抗インフルエンザ薬の「48時間の壁」と最新の考え方を以下に解説いたします。
1. 原則は「48時間以内」:ウイルスの増殖を抑えるため
抗インフルエンザ薬(タミフル等)はウイルスの「増殖」を抑える薬で発症から48〜72時間でウイルス量はピークに達し、その後は自然に減るため、早期に飲むほど発熱期間を短縮する効果が高くなります。
2. 「48時間以降」でも投与すべきケースがある
「48時間を過ぎたら無意味」というのは誤解で重症化のリスクが高い人の場合、48時間を経過していても、薬を投与することで肺炎による死亡率の低下や、入院期間の短縮といった重要な効果が認められています。
3. 入院患者や重症化しつつある人は「即投与」
症状が重く入院が必要な患者や、外来診療でも症状がどんどん悪化している(進行性)の場合は、発症から何日経っていたとしても、可及的速やかに治療を開始することが最新の国際基準(IDSA等)で推奨されています。
4. 重症化リスクが高い「ハイリスク群」の定義
以下に該当する方は、48時間を過ぎていても医師の判断で投与が検討されます。
◎年齢: 5歳未満(特に2歳未満)の幼児、65歳以上の高齢者。
◎妊婦: 妊娠中、および出産後2週間以内の方。
◎体格: 高度肥満(BMI 40以上)の方。
5. 注意が必要な「持病(基礎疾患)」がある方
以下の持病がある方は、インフルエンザが重症化しやすいため、48時間を経過していても治療のメリットが大きくなります。
◎喘息などの呼吸器疾患、心臓病、腎臓病、糖尿病。
◎免疫抑制状態(治療中の方やHIV感染など)。
◎神経疾患(てんかん、発達障害など)。
6. 疫学的視点:家庭内や施設内での広がりを防ぐ
薬の投与には、本人の治療だけでなく「周囲への感染期間を短くする」という疫学的な側面もありますから、特にナーシングホームなどの高齢者施設入居者においては、集団感染を防ぐ観点からも適切な投与が重視されます。
7. 最終的な判断は「個別のリスク評価」で決まる
健康な成人の場合、48時間を過ぎれば自然治癒を待つ選択肢もありますが、上記のリスクがある場合は**「48時間はあくまで目安」**ですので、自己判断で受診を諦めず、特に持病がある方は医師に相談することが重要です。
インフルエンザの多くは自然軽快する疾患であり、抗インフルエンザの投与は必須ではないという認識は正しいですが、投与が推奨される背景や条件について確認するためにも、上記の「2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」や「~抗インフルエンザ薬の使用について~」を一読されておくことをお薦めします。
【参考資料】
日本小児科学会「2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」
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