血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2015年10月26日月曜日

肝機能検査-4.γ(ガンマ)-GTP-

γ-GTP(ガンマーグルタミルトランスペブチターゼ)はGOTやGPTと同様に、たんぱく質を分解する酵素のひとつで、おもに肝臓の障害や、胆汁の流れが悪くなると血液中で上昇します。

【検査目的】
 
肝臓細胞や胆管細胞が壊れたことの指標として検査されます。

※γ-GTPが血液中に多くなっても、それ自体が何か悪い影響を及ぼすことはありません※

※健康診断でγ-GTPを測定する目的はアルコ-ル脂肪肝の測目的で検査されます※

【基準値】

成人男性 10~50IU/L

成人女性 9~32IU/L

※女性は女性ホルモンの影響で数値が低い※

※基準値よりも低すぎても問題はありません※

※人によっては異常がなくても生まれつきγ-GTP数値が高かったりする場合があります※

※γ-GTPは比較的アルコールに短期的に反応するので、飲酒を一週間もやめれば下がりだし、γ-GTPの値が100以下であれば、節酒あるいは禁酒することですぐに正常値にもどります※

【異常値】

○軽度の増加・・・基準値の上限~100IU/L

アルコ-ル性肝障害、薬物性肝障害、慢性肝炎、脂肪肝

※肝硬変、肝がんの可能性もあり※

○中等度の増加・・・100~200IU/L

アルコ-ル性肝障害、薬物性肝障害、慢性活動性肝炎

※肝硬変、肝がん、脂肪肝、胆道疾患の可能性もあり※

○高度の増加・・・200~500IU/L

アルコ-ル性肝障害、閉塞性黄疸、肝内胆汁うっ帯

※慢性活動性肝炎の可能性もあり※

○超高度の増加・・・500IU/L以上

急性アルコ-ル性肝炎、閉塞性黄疸、肝内胆汁うっ帯

【100IU/L以上になると必ず受診!!】

禁酒をして受診し、その他の肝機能検査と腹部エコー検査を受け、何が原因で高値になっているかを調べる必要があります。

【飲酒しない人でもγ-GTPが高くなるのは??】

全く飲酒しない人でもγ-GTPが高くなることはあります。

非アルコール性脂肪肝、胆石、胆道系のがん、原発性胆汁性肝硬変の場合や、抗てんかん剤、抗けいれん剤、向精神薬、ステロイド剤の服用によっても高くなります。

【おまけ】

健康な肝臓には3%を超える程度の脂肪が含まれていますが、この脂肪が10%を超えると細胞の中に泡状のものが現れるようになります。

この泡状が肝細胞の小さな集合体(肝小葉)の中に現れるようになった状態を脂肪肝といいます。
 
脂肪肝の原因は、肥満とアルコ-ルの飲みすぎが原因とされ、脂肪肝で肝臓に溜まった脂肪のほとんどはエネルギ-の過剰摂取と運動不足が原因で溜まった脂肪肝です。

肥満度が20%以上の場合、脂肪肝になりやすいといわれています。

脂肪肝を放置していると、脂肪肝が肝臓の繊維化を促進し、自覚症状がないまま肝硬変に移行してしまうことがありますので注意が必要です。

更に動脈硬化や高血圧になりやすく、心臓病や脳卒中のリスクも高いなってきます。

2015年10月19日月曜日

肝機能検査-3.GPT/GPT比-

健康な時のGOT/GPT比は1以上ですが、病状によって数値や比率が変わってくるので、両者の比較が重要になります。

【検査目的】

肝炎・心疾患・筋疾患の診断に使います

【検査目的】

GOTとGPTの比をとることにより、各種肝疾患のおおよその鑑別ができます。

1.慢性肝炎と肝硬変の鑑別

2.アルコール性肝炎の診断

3.心筋梗塞急性期など筋疾患の診断

【基準値】

GOT/GPT比は1以上となります。

すなわちGOT値がGPT値より大きいことになります。

【異常値】

GOT/GPT<1(GOT値が小さい)…慢性・急性肝炎、脂肪肝、肝硬変初期、胆汁うっ滞など

GOT/GPT>1(GOT値が大きい)…劇症肝炎、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、進行した肝硬変、溶血、うっ血性心不全、心筋梗塞など

