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2023年11月26日日曜日

梅毒速報-3.先天性梅毒が増加中-

梅毒トレポネーマに感染した妊婦から胎児に母子感染する「先天梅毒」と診断された子どもの数が、2023年10月4日の時点で32人と、現在の形で統計を取り始めてから最も多くなっていることが国立感染症研究所のまとめで分かりました。


先天梅毒の子ども 32人と過去最多に!!(2023年10月4日時点)


先天性梅毒は、梅毒トレポネーマに感染して治療を受けなかった妊婦から胎児に感染し、皮膚の異常や難聴といった症状が出たり、最悪の場合死産につながったりします。


これは現在の形で統計を取り始めてから最も多かった2019年1年間での23人をすでに上回り、これまでで最も多くなっています。


ここ数年来梅毒患者が著しく増加していることから、当然のことながら若い女性の患者がも増加した結果先天性梅毒も増加したことになります。


先天梅毒の子どもの報告も今後、さらに増える可能性があると危惧されています。


過去に梅毒トレポネーマに感染して気付かないまま治療を受けずに妊娠すると、先天梅毒につながるリスクがより高く、そのような人が年々増えていると推測されていますい。


妊婦健診で気付いて治療しても先天梅毒になる可能性があり、妊娠前に治療することが大切であることから、梅毒を疑う症状や感染リスクのある性行為をしてしまった場合は、必ず男女ともに検査を受ける必要があります。


2023年11月米疾病対策センター(CDC)は、米国で先天梅毒の新生児の数が「深刻な水準」に達しているとする報告書を発表しています。


CDCによると、先天梅毒の新生児はここ数年の間に急増し、2021年には過去27年で最も多い2000件以上が報告された。2017年と比べ、3倍以上の数となっています。


【参考文献】

米国での先天性梅毒

2023年11月19日日曜日

医学豆知識-19.脂質異常症の検査のLH比とは-

【 LH比とは】


血液検査におけるコレステロールのバランスを示す指標で、LDLコレステロール値をHDLコレステロール値で割った数値で、血管の状態を評価するための指標としても用いられます。


【L/H比の基準値】


血液検査におけるL/H比の基準値は、1.5以下です(日本人間ドック学会の数値をもとに計算)。


【L/H比は何を判断するために実施するのか】


LH比は、正反対の働きをするLDLコレステロールとHDLコレステロールの比率を示すため、動脈硬化のリスクを評価する指標として用いられます。


LH比が1.5以下であれば、血管の状態は良好で動脈硬化のリスクが低いと考えられ、一方LH比が2.0を超えると、血管内壁にコレステロールが蓄積して動脈硬化が進んでいる可能性があり注意が必要となります。


LH比は、血液検査で簡単に調べることができますので、定期的に血液検査を受けることで、自分のLH比を把握し、動脈硬化のリスクを早期に発見・予防することが大切です。


具体的には、次の方法でLH比を計算することができます。


LH比 = LDLコレステロール値 ÷ HDLコレステロール値


例えば、LDLコレステロール値が130mg/dL、HDLコレステロール値が50mg/dLの場合、LH比は130÷50=2.6となります。


【善玉コレステロール・悪玉コレステロールとは】


LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」と呼ばれ、血管壁に溜まって動脈硬化を引き起こす原因となり、一方HDLコレステロールは「善玉コレステロール」と呼ばれ、血管壁に溜まったLDLコレステロールを回収して肝臓に運ぶ働きがあります。


【基準値】


HDL(善玉)コレステロールは男性40~80、女性40~90が正常範囲、LDL(悪玉)コレステロールは70~139が基準値(正常範囲)です


【 L/H比を改善する方法】


悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やすことの両方が大切です。


【LH比を改善するには】


1.食生活の改善:コレステロールの多い食品を控える、野菜や海藻類を積極的に摂る


2.運動:適度な運動を継続する


3.禁煙・節酒:喫煙や過度の飲酒は動脈硬化を進行させる


【追加事項】


高血圧や糖尿病などの生活習慣病がある場合は、これらの病気の治療をしっかりと行うことによりLH比の改善が可能となります。




2023年11月12日日曜日

医学豆知識-18.脂質異常症とは-

脂質異常症の総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は、220万5,000人で、性別では男性63万9,000人、女性156万5,000人で、女性は男性の2.4倍も多い結果となっています。

【脂質異常症とは】

脂質異常症の一種で、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が基準値より高い状態を指します。

脂質異常症は以前、高脂血症と呼ばれていましたが、コレステロールの中でも善玉のHDLコレステロール値については高いほうがいいことが判明し、現在は多くの病院で脂質異常症という名称になっています。

【脂質異常症になるとどうなるのか】

LDLコレステロールが過剰になると、血管壁に沈着してプラークと呼ばれる塊を形成し、動脈硬化を引き起こす可能性があります。

【脂質異常症の症状は】

脂質異常症の症状は、ほとんどないことから、健康診断などで指摘されるまで自覚症状がないまま進行してしまうこともあります。

【脂質異常症の治療は】

脂質異常症の治療は、食事療法と運動療法が基本となります。

【脂質異常症を放置すると】

脂質異常症を放置すると、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な心血管疾患を発症するリスクが高まることから早期発見と早期治療が重要となります。

【脂質異常症の予防】

以下のことに気をつけましょう。

1.バランスの良い食事と適度な運動を心がける

2.肥満の予防

3.喫煙の禁煙

4.定期的に健康診断を受ける

【コレステロールの基準値】

HDL(善玉)コレステロールは男性40~80mg/dL、女性40~90mg/dLが正常範囲、LDL(悪玉)コレステロールは70~139mg/dLが正常範囲です。

2023年11月5日日曜日

単純ヘルペスウイルス抗原検査キットについて

単純ヘルペスは、主にヘルペスウイルス(Herpes Simplex Virus:HSV)によって引き起こされる感染症で、HSVにはHSV-1とHSV-2の2つのタイプがあり、それぞれ異なる症状を引き起こすことがあります。


