血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2024年7月14日日曜日

新しいエイズ治療薬レナカパビルについて-2.新しいHIV予防薬レナカパビルがHIV感染予防役として使用できる可能性について-

 


この治療薬が今回の第III相臨床試験結果によって、新しいHIV予防薬レナカパビルとして期待されているわけです。


16歳から25歳の女性と少女2,134人を対象としてウガンダと南アフリカで行われた臨床試験は極めて高い予防効果が得られています。


2,000人以上の患者がレナカパビル注射による投与を行い、臨床試験期間中にHIVに感染した患者は一人もいなかった。



臨床試験の人口統計は16歳から25歳の若い女性に焦点を当てて行われましたが、この人口層は南部アフリカでHIVの影響が最も大きいとされています。


多くの研究者たちが、この薬による予防効果に驚愕しています。


従来のHIV予防の選択肢は処方通りに服用された場合非常に効果的であることはわかっていますが、PrEPのために半年ごとのレナカパビルは、経口PrEPピルを服用または保管する際に直面する可能性のあるスティグマや差別の解消に役立ち、半年ごとの投薬スケジュールによりPrEPの遵守率と持続性の向上に役立つ可能性があります」とベッカーは説明した。



レナカパビルは、毎日服用する2つの経口薬であるツルバダ (Truvada)とデシコビ(Descovy)と比較された。これらは、HIV予防のためのPrEP(曝露前予防内服)として成功を収めている。


ツルバダのグループでは、試験期間中に1,068人中16人の女性がHIVに感染し、デシコビのグループでは、2,136人中39人の女性がHIVに感染しましたが、レナカパビル注射による投与グループにおいては感染者はなかった。


日本においてもレナカパビルをHIV予防のためのPrEP(曝露前予防内服)として承認する動きが活発になってきていることから、意外と早く承認される可能性があります。


HIV予防における「最も重要な」進展の一つ

南アフリカのデズモンド・ツツHIVセンターの所長であるリンダ・ゲイル・ベッカー教授は、この注射が人々に「重要な新しい選択肢」を提供する可能性があると述べた。


【参考資料】

新しい年2回注射薬レナカパビル、HIV治療におけるこれまでで最大の進歩と称賛される


2024年7月7日日曜日

新しいエイズ治療薬レナカパビルについて-1.レナカパビルとはどのような薬-

HIVに関する医療は目を見張るものがありますが、日本国内のHIV報告件数は7年ぶりに増加しています。


現在HIV感染を早期に発見し、早期に適切な治療を続けていればエイズの発症を防ぐことができ、これまで以上に長く健康的な社会生活を送れるようになってきています。


HIV感染を未然に防ぐ対策と果ては、当然のことながらコンドームによる予防がありますが、PrEP(曝露前予防内服)の効果は世界に認められ使用していますが、日本国内でおいては未だに保険適応が認められていません。


しかし現実としてゲイの間では、PrEPを利用している人が多く存在していることは周知の事実です。


今回新しいHIV感染症の予防薬のレナカパビルが、臨床試験においてHIV予防で100%の有効性を示したとの報告があり期待されています。


それではレナカパビルとは、どのような薬なのでしょうか?


米国リフォルニア州フォスターシティに本社を置く世界第2位の大手製薬会社であるギリアド・サイエンシズが開発したHIV感染症の予防薬です。


このレナカパビルは、年2回投与のHIV予防薬で経口投与と皮下投与の両方に対応しています。


従来からあるHIV予防薬であるツルバダは、1日1回服用する必要がありますが新しいレナカパビルは年2回の服用か皮下注射で予防効果が発揮されるという画期的なHIV予防薬です。


レナカパビルはレナカパビルナトリウムで、HIV-1のカプシドタンパク単量体間の界面に直接結合して、HIV-1のカプシド機能を多段階で選択的に阻害する抗ウイルス薬です。


他の抗レトロウイルス薬との併用により、多くの治療歴を有する多剤耐性HIV感染者に対するHIV治療薬として使用されます。


多剤耐性HIV-1感染症治療薬・レナカパビルは、2023年6月2日日本で承認申請され、


2023年8月1日に日本国内で多剤耐性HIV-1感染症の治療薬として製造販売承認を取得しました。


レナカパビルはHIV-1感染症に対する初のクラスとなる「カプシド阻害薬」に分類される薬剤で唯一の年2回投与の治療選択肢となります。


このレナカパビルがどのようにして、HIV予防に寄与するかは次回詳しく述べたいと思います。

 