GOT/GPT>2(GOT値が2倍超)…原発性肝がん、筋ジストロフィーなど

※急性肝炎では、GOPとTGPT両方の値が同時に上昇しますが、他の肝障害では一方が上昇します※

※慢性肝炎や肥満が原因による脂肪肝などでは、GPTの上昇が大きく、GOT/GPT比が1以下になります※

※脂肪肝でもアルコール性の場合や、肝硬変、胆汁うっ滞症などではGOT値の上昇が大きく、肝がんでは2~3倍にまでGOT値が上昇します※

2015年10月12日月曜日

肝機能検査-2.GPT-

GPTはGlutamic Pyruvic Transaminase(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)と呼ばれる酵素です。

GPTは肝細胞に多く含まれているため、肝臓の細胞が障害を受けたり破壊されることにより血液中のGPTの値が異常に上昇してきます。

心筋や腎臓などにも存在しますが、特に肝臓に多く存在しくGPOTに比べて他臓器への分布が少ないため肝特異的といわれ、肝炎の経過観察によく利用されます。

半減期がGPTの10~20時間に比べて40~50時間と長いことから、肝障害の進行を知る手がかりになります。

肝臓の病気の種類や障害の程度によって、GPTの上昇度に差があり、細胞の障害が強いほど当然数値は高くなります。

逆に肝細胞が破壊し尽くされるとむしろGPTは低下します。

【検査目的】

肝臓の異常を調べる検査です。

【GPTの値が異常の時】

何らかの異常で肝細胞が破壊されることにより血液中に出てきたと考えられます。

GPTはほとんど肝臓にしか存在しない酵素ですから、GPT飲みが高い時には肝臓に異常があると判断します。

肝臓に関する情報より多くを得る為にその他の検査する必要があります。

更にエコー検査(超音波検査)も併用します。

【基準値】

36IU/l以下

※施設によって若干異なります※

【高値】

1000IU/l以上 … ウイルス性急性肝炎、劇症肝炎、薬物性肝炎、虚血性肝炎など

500IU/l以上 … ウイルス性急性肝炎、急性アルコール性肝炎、薬物性肝炎、総胆管結石など

100~500IU/l … ウイルス性慢性肝炎、自己免疫性肝炎、急性アルコール性肝炎、薬物性肝炎、脂肪肝、閉塞性黄疸、原発性胆汁性肝硬変など

33~100IU/l … ウイルス性慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌、脂肪肝、自己免疫性肝炎、薬物性肝炎、閉塞性黄疸など

【低値】

特に問題はありません。

【検査時の注意点】

赤血球中にも多く含まれるため溶血(赤血球が壊れる)すると値が高くなります。

【おまけ】

昔からGPTと呼ばれてきましたが、近年生化学者がALT(Alanine Aminotransferase:アラニンアミノトランスフェラーゼ)という名称を変更したためにGPTと呼ぶよりALTと呼ぶ施設が多くなってきています。

これは単に呼び方が代わっただけです。

2015年10月3日土曜日

肝機能検査-1.GOT-

GOTはGlutamic Oxaloacetic Transaminase(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)と呼ばれる酵素です。

GOTは肝細胞に多く含まれているため、肝臓の細胞が障害を受けたり破壊されることにより血液中のGOTの値が異常に上昇してきます。

肝臓の病気の種類や障害の程度によって、GOTの上昇度に差があり、細胞の障害が強いほど当然数値は高くなります。

GOTは肝細胞のほか心臓の筋肉や骨格筋の細胞にも多く含まれているため、これらの病気の指標にもなります。

【検査目的】

肝臓の異常を調べる検査です。

【GOTの値が異常の時】

何らかの異常で肝細胞が破壊されることにより血液中出てきたと考えられますが、GOTは肝臓以外の臓器にも存在するため、数値の増減が必ずしも肝臓に関係しているとは限らずGOTの数値のみが高値を示す場合は、肝臓以外の病気である可能性もあります。

そのためには、肝臓に関する情報を得るには、GPTも一緒に検査する必要があります。

※GPTに関しては次回解説します※

更にエコー検査(超音波検査)も併用します。

【基準値】

35IU/l以下

【高値】

500IU/l以上 … 急性肝炎、心筋梗塞など

100~500IU/l … 肝炎、肝臓がん、アルコール性肝障害、心筋梗塞など

33~100IU/l … 慢性肝炎、肝硬変、アルコール性肝障害、心筋梗塞など

【低値】

特に問題はありません。

【おまけ】

昔からGOTと呼ばれてきましたが、近年生化学者がAST(Aspartate transaminase:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)という名称を変更したためにGOTと呼ぶよりASTと呼ぶ施設が多くなってきています。