HSV-1は通常、口唇ヘルペスとして知られる感染症を引き起こし、唇や口の周りに発症することが一般的でこれは一般的に軽度で、発症後に症状が消失することがあります。


HSV-1は主に接触によって広がり、感染拡大を防ぐために注意が必要です。


一方HSV-2は通常、性器ヘルペスとして知られ、性器やその周りに発症することが一般的で、性的接触を通じて広がることがよくあります。


性器ヘルペスは再発することがあり、症状が治まることがありますが、完全に治療することは難しいことがあります。


※※最近ではHSV-1は口唇ヘルペス、HSV-2は性器ヘルペスとの区別が出来なくなってきています※※


単純ヘルペスの症状には、発疹、水疱、かゆみ、痛みなどが含まれることがあります。


治療法としては、抗ウイルス薬が一般的に使用され、感染症の症状を緩和するのに役立ちます。


感染拡大を防ぐためには、適切な衛生対策と性的行動の注意が重要となります。



【単純ヘルペスウイルス抗原検査の種類】


1.ツァンク試験(Tzanck test)


水疱性の病変から塗抹標本を作ってギムザ染色で細胞診を行う検査で、ツァンク細胞(多核巨細胞)を探すために、小水疱を擦過して採取して顕微鏡で検鏡します。


この検査は、単純ヘルペス感染症と水痘・帯状疱疹ウイルスの区別ができません。


2.蛍光抗体法


単純ヘルペスウイルス(HSV-1/-2)に対するFITC((Fluorescein isothiocyanate))標識モノクローナル抗体を使って染色し、蛍光顕微鏡で蛍光を調べる検査ですが、感度は70%とあまり高くない。


3.血清学的検査


血液中のHSVに対する抗体を調べる検査ですが、陽性となっても過去の感染によるものか、現在感染しているのかの区別が付きません。


4.補体結合検査


補体がHSVの抗原抗体複合体に結合して、溶血素と共同して溶血反応('赤血球が壊れる)を調べる検査ですが、過去の感染と現在の感染の区別が付きません。


5.エライザ検査


HSVエライザ検査は、ヘルペスウイルスの感染を検出するための検査方法の一つで、この検査は、血清中の抗体(IgGやIgM)を測定し、感染の有無や感染の状態を評価するのに使用されます


HSVに感染したかどうか、感染が初感染か再感染か、またウイルスのタイプ(HSV-1またはHSV-2)を特定するのに役立ちます。


6.PCR検査


HSVをPCR(核酸増幅検査)で調べる方法です。


7.単純ヘルペスウイルス抗原検査キット


イムノクロマト法を利用してHSVの抗原調べる検査キットで『デルマクイックHSV』です。


『デルマクイックHSV』は、HSV感染症患者の検体採取部位を問わない皮膚擦過物[皮疹(水疱・膿疱)の内容物又はびらん・潰瘍のぬぐい液]を検体とするHSV抗原の迅速検出キットを開発しましたです


HSVキット「デルマクイックHSV」は、皮疹(水疱・膿疱)の内容物又はびらん・潰瘍のぬぐい液を検体とし、1試薬1ステップの検体抽出操作で、HSV抗原を検出することができます。


検査時間は5~10分で終わります。


検査の感度(PCRと比較)


・陽性一致率 78.8%


・陰性一致率 99.2%


・全体一致率 88.4%


※PCR検査と比べて陽性一致率はやや低いですが遜色のない検査キットで、今後臨床現場でその威力を発揮するものと期待されています※


2023年10月29日日曜日

性行為感染症検査-1.腟トリコモナス核酸およびマイコプラズマ・ジェニタリウム核酸を同時に検出する「コバス TV/MG」-

腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis:TV)は、男性では尿道炎、女性では腟内のかゆみやただれを引き起こす原虫で、世界的に最も感染者数の多い性感染症の原因です。


症状が強いものから無症状まで多様な臨床像を呈し、無症状のパートナーからの性行為やオーラルセックスで感染によるものが少なくありません。


従来診断に用いられてきた培養法では、結果を得るまでに1週間以上を要することから、腟トリコモナスの感染に対する高感度かつ迅速な確定診断法の確立が強く望まれていました。


またマイコプラズマ・ジェニタリウム(Mycoplasma genitalium:MG)は、淋菌やクラミジアと並んで、女性では尿道炎、子宮頸管炎や骨盤内炎症性疾患を引き起こし、男性では主に尿道炎を引き起こす細菌で、マイコプラズマ・ジェニタリウムの検査については、これまで確立した診断法がなく、信頼性の高い体外診断用医薬品による診断方法の確立が求められていました。


この度TVおよびMG感染症の診断補助を目的として新規保険収載された同時核酸検出検査が承認されましたので紹介します。


【キット名】


コバス TV/MG(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)