2024年6月30日日曜日

先天性梅毒の怖さ

先天性梅毒とは、梅毒トレポネーマに感染して治療を受けなかった女性が妊娠中に胎盤を介して赤ちゃんに梅毒トレポネーマを感染させてしまうことです。


妊娠中の梅毒感染は特に危険で、死産や早産につながったり、生まれた赤ちゃんに神経や骨の異常をきたしたりする可能性が極めて高くなります。


先天性梅毒は、生後数ヶ月以内に現れる「早期先天梅毒」と、生後2年以降に現れる「晩期先天梅毒」に分類されます。


・早期先天梅毒は、水疱、丘疹、赤銅色の発疹など特徴的な皮膚の症状、リンパ節腫脹、肝脾腫などを起こします。


・晩期先天梅毒は、実質性角膜炎、難聴、歯のエナメル質の形成不全(ハッチンソン歯)などを引き起こします。


先天梅毒は2022年では年間で20例の報告数がありましたが2023年では7月5日の時点で既に20例の報告数となっています。


特に最近の若い女性の梅毒患者増加によって先天梅毒の増加にも繋がっているということがわかるはずです。


生まれてくる子供には何の罪もありませんので、妊娠が判明すれば必ず妊婦健診を受けることです。


妊婦健診では梅毒検査を実施します。


この梅毒検査は、妊娠4~12週の妊娠初期と妊娠後期に受ける必要があります。


※最近では妊婦健診を受けない妊婦の増加による先天性梅毒が発生しています※


梅毒感染を早く知り、早期に治療することにより先天性梅毒は予防可能です。 

2024年6月23日日曜日

妊婦の梅毒患者増加!!

 妊娠した女性の症例数は2021年に187例だったものが、22年には267例、23年には383例と前年比1.4倍程度で増加し、2023年は女性症例に占める妊娠症例の割合が7.2%となり、数と割合のいずれも増加しています。


2019年 208人

2020年 185人

2021年 187人

2022年 267人

2023年 383人


妊娠初期に適切な治療を受ければ胎児への感染リスクを予防可能ですが、現在妊娠初期の妊婦健診を受けないことが増加した結果、梅毒の診断を受けたときの妊娠週数が中期以降であった症例の割合は、2022年以降減少したものの、依然として40%を超えていいます。


日本では、妊娠初期の妊婦健診で梅毒のスクリーニング検査が実施され、早期の発見につなげようとしていますが、しかしながら妊婦健診を受けない妊婦もいることから、別の機会で妊娠初期に検査を受けられる機会を提供することも重要だと考えられています。


また妊娠している女性で梅毒と診断された後、流産(2022年3例・2023年2例)や死産(同11例・9例)、人工妊娠中絶(同43例・28例)に至ったケースが報告されています。


現在の感染症発生動向調査では届出が義務化されていないことから、正確に把握できていない可能性があるのと、梅毒と流産・死産などのの関連も定かではないという現実があります。

【梅毒トレポネーマの感染防止と先天性梅毒の防止には】


以下のことを厳守する必要があります。

1.兎に角男女ともに梅毒に感染しすような行為をしてしまった場合、必ず適切な時期に検査を受ける。


2.結婚前にはお互い梅毒を含む性感染症検査を受ける。


3.妊婦健診時の梅毒検査は、妊娠初期と中期に必ず受ける。


2024年6月16日日曜日

HIV再流行の兆し!!

 梅毒、淋病、クラミジアなどの性感染症の増加もさることながら、その影でHIVの再流行が危惧されています。


『HIV検査体制の改善と効果的な受検勧奨のための研究-令和5年度 総括・分担研究報告書-』によりますと、2022年のHIVの検査実施数は42805件で陽性者数が72件だったのに対し、2023年は検査数が63120件で陽性者数は116件と1年で大きく増加しているという現実を突きつけられることになりました。


要するに新型コロナウイルスの流行でHIV検査数が減少しただけで、実質は水面下でHIVの流行は起こっていたことになります。


新型コロナウイルスの流行が収まり、HIV検査を受ける人が戻った結果、なんとHIV流行が起こっていたということなのです。


要するにHIV検査を受ける人が減少した結果、HIV感染者が減少していたという皮肉な話だったわけです。


現在HIVに感染しても早期発見早期治療によって死に至ることはなく、天寿を全うすることが可能となっています。


※エイズを発症してしまってからの治療効果は芳しくありません※


またコンドームを正しく要することにより感染はほぼ予防可能です。


更に『曝露前予防内服』『曝露後予防内服』の進歩による感染予防も高い効果を得ています。


HIVは性行為と血液を介して感染し、HIV感染者と一緒に食事やおしゃべりをしたりしても感染しませんし、蚊などの昆虫が媒介することもないし、唾液で感染することもありません。


要するにほぼ100%近く感染予防ができるわけです。


大切なことは一人ひとりが正しい感染予防を行い、危険な行為をしてしまったら必ず適切な時期にHIV検査を受けることです。


そうすることによりHIV流行を過度に恐れることはなく、正しく感染予防が可能となります。

2024年6月9日日曜日

先天性梅毒増加中!!

