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2018年2月26日月曜日

糖尿病について-1.日本における糖尿病患者の現状-

糖尿病についてシリーズで解説していきます。

日本人はインスリンをつくる能力が低い民族であるといわれています。

そのため、軽い肥満や少しの運動不足でも、糖尿病になりやすい事が知られています。

糖尿病とは、"血糖値が高い状態が続く病気"で それ自体は大した病気ではありませんが、何と言っても恐いのは合併症です。

血糖値が高い状態が続くと、体のいたるところで血管が詰まったり破れたりすることが原因で、さまざまな合併症が起こります。

糖尿病は、血糖値が病的に高い状態をさす病名であり、"インスリン依存型"と"インスリン非依存型"の2つのタイプがあります。

1.インスリン依存型は、先天的にインスリンが不足するために高血糖になるタイプで「1型糖尿病」と呼ばれ、多くは児童期に発症します。

2.インスリン非依存型はインスリンは分泌されているにも関わらず、その働きが悪いために糖をエネルギーに変えることができず高血糖となる成人に多いタイプで、「2型糖尿病」と呼ばれます。

日本人の糖尿病患者のほとんどが「2型糖尿病」です。

【日本における糖尿病の現状】

厚生労働省の平成28年「国民健康・栄養調査」には以下のように解説されています。

糖尿病が強く疑われる人の割合は、12.1%であり、男女別にみると男性16.3%、女性9.3% である。

糖尿病の可能性を否定できない人の割合は12.1%であり、男女別にみると男性12.2%、女性12.1%である。

更に糖尿病が強く疑われる者は約1000万人と推計され、平成9年以降増加傾向にある。

また、糖尿病の可能性を否定できない人も約1000万人と推計され、平成9年以降増加していたが、平成19年以降減少して来ている。

【日本における糖尿病の治療現状】

糖尿病が強く疑われる人の内、現在治療を受けている人の割合は76.6%で、男女別にみると男性で78.7%、女性で74.1%で男女とも有意に増加している。

性・年齢階級別にみると、40歳代男性では治療を受けている割合が他の年代よりも低い傾向が見られます。

【日本における糖尿病患者数】

厚生労働省の「患者調査」によると、糖尿病の患者数は316万6000人となり、前回(2011年)調査の270万から46万6,000人増えて過去最高となっています。

2018年2月20日火曜日

人獣共通感染症-7.細菌性人獣共通感染症としてのエルシニア・エンテロコリチカー

エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)は、豚、犬、猫などの腸管や自然環境中にいる細菌です。

シカ、イノシシ、ネズミなどの野生動物、犬や猫などのペットの糞便、河川水などから見つかっています。

エルシニア・エンテロコリチカは、1939年に胃腸炎の原因菌として発見され、その後発生頻度が低いことから忘れられていましたが、1970 年代になって豚肉の汚染と関連して注目を浴び、米国では年間 3000~20000人の患者発生があると推定されています。

ヒトに対して病原性を示す血清型の分布調査で、健康なブタ、イヌ、ネコ、 ネズミなどが保菌しており、これから飲食物への汚染が感染経路と考えられています。

食中毒の起炎菌として有名ですが、ペットや動物からも感染する人獣感染症としても注目されています。

【菌の性状】

0~4度の冷蔵庫内の温度でも増殖可能です。

このように寒冷に強いため、エルシニアは"好冷菌"と呼ばれることもあります。

【症状】

臨床症状は腹痛や下痢などの胃腸炎症状が主なもので、発熱、頭痛など、風邪のような症状を伴うこともあります。

右下腹部痛(特徴的)・吐き気・嘔吐などの症状から虫垂炎と診断されてしまう場合もあります。

【検査】

エルシニア感染症の確定診断には、糞便からエルシニア菌の検出が必要となります。

下痢便には多くのエルシニア菌が存在するので、選択培地で直接分離することが可能で、分離培地にはSS寒天、マッコンキー寒天、CIN 寒天などを用います。

患者の初期血清と回復期血清でエルシニア菌に対する血液中の抗体価を測定します。

エルシニア菌の分離ができず、抗体価の上昇が認められた場合でも、本感染症が強く疑われます。

【治療】

自然治癒傾向が高いので、食事制限をし、水分を多めに取る以外は特別な治療は必要ありません。

たまに重症化する事がありますが、この場合は抗菌剤を使用します。

トリメトプリンサルファメトキサゾール(ST合剤)、セフォタキシム、フルオトキノロンなどが効果があるとされています。

【予防】

1.この菌は低温でも増殖しますから、冷蔵庫を過信しない。

冷凍された食品中でも、長期にわたって生存可能ですので注意が必要です。

2.生の肉や、加熱不十分な肉は、食べない。

3.生水を飲まない。

4.料理前、食事前は、手をよく洗う

5.ペットや動物と接触した後、生の肉を扱った後、トイレの後は良く手を洗う。

6.肉用のまな板と他の食材用のまな板とは区別する。

7.ペットの糞は衛生的に処理する。

【献血とエルシニア】

エルシニアに感染した場合血液中にエルシニアが入り込んでいますから献血はできません。
エルシニアの含まれた血液は4~6度で保存しても菌は死ぬことはなく増殖しています。