【承認】


1922年6月


【測定方法】


リアルタイムPCR法


【使用機器】


全自動遺伝子検査装置 コバス 6800 システム および コバス 8800 システム


【検査の精度】


1.膣トリコモナス


・女性尿 感度 100% 特異度 96.9%


・女性膣擦過検体 感度 100% 特異度 97.5%


・男性尿 感度 100% 特異度 99.5%


2.マイコプラズマ・ジェニタリウム


・女性尿 感度 88.2% 特異度 98.7%


・女性膣擦過検体 感度 81.8% 特異度 99.7%


・男性尿 感度 89.3% 特異度 100%


マイコプラズマ・ジェニタリウムに関しては感度が低いように感じられますが、臨床検査剣士役として十分使用できるとの評価を受けています※

2023年10月22日日曜日

医学豆知識17.-インフルエンザと新型コロナウイルスとコロナウイルスの大流行に備えて下さい-

2023年インフルエンザの累積患者数(2023年10月上旬時点)は、49212人で定点あたり9.99となっています。


一方新型コロナウイルス感染症患者数は、25630人で定点あたり5.20となっていて流行は落ち着いているようです。


定点当たり報告数とは、感染症について、すべての定点医療機関からの報告数を定点数で割った値のことで、言いかえると1医療機関当たりの平均報告数のことです。


この定点あたりは、定点の指定医療機関が保健所に報告をした、1週間ごとのすべての全患者数から計算されます。


例えば、計算式でいうと「(1医療機関の報告患者数)÷(定点指定された医療機関数)=(定点当たり)」となります。定点あたりの数値が、


1以上だと「流行開始レベル」


10以上で「注意報レベル」


30以上で「警報レベル」となります。


定点あたり9.99とは、もはや注意報レベルとなります。


特に沖縄県は、30.85で警報レベルとなっています。


その他大分県18.00、愛媛県16.69,山口県19.22神奈川県18.84、東京都16.44.千葉県21.08など注意報レベルを超えています。


2023年は、昨年からの季節性インフルエンザの流行が収まらないうちに例年より早く季節性インフルエンザの流行が始まり、その上にシーズン本番の冬季に向け新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との同時流行を心配する声が高まっています。


インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの同時感染がは危惧されています。


冬は換気が難しく、狭い空間に人が集まりやすくなるという環境要因も加味されて新型コロナウイルスの流行が加速するおそれは十分あります。


これからのシーズンは特に感染に注意てする必要があります。


感染予防対策としては、インフルエンザも新型コロナウイルス感染症も同じことで、


1.室内の湿度管理と適度な換気を行ない、十分な睡眠と栄養を取る予防する。


2.外出後の手洗いやうがいを十分にする。


3.人が密集する場所ではマスクを正しくする。


4.インフルエンザワクチンを接種する。


※100パーセントの予防効果がある訳ではありませんが、予防効果があることと、感染しても症状が軽くてすむ※


インフルエンザに感染したと思われる症状が出たときには、24~48時間以内にインフルエンザ検査を受ける。


24時間以内に検査を受けると感染していてもニセの陰性反応が出ます。


インフルエンザの治療薬は発熱後48時間以内に内服することにより、より良い効果が得られます。

2023年10月15日日曜日

梅毒速報2.無症候性梅毒に注意!!-

日本国内の梅毒患者の現状(2023年9月下旬時点)


依然として梅毒が大流行しています。


2023年9月下旬までに届出のあった梅毒患者は、10957人となりましたが、これは届出のあった患者数だけですから実際はこれ以上の潜在患者がいると推測されています。


この増加傾向は大都市だけにとどまらず地方でも増加しています。


梅毒トレボネーマに感染して梅毒特有の症状が出れば感染に気づき受診して検査を受けますが、全く症状がない場合は感染に気づくことはありません。


無症候性梅毒は梅毒特有の症状がないことから、当人は感染に気づくことなく次々と第三者へ感染を広げていくことになります。


無症候性梅毒はどれくらい存在しているのか


無症候性梅毒は、梅毒検査を受けて初めて梅毒と判明しますから、梅毒検査を受けないとわかりません従ってはっきりした数は把握されていないのが現実です。


専門家の調査結果では、梅毒トレポネーマに感染して何の症状も出ない無症候性梅毒は20~30%前後存在するとの報告がなされています。


直近の無症候性梅毒患者の実態


2023年の患者163人について分析しました。


早期顕性Ⅰ期梅毒75(46.0%)


早期顕性Ⅱ期梅毒54人(33.1%)


無症候梅毒32人(19.6%)


晩期梅毒2人(1.2%)


2021年1年間の無症候梅毒患者は、1346人で21.8%でした。


いずれにしても梅毒トレポネーマに感染しても、梅毒特有の症状を呈さない無症候梅毒が20%以上も存在することは感染を一層広める原因となっています。


梅毒トレポネーマに感染するような行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受けることです。


※解析データのもとは国立感染症研究所の発表データを参照しています※

 

2023年10月8日日曜日

梅毒速報1.2023年9月24日時点での梅毒患者-

 2023年も梅毒は依然として大流行しています。

これに鑑み『梅毒速報』を今後掲載していきますので、よろしくお願いいたします。

第一回目として2023年9月24日時点での梅毒患者患者の現状についてお知らせいたします。

【2023年9月24日時点での梅毒患者】

累計で10957人となっています。

以前大流行が続き、このまま行けば2022年の患者数を上回ります。

【追跡可能な患者163人の梅毒の病期】

早期顕症I期75人

早期顕症II期54人

晩期顕症2人

無症候32人

梅毒トレポネーマに感染しても典型的な症状の出ない無症候梅毒が、32人/163人(19.6%)存在していることは、梅毒トレポネーマに感染したことに気づかずに次々と感染者を広げる大きな要因となっています。

【梅毒患者の多い都道府県10位】

1.東京都 2684人

2.大阪府 1489人

3.愛知県 628人

4.福岡県 652人

5.北海道 519人

6.神奈川県 496人

7.兵庫県 351人

8.千葉県 334人

9.埼玉県 332人

10.広島県 314人

いずれも大都市に多く見られますが、地方都市においても患者数は増加しています。

【まとめ】

梅毒トレポネーマに感染しても、典型的な症状を表さない無症候梅毒が多いことから、危険な行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受けてください。



2023年10月1日日曜日

医学豆知識-16.季節性インフルエンザにご注意-

 毎年12月前後に流行が始まりますが、2023年は8月中旬頃より流行が始まっています。


季節性インフルエンザの全国5000の定点医療機関の2023年9月末時点での低点数は、7.03となり流行しています。


※定点数 1 流行入り・10 注意報・30 警報※


これは2022年末からの流行が収まらずに2023年はすでに流行期に突入したことになります。


※特に九州を中心とした西日本に流行は顕著※


9月末時点で全国1500以上の学校がすでに休校・学年および学級閉鎖となっています。


毎年10月頃から行われる予防接種のワクチンも間に合わない事態となってきています。


※ワクチン接種をしてもすぐに感染予防抗体はできず、接種後2週間前後経過しないと効果が期待できないのです。


このままの状態が続くと2023年から2024年にかけて大流行することが懸念されています。


今後我々が取れるた対策としては、新型コロナ感染対策と同じことです。


1.予防ワクチン接種が開始されれば、可能な限り早く受ける。


2.マスク着用・手洗い・うがいを行う。


3.可能な限り人混みは避ける。


4.室内にいるときは十分な換気を行う

2023年9月24日日曜日

医学豆知識-15.咽頭淋菌検査にPCR検査は不向き-

咽頭淋菌検査に淋菌のPCR検査はニセの陽性反応を引き起こします!!


