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2015年4月9日木曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-6.もうひとつのリアルタイムPCR検査 アキュジーン m-HIV-1について-

HIV検査のPCR検査は、リアルタイムPCR検査がよく知られていますが、現在わが国で
実施されているもう一つのPCR検査の"アキュジーン m-HIV-1"について解説してみます。

【アキュジーン m-HIV-1とは】

HIV-1 RNAを定量的に検出するRT-PCR法(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)を用いた検査です。

【販売メーカ】

アボット社が販売しています。

【最小検出感度】

検体量0.6ml→40コピー/ml

検体量0.5ml→75コピー/ml

検体量0.2ml→150コピー/ml

【測定範囲】

40コピー/ml~10の7乗コピー/ml

【特異性】

100%

【非特異反応の出現率】

おそらく0%

【検出可能なグループとサブタイプ】

HIV-1の以下のタイプは全て検出可能

グループM(サブタイプA~H)

グループ0

グループN

※HIV-2は検出できない※

【HIV-1 グループPは検出可能なのか】

メーカはグループPでの検出検討をしていないのでコメントできないとの回答

現実グループPで検査を行わないと検出出来るか否かは不明です。

【検査はどのようにするのか】

アボット社のAbbott m2000rtアナライザーを使用して全自動で検査を行います。

【アキュジーン m-HIV-1はリアルタイムPCR検査なのか?】

リアルタイムPCR検査です。

【TaqMan HIV-1「オート」の比較】

感度、特異性、検出可能なHIV-1はTaqMan HIV-1「オート」と同じ。

【日本での普及率】

日本国内では、TaqMan HIV-1「オート」が先行販売されたことから、後発販売となったアキュジーン m-HIV-1の普及率は低いのが現状です。


2015年3月30日月曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-5.日本におけるHIV抗原抗体検査について-

【HIV抗原抗体検査とは】

第四世代のHIV抗原抗体検査のことです。

【HIV抗原抗体検査とは】

HIV-1の抗原の一部であるp24を検出できる特徴があり、尚且つHIV-1/2の抗体をも検出できる検査法です。

しかし、HIV-2の抗原は検出できません。

【何処で検査が受けられるのか】

医院やクリニックから検査を受ける検査専門の会社では、第三世代の抗体検査から全て第四世代の抗原抗体検査に切り替えられています。

大都市の保健所の一部でも採用されていますが、ほとんどの保健所では受けることは出来ません。

大学病院や大手の病院では、検査室で実施している場合が多いです。

【適切な受ける時期は】

不安な行為から30~50日前後(30日で検出可能)でHIV-1の抗原であるp24を検出出来ますが、HIV-1/2の抗体は不安な行為から12週で検出できます。


【現在使用されている第四世代HIV抗原抗体検査キット】




【キットについての解説】

1.アーキテクト Ag/Ab コンボアッセイ・ダイナパック

被検検体にアクリジニウム・エステルを標識した抗体と固相化抗体を反応させサンドイッチ法により測定する検査であるCLIA(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

2.アキシム HIV Ag/Ab コンボアッセイ・ダイナパック

被検検体にアクリジニウム・エステルを標識した抗体と固相化抗体を反応させサンドイッチ法により測定する検査であるCLIA(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

3.ジェンスクリーン HIV Ag-Ab

電解反応により生成されるエネルギーによりルテニウムピリジン錯体を励起して発光させる化学発光法の一種であるECLIA(Electro Chemiluminescent Immunoassay:電気化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

4.エンザイグノスト HIV インテグラ

電解反応により生成されるエネルギーによりルテニウムピリジン錯体を励起して発光させる化学発光法の一種であるECLIA(Electro Chemiluminescent Immunoassay:電気化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

5.バイダスアッセイキット HIV DUO Ⅱ

蛍光基質を用いた酵素免疫測定法であるELFA (Enzyme Linked FluorescentAssay:) 法を採用し、ツーステップサンドイッチ法により検体中の抗原と抗体を検出
します。

6.エクルーシス試薬 HIV combi

試薬の反応により、複合体が形成させこの複合体を磁力で集磁した後に洗浄を行い、未反応物を除去後、発光試薬を添加し発光量を測定するECLIA(Electrochemiluminescence Immunoassay:電気化学発光イムノアッセイ)を利用した検査法です。

