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2017年4月3日月曜日

結核-6.検査その4-クォンティフェロンTbゴールド(QFT)-

【クォンティフェロンTbゴールド(QuantiFERON®-TB Gold:QFT)とは】

結核菌に対する特異性が高い検査で、BCGには反応しないことが特徴です。

特異性が高いということは、偽陽性が少ないため、この検査が陽性であれば結核に感染している可能性が高いことになります。

【検査の原理】

患者の血液を結核菌特異抗原(ESAT-6とCFP-10)とともに20時間程度培養し特異抗原により刺激を受けたTリンパ球によって産生されるインターフェロン-ガンマー(IFN-γ)という生理活性物質の量を酵素免疫測定法により測定し、結核の感染を判定する方法です。

【結核菌に感染して検査が陽性となる期間】

概ね8週間と言われています。

家族内のように濃厚な接触がある場合には、4週間でも陽性となることがあります。

【感度と特異度】

感度・・・・93.7%

特異度・・・93.8%

【偽陰性の起こる要因】

・HIV感染などに感染し免疫機能に影響を受けている場合。

・糖尿病・白血病・リンパ種・悪性腫瘍などで免疫低下がある場合。

・免疫抑制剤の使用によって免疫が抑制されている場合。

【偽陽性の起こる原因】

検査様血液に5%以上の溶血がある場合。

【結果の計算方法】

1)測定値A(IU/mL)=TB抗原血漿のIFN-ガンマーA濃度(IU/mL)-陰性コントロール血漿のIFN-ガンマー濃度(IU/mL)

2)測定値M(IU/mL)=陽性コントロールのIFN-カンマー濃度(IU/mL)-陰性コントロール血漿のIFN-ガンマー濃度(IU/mL)

【判定】

・測定値Mの値不問で測定値Aの値が0.35以上・・・陽性(結核菌感染を疑う)

・測定値Mの値が0.5以上で測定値Aの値が0.1以上~0.35未満・・・判定保留

・測定値Mの値が0.5以上で測定値Aの値が0.1未満・・・陰性(結核菌感染無し)

・測定値Mの値が0.5未満で測定値Aの値が0.35未満・・・判定不可(免疫不全が考えられることからこの検査での判定は不可)

【この検査の欠点】

既に結核菌に感染し治癒している患者では過去の感染と最近の感染の区別が困難な場合があります。

6歳未満の乳幼児では反応性が低い場合が見られます。

2017年3月27日月曜日

結核-5.検査その3-結核菌培養検査-

結核菌は、およそ15時間に1回しか分裂しないことから、喀痰を培養しても結核菌のコロニー(集落)が見られるようになるには早くても3~8週間はかかります。

【培養検査の前処理】

培養検査は喀痰をNALC-NaOH法によって前処理して、抗酸菌のみを選択的に培養する検査です。

前処理に要する時間は1~2時間以内です。

【NALC-NaOH法とは】

NALC (N-acetyl-L-cysteine) は一種の還元剤で、ある一定量加えることにより粘稠な喀痰に多量に含まれるS-S結合を還元して ミSH HS-に解離させます。