 淋菌に特徴的なDNAをコピーしたつもりでも、実は仲間の非病原性ナイセリア属のDNAだったということがよく起こります。


ナイセリア属は主に口や喉に寄生していることから、喉の淋菌検査の場合はPCR法を使うことができません。


喉ので淋菌をPCR法で調べると70%以上で、ニセの陽性反応(偽陽性反応)が出てしまいます。


このニセの陽性反応を引き起こすのは、無毒のナイセリア属だったことが判明し約2年前にPCR法の検査基準を見直さなければならなくなりました。


最近ではPCRの欠点をおぎなうように、ナイセリア属の偽陽性が出にくいSDA法が開発されましたので、咽頭の淋菌検査にはSDA法が使用されています。


SDA法は淋菌とクラミジアも同時に測定できるので便利ですが,男性では健康保険の適応が通っていませんし、咽頭の性感染症はまだ一般的に認識が広まっていませんから,健康保険で査定されてしまうことがありますので原則的に自費扱いになります。


SDA法は、淋菌とクラミジアを同時に測定できる検査方法ですが、女性には保険適応ですが、男性には保険が使えません※

淋菌を確実に見つけ出すには嫌気性培養法が昔から採用されていますが、この検査は検査物適切な処理をしないと淋菌が死んでしまうために、通常の医療機関では実施が難しい検査方法です。


淋菌を見つける最も手っ取り早い検査は、顕微鏡てぜ検査物を見ることにより淋菌は意外と簡単に見つけることができます。


患者の分泌物をスライドガラスに塗りつけて、メチレンブルーという染色液で染色をして顕微鏡で観察するのです。


咽頭淋病は、咽頭クラミジアと同じで症状があまりなく、のどの痛みや腫れといった風邪に似た症状が出ることもあります。 


潜伏期間は2~7日で、殆どの場合風邪や単なる咽頭炎と勘違いしてそのままにしてしまったり、風邪薬を飲んでいたりと咽頭淋菌感染に気づかず放置してしまうことになります。


気づかずに放置すると悪化し、淋菌性の咽頭炎・扁桃腺炎といった病気を引き起こします。


※最近では、TMA法によるPCR検査で検査を行うことによりニセの陽性反応は起きなくなってきています※



2023年9月17日日曜日

医学豆知識-14.眼梅毒にご注意-

2023年9月3日までの梅毒患者数が10113人となり、2022年同時期の8155人を上回りました。

10000人を超えたのは2022年より2ケ月速いペースとなっています。

このままのペースで増え続けると年間累計は1万6300件超となると危惧されています。

梅毒トレポネーマが性器に感染して症状を引き起こすことを多くの人数知っていてますが目に障害(梅毒性眼疾患)を引き起こすことを知っている人は少ないと思われます。

そこで今回は梅毒トレポネーマが引き起こす眼の症状について解説いたします。

梅毒トレポネーマが目に感染して引き起こされる梅毒性眼疾患は、梅毒患者の2.5~5%と報告されていますが、臨床症状が多彩で特徴的な所見に乏しいため、実際にはもっと多いと懸念されています。

巷で"眼梅毒"と言われるぶどう膜炎は、視神経炎、硝子体炎といった後眼部病変が目立つ症状で、両目に現れることが多く、充血、視力低下や視野欠損、かすみ目、飛蚊症、羞明が起きることが知られています。

成人では梅毒トレポネーマの感染から1カ月前後の早期梅毒第1期には眼瞼や結膜にも感染の仕方によっては潰瘍を生じる場合がありますが、梅毒による目の潰瘍は見逃されるケースも少なくないとされています。

梅毒トレポネーマの感染から1~3カ月ごろの早期梅毒第2期には梅毒性ぶどう膜炎が多くなります。

更に後部ぶどう膜炎では、眼底に出血を伴い、網膜血管炎を生じる場合もみられる視力を出すのに重要な視神経乳頭部に散在性の網脈絡膜炎を発症し、その後、網膜色素変性症様変化を生じることもあり硝子体混濁や強膜炎などもこの時期にみられる病態の一つでもあります。

第3期になると、眼瞼ゴム腫や二次性網膜色素変性症などがみられるが、治療は極めて困難となります。

梅毒トレポネーマの感染は眼科の診察だけではまず鑑別不可能です。

梅毒性眼疾患の重大性から、早期発見・早期治療は不可欠でが、その多様な病態を考えれば、眼科医の診察だけで梅毒性眼疾患のリスクを知ることは難しく、皮膚科などの協力も不可欠となります。

梅毒と診断された人が眼科を受診するの当然のことですが、梅毒の疑いがある人は眼科医にその可能性を告知することも"眼梅毒"を見逃さないためにも非常に大切です。

2023年9月10日日曜日

医学豆知識-13.新型コロナウイルス"エリス"-

XBB株についで非常に短いスパンで新しい変異株である「EG.5株」が台頭してきています。


EG.5は2023年8月8日時点では50カ国以上で確認されています。


EG.5株・EG.5.1株とはオミクロン株の派生株「XBB株」からさらに枝分かれした株の1つで、EG.5株は2023年2月17日に初めてインドネシアで報告され、2023年7月19日にVariant under monitoring (VUM)に指定され、2023年8月9日に瞬く間に注目すべき変異株(VOI)に指定されました。


