血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2019年7月16日火曜日

性行為感染症アラカルト-7.第2期梅毒-

第2期梅毒の症状としては、第1期梅毒の症状が出た後の4~10週後に発熱や皮疹が出現します。

皮疹は第2期梅毒患者の70%に認められ、梅毒患者全体の90%以上に認められる代表的なものです。

皮疹は3~10mm程度の斑丘疹状紅斑を呈し、色はピンク・褐色・赤色で全身に発生し、一般的には痒みも痛みもありません。

この発疹はしばしば手のひらや足の裏に現れ、発疹はすぐ消えることもあれば、何ケ月も続くこともあります。

治療をしなくても、発疹はやがて消えますが、数週間、または数カ月経ってから再発することがあります。

頭皮に発疹ができると、髪の毛が斑状に抜け落ちていわゆる虫食い状態になります。

その他粘膜疹や扁平コンジロームも出来てきます。

扁平コンジロームは、外陰部や肛門などの粘膜や皮膚が接触する部分に好発し、ダイズ大の扁平隆起性の腫瘤で表面から浸出液が出ることが多く、この浸出液に多量の梅毒トレポネーマが含まれていることからこれに接触することにより簡単に感染してしまいます。

口の中には両側の軟口蓋に沿って広がる乳白色の粘膜斑が出来ます。

この粘膜斑はちょうど蝶が羽を広げているのに似ていることからも"バタフライ・アピアランス(butterfly appearance)"と呼ばれます。

またこの時期には全身のリンパ節が腫れますが、特に上腕骨の滑車上リンパ節の腫れは梅毒の特徴的な腫れです。

その他の症状としては、微熱・倦怠感・咽頭炎・食欲不振・体重減少・筋肉痛・関節痛などがあります。

この時期の血液検査では、感染者の半数以上に肝機能障害が現れ、アルカリホスファターゼが高値になりますが、血清ビリルビン値は上昇しないという特徴的な検査所見を呈します。

また、一部の患者には胃に浸潤性または潰瘍性病変を引き起こすことから、しばしば悪性リンパ腫と間違われることがあります。

肛門性交を行う人は直腸にも病変が見られます。

結膜炎・角膜炎・虹彩毛様体炎・網膜炎・視神経炎を発症することがありますが、これを放置すれば失明する危険性があります。

【検査】

この時期にはSTS検査やTPHA及びFAT-absなどのTP検査も陽性となります。

2019年7月9日火曜日

NAT検査とリアルタイムPCRの違いとは

よくNAT検査とリアルタイムPCRの違いを質問されますから、今回はこの違いについて解説致します。

1.NAT検査とは

NAT(Nucleic acid Amplification Test )とは、日本赤十字社が輸血用血液製剤の安全性確保の一環として実施している各種病原体の検査のひとつで、HBV、HCV、HIV-1/-2を同時に検査できる核酸増幅検査のことです。

検査は血液中のウイルス遺伝子を構成する核酸(DNAまたはRNA)の一部を約1億倍に増幅して検出する極めて感度と特異性の高い検査方法です。

検出感度は以下のとおりです。

・HBV 平均検出感度  3.2IU/mL
・HCV 平均検出感度 12.4IU/mL
・HIV-1 Group M 平均検出感度 41.8IU/mL
・HIV-1 Group O 平均検出感度 93.7 copies/mL
・HIV-2 平均検出感度 2.0 copies/mL

※血液センター専用の輸血用血液専用の検査ですから、HIV感染の判断検査と医療機関で受けることは出来ません※

2.リアルタイムPCR検査

以下の二種類があります。

1)コバス  taqMan HIV-1「オート」

【販売メーカ】

ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社

 健康保険の名称は『HIV-1核酸増幅定量精密検査』です。

【検査成績の記録】

検出範囲は、40~1.0×10の七乗コピー/mLです。

以下の三種類に分けて記載されます。

1.測定上限を超えた場合・・・検査結果は【>1.0×1.0×10の七乗コピー/mL  検出  陽性】

2.測定範囲内・・・検査結果は【○○×1.0×10の○乗コピー/mL  検出  陽性】

3.測定限界未満でウイルスが存在する時・・・検査結果は【<○○×1.0×10の○乗コピー/mL  検出 陽性】

4.測定限界未満でウイルスが存在しない時・・・検査結果は【<○○×1.0×10の○乗コピー/mL  検出せず  陰性】

2) アキュジーン m-HIV-1

【販売メーカ】

アボット社が販売しています。

健康保険の名称は『HIV-1核酸増幅定量精密検査』です。

【最小検出感度】

検体量0.6ml→40コピー/ml

検体量0.5ml→75コピー/ml

検体量0.2ml→150コピー/ml

両方の検査とも自動機器を使用して全自動で検査を行います。

感度、特異性、検出可能なHIV-1はTaqMan HIV-1「オート」とアキュジーン m-HIV-1は同じ。

日本での普及率は、日本国内では、TaqMan HIV-1「オート」が先行販売されたことから、後発販売となったアキュジーン m-HIV-1の普及率は低いのが現状です。

※TaqMan HIV-1「オート」とアキュジーン m-HIV-1は、共にHIV-2は検出できません※