 2024年5月26日時点の梅毒患者総数は、5251人と依然として増加中です。

【先天性梅毒とは】

先天梅毒は、梅毒に罹患した妊婦から梅毒トレポネーマが胎児に経胎盤感染することで起きます。

梅毒トレポネーマに感染した胎児の多くは死亡しますが,母体が既療梅毒患者であったり,妊娠2~3ヵ月で梅毒患者となった場合には, 梅毒トレポネーマに感染した新生児が出産される場合があります。

【日本の先天性梅毒の患者の現状】

2024年1年間の先天性梅毒患者は、37人と過去最高となっていて、2024年第1四半期においても8人と、2023年の第1四半期に比べて2人の増加となっています。

【先天性梅毒の分類】

先天性梅毒は、以下のように分類されます。

1.早期先天梅毒・・・出産時すでに症状が現れていたり,出産直後に現れる。

2.晩発性先天梅毒・・・学童期,思春期に入って発病する。

【先天性梅毒の増加してい原因】

1.梅毒が大流行して妊娠適齢期の女性の患者が増加している。

2.妊娠しても妊婦健診を受けない。

※更に妊婦の4人に1人は妊婦健診を適切に受けていない事も明らかになっています※

生まれてくる子供への感染防止のためにも妊婦健診は必ず受けおく必要があります。

【先天性梅毒は防げるのか?】

妊娠中に適切な治療を受ければ、99%以上の割合で、先天性梅毒を予防することができます。

先天性梅毒を防ぐためには、妊娠初期(妊娠4ヶ月まで)に、梅毒血清反応を妊婦健診の中で行うことが必須となっています。

※最近の梅毒の流行によって現在は、妊娠後期にも梅毒検査を受けることが推奨されています※

【先天性梅毒は防げるのか?】

妊娠中に適切な治療を受ければ、99%以上の割合で、先天性梅毒を予防することができます。


先天性梅毒を防ぐためには、妊娠初期(妊娠4ヶ月まで)に、梅毒血清反応を妊婦健診の中で行うことが必須となっています。

2024年6月2日日曜日

日本国内における2024年第1四半期における梅毒患者の状況

 梅毒患者数は3053人で、やはり流行は続いています。

このままで行くと2024年1年間では12000人を超える可能があります。

分析可能であった2495人に付いての梅毒の病期は以下のとおりです。

1.男性同性愛者の梅毒患者の病期(239人)

・早期顕症1 74人

・早期顕症Ⅱ 78人

・無症候  80人

・晩期顕症 7人

2.男性異性間の梅毒患者の病期(1325人)

・早期顕症1 862人

・早期顕症Ⅱ 281人

・無症候  171人

・晩期顕症 11人

3.女性異性間の梅毒患者の病期(931人)

・早期顕症1 228人

・早期顕症Ⅱ 376人

・無症候  323人

・晩期顕症 4人

4.無症候梅毒についてのまとめ

・男性同性愛者 80人(80/239  33.5%)

・男性異性間 281人(281/1325 21.2%)

・女性異性間 323人(323/931 34.7%)

◯総 計 684/2495 27.4% 

※梅毒トレポネーマに感染しても典型的な症状を呈さない無症候梅毒が、かなりの数で存在しています※

※無症候梅毒の増加は、感染していても症状が出ないことから感染に気づくことなく次々と感染を広げていくという悲惨な結果を招くことになっています※

1.以上のことからして今年も依然として梅毒が流行していて、収まる気配はありません

2.梅毒トレポネーマに感染しても梅毒特有の症状を呈さない無症候梅毒が多く存在していることから、危険な行為をしてしまったときには必ず適切な時期に梅毒検査を受ける必要があります。

3.梅毒は抗生物質で完治しますから、早期に発見して早期に治療することが求められています。

4.梅毒トレボネーマは、HIVの様にコンドームで完全に予防できないことから過信しないことです。

※※梅毒トレポネーマに感染するような行為をしてしまったときには、必ず適切な時期に梅毒検査を受けることが大切です※※