BJ.1株とBM1.1.1株が組み合わさったのが「XBB株」。その後非常にバリエーションにとんださまざまな「XBB株」が生み出されます。その中の「XBB.1.9.1株」から派生した株が「EG.5株」「EG.5.1株」です。


この変異株は、ギリシア神話の不和と争いの女神にちなんで「エリス」と呼称されています。


EG.5株は他のウイルスに比べて後述するように、これまでのウイルス以上に成長優位性が高いのが特徴の1つ。8月7日時点で中国(30.7%)をはじめ、アメリカ、韓国、日本、カナダ、オーストラリアを中心に広がっており、WHOでも8月7日時点で「世界的に患者発生率が上昇し、優勢になる可能性がある」と発表しています。


EG.5株・EG.5.1株の症状としては、


・39℃以上の発熱と悪寒、倦怠感


・頭痛と関節痛


・喉の痛み


・咳、鼻詰まり、鼻水、呼吸困難


・下痢などの消化器症状


・味覚嗅覚の喪失


EG.5株・EG.5.1株は重症化しやすいのか?


少なくとも現時点では「重症化しやすい傾向はない」ように見えます。


世界保健機関の報告書でも、EG.5 は有病率の増加、成長優位性、免疫逃避性を示しているが、重症度の変化は報告されていないと報告されています。


【参考資料】

CDC「Monitoring Variant Proportions」)


2023年9月3日日曜日

医学豆知識-12.世界の新型コロナウイルス変異株BA.2.86株-

新型コロナウイルスの新しい変異株について、現時点(2023年8月29日)で判明していることを紹介します。


BA.2.86株は、オミクロン株の亜種のひとつで、2023年7月に初めて確認され現在、アメリカ、イギリス、南アフリカ、イスラエル、デンマークなど、世界各国で感染が確認されています。


BA.2.86株は、BA.2株からさらに進化した変異株で、以下の特徴があります。


スパイクタンパク質に30以上の変異があり、ワクチンや過去の感染による免疫を回避する可能性が高まっています。


更に感染力が高い可能性があります。


米国疾病対策センター(CDC)は、BA.2.86株について、以下の警戒点を発表しています。


2023年8月29日現在GISAIDには13株が登録されており検出地域は、アフリカ2株、デンマーク4株、イスラエル1株、英国1株、米国3株となっています。


※GISAID(Global Initiative on Sharing Avian Influenza Data)は、2008年に設立された世界的な科学イニシアチブで、インフルエンザウイルスおよび新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) パンデミックの原因となる新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)のゲノムデータへのオープンアクセスを提供している※


しかし、遠く離れた地域から短期間に検出されていることや変異部位の多さによる免疫回避能力の点において今後の動向に注意が必要です。


日本からの登録はありません。


検出株数が少ない事と、発見されてから間もない事から感染力の強さや重症度等については今後の報告が待たれるところです。


米国疾病対策センターの(CDC)は新型コロナウイルスの新たな変異株「BA.2.86」について免疫回避の確率が高い恐れがあると指摘しています。  


新たに発見された「BA.2.86」はアメリカ、イギリス、南アフリカ、イスラエル、デンマークの5か国で感染が確認されています。 


また、米国疾病対策センターはアメリカで新型コロナの入院者数が前の週から20%以上増えて12613人に達したと報告しました。


「BA.2.86」が発見される前から増加傾向にあるものの、注意深く監視するとして警戒を強めています。


2023年8月27日日曜日

医学豆知識-11.2023年8月時点での梅毒患者の現状-

2021年1年間の梅毒患者数 7873人。


2022年1年間の梅毒患者数 12966人で2021年の1.65倍。


2023年8月13日まで 9213人で2021年1年間の患者数を超え、このまま流行すが続くと2022年の患者数を遥かに超えてしまいます。


感染者の男女の比率は、およそ7対3、年代別では20~50代の男性、20代の女性の感染者数が多く、30代以降は男性が多いものの、10代20代では女性が上回っています。


このように女性の感染者が多いことから先天性梅毒が危惧されています。


【感染対策の重要性】


予防にはコンドームの使用をと呼びかけられていますが、梅毒トレポネーマはHIVのようにコンドームによる予防効果は高くないので過信は禁物です。


梅毒トレポネーマは、性交渉やオーラルセックスで簡単に感染します。


感染部位と粘膜や皮膚が直接接触することで感染しますから、いくらコンドームを正しく気使用しても、コンドームに覆われていない箇所に傷やタダレがあれば感染してしまいます。


予防のためにはコンドームの使用が進められますが、100%予防が出来ないことを念頭に置いておいて下さい。


梅毒は抗生物質で完治しますから、不安な行為をしてしまったときには適切な時期に梅毒検査を受けて早く治療することが大切です。


早期に発見し早期に治療を開始すればするほど早く完治します。



2023年8月20日日曜日

医学豆知識-10.世界の新型コロナウイルス変異株流行状況(2023年8月15日)-

 新たな変異株が報告されていますのでその概要を簡単に解説しとておきます。


その変異株とは「EG.5」です。


世界保健機関は、「EG.5」を「注目すべき変異株(VOI)」に指定し、各国にモニタリングを呼びかけています。


「EG.5」は「エリス」の通称で呼ばれています。


EG.5は、オミクロン株から派生した変異株のひとつで、世界保健機関によると2023年2月に発見され、徐々に増加しています。


エリスというあだ名はギリシャ神話の女神にちなんだもので、ソーシャルメディア上で名付けられたものです。


世界保健機関は、現在手に入れられる証拠からはエリスが他のVOIと比べて重症化するという示唆はなく、リスクも同程度だと正式に述べています。


世界保健機関によると、これまでに中国、アメリカ、韓国、日本、カナダ、オーストラリア、シンガポール、イギリス、フランス、ポルトガル、スペインなど51カ国でエリスの感染が報告されています。