7.ルミパルス HIV Ag/Ab

被検検体にアクリジニウム・エステルを標識した抗体と固相化抗体を反応させサンドイッチ法により測定する検査であるCLIA(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

8.ルミパルスプレスト HIV Ag/Ab

被検検体にアクリジニウム・エステルを標識した抗体と固相化抗体を反応させサンドイッチ法により測定する検査であるCLIA(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

9.HISCL HIV Ag+Ab試薬

被検検体にアクリジニウム・エステルを標識した抗体と固相化抗体を反応させサンドイッチ法により測定する検査であるCLIA(Chemiluminescent Immunoassay:化学発光免疫測定法)を利用した検査法です。

10.エスプライン HIV Ag/Ab

イムノクロマト法を応用した迅速抗原抗体検査です。

日本においては迅速抗原抗体検査はこれ一種類しか存在しません。

※発売当初、血液中に多量のHIV-2抗体が存在すると見逃す危険性が専門家により指摘されことから、メーカは自主回収し改良を行い現在のキットは見逃す危険性はありません※
【自動分析装置とは】

1~9の検査は、自動分析装置で検査を行います。

それぞれのメーカが独自に自動分析装置を販売していますので、この自動分析装置を使用して自動で検査を行います。

2015年3月14日土曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-4.日本におけるHIV抗体検査について-

現在は、第一世代及び第二世代のHIV抗体検査キットは何処のメーカも製造販売していません。

従って現在日本で使用されているHIV抗体検査は、第三世代のHIV抗体検査です。

以下に現在保健所及び医療機関で使用されている第三世代のHIV抗体検査を紹介しておきます。

現在使用されている第三世代HIV抗体検査キット






【キットについての解説】

1.ダイナスクリーン HIV-1/2

迅速抗体検査または即日抗体検査と呼ばれている検査で、迅速HIV抗体検査はわが国ではこれ一種類しかありません。

以前はダイナボットが製造・販売していましたが現在は、製造はダイナボットで、販売はアリーアメデイカルがしています。

2.ルミパルス オーソ HIV-1/2

エライサ法の一種のCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments:化学発光免疫測定法 )を利用した検査法です。

3.ルミバルスプレスト オーソ HIV-1/2

エライサ法の一種のCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments:化学発光免疫測定法 )を利用した検査法です。

4.ジェネディア HIV-1/2ミックスPA

ゼラチン粒子を単体にし、この単体にHIVの抗原成分を吸着させこのゼラチン粒子の凝集を利用した検査法です。

PA法とは、Particle agglutination method (ゼラチン粒子凝集法)のことです。

5.ケミルミ Centaur  HIV-1,2抗体

エライサ法の一種のCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments:化学発光免疫測定法 )を利用した検査法です。

6.ビトロス HIV-1/2抗体

エライサ法の一種のCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments:化学発光免疫測定法 )を利用した検査法です。

7.ランリーム HIV-1/2 抗体

ラテックス粒子の表面にHIVの抗原を吸着させ、検体中のHIV抗体と抗原抗体反応をさせて、その生成物による濃度を吸光度としてとらえ、既知濃度の標準物質から得た標準曲線から検体中のHIV抗体の濃度を測定する方法です。

8.HISCL HIV ab試薬

エライサ法の一種のCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments:化学発光免疫測定法 )を利用した検査法です。

※ 1~8の検査は、不安な行為から12週以降に受ければ信頼できる結果が得られます。

※ 1,4の検査は、肉眼で判定します。

※ 2,3,5~8の検査は、自動分析装置で検査を行います。


2015年3月2日月曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-3.第三世代抗体検査(2)-

(2)PA法

【PA法とは】

PA法というHIV検査のは日本の富士レビオが開発した検査法です。

PA法とはゼラチン粒子凝集法のことで、Particle Agglutinationの頭文字のPAを取って命名されています。

【測定原理】

ゼラチンを粒型化した人工担体にリコンビナントHIV抗原(HIV-1/gp41、HIV-1/p24、HIV-2/gp36)を吸着させたもので、この感作粒子が検体中の抗HIV-1抗体または抗HIV-2抗体と反応し、凝集することを応用した粒子凝集反応試薬です。

