炭疽症は、炭疽菌による感染症で、ヒツジやヤギなどの家畜や野生動物の感染症であるが、ヒトに感染することもあることから人獣共通感染症の分類されています。
炭疽菌は1876年ドイツの医師で細菌学者でもあったロベルト・コッホ(1943~1910)によって発見されています。
また、1881年フランスの生化学者で細菌学者でもあったルイ・パスツール(1822~1895)は弱毒生菌ワクチンと開発しましたが、このワクチンで得られる免疫はごく弱いことから今日では利用されなくなっています。
【感染経路】
ヒトへの感染経路としては、炭疽症になった動物との接触やその毛皮や肉から感染します
基本的にはヒトからヒトへは感染しません。
炭疽菌は皮膚からの感染が最も多いが、芽胞を吸いこんだり、汚染した肉を不十分な加熱で食べた場合にも感染してしまいます。
自然発生は極めてまれです。
【炭疽という意味】
炭疽とは「炭のかさぶた」の意味であり、英語名のAnthraxはギリシャ語で「炭」の意味で、この名称は皮膚炭疽の症状で黒いかさぶた(瘡蓋)ができることに由来しています。
【炭疽症の分類】
炭疽症には、炭疽菌が顔、首、手などの皮膚の小さな傷から侵入し、1~7日後ニキビ様の小さな掻痒性または無痛性の丘疹が現れ、周囲には発疹と浮腫が現われる"皮膚炭疽症"、肺に感染して起きる"肺炭疽症"、炭疽菌が食物つ共に口から入り感染する"腸炭疽症"に分類されます。
【致死率】
治療しない場合の致死率は、皮膚炭疽症は10~20%、肺炭疽症は90%と極めて高い、腸炭疽症は25~50%です。
【検査】
確定診断は炭疽菌の分離同定によって調べます。
最近ではPCR検査が利用されています。
【治療法】
ペニシリン・テトラサイクリンなどの抗生物質により治療可能。
ヒトからヒトへの感染はないので、隔離の必要はありません。
早期に治療すれば治癒する。
【予防ワクチン】
炭疽病のワクチンは日本には無く、アメリカで1社が製造するのみで、。しかも副作用の可能性が高いことから、この予防接種はあまり推奨されないのが現実です。
【発生状態】
日本国内では1965年8月、岩手県西根町で乳牛が炭疽病で死亡したため死亡牛は一度は埋められましたが、掘り起こされて売買された結果、1965年88月26日までに牛肉を食べた33人が下痢、腹痛を訴えて疑似患者として手当てを受けた事例がありますが、それ以降2021年8月まで発生はありません。
2021年8月中国国内での発生が報告されています。