専門家らは、今のところこの変異株で新しい症状が出たという証拠はないとしています。


※ギリシャ神話に登場するエリスとは、ギリシア神話の不和と争いの女神です※


現在新型コロナウイルの遺伝子情報は主にGISAID Initiativeに登録され、そのデータは迅速に公開され誰でも自由に利用することが可能となっています。

               ↓ 

           https://gisaid.org/


2023年8月13日日曜日

医学豆知識-9.全治と完治の違いとは-

全治・寛解・転移・再発など一般的に理解しにくい医学用語について解説させていただきます。 


【全治】


病気やけがが治療がもう必要がないまでに直ること。


【完治】


文字の通り、病気やケガが完全に治ること


【治癒】


治療によって「治癒した」というのは、治療がうまくいき、肉眼で確認できたり、組織の断面図などを確認した限り病気を治すことができた、うまく癌を取りきれたなどという時に「治癒」と言います。


【寛解】


症状の一時的な緩和、もしくは消えている状態のことを指します。


「病気の症状が一時的に軽くなったり,消えたりした状態です。このまま再発しないで,完全に治る可能性もあります。


寛解したあと、抑えられていた症状が悪化することを『再燃』といいます。


【臨床的寛解】


関節の痛みや腫れがなく、炎症がない状態。

※DAS28、SDAI、CDAIなどによる疾患活動性の評価を行って判断※


【構造的寛解】 

新たな骨破壊が見当たらず、関節破壊の進行が抑えられている状態。

※X線撮影などの画像診断て゛判断※


 【機能的寛解】

生活機能が改善している状態(衣服の着脱、食事、歩行、などの日常生活に不自由がない状態)。


【完全寛解】


治療の結果、がんによる症状や検査での異常が見られなくなり、正常な機能が回復した状態のこと。


【再発】


完治したあとに同じ病気に罹ってしまうことを『再発』といいます。


【増悪】


"ぞうお"とは読まずに"ぞうあく"と読みます。


病状がますます悪くなることです。


一時的に良くなった状態からまた悪くなることを『再発』『再燃』と言いますが,『増悪』はもともと悪かった状態がもっと悪くなることです」


【転移】


骨や肺など,はじめにがんができた乳房から離れた別の場所にがんが出てくることを「転移」あるいは「遠隔転移」といいます。




2023年8月6日日曜日

医学豆知識-8.無症候性梅毒に気をつけよう!!-

 依然として梅毒が大流行しています。


2021年1年間で届出のあった梅毒患者は、7978人(男5261人・女2717人)に上ります、これは届出のあった患者数だけですから実際はこれ以上の潜在患者がいると推測されています。


※2023年は7月下旬時点で既に8349人の患者が報告されています※


梅毒トレボネーマに感染して、症状が出れば以上に気づき受診して検査を受けますが、全く症状がない場合は感染に気づくことはありません。


梅毒トレポネーマに感染して、3週間以降に梅毒特有の症状を示す場合を顕症梅毒(第1期梅毒、第2期梅毒)と呼びます。


梅毒トレポネーマに感染して、梅毒特有の症状を示さないものを無症候性梅毒と呼びます。


要するに無症候性梅毒は、梅毒検査を受けて初めて梅毒と判明します。


梅毒トレポネーマに感染して何の症状も出ない無症候性梅毒は38%存在するとの報告がなされています。


無症候性梅毒は梅毒特有の症状がないことから、当人は感染に気づくことなく次々と第三者へ感染を広げていくことになります。


2021年の統計の無症候梅毒患者は、


無症候梅毒 2035人で、、その内訳は男1029人・女1006人となっています



この結果からして、無症候梅毒が2035人25.6%も存在しています。


以上のことからして梅毒トレポネーマに感染する可能性のある行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受けないと感染の判断はできないということになります。







2023年7月30日日曜日

医学豆知識-7.梅毒トレポネーマ感染を早く知ろう!!!-

2023年7月16日時点での梅毒患者数は、8040人となりました。


依然として大流行は収まっていません。


現在の大流行からしておよそ200~100人に1人が梅毒患者ということになります。


このように大流行していることから、不安な行為をしてしまったときには、必ず梅毒検査を受けてください。


梅毒トレポネーマは、性行為だけでなくオーラルセックスでも簡単にに感染しますし、コンドームでも完全には予防できません。


不安な行為をしてからSTS検査では4週以降、TP検査では6週以降に受けないと信頼できる結果が得られません。


その事から間待つのが大変という声を良く聞き、相談も受けます。


梅毒トレポネーマの感染を4週前に知る検査はあります。


梅毒トレポネーマ感染をいち早く知る検査法は、IgM-FTA-absです。


梅毒トレポネーマに感染した初期には、IgM抗体が先に出来て、その後IgG抗体が出来ます。


このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ 信頼出来る結果が得られます。


従って梅毒トレポネーマに感染後1ケ月を経過して、IgM-FTA-abs検査を受けると血液中のIgM抗体が減少していることから 偽陰性反応を起こすことがあります。


このIgM抗体は、梅毒に感染後1週間程度で身体中にできることから、IgM-FTA-abs検査は梅毒に感染後1週間で受ければ 信頼出来る結果が得られます。


そのことからして、いち早く感染の診断を下したい時に利用される検査法です。


よくIgM-FTA-absを受けるところがわからない、医師に検査を受けたいと言って医師がIgM-FTA-absの事を知らない、 この医療機関では検査をしていないなどと言われて受けることが出来ないという相談を受けますが、IgM-FTA-absは全国どこでも検査は受けられます。


自施設で検査をしていなくても全国どこでも検査専門の会社に検査を依頼して受けることは出来ます。


梅毒は皮膚科が専門診療科となりますから、皮膚科を受診することです。


皮膚科専門医は、IgM-FTA-absのことを正しく理解していますから問題なく受けることが出来ます。

【ご注意】

普通のFTA-absは、IgG-FTA-absで、IgM-FTA-abs検査ではありませんので、早く感染を知りたいときには必ずIgM-FTA-abs検査を受けたいと医師にはっきりといって受けてください。