これは単に呼び方がかわっただけです。

2015年9月24日木曜日

クレアチンキナーゼ(CK)

クレアチンキナーゼ(CK:Creatine Kinase)は、クレアチンホスホキナーゼ(CPK:Creatine PhosphoKinase)とも呼ばれます。

クレアチンキナーゼは、本来筋肉の中にある酵素です。

クレアチンキナーゼの値が高いことは、筋肉の細胞が壊れたことを意味します。


【検査の目的】

1.神経や筋疾患、心疾患を疑うときや、その経過観察。

2.脳の損傷が疑われるときや、その経過観察。

【クレアチンキナーゼの種類】

クレアチンキナーゼには、アイソザイムと呼ばれる筋肉型(CK-MM)、心筋型(CK-MB)、脳型(CK-BB) の3種類が存在します。

正常な状態では、大部分のクレアチンキナーゼが筋肉に由来していますので、筋肉型(CK-MM)が90%で脳型(CK-BB)は殆ど見られません。

心筋型(CK-MB)は、心筋梗塞の時に限り上昇してきます。

従って通常の血液検査で検査されるのは、総クレアチンキナーゼ活性値です。

1.筋肉型(CK-MM)

骨格筋に多く含まれ、筋性疾患(筋ジストロフィー・多発性筋炎・皮膚筋炎 など)や甲状腺機能低下症などで高値となります。

2.心筋型(CK-MB)

心筋に多く含まれ、心疾患(心筋梗塞・心筋炎 など)で高値となります。

3.脳型(CK-BB)

脳、子宮、腸管に多く含まれ、脳疾患(脳血管障害・脳外傷 など)や悪性腫瘍 などで高値となります。

【CK-MBと心筋梗塞の関係】

CK-MBは心筋に多く含まれることから、心筋梗塞の診断や病態の把握のためにCK-MBを直接検査することがあります。

【クレアチンキナーゼの生理的変動】

男性の方が、女性よりも20~30%程高値を示しますが、これは男性の方が、女性よりも筋肉量が多いことに由来します。

女性の場合は、朝から夕方にかけて数値が上昇しやすく、妊娠後期と出産前後にやや高めになる傾向があります。

激しい運動後や肉体労働、筋肉注射後は筋肉が損傷を受けることがあるため、高値を示す場合があります。

また子どもの場合、採血前に大泣きすることによって高値を示すことがあります。

筋肉注射でも値は上昇します。

【参考基準値】
 
男性 50~250IU/l

女性 45~210IU/l

※基準値は施設ごとで異なる場合があります※

【高値示す場合】

・外傷、筋ジストロフィー、多発性筋炎、皮膚筋炎などの骨格筋疾患

・心筋梗塞、心筋炎、心膜炎などの心疾患

・てんかんなどの神経筋疾患

・胃がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんなどの悪性腫瘍

・脳梗塞

・甲状腺機能低下症

【低い値を示す場合】

・甲状腺機能亢進症、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、シェーグレン症候群、妊娠、長期間寝込んだ場合(長期臥床)など。

【検査時の注意】

筋肉運動をすると筋肉からクレアチンキナーゼが血液中に漏れ出て上昇し、24時間前後でピークとなり、3~4日かけて元に戻ります。

したがって、検査を受けるときは、4日前ごろから激しい運動は控える必要があります。

検査当日の食事は普通にとって何の問題もありません。

2015年9月7日月曜日

ヘリコバクター・ピロリの検査-5.迅速ウレアーゼ検査-

ヒトの組織中にはウレアーゼは存在しませんが、ヘリコバクター・ピロリは非常に強いウレアーゼ活性を有しています。

この検査キットは、この特徴を利用したヘリコバクター・ピロリの検出用試薬であるピロリテック テスト キットについて解説します。

【検査目的】

胃カメラ等で採取した胃生検組織中のヘリコバクターピロリの検出。

【特徴】

1枚の検査パットで3部位まで同時検査が可能であることから部位別にも判定可能。

陽性の約90%はおよそ20分で、残りは60分までに判定が可能。

【検査原理】

試薬中の尿素が、ヘリコバクター・ピロリ菌体中のウレアーゼにより加水分解されてアンモニアを生じます。

アンモニアが生じるとpHが上昇し、pH指示薬であるブロムフェノールブルーの色調を黄色から青色に変化させることから、その色調の変化を判定することにより、ヘリコバクター・ピロリを迅速に検出できます。