NALC を加えることによって喀痰の粘稠性が失われ, サラサラとした喀痰になります

そしてNALC処理によって粘稠性が失われた喀痰に含まれる一般細菌は, より低い濃度のNaOH (最終1%) で充分殺菌されます。

NALCを用いる目的は, 一般細菌の殺菌に必要なNaOH濃度をできるだけ低くすることです。

NALC-NaOH法は, 小川培地やその他の培地での培養や後で解説するミジット検査培養の際にも使用します。

NALC-NaOH 法で用いる試薬は, 以下の三成分から成り立っています

1.喀痰融解のためのNALC―還元剤

2.結核菌以外の雑菌を殺菌する.NaOH

3.喀痰に含まれる重金属イオンを除き, NALCの作用を保護するクエン酸ナトリウム

【小川培地による培養検査】

前処理によって得られた抗酸菌を小川培地に植えて結核菌の有無を調べます。

結核菌がいないことを証明するために、小川培地に8週間培養を続けます。

結核菌がいる場合には、小川培地では4週間程度で陽性となります。

【培養検査の利点】

塗抹検査に比べて菌量が少なくてすみ(10~数百個/mL)、検出感度も高く、分離菌を用いて菌種の鑑別・同定や薬剤感受性検査などを行うことが可能です。

【培養検査の欠点】

結核菌は発育が遅いため、結果が出るまでに数週から2ケ月以上かかる点が欠点です。

【ミジット検査】

近年は、ミジット(MGIT:Mycobacteria Growth Indicator Tube)法と呼ばれる液体培地を使用します。

これは 液体培地を使用した酸素蛍光センサーを備えた抗酸菌検出システムです。

この培地には、結核菌の発育促進剤と結核菌以外の雑菌の発育を抑制する抑制剤が含まれています。

【ミジット検査の原理】

底の部分に酸素感受性の蛍光センサーを埋め込んだ試験管で抗酸菌を培養します。

結核菌の発育に伴い液体培地中の溶存酸素が消費されるのに伴って、センサー部に結合していた酸素が遊離し、センサー部が蛍光を発するようになります。

この蛍光を365nmの長波長紫外線の照明のもとに目視または機器で行います。

※全自動測定システムバクテックMGIT960(ベクトン・ディッキンソン社製)で検査を行います※

この検査では、以下の長所があります。

1.およそ2週間で結核菌を検出することができる。

2.結核菌の検出率は90%以上で、特に菌数の少ない塗抹陰性検体や喀痰以外の検体での検出率の向上が期待できる。

3.ミジットでの培養陽性後、直ちに薬剤感受性試験に移行できる。

【培養検査の長所】

一番感度がよいのが培養検査で、結核菌検査全てが陰性でも培養検査でのみ陽性になることがあります。

2017年3月20日月曜日

結核-4.検査その2-Tスポット.TB検査-

【Tスポット.TB検査検査とは】

結核の感染感染の診断を補助するインターフェロン-γ遊離試験(Interferon-Gamma ReleaseAssays:IGRA)のひとつです。

【検査材料】

ヘパリンを加えた血液

【検査にかかる日数】

3日~7日

【検査方法】

1.血液6mL以上を採血します(18~25℃で保管)
2.全血から末梢単核細胞(PBMC)を分離し、規定の細胞数となるよう調製します。
3.抗IFN-γ抗体を固相したマイクロプレートのウェルにPBMC検体を加え、結核菌特異抗原(パネルA抗原、パネルB抗原)と16~20時間反応させます。
4.ウェルを洗浄したのち、標識抗体試薬を加えます。
5.ウェルを洗浄して非結合の抗体を除去後、基質試薬を加えます。
6.IFN-γを産生したエフェクターT細胞の痕跡が暗青色の「スポット」として発現します。
7.この数をもって感染の有無を判定します。

【判定】

0~4スポット:陰性

8スポット以上:陽性

5~7スポット:判定保留

【感度】

97.5%

【特異度】

99.1%

【診断上の注意】

1. 交差反応

結核菌特異抗原として ESAT-6 および CFP10 の2種を使用しているため,BCG ワクチンや結核菌以外のほとんどの抗酸菌とは交差性は起こしませんが、マイコバクテリウム・カンサシ(M.kansasii)、マイコバクテリウム・ズズルイ(M.szulgai)、マイコバクテリウム・マリヌム(M.marinum)、マイコバクテリウム・ゴルドネ(M.gordonae) 感染では陽性の結果を示すことがあります。

従ってこれらの感染が疑われる場合には,他の診断方法を考慮する必要があります。

2. 感染から陽性化するまでの期間

Tスポット.TB検査は感染後,陽性化まで 8~10週さらに長期間経過後に陽性化することもあるので、検査実施時期や検査結果の解釈に際して考慮に入れる必要があります。

3. 感染時期

検査が陽性となっても最近起こった感染か,感染後長期間経過したかは判定することは出来ません。

この検査を発病事例の補助診断のために適用する場合は、Tスポット.TB検査が陽性であっても過去の感染を反映した結果で胸部X線異常は他の原因によることもあるので注意が必要となります。