2023年7月23日日曜日

医学豆知識-6.サル痘と梅毒の皮膚症状の違い-

日本国内におけるサル痘患者数は、2022年7月25日に国内1例目の患者が報告されてから、増加傾向にあり2023年7月21日時点で193人となっています。


サル痘は海外では減少傾向にあるにも関わらず、日本では逆に増加傾向にあります。


今まで知られていた古典的なサル痘では、発熱、頭痛、リンパ節の腫れなど先行する症状が数日持続してから皮疹が出現するとされています。


皮疹は顔面から出現して、全身へと拡大し、全身の皮疹がある一時点においてすべて同一段階の状態で、赤い発疹から水ぶくれ、そしてかさぶたになっていくというのが一般的でしたが、現在流行しているサル痘では発熱、頭痛、リンパ節の腫れなど先行する症状がない症例も半数ほどあり、また皮疹の状態もそれぞれの部位で進み具合が異なる事例が報告されており、皮疹も特定の部位のみでみられることがあり、中でも肛門や生殖器の頻度が最も多く、体幹・四肢、顔、手のひら・足の裏などでもみられることがあります。


更に口の中や直腸にも病変が見られるようになってきています


サル痘の皮疹は水疱という水ぶくれが見られることが特徴です。


通常赤い発疹から水疱になり、さらに水疱から、中に膿がたまる膿疱になり、それが破れてかさぶたになります。


これまでは水ぶくれの時期、かさぶたになった時期など様々な時期の皮疹が混在するのが水痘の特徴であり、サル痘や天然痘では全身の皮疹が均一に進行していくのが特徴とされていましたが、今回の流行ではサル痘でも様々な時期の皮疹が混在することがあるようです。


ただし、皮疹の部位が生殖器に多い、というのは今回の流行におけるサル痘の大きな特徴でもあります。


梅毒の場合は梅毒トレポネーマの侵入した箇所に感染後訳1ケ月後に傷みのない硬い出来物(初期硬結)がやがて潰瘍となります。


最近ではオーラルセックスによる感染で、唇や喉の粘膜にも病変が多く見られるようになってきています。


感染後2~3ケ月を経過すると、痒みも痛みもないバラ色の湿疹(バラ疹)が全身に出てきます。


サル痘と梅毒の湿疹の根本的な違いは、


◎サル痘では生殖器に水ぶくれなどの皮疹が出やすいが、梅毒では痛みのない硬い出来物ができやがてこれが崩れて潰瘍になります。


◎サル痘の皮疹は「赤い発疹→水疱→膿疱→かさぶた」と変化していきますが、梅毒では赤い発疹のままのことが多い。


※世界保健機関は、2022年11月28日サル痘(monkey pox)について、新たな名称として「M痘(mpox)」を使うと発表しています※


当面の間は、世界的な流行の最中に名称を変更することで引き起こされる混乱を軽減するため、名称変更は段階的に行われるとし、今後1年間は、サル痘とM痘(mpox)の両方が使われます。


【参考資料】

【第17回 サル痘に関する関係省庁対策会議幹事会 2023年2月28日】



2023年7月16日日曜日

医学豆知識-5.検診と健診の違い-

同じ読み方の"けんしん"には、検診と健診がありますがどう違うのでしょうか


検診は、特定の病気にかかっているかどうかを調べるために診察・検査などを行うことで、早期に病気を発見し治療することを目的とした検査です。


代表的なものには、胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮頸がんの5大がんの早期発見を目的としたがん検診があります。


検診は特定の疾患をターゲットとして検査診断を行うことです。


特定の病気を早期に発見して早期に治療するための「二次予防」を目的としています。


一方健診は、健康診断のことで、特定の病気を検査するものではなく、健康状態を確認することを目的とした検査です。


健康診断あるいは健康診査を略して健診といいます。


健診には、職場の健診、学校健診、特定健康診査など、様々な種類があります。


職場の健診とは、企業に実施が義務付けられている健診で、業種にかかわらず実施義務のある「一般健康診断」と法律で有害と定められている業務に従事する労働者を対象として実施される「特殊健康診断」があります。


学校健診は、学校保健安全法に基づく健康診断です。


特定健康診査は、問診、身体測定、血圧測定、血液検査、尿検査などを行いメタボリックシンドロームや高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を早期発見し、早期対策に結びつけることが目的です。


健康かどうか?病気の危険因子があるか?などを確かめることが目的です。


健康かどうか調べ、病気の危険因子を早く見つけることができる「一次予防」を目的としています。

2023年7月9日日曜日

医学豆知識-4.感染と伝染の違いとは-

 感染とはウイルスや寄生虫、細菌などの病原体が体内に侵入することを言います。


そしてそれら病原体が引き金となり病気を発症してしまうことが、感染症の概念だといわれています。


伝染とは、感染症を発症した動物や人が、自身の体内に保有している病原体を第三者の生き物に移した後、病原体を移された第三者が発症することを言います。


感染と伝染は、英語圏では的確に区別されています。


感染はinfection(インフェクション)、伝染はtransmission(トランスミッション)と明確に区別されています。


日本の場合は、感染も伝染も同じ様に使用されています。


例えば『インフルエンザに感染した(感染)』、『〇〇さんからインフルエンザを感染させられた(伝染)』と感染も伝染も同じ使い方がされています。


これを正しく言うと『インフルエンザに感染した』はそのとおりですが、『〇〇さんからインフルエンザを感染させられた』は『〇〇さんからインフルエンザが伝染した』


要するに日本語では、自分が病原体に感染すると人に病原体を移す(感染)は同じ様に使われ間違いではありません。


しかし英語圏では、自分が感染することはinfection(インフェクション)、第三者に感染させることはtransmission(トランスミッション)と明確に区別されています。

