI 0~0.4%)という結果が得られています。

多くの国においても、医療従事者は病院でなくて家庭で感染する方が多かったというのです。

ドイツにおいても発症1週以後、生存新型コロナウイルスは分離されていません。

この論文の内容に関してもさらなる検証が必要となりそうです。

2020年5月17日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について-19.抗体検査が陽性となっても第三者に感染させないという保証はない!!-

世界的に新型コロナウイルス抗体検査を実施する傾向にありますが、抗体検査が陽性となっても人に感染させないという保証はありません。

その理由としては、見つける抗体の種類によって異なります。

1.見つける抗体が感染予防抗体すなわち中和抗体であれば、この抗体を持つ人は既に体内の新型コロナウウイルスを駆逐していることから人へ感染させることはなく、当人も治癒していると考えられます。

しかし持つ中和抗体の量が少ない場合は、感染防御は出来ず再感染したり、他人に感染させてしまうこともあります。

中和抗体の量が問題となります。

2.見つける抗体が感染予防抗体すなわち感染を示す抗体であれば、体内にウイルスが存在していて、自分も感染していて他人へ感染させる状態です。

これはHIV抗体と同じことです。

現にWHOも新型コロナウイルスに感染して回復した人など抗体を持つ人が2度目の感染を阻止できるという根拠は、現時点(220年4月26日)ではないという見解を示しています。

要するに見つける抗体が、感染予防に役立つ中和抗体か、感染を示す感染抗体かが重要なのです。

一部の国で抗体が確認された人々への「免疫証明書」の発行を検討していますが、完全な安全性の証明にはならず、感染拡大のリスクを高めるおそれがあるとWHOは警告しています。

2020年5月10日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について-18.新型コロナウイルスの生命力-

2020年4月23日米国土安全保障省の高官は、新型コロナウイルスは日光が当たる場所や高温・高湿度の環境下では、より短い時間で威力が弱まる傾向が示されたと発表しました。

政府の研究者らは、新型コロナウイルスが最も生存しやすいのは屋内の空気が乾燥した環境下で、気温と湿度が上がれば威力を失い、特に日光に弱いとの研究結果を報告されました。

インフルエンザなど他の呼吸器系疾患と同様に、新型コロナウイルスの感染力が夏季に弱まるとの期待を強める内容となっていますが、現実はシンガポールなどの温暖な場所でも強い感染力を発揮していることから一概には信用はできません。

暗くて湿度が低い環境では、新型コロナウイルスはステンレス鋼など通気性のない素材の上で、18時間かけて威力を半減させるが、高湿度の環境ではこの時間が6時間に減り、高湿度の環境で日光に当てれば、2分に短縮されるという結果が得られています。

空気中の新型コロナウイルスは、暗い室内で1時間かけて威力が半減したのに対し、日光に当てた場合は90秒に短縮されたことも明らかにしています。

この発表が信頼できるか否かは、今後の追試が必要となります。

新型コロナウイルスの感染予防は、やはり3密を避けて、うがい・丁寧な手洗い・マスク使用が大切なことは言うまでもありません。

2020年5月3日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について-17.死亡率と致死率-

よく死亡率と致死率という言葉を耳にしますが、これらについてわかりやすく解説します。

【死亡率】

死亡率とは、人口学において、一定人口に対する、その年の死亡者数の割合を言います。

【致死率】

致死率は、致命リスク、致命率ともいい、疫学における、特定の疾病に罹患した母集団のうち死亡する割合のことを言います。

ある地域社会で同じ病気と診断された1000人のうち90人が死亡したとしますと、これは正式に病気と診断された1000人のうち90人が死亡し、910人は回復したことを意味しています。

従って致死率は9%ということになります。

分母が患者数である致死率は、しばしば死亡率と混同されていますが、死亡率と致死率は全く異なります。

死亡率は、人口に対する死亡者数を調査したもので、人口数と期間を定めて計算し分母は人口です。

例えば人口10000人あたり1年間にインフルエンザに起因する50人の死者が生じた場合、糖尿病の死亡率は 10000:50 または 1000:5 になります。

【致命率と生存率と死亡率の関係】

致死率=死亡数/患者数

生存率=1-致命率

死亡率=死亡数/人口数


2020年4月26日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について-16.布マスクは有効は本当に有効なのか??!!-

新型コロナウイルスの大流行に伴いマスクが品不足となっています。

新型コロナウイルスの感染拡大防止の一環で、安倍晋三首相が洗濯して繰り返し使える布マスクを5千万余りある全世帯に2枚ずつ配る方針を表明しましたが、布マスクの効用をめぐっては、専門家の間でも懐疑的な見方が多いのが事実です。

※このマスクは異物の混入やカビが生えて生えていたりして不良品が多く、回収され未だ行き渡っていません※

その理由としては、布マスクは織り目のサイズが大きいため、を防ぐ効果が小さい。

また繰り返し洗って使う場合、管理が悪いと雑菌がはびこる可能性があり、かえって不衛生になる可能性が指摘されています。

2015年に英国の医学誌に発表された論文では、1607人の医療従事者を、医療用マスクをつける人と、布マスクをつける人、マスクをつけたり外したりする人にわけて感染リスクを比べた結果、布マスクをつけた人がもっとも呼吸器疾患やインフルエンザ症状を示した人が多かったと報告されています。