※活動性結核と潜在性結核感染の区別は出来ず、また感染時期の特定も困難であるという制限を持つ検査です※

2017年3月12日日曜日

結核-3.検査その1-喀痰塗抹検査-

【痰とは】

痰は呼吸器系の粘膜からしみ出る分泌物でその成分は、喉や咽頭・気道・気管支・肺から剥がれ落ちた細胞も含まれています。

喉や咽頭・気道・気管支・肺の細胞に炎症、細菌やウイルス感染、悪性腫瘍があれば、痰の中にウイルスや細菌、悪性細胞などが混ざり痰に変化があらわれます。

そのことから痰を調べれば、呼吸器のさまざまな情報を得ることができるのです。

【結核菌の喀痰塗抹検査】

採取した喀痰の一部を直接スライドグラス上に塗抹・染色して標本を作製し、顕微鏡で結核菌の有無を調べる検査です

【検査方法】

結核または結核の仲間の菌である抗酸菌を染色し、直接顕微鏡で観察する検査です。

染色には、特殊な抗酸菌染色である「チールニールセン染色」を行い顕微鏡で検査を行います

最近では判定しやすい蛍光顕微鏡を用いて結核菌を調べる蛍光法が多く採用されています。

【判定】

ガフキー0号 全視野になし
ガフキー1号 全視野に1~4個
ガフキー2号 数視野に1個
ガフキー3号 毎視野に1個
ガフキー4号 毎視野に2~3個
ガフキー5号 毎視野に4~6個
ガフキー6号 毎視野に7~12個
ガフキー7号 毎視野にやや多数(13~25個)
ガフキー8号 毎視野に多数(26~50個)
ガフキー9号 毎視野に非常に多数(51~100個)
ガフキー10号 毎視野に無数(101個以上)

【結核菌検査指針2007による判定】

蛍光染色標本での検査では明瞭な桿菌のみを陽性とし、球菌状のものは陽性としない。

前処理前の検体量当りに換算した検出菌数を、ガフキー号数に代えて1+(ガフキー2号)、2+(ガフキー5号)、3+(ガフキー9号)で記載する。

ガフキー1号は±(要再検)と記述し、同一検体からの塗抹標本を作り直すか、別の検体について再検査する。



新旧の判定法


【喀痰検査の感度】

結核菌の検出感度は分離培養法や核酸増幅法と比べて低いですが、患者発見の重要な手段のひとつの検査法であることと、結核菌を排菌しているかどうかを調べることが出来ることからして、結核患者の管理や治療効果の判定の上で重要な検査法です。

【塗抹検査陽性の場合の判定】

喀痰で結核菌が認められた場合は、結核菌を排菌している事になります。

結核菌か非結核性抗酸菌か鑑別できない場合もあります。

偽陽性反応…抗酸性に染まる他の細菌の可能性あり。

【塗抹検査陰性の場合の判定】

真に結核菌に感染していない。

痰に含まれる結核菌が少なければ、結核菌に感染していたとしても顕微鏡検査で結核菌が見つからない場合もあります。

【塗抹検査の欠点】

結核菌検出には喀痰1mL中に結核菌が5,000~10,000個以上いないと検出できません。

また結核菌以外の抗酸菌全般が染色されるため、結核菌と非結核菌の区別が出来ない欠点があります。

2017年3月6日月曜日

結核-2.結核菌とは-

結核菌は1882年ドイツの細菌学者ロベルト・コッホ(1843~1910)によって発見されました。

結核菌は抗酸菌の一種で、チール・ネールセン染色では鮮紅色に染まり細長い棒状を示します。

※チール・ネールセン染色では鮮紅色に染まった結核菌※

切手は1982年フィリピン発行の「結核菌発見100年記念切手」で、コッホとともにチールネルセン染色で鮮紅色に染まった結核菌が描かれていますので紹介します。

【結核菌の大きさ】

長さ2~10ミクロン、幅0.3 ~0.6ミクロンの細長の桿菌で、芽胞・鞭毛・莢膜はつくらない。

【結核菌の分類】

マイコバクテリウム科マイコバクテリウム属に属しグラム陽性桿菌である抗酸菌と呼ばれる細菌の一種です。

【結核菌の種類】

以下の四種類が存在しますが、人に病原性を持つのはヒト型結核菌です。

1.結核菌:ヒト型結核菌 (Mycobacterium tuberculosis)
2.ウシ型結核菌 (M. bovis)
3.マイコバクテリウム・アフリカナム (M. africanum)
4.ネズミ型結核菌 (M. microti)