2023年7月2日日曜日

医学豆知識-3.マスクの素材での肌荒れについて-

 新型コロナの流行に伴い連日マスクを長時間つけていることで「肌荒れ」する人が増加しています。


特にマスクの素材によっては、マスクが当たる顔の皮膚から肌荒れする・マスクの素材を変えたら肌荒れしなくなった・不織布のマスクを使用すると湿疹が出るなどなどマスクの素材によって肌への影響が変わることが多くの人が指摘しています。


【マスクの素材によって肌荒れは起こるのでしょうか?】


一般的に"不織布マスク"を使用している人ほど肌荒れを多く経験しているようです。


マスクを付けてマスクの当たる顔の部分が、きれいにマスクの形に一致して肌が赤くなる人が増加しています。


症状としては、頬のマスクがよく当たる部分が赤くなったり、カサカサして少し腫れたり、かゆみが出たりしている人が多いです。


唇がマスクと触れやすい人は、『マスクをしていなかったときは何ともなかったのに、唇が荒れやすくなった』とおっしゃいます。


摩擦による荒れ以外に、マスクの下に隠れた部分の皮膚にいる『常在菌』のバランスの崩れが原因となるケースもあります。


その結果、普段はさほど悪さをしない、カンジダやマラセチアなどの真菌が繁殖して常在菌を上回りその結果ブツブツとした発疹ができることがあります。


マスクの着用によって肌が荒れやすい人の特徴としては、乾燥肌の人・反対に脂性肌の人が荒れやす傾向があります。


年齢や性別に特段差は見られないようですが、マスクをつける時間が長い人・汗をかきやすい人・マスクをつけたまま話をする機会が特に多い人などは注意が必要となります。


【マスクの素材による、肌への負担や影響の違いについて】


マスクの素材は、マスク内の『蒸れ』に関わることから蒸れることによって角質がふやけてふくらみ、肌のバリアー機能が弱まってしまうと、肌の内側からの水分蒸発が多くなり、乾燥しやすくなり、そこへ摩擦が加わると、蒸れによって弱った皮膚のバリアーが壊れていき、角質の層が薄くなるという悪循環に陥り皮膚が荒れるのです。


要するにマスクをすることによって皮膚が蒸れることで、肌がどんどん摩擦に弱くなり、ふやけ摩擦で皮膚が荒れてきます。


不織布のマスクを使用している人に肌荒れが多く見られています。


不織布マスクは、息苦しさ・蒸れを起こしやすいので肌荒れしやすいのです。


ウイルス防御効果が高いマスクほど通気性が悪く蒸れやすく、その結果肌荒れしやすくなります。


不織布マスクにも、通気性のいいものもあれば、悪いものもありますので、肌荒れを防ぐ対策として通気性の良い不織布マスクを使用するのも一つの選択肢となります


どうしても不快なほどの蒸れを感じる場合は、マスクの素材や形状を替えることも必要となります。


どうしても肌荒れしやすい人の場合、不織布マスクと顔の間に、綿や絹といった布製のマスクを挟むことで改善する場合もあります。


【マスクを使っていて肌に違和感が出た場合の対策】


1.マスクを使わない時間をできるだけ長くする。


2.違う素材のものに替える。


3.肌に違和感があるときは、特に必要がなければなるべく肌を触らないようにして、洗顔の時間なども短く軽く済ませる。


4.何をしても肌荒れが改善されないときは皮膚科を受診する。


【マスクの着用で肌トラブルが起こりにくいようにするために、日頃からできることは】


ぬれた状態で擦れることは肌にとって最もよくないので避けるべきです。


従って洗顔の時間は短く、軽く済ませ、保湿をする際も短時間で、手のひらで優しく押さえるだけにしましょう。


気をつけなければいけないのは脂性肌の人には、油分の強い保湿剤は控えて、セラミドなど、肌バリアーを修復する成分の入った保湿剤を選ぶことが良いとされています。

2023年6月25日日曜日

医学豆知識-2.家庭内でペットを飼育することにより子どもの食物アレルギーのリスクを低下させる?

 いくつかの研究によると、家庭内でペットを飼育することが子供の食物アレルギーのリスクを低下させる可能性があるとされています。


一部の研究では、犬や猫を飼育している家庭の子供たちは、アレルギーの発症リスクが低いことが示されています。


これは、動物と接することで免疫系が刺激され、アレルギー反応を引き起こすための抵抗力が高まる可能性があるためです。


ただし、すべての子供にとってペットを飼うことがアレルギーを予防する保証はありません。


また、すでにアレルギーを持っている子供にとっては、ペットを飼うことがアレルギーの症状を悪化させる可能性があるため、注意が必要です。


総じて言えることは、ペットを飼うことが子供の健康に良い影響を与える可能性があるが、必ずしもアレルギーを予防するという証拠は十分ではないということです。


日本での研究では、犬を飼っている家の子どもでは、卵・牛乳・ナッツ類に対して、猫を飼っている家の子どもでは、卵・小麦・大豆に対してアレルギーを発症しにくいことが明らかにされています。


この研究結果の解析の結果、胎児期または幼児期初期に室内飼いの犬または猫に曝露することで3歳までに食物アレルギーを発症するリスクが低下することが明らかにされています。


この研究では、なぜペットを飼っている子どもで食物アレルギーの発症リスクが低下するのかは明らかにされていません。


この研究から分かることは、ペットを飼うことで食物アレルギーを防げるわけではなく、ペットを飼うことが食物アレルギーの発症リスク低下につながる可能性を示唆したに過ぎません。


この研究結果から家庭内でペットを買うことによりこのペットが原因で子どものアレルギーリスクが高まるのではないかと心配する親たちに、食物アレルギーの発症抑制という点では、胎児期と幼児期のペットへの曝露が有効に働くケースがあるかもしれないというメッセージと、ペットを飼うことから生じる弊害の懸念を軽減するのに役立つこと思われます。


【参考文献】


【ペットは子供の食物アレルギーの予防に役立つ】


【胎児期または乳児期のペット曝露と食物アレルギーとの関連性:日本環境と子どもの研究】