血液の鉄人の理解しやすく役立つ臨床検査の部屋 Headline Animator

2018年9月27日木曜日

ふたつの抗体について-2.中和抗体-

この抗体は、体内に侵入した細菌やウイルスを無毒化する抗体です。

例えば、麻疹に感染しますと、生体の免疫機能は、麻疹のウイルスと戦い、免疫機能が勝てば麻疹の中和抗体を作ります。

次ぎに麻疹のウイルスが生体に侵入しても、この麻疹の中和抗体が、麻疹のウイルスを無毒化することから、二度と麻疹にはかかりません。

予防ワクチンは、毒力を弱めた病原体を生体に感染させて、中和抗体を作り出します。

ワクチン接種で中和抗体が体の中にできあがれば、それに対する病原体が生体内に侵入しても、この中和抗体が、病原体を無毒化するために感染しないわけです。

仮に感染しても症状は軽く直ぐに治ってしまいます。

インフルエンザのワクチンも、インフルエンザ予防ワクチンを接種して、生体にインフルエンザウイルスを無毒化する中和抗体を作りますが、インフルエンザワクチンを接種しても、インフルエンザに感染することがあります。

これは何故でしょう?

疑問に思われませんか?!

その理由は、予防接種に使用したインフルエンザの株以外のインフルエンザが流行すれば、予防接種で生体内に出来た中和抗体は、別の株のインフルエンザウイルスには働かないために感染してしまうわけです。

予防接種に使用するウイルスの株以外のウイルスが生体内に入れば、感染してしまうわけです。

HIVは中和抗体が現時点では確認されていませんので、一度HIVに感染してしまえば、感染を示す感染抗体は出来ますが、HIVを無毒化する中和抗体は出来ないために、HIVは生体から排除されることなく、増殖するわけです。

【代表的な中和抗体】

ジフテリア、猩紅熱、百日咳、麻疹、水痘、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)

ご理解頂けましたでしょうか?

2018年9月15日土曜日

ふたつの抗体について-1.感染抗体-

抗体には感染抗体と中和抗体の2つがありますが、最初に感染抗体について解説いたします。

【感染抗体とは】

外部から生体内に侵入した、細菌・ウイルス・異物に対して、生体の免疫機能が、それらの侵入した物に対して作る物質です。

例を挙げますと、HIVが生体内に侵入しますと、生体の免疫機能が反応して、HIVに対する物質、即ちHIV抗体を作ります。

HIVやHCV、梅毒トレポネーマに感染しますと、生体の免疫機能が反応してこれらのウイルスや細菌を排除しょうと反応します。

生体の免疫機能が勝てば、侵入したウイルスや細菌は無毒化されて、生体から排除されます。

しかし、生体の免疫機能が負ければ、これらのウイルスや細菌は感染して、生体内で増殖していきます。

そして、これらのウイルスや細菌に対する感染抗体が体の中に出来ます。

HIV抗体、HCV抗体、梅毒TP抗体は感染抗体です。

感染抗体は、これらのウイルスや細菌に感染したという証拠になります。

その為に、HIVの検査は、感染抗体であるHIV抗体を見つける検査と言うことになります。

HCVも同様に、感染抗体であるHCV抗体を見つける検査です。

梅毒血液検査も梅毒トレポネーマの感染抗体である梅毒TP抗体を見つける検査です。

このように、多くのウイルスや細菌に感染した場合、感染の証拠となる感染抗体が出来ます。

従って、感染の判断をするのは、血液中の感染抗体を見つけると言うことです。

この感染抗体はウイルスを無毒化する働きは一切ありません。

【代表的な感染抗体】

HIV抗体・HCV抗体・梅毒TP抗体・クラミジア抗体など

【間違いやすいこと】

※梅毒検査のSTS検査で見つける抗体は、梅毒トレポネーマに対する抗体ではなく、梅毒トレポネーマに感染したときに体の組織から出てくるカルジオリピン抗体です※