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2022年5月1日日曜日

百日咳について-2.百日咳抗原検査-

 2020年5月29日に承認され、2021年5月1日に保険収載されています。


販売名は、リボテスト百日咳です。


製造発売元 極東製薬工業 株式会社


【使用目的】


鼻咽頭拭い液中の百日咳菌抗原の検出


【測定原理】


鼻咽頭拭い液中の百日咳菌L7/L12 抗原を検出するイムノクロマト法です。


テストプレートは、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、メンブレン、吸収パッドから構成されていて、コンジュゲートパッドには金コロイド標識抗百日咳菌L7/L12 モノクローナル抗体(マウス)が含まれています。


テストライン上には、抗百日咳菌L7/L12 モノクローナル抗体(マウス)が固相化されています。

 百日咳菌L7/L12 抗原を含む試料を試料滴下部に滴下すると、試料はサンプルパッドを通って、コンジュゲートパッドに移動し、試料溶液中の百日咳菌L7/L12 抗原が金コロイド標識抗体と反応して免疫複合体を形成され、この免疫複合体は毛細管現象によりメンブレン上を移動し、テストライン上の固相化抗体に捕捉されると、赤紫色のランが現れます。

また、百日咳菌L7/L12 抗原の有無に関わらず、金コロイド標識抗体はコントロールライン上に固相化されている抗マウス免疫グロブリンポリクローナル抗体に捕捉され、赤紫色のラインが現れます。


※リボテスト百日咳添付文書参照※


【測定時間】


15分


【判定】


肉眼で出現ラインを確認する。


陽性 コントロールラインとテストラインの両方に赤紫色のラインが確認される。


陰性 コントロールラインのみに赤紫色のラインが確認され、テストラインには確認されない。


判定不能 コントロールラインに赤紫色のラインが確認確認されないか不明瞭な場合。


※コントロールラインに赤紫色のラインが確認確認されず、テストラインにのみに赤紫色のラインが確認される場合も判定不能とします※


判定不能の場合は、再検査。


試料滴下後15分を過ぎてテストラインが出現した場合、陰性と判定する。



【PCRとの一致率】


陽性一致率 86.4%


陰性一致率 97.1%


陽性陰性一致率 95.9%

2022年4月24日日曜日

百日咳について-1.百日咳とは-

 百日咳は、主にグラム陰性桿菌の百日咳菌 (Bordetella pertussis) による呼吸器感染症の一種で、特有の痙攣性の咳発作を特徴とする急性気道感染症です。


主に1歳未満乳児が罹ると認識され、特に生後6ケ月未満では容易に重症化して死の危険も伴うなど、極めて重要な感染症とされています。


百日咳は世界的に見られる疾患で、乳幼児に限らずいずれの年齢でも感染します。


患者に占める成人の割合が2001年にはわずか2.8%でしたが、この10年間毎年増え続け、2010年(1~4月)には56%に達しまし、現在では半数以上が、おとなの患者なのです


【症状】


潜伏期間は通常7~10日で、次に普通の風邪症状を示すカタル期が1~2週間続き、さらに乾いた咳と発作性の咳嗽(がいそう)が特徴の痙咳期が3~6週間続きやがて回復します。


百日咳特有の咳は、短い連続した咳嗽(スタッカート)の後、息を吸い込むときに笛を吹くようなヒューという音(笛声 てきせい:ウープ)が出て、これが繰り返されます。


※ 咳が治まるまで約100日間(およそ3ケ月程度)続くことから、百日咳と呼ばれる※


※咳嗽(スタッカート)とは、顔をまっ赤にしてコンコンと激しく咳き込む発作※


※(笛声 てきせい:ウープ)とは、息もできないくらい咳き込んだあとヒューッと音を立てて大きく息を吸い込む発作※


咳嗽は夜間に多く、何かしらの誘発原因によって咳き込むと、息も詰まることから顔面浮腫や充血、そして最悪の場合は呼吸停止から突然死に至ることもまれにあります。


【検査法】


鼻咽頭を綿棒で拭いそのぬぐい液で遺伝子検査として、LAMP(loop-mediated isothermal amplification)法やPCR( polymerase chain reaction)法。


血液による血清抗体検査。


鼻咽頭を綿棒で拭いそのぬぐい液での抗原定性検査。


【治療法】


マクロライド系抗菌薬を投与します。


エリスロマイシン(EM)、クラリスロマイシン(CAM)、またはアジスロマイシン(AZM)が使用され、投与期間はそれぞれ14、7、5日間です。


【感染予防】


百日咳の防御はワクチン接種が基本となります。


全菌体を使用した単味の百日咳ワクチン(P)はジフテリアトキソイド(D)との二種混合(DP)、更に1968年からは破傷風トキソイド(T)も含めた三種混合(DTP)で接種が進められました。


日本国内における百日咳患者数は、全数届出が始まった2018~2020年の3年間に発生動向調査に届出された百日咳患者は31,909例となっています。


患者は, 2018年が11,190例(94%), 2019年が15,972例(95%), 2020年が2,671例(91%)、2022年(3月時点)132例となっています。


百日咳は、1年を通じて発生が見られますが、春から夏、秋にかけての発生が比較的多く、流行の周期は2~5年とされています。