HIVの抗原を吸着させたゼラチン粒子に血清を加えて一定時間静置して、ゼラチン粒子の凝集の有無を肉眼で判定します。

【検査方法】

マイクロプレートで血清を4倍・8倍・16倍と希釈し、8倍の所に未感作粒子(ゼラチン粒子のみでHIV抗原は吸着させていない)を、16倍の所に感作粒子(HIV抗原を吸着させたゼラチン粒子)を滴下してよく混和し、2時間静置します。

【測定結果の判定法】

血清中にHIV抗体が存在しなければ、ゼラチン粒子は一点に集中しますが、HIV抗体が存在すればゼラチン粒子は円形に広がります。

【反応像の読み】

(-):ゼラチン粒子がボタン状に集まり、外周縁が均等でなめらかな円形を示す。

(±):ゼラチン粒子が小さなリングを形成し、外周縁が均等でなめらかなもの。

(+):ゼラチン粒子リングが明らかに大きく、その外周縁が不均等で荒く、周辺に凝集の見られる。
(++)凝集が均一に起こり、凝集粒子が底全体に膜状に広がっているもの。

【判定基準】

陽性:未感作粒子に凝集なしで感作粒子に(+)~(++)の凝集が見られる。

陰性:未感作粒子と感作粒子共に凝集が見られない。

判定保留:未感作粒子に凝集なしで感作粒子に(±)の凝集が見られる。
この場合は再度検査を実施し直す。

再検査:未感作粒子と感作粒子共に(±)以上の凝集が見られる。
この場合は再度検査を実施し直す。

【判定の解釈】

陽性の場合は、HIV-1とHIV-2の何れの抗体が存在するかの判断はできません。

確認試験でHIV-1とHIV-2の何れの抗体があるかを検査し直します。

【偽陽性反応の出現率】

およそ0.3%と低いのが特徴です。

【検査の信頼性】

不安な行為から12週以降に受けて陽性となれば、HIVに感染している可能性が極めて高いです。

※陽性の場合は、必ず確認試験で本当の陽性か否かを調べる必要があります※

2015年2月19日木曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-2.第三世代抗体検査(1)-

(1)エライサ法

【HIV抗体検査のエライサ法とは】

エライサ法とは免疫学的測定法のひとつで、抗体を使った免疫学的測定法のひとつでもあり、正式名称は,Enzyme-linked immuno-sorbent assay と言います。

エライサとは、このEnzyme-linked immuno-sorbent assayの頭文字のELISAの略称です。

別名酵素免疫測定法とも言われますがエライサ法の方がよく知られています。

また、EIA法とも呼ばれます。

EIA法は、Enzyme Immunoassayの略称です。

【測定原理】

エライサ法とEIA法の測定原理は同じです。

エライサ法は、マイクロプレートやチューブにHIV抗原を吸着させて検査を行いますが、EIA法はビーズにHIV抗原を吸着させて検査を行います。

エライサ法は抗体と酵素を使った測定法です。

一般的には、96のウェル(穴)を持つマイクロプレートを使い、このウエル内部の表面にHIV抗原を吸着(コーティングとか固相化とも言います)させて使用します。

このHIV抗原は、血清又は血漿中にあるHIV抗体を補足するために使われます。

HIV抗原を吸着したウエルに血清または血漿を加えて一定温度で一定時間放置し、ウエルを薬品で洗浄しそこに酵素標識抗体を加え更に一定温度で一定時間放置し、ウエルを薬品で洗浄し最後に基質を加えてから、酵素標識抗体の発色を機械で測定します。

血清又は血漿中にHIV抗体が存在すれば、ウエルに吸着させたHIV抗原にHIV抗体が結合し、この結合物に酵素標識抗体が更に結合し、発色するわけです。

血清又は血漿中にHIV抗体が存在しなければ、ウエルに吸着させたHIV抗原には何も結合しませんので、酵素標識抗体も結合すること無く発色もしません。

【カットオフインデックス(C.O.I.)の計算】

C.O.I.=(検体の発光量)/C(カットオフ値)