その為1ケ月以内に発熱を伴う食中毒と見られる激しい下痢をした人は献血はできません。

輸血を介したエルシニア・エンテロコリティカの感染についてわが国では報告例がありませんが、米国では死亡の危険率は輸血1単位当たりおよそ900万の1と推定されています。
米国においては1987~1988年に4例の輸血に関連したエルシニア・エンテロコリチカ菌血症の報告があり、1989年1月~1991年2月にさらに6例の報告があります。

6名の患者はいずれも輸血開始後50分以内に発熱,血圧低下をきたし,内1名は10分以内に激烈な下痢をおこし、6名中4名は12時間~37日の間に死亡しています。

現在、スクリーニングに適した信頼性のある検査法は存在していません。

米国において1987~1988年に4例の輸血に関連したエルシニア・エンテロコリチカ菌血症の報告されていますが,1989年1月~1991年2月にさらに6例の報告があり6名の患者はいずれも輸血開始後50分以内に発熱,血圧低下を起こし,内1名は10分以内に激烈な下痢が起こり、6名中4名は12時間~37日の間に死亡しています。

2018年2月12日月曜日

人獣共通感染症-6.細菌性人獣共通感染症としてのサルモネラ症

サルモネラ感染症の原因菌はサルモネラ(サルモネラ・エンテリティディスなど)によって引き起こされます。

サルモネラはおよそ2,000種類以上の血清型に細分されており、チフス性疾患をおこすチフス菌およびパラチフス菌も含まれるが、ここではヒトに胃腸炎、つまり食中毒の原因となるサルモネラについて解説いたします。

サルモネラ菌は自然界のあらゆるところに生息し、家畜、ペット、鳥類、爬虫類、両生類が保菌し食中毒ならびに人畜共通感染症の重要な原因細菌のひとつです。

国内では、ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)での感染報告が多く、国内で飼育されているカメ類のサルモネラ保菌率は18%、その他トカゲ類で75%、ヘビ類で90%であるとの報告があります

サルモネラ感染症は、近年ではペットの犬や猫をはじめ爬虫類や両生類から人へ感染した事例が多数報告されています。


【症状】

潜伏期間は、5~72時間(平均12時間)です。

小児から高齢者まで幅広い年齢層で発症しますが、小児や高齢者はわずかな菌量でも感染してしまいます。

人への感染は、主として成人では急性胃腸炎を引き起こします。

小児や高齢者が感染した場合には、症状がより重篤化し、菌血症を併発しやすくなります。

サルモネラ菌に感染した犬・猫をはじめ小動物では、一般的に急性胃腸炎として嘔吐、下痢、食欲不振、元気消失が認められ、特徴的な所見はほとんどないので見過ごされることが多いので注意が必要です。


【検査】

新鮮な糞便を分離・同定、抗生物質の感受性試験などを実施します。

サルモネラの特異的な迅速診断法は2018年現在存在しません。

【治療】

アンピシリン(ABPC )、ホスホマイシン(FOM )、およびニューキノロン薬に限られます。

【予防】

サルモネラの予防は原因食品、特に食肉および鶏卵の低温保存管理、またそれらの調理時および調理後の汚染防止が基本となりますが、ペット等からの感染も無視できません。

サルモネラ菌は、動物の消化管に保菌されており糞便から人の口に入り感染する場合も多いので、動物に触れた後は必ず早めに手をよく洗う必要があります。

ペットとの不用かつ安易な濃厚な接触(餌の口移しなど)をしない。

サルモネラ菌は、色々な消毒剤が有効です。

消毒用エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨード、逆性石けん液(ベンザルコニウム塩化物液)など、市販されているほとんどの消毒剤が有効です。

2018年2月4日日曜日

人獣共通感染症-5.細菌性人獣共通感染症としてのコリネバクテリウム・ウルセランス感染症

犬や猫などから人間にうつるとされる人獣共通感染症「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」による死者が2018年1月14日国内で初めて確認されました。

国立感染症研究所調べによりますと、国内では2001年から2017年11月末までに25例の発生が確認されています。

【感染経路】

コリネバクテリウム・ウルセランス感染症は、家畜やペットの動物が持つ「コリネバクテリウム・ウルセランス菌」に感染することで起きる人獣共通感染症です。

コリネバクテリウム・ウルセランスはジフテリア菌に類縁なグラム陽性の短桿菌で、おもに家畜などの動物に常在しており、ウシの乳房炎の原因となることがあります。

人から人に感染することはほとんどありません。

【症状】

症状としては、基本的にジフテリアと類似した臨床症状を示します。

喉の痛みや咳など風邪の症状が出て、重症化すると呼吸困難などで死亡することもあります。

【検査】

患者の体液を培養し、病原菌を単離、同定するか、PCRを用いて検査する。

【治療法】

マクロライド系抗菌薬が有効とされています。

【予防法】

人での国内感染事例の多くは犬や猫からの感染であることが確認されていることから、この菌に感染した動物と接する場合には注意が必要となります。

感染した動物は、くしゃみや鼻汁などの風邪に似た症状や皮膚病を示すことがあり、動物間で感染が拡大することも報告されていますので注意が必要となります。

無症状の保菌動物の存在も報告されています。

日常生活において過度に神経質になるのではなく、一般的な衛生管理として動物と触れあった後は手洗いを確実に行うことなどにより、感染のリスクを低減することが可能となります。

【感染対策】

国内では、人に対する定期の予防接種の対象である3種混合(最近では4種混合)ワクチンにジフテリアトキソイド(ワクチン)が含まれていますので、このワクチンはコリネバクテリウム・ウルセランス感染症に対しても有効であると考えられています。