稀にウシ型結核菌とマイコバクテリウム・アフリカナムが人に感染することがありますが、ネズミ型結核菌は人には感染しません。

【消毒方法】

日光の中の紫外線には弱いので殺菌灯(紫外線灯)が感染防止に利用されます。

乾燥・酸やアルカリおよび消毒剤に対してはかなり強い抵抗性を示す。

グルコン酸クロルヘキシジンや塩化ベンザルコニウムは消毒効果はない。

有効な消毒剤としては、クレゾール石鹸・両性海面活性剤・アルコール・ヨードホルム、およびグルタラールなどがある。

熱に対しては60℃で20~30分、70℃では5分で死滅する。


2017年2月27日月曜日

結核-1.結核とは-

【結核とは】

結核は、結核菌が体の中に入ることによって起こる病気で、毎年約18,000人が新たに発症しているわが国の主要な感染症のひとつです。

日本の結核罹患率は2010年に人口10万人あたり18.2人で、10人以下となっている欧米先進国に比べまだまだ結核は多く、世界の中では依然"中まん延国"とされています。

※2015年は24,995件の結核発生届(患者、無症状病原体保有者、疑似症患者)※

【結核菌の感染場所】

結核菌は主として肺の内部で増殖しますが、腎臓、リンパ節、骨、脳など身体のあらゆる部分に影響が及ぶことがあります。

【感染経路】

肺結核患者の咳やくしゃみなどによって、空気中に結核菌が飛び散り、その結核菌を吸いこむことにより感染します。

人から人へと感染します。

【潜伏期間】

生まれてはじめて結核菌を吸い込んだ場合は、10~15%の人はその後1~2年のうちに発症します。

それ以外の人の場合は、体内に入った結核菌は冬眠状態となり、体内に留まることになり、発症しなかった場合でも、加齢などで身体の抵抗力が落ちると、潜んでいた結核菌が活動を始め、結核を発症します。

この場合発症するのは、結核菌が体内に留まったケースの10~15%程度と言われています。

【症状】

咳、痰、発熱、呼吸困難等、風邪のような症状を呈することが多いです。

【死亡率】

治療をしない場合は、50%程度の死亡率と言われています。

現在は、医療の進歩によりかなり低くなってきていますが、髄膜炎を発症してしまった場合は、現在でも30%程度の死亡率となっています。

【HIVと結核の関係】

HIV感染によって免疫が低下してくると、結核菌に感染していて体内に結核菌が潜んでいる場合や、新たに結核菌の感染を受けた場合は、結核菌は増殖して結核が発症することになります。

1984年、結核が日本の3分の1に減少していた米国で結核の逆転上昇が始まり、その後の増加分の30%はHIV感染が原因とされています。

HIV感染者の多いアフリカでは結核の大爆発という悲惨な状況が展開されています。

2017年2月7日火曜日

梅毒迅速検査の落とし穴

梅毒の流行が以前止まりません。

そのことから梅毒迅速検査の落とし穴について解説してみます。

梅毒トレポネーマに感染すると、体の細胞の一部が破壊されてカルジオリピン抗体が血液中に出てきます。

カルジオリピン抗体は梅毒トレポネーマに感染して約1ヶ月で現れ、STS(Serologic Test for Syphilis)検査で見つけることが可能です。

TPHAなどのTP(Treponema pallidum)抗原検査に比べて早い時期に陽性となるため、早期診断に適しています。

この検査はカルジオリピンというリン脂質に対する抗体を調べているため、梅毒以外の原因でカルジオリピンが存在していると偽陽性となってしまいます。

例えば、妊娠、膠原病、肝疾患、梅毒以外の感染症などでもカルジオリピン抗体が陽性になることがあります。

これを生物学的偽陽性反応(Biological False Positive:BFP)といいます。

一方TP検査は、梅毒トレポネーマに感染して体内に出来る感染抗体であるTP抗体を見つける検査法です。

TP抗体を見つけることから偽の陽性反応を起こすことは殆どありません。

このTP抗体は梅毒トレポネーマに感染後5週以降であるために、早めに診断をしたいという場合には不向きです。

最近梅毒迅速抗体検査を利用して、即日に検査結果がわかると保健所等では言っていますが、梅毒迅速抗体検査はTP抗原を利用したイムノクロマト法ですから、梅毒の早期検査には適していません。

不安な行為をしてから5週間後に受けないと梅毒トレポネーマに感染しても陰性(偽陰性反応)となってしまいます。

梅毒トレポネーマの感染を早期に発見したい場合には、4週間ではSTS検査を受ける必要があります。