C:HIV 抗体用標準陽性溶液の発光量?0.25

上記の式に基づき検体のC.O.I.を計算します。

【測定結果の判定法】

発光量の測定は全て機械が自動的に行い、カットオフインデックス(C.O.I.)の計算も行ってくれます。

従って陰性、陽性間判定も機械が自動的に行なってくれますから、肉眼で検査する場合と比べて検査を行う人の主観は介在する余地はありません。


【判定基準】

陽性:C.O.I.が1.0以上を示す場合。

陰性:C.O.I.が1.0未満を示す場合。

【利用されているHIV抗原はHIVそのものなのか?】

ウエルやビーズに吸着させているHIV抗原は、ウイルスその物ではなく遺伝子操作によって作られたリコンビナント抗原を利用しています。

あるメーカでは、

HIV-1 Env 13リコンビナント抗原

HIV-1 Env 10リコンビナント抗原

HIV-1 p24リコンビナント抗原

HIV-2 Env ALリコンビナント抗原

の4つのHIVリコンビナント抗原をミックスして使用しています。

2015年2月9日月曜日

HIV検査に応用されている検査手法について-1.イムノクロマト法-

【はじめに】

現在のHIV検査には、

1.リアルタイムPCR検査

2.第三世代の抗体検査

・エライサ法
・PA法

3.第四世代の抗原抗体検査

・酵素免疫測定法
・エライサ法

4.迅速抗原抗体検査及び迅速抗体検査

などがあります。

多くの方からHIV検査とその検査手技についての質問を受けますので、数回に分けてHIV検査の手技について解説していきたいと思います。

今回は第一回目として、イムノクロマト法について解説いたします。

【HIV抗体検査のイムノクロマト法とは】

イムノクロマト法により血漿、血清、全血を使用してこれらの中に存在する抗HIV‐1抗体及び抗HIV-2抗体を検出するキットです。

日本において厚生労働省から認可を受けているキットは、アリーアメディカルから販売されている『ダイナスクリーン』一つしか存在しません。

【測定原理】

検体(血液・血漿・血清)中の抗HIV抗体は、シート下部のセレニウムコロイド標識HIV抗原と反応し、抗HIV抗体-セレニウムコロイド標識HIV抗原の結合物を形成し、この結合物はシート上を移動して、シート上部に固相化されたHIV抗原と結合し、固相化HIV抗原-抗HIV抗体-セレニウムコロイド標識HIV抗原のサンドイッチ型の結合物を形成します。

その結果結シート上の判定窓に出現するセレニウムコロイド由来の赤色のラインの有
無を目視で判定します。

この場合、必ずコントロールラインに赤色のラインが出現している必要があります。

コントロールラインに赤色のラインが認められない場合は、検査が正しく実施されていないことから、再度検査を実施する必要があります。

【測定結果の判定法】

シートの各ストリップ上には、上下に分かれて 2 つの判定窓があり、この 2 つの窓を観察し、赤色のラインの有無を確認する。

結果を判定する前に、測定操作が正しく行われたことを確認するために、ストリップ上部のコントロール窓の中に赤色のライン(コントロールライン)が現れていることを必ず確認する。

コントロールラインが認められる場合は検査結果は有効であるが、認められない場合は検査結果は無効とし、再検査を行う。

※判定ラインに赤色のラインが認められた場合は、赤色の強弱にかかわらず陽性と判定する※

※判定ラインの赤色の強さは、HIV抗体の力価を定量的に反映しません※

※定められた判定時間15分を経過後、判定ラインに薄くラインが出現しても陽性とは判定しない※

【判定基準】

陽 性:ストリップ上部の判定窓の中に赤色のコントロールラインが認められ、ストリップ下部の判定窓の中に赤色のライン(判定ライン)が認められた場合

陰 性:ストリップ上部の判定窓の中に赤色のコントロールラインが認められ、ストリップ下部の判定窓の中に赤色のライン(判定ライン)が認められない場合。

再検査:ストリップ上部の判定窓の中に赤色のコントロールラインが認められない場合。

【イムノクロマト法の欠点】

判定ラインの色調を肉眼で判定することから、どうしても判定者の主観に左右されてしまいます、その結果神経質的に判定すればどうしても薄くラインが有ると判定し偽陽性反応が出現しやすい検査法です。

逆に大雑把な人が判定すれば、薄い判定ラインを見逃すこともあります。

しかし、判定を厳格に見すぎての偽陽性反応が圧倒的に多いのが現実です。

【イムノクロマト法 『ダイナスクリーン・HIV-1/2』の判定方法】

以下を参照下さい。
 ↓ ↓
【イムノクロマト法 『ダイナスクリーン・HIV-1/2』の判定方法】

2015年1月30日金曜日

寄生虫感染症検査-5.マラリア原虫-

【マラリア原虫とは】

分類学上ではプラスモディウム(Plasmodium)属に入る寄生性の単細胞生物です。

マラリア原虫は、ウイルスでも細菌でもない寄生虫でヒト以外にチンパンジーやアカゲザルなどの霊長類、ニワトリやペンギンなどの鳥類、ハ虫類などに寄生するものが数百種類存在しますが、ヒト以外に寄生するマラリア原虫は、例外を除いてヒトには感染することはありません。