ヘリコバクター・ピロリ菌体中のウレアーゼ

(NH2)2CO+H2O        →         2NH3+CO2

【検査の注意】

コロニーが形成されていない組織を検査した場合、偽陰性反応が起こることがあります。

【検査方法】

1.反応パッド上の陽性コントロールに赤色スポットがあることを確認。

2.試薬ストリップが内側を向くようにミシン目を折り曲げる。

3.湿潤試液4滴を、基質パッド全体が均一にしみわたるように滴下。

4.清潔な木製スティックなどで、生検組織を鉗子から直接反応パッド
上(上下各7mm内側)に押し出す。

5.試薬ストリップを折り曲げ、基質パッドを生検組織の上に重ね、黄色
の面を表にして反応ポーチの底まで差し込む。

6.反応パッド(黄色部分)上の色調変化を60分以内に観察。

【判定の注意】

60分を経過して出現する発色は無視して判定しない。

※偽陽性反応の可能性が高い※

【判定】

陽性・・・・60分以内に陽性コントロールの青色と同じ色調のスポットが出現。

陰性・・・・60分以内に陽性コントロールの青色と同じ色調のスポットが出現。

判定保留・・60分以内に陽性コントロールに青色の色調のスポットが出現しない。

【感度と特異度】

感度 97.%

特異度 97.4% 

一致率 97.3%

【検査の利用方法】

ヘリコバクター・ピロリの感染判断には利用可能ですが、除菌後検査には適して
いません。

2015年8月24日月曜日

ヘリコバクター・ピロリの検査-4.便中H. pylori抗原検査-

生きたヘリコバクター・ピロリや既に死んだヘリコバクター・ピロリは共にH. pylori抗原として認識し、特異的に反応することを利用し、糞便中のH. pylori抗原の存在の有無を調べることが出来ます。

今回は、便中H. pylori抗原検査キットの『テストメイト ラピッド ピロリ抗原』について解説していきます。

【検査原理】

糞便中のヘリコバクター・ピロリ抗原に特異的に反応するモノクローナル抗体を用いた、イムノクロマトグラフィー法を原理とする糞便中ヘリコバクター・ピロリ抗原検出用試薬です。

本品は固相化抗体、標識抗体ともモノクローナル抗体を使用し、特異性が優れています。

【検査方法】

希釈した便検体を反応シートの試料滴下部位に滴下し検査を行います。

便検体中にヘリコバクター・ピロリ抗原が存在すると、反応シート中の赤色標識抗体と結合し、免疫複合体を形成し、この免疫複合体は毛細管現象により移動し、反応シート上の固相化された捕捉抗体に捕捉され、赤色判定ラインを形成します。

便検体中にヘリコバクター・ピロリ抗原が存在しない場合は、免疫複合体を形成しないことから赤色標識抗体は、固相化されたコントロール抗体に捕捉されて赤色コントロールラインを形成しますので、検査の正確性の指標となります。

これらの赤色ラインを目視で確認する事により、便検体中のヘリコバクター・ピロリ抗原を検出することが出来ます。

【判定】

判定は試料滴下後10分後に行い、10分以上経過してから出現する赤色ライン(非特異なライン)は無視する必要があります。

【検査を受ける際の注意点】

偽陰性判定を避けるため除菌薬服用終了後、4週間以上経過して検査を受ける必要があります。

採便後できるだけすみやかに医療機関に便検体を提出する必要があります。

便の先端部、中央部、尾部、また、表面、内部のどこから採取しても検査結果に影響はありません。

弁に血液が含まれていたしとても検査結果には影響を与えることはありません。

【感度と特異度】

感度 94.9%

特異度 100% 

一致率 96.3%

【検査の信頼性】

感度と特異性からして信頼できる結果が得られる検査です。

【検査の利用方法】

ヘリコバクター・ピロリ感染のスクリーニング検査及び除菌判定に利用可能です。