WHO(世界保健機関)は、新型コロナ感染拡大期における布マスク使用について「いかなる状況においても勧めない」と公言しています。

WHO(世界保健機関)は、現在でも症状のある人や介護や医療現場に従事する人以外のマスクの着用は推奨していません。

一方、米国疾病予防管理センター (CDC)も、一般の方にはこれまでマスクを推奨しないとしてきましたが、ガイダンスを変更し布製フェイスマスクの使用を一般の人に勧めるという勧告を出した上、サイト上で布製フェイスマスクの作り方も掲載しています。

CDCは、あくまでも、人と社会的距離をとる(少なくとも1.8メートル程度)ことが重要で、追加の感染拡大防止策として、布マスクの使用を勧めるというスタンスです。

布マスクには他者からの感染を防ぐ効果はまったく期待できないことは、多くの専門家もして指摘しています。

要するに布マスクがどれほど効果があるかのエビデンスは少ないために効果があるとは言いにくいわけです。

大きな飛沫をせき止め、のどを保湿する可能性はあるため他人にうつさないという目的を考えれば、つけないよりつけたほうが良いということになります。

布マスクをつけるだけでコロナウイルスの感染が防止できると思いこむのは危険なことです。

布マスクが感染拡大予防に効果がある可能性もあるかもしれませんし、鼻や口を物理的に何かで覆って飛沫飛散を防ぐことは一理ありますが、やはり大切なことは手洗いが重要となります。

2020年4月19日日曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について-15.日本国内におけるPCR検査の現状-

PCR(polymerase chain reaction)検査は、遺伝子の検査に用いられる手法のひとつの検査法で、特定のDNA断片(数百から数千塩基対)だけを選択的に増やして調べやすくするために用いられる遺伝子増幅技術です。

これは、遺伝子そのものをコピーして増やす酵素を使って、直接遺伝情報を読み出してやろうという革命的かつ画期的な方法なのです。

PCR検査はウイルスそのものを増やして検査するのではなく、ウイルスの遺伝子を増やして検査するのです。

そのため検査技術が未熟であったり、検査をする部屋が不潔であったりすると外界の何らかの遺伝子が混入してこの混入した関係のない遺伝子を間違ってコピーして増やしてしまうことからニセの陽性反応が起こってしまいます。

要するに検査検体には新型コロナウイルスはいないのにも関わらず、外界から混入したDNAのかけらが増幅され検査結果は陽性(偽陽性反応)となってしまう訳です。

更に新型コロナウイルスのPCR検査では、新型コロナウイルスの遺伝子だけを調べていることから、新型コロナウイルスのカプセルが破壊されて機能していなくても(感染性のない新型コロナウイルスの死骸)PCR検査で陽性となることもありえます(偽陽性反応)。

従ってPCR検査は、外界からの遺伝子の購入を防ぐ施設、熟練した技術者が検査を実施しないと、偽陽性反応や偽陰性反応の出現率が極めて高くなってしまい信頼できない検査となってしまいます。

現在日本国内において実施可能なPCR検査の実施件数は、1日現在1日地方衛生研保健所約4900件・民間検査会社約3600件・検疫所約1800件など合わせて約1万2800件と言われています。

現在のように急激な新型コロナウイルスの感染者発生に伴い場当たり的に検査件数を増やすことは信頼性を低下させることになってしまいます。

施設の拡充は出来てもPCR検査に熟練した技師を短期間に養成することは不可能です。

日本国内で急激に検査件数を増やして検査を実施する体制はできないということなのです。

検査は出来るが、信頼性の低い検査を実施しても意味がありません、混乱を招くだけです。

2020年4月13日月曜日

中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について-14.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主な症状-

【潜伏期間】

2~12日(平均7日)

【症状】

初期症状は、鼻水や咳、発熱、軽い喉の痛み、筋肉痛や体のだるさ(倦怠感けんたいかん)など、風邪のような症状が生じ、特に、37.5℃程度の発熱と強い体のだるさを訴える人が多いという特徴があります。

初期症状では比較的軽症で、発熱や咳など風邪のような症状がみられるほか、嗅覚・味覚障害が生じることがあります。

人によっては鼻詰まりや鼻水、頭痛、痰や血痰けったん、下痢などが生じることがあります。

発熱やせき、それに息苦しさや、呼吸困難といった呼吸器の症状が出現し、重症化すると、肺炎を引き起こしたり、腎臓の機能が低下したりして、死亡することもあります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の初期症状に結膜炎があることも理解しておく必要があります

ただし、これらの症状は感染した人全員にみられるとは限らず、無症状で経過する例もありますし、軽症の段階でも重症化した段階でも感染力があり、人に感染させると考えられていますが、無症状の人から感染する可能性は高くはないと考えられています。

初期症状はおよそ5~7日間程度続き、重症化しなければ次第に治っていきます。


【致死率】

世界保健機関(WHO)によると致死率は3%から4%程度と考えられていますが、10%を超えている国もあります。

2020年4月10日時点で世界全体の致死率は6.1%と報告されています。


【重症化する人】

これまでに死亡した人のほとんどには、高血圧や糖尿病、それに心臓や血管の病気といった、免疫を低下させるような持病があったということです。

しかし最近では若年層の人も重症化して死亡しています。