【マラリアの分類】

熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリアの4種類が存在します。

これら4種のマラリアは、形態が異なるので比較的容易に鑑別診断が可能です。

熱帯熱マラリア以外は重症化することは稀ですが、熱帯熱マラリアは重症化しやすく、発症してから5~6日間不適切な治療で経過すると、痙攣や昏睡などの脳症、肺水腫、急性呼吸窮迫症候群、急性腎不全、重症貧血、循環不全によるショック代謝性アシドーシスなどの重篤な症状や合併症を呈する重症マラリアとなり、最終的に死に至ることがあります。

【マラリアの種類による発熱発作の周期】

マラリアの種類によって独特の発熱周期が見られます。

熱帯熱マラリア 不規則

三日熱マラリア 48時間

卵形マラリア 48時間

四日熱マラリア 72時間


【マラリア原虫の感染経路と寄生部位】

ハマダラカの体内で増殖したマラリア原虫のスポロゾイト(胞子が殻の中で分裂して外に出たもの)は唾液腺に集まる性質を持つことから、ハマダラカに吸血される際に蚊の唾液と一緒に大量の原虫が体内に送り込まれます。

血液中に入ると45分程度で肝細胞に寄生し、肝細胞の中で1~3週間かけて成熟増殖し、分裂小体(メロゾイト)が数千個になった段階で肝細胞を破壊し赤血球に侵入します。

赤血球の中で8~32個に分裂すると赤血球を破壊して血液中に出るサイクルを繰り返します。

したがってマラリアで発熱するのは、マラリア原虫が人の赤血球を破壊することにより起こるわけです。

【マラリアの現状】

現在では、日本やヨーロッパなどの温帯地域はマラリアの流行はありません。

熱帯、亜熱帯地域の70か国以上で流行しています。

患者は、全世界で年間3~5億人、累計で約8億人の患者が発生し、死者数は100~150万人に上ると報告されています。

現時点では、日本やヨーロッパなどの温帯地域はマラリアの流行はありませんが、地球温暖化による温度の上昇で温帯地域の温度が上昇すればマラリア原虫を媒介するハマダラカが発生し、マラリアの流行が起こり始めると専門家は危惧しています。

【日本国内でのマラリア】

日本でのマラリアは、『輸入熱帯病』としてのマラリアで、海外で感染して帰国するケースが多く年間100例ほどが報告されています。

【治療】

マラリアの治療薬としてはキニーネが有名ですが、クロロキン、メフロキン、ファンシダール、プリマキン等がありますが強い副作用があるので注意が必要です。

【感染予防対策】

第一に蚊に刺されないようにすることです。

マラリア流行地から帰国後、1~2週間後に高熱が発生した場合はマラリアが疑わることから、直ちに受診する必要があります。

マラリアワクチンは、日欧米の数社から発表されその有効性が期待されています。

【マラリア原虫の検査】

1.顕微鏡下でギムザ染色した赤血球内のキラリア原虫を調べる。

2.海外ではイムノクロマト法による迅速抗原検出キットが発売されており、15分以内で検査が終了し、熱帯熱マラリアと他の3種類を区分できます。

※イムノクロマト法を利用した簡易キットとして、ICT Malaria P.f./P.v.R(オーストラリア製)、OptiMALR(米国製)などがありますが、日本では承認されていせん※

3.実験室レベルでは種々のPCR法も開発されています。


【マラリアと輸血】

平成6年12月鹿児島県で開催された第36回日本熱帯医学会総会において、血小板輸血によって熱帯性マラリアに感染した症例が報告されています。

献血された血液のマラリア原虫の検査は、行われていませんので輸血によるマラリア感染は今までにも報告されており、今後も発生する可能性があります。

従って赤十字血液センターでは、献血者の問診を行うことにより、輸血によるマラリアの感染を防ぐよう努めていますが、完全に感染を防